埼玉地理教育研究会通信
発行責任者 春名政弘 wdstwyun@tcat.ne.jp(Eメール)
静岡県で動き出した「レベル2対応の津波防災」・その1
岩渕孝 2015年7月21日
目次
1.「南海トラフ超巨大地震」の衝撃(今回掲載)
2.浜松市で進む「レベル2対応の防潮堤」の建設
3.「浜松モデル」から「静岡モデル」へ
1.「南海トラフ超巨大地震」の衝撃
(1)急浮上してきた南海トラフ超巨大地震
@繰り返されてきた南海トラフ巨大地震
南海トラフでは、これまでも、マグニチュード8クラスの巨大地震が、約90〜150年間隔で、くりかえし発生してきた。1707年(宝永4年)には、マグニチュード8.6(8.9)の巨大地震が発生した。都司嘉宣氏は、「高知県では、津波高が、最大で25mに達した」と推定している。1854(嘉永7年)年11月4日の安政東海地震も、マグニチュードは8.4と推定されている。津波高は、熊野地方では、10m近くに達していた、と推定されている。その約30時間後の1854(嘉永7年)11月5日には、安政南海地震が発生した。マグニチュードは8.4と推定されている。高知県では16mの最大津波高が推定されている。1944年12月7日には昭和東南海トラフ地震が発生した。マグニチュードは7.9であり、熊野灘沿岸では6〜8mの津波高が観測された。追いかけるように、1946年12月21日には昭和南海地震が発生した。マグニチュードは8.0、最大津波高は3〜5m(高知県)であった。そのような歴史を踏まえ、地震調査研究推進本部は、2001年、「南海トラフの地震の長期評価」を発表し、「2001年から30年以内の発生確率は、南海地震が40%程度、東南海地震が50%程度」との数値を提示した。国の中央防災会議の「東南海、南海地震等に関する専門調査会」は、2003年、東海・東南海・南海地震が同時に発生した場合、想定されるマグニチュードは、最大で8.6〜8.7になるとの予測を公表した。宝永地震のマグニチュードに相当する「レベル1の地震」である。
A大転換を促した「3.11」津波災害
しかし、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は、マグニチュード9.0の超巨大地震であった。東日本大震災の死者・行方不明者は1万8479人(2015年3月6日現在)に達し、その約9割は津波によるものであった。『東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会報告』(2011年9月28日)は、「今後、地震・津波の想定を行うにあたっては、あるゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震・津波を検討していくべきである。具体的な防災対策を検討する際に、想定地震・津波に基づき必要となる施設整備が現実的に困難となることが見込まれる場合であっても、ためらうことなく想定地震・津波を設定する必要がある」(p7)と提言した。それを受けた『南海トラフ巨大地震対策について(最終報告)』(2013年5月)は、「平成23年3月に発生した東北地方太平洋沖地震は、これまでの想定をはるかに超える巨大な地震・津波により、一度の災害では戦後最大の人命が失われるなど、甚大な被害をもたらした。このため、南海トラフ沿いで発生する大規模地震対策を検討するに当たっては、“あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震・津波”を想定することが必要になった」(p1)と述べ、「最大クラスの地震・津波=レベル2の地震・津波」への対応を提言した。その一方で、2011年8月に設置された「南海トラフの巨大地震モデル検討会」は、2011年12月に「想定震源断層域・想定津波波源断層域」、2012年3月に「最大クラスの震度分布・津波高の推計結果」を発表し、南海トラフで発生する地震のマグニチュードは9.0(9.1)になり、「震度7が想定される地域は10県90市町村、津波高20m以上が想定される地域は6都県23市町村」にのぼることを明らかにした。また、2012年8月29日、『南海トラフ巨大地震による被害想定』を発表し、最悪の場合、死者が32万3千人に達するとの想定を公表した。国の中央防災会議の「東南海、南海地震等に関する専門調査会」は、2003年、「南海トラフ巨大地震による死者は2万4700人」と発表した。それと比較すると、死者は、13倍に激増することになった。
「3.11」以前は、南海トラフ巨大地震といえば、宝永地震のようなマグニチュード8クラスの「レベル1の地震」を指していた。しかし、「3.11」以後は、「最大クラスの地震=レベル2の地震」=「超巨大地震」が加えられるようになった。現在、十分には使い分けられてはいないが、南海トラフ巨大地震には、「レベル1の巨大地震」と「レベル2の超巨大地震」があることになっている。
B南海トラフ超巨大地震の現実性
それにしても、南海トラフ付近で、超巨大地震が起きる可能性が、現実にあるのか。名古屋大学環境学研究科教授の古本宗充氏は、「東海・東南海・南海の南海トラフから奄美群島沖の南西諸島海溝までの全長約1000qの断層が連動して破壊されることにより、2004年のスマトラ島沖地震に匹敵するマグニチュード9クラスの超巨大地震が発生する可能性がある。発生間隔は1700年であり、前回の発生から、1500年以上、経過している」と語っている(『Newton』 2007年10月号 p36)。産業技術総合研究所と北海道大学の研究グループは、2007年、静岡県浜岡原発付近のボーリング調査の結果から、「超巨大地震は、過去5000年間に3回起きており、2400年前の地震の後にも、もう1回起こっていた可能性がある」との報告している。中央防災会議がまとめた『南海トラフ巨大地震対策について(最終報告)』(2013年5月)は、「東海地震が発生していない現状に鑑み、最新の科学的な知見を踏まえて、南海トラフ沿いで、東海、東南海、南海地震が同時に発生することを想定した対策の必要性が高まっていた」(p1)と論述している。と同時に、中央防災会議がまとめた『南海トラフ巨大地震の被害想定について(第1次報告)』(2012年8月29日)は、「この(最大クラスの)地震・津波は、次に必ず発生するというものではなく、現在の知見では発生確率を想定することは困難であるが、その発生頻度は極めて低いものである」(p1)と論述している。しかし、石橋克彦氏は、『南海トラフ巨大地震』(岩波書店 2014年)の中で、「歴史上では宝永地震が最大と考えられているが、西日本の津波堆積物の調査などからは、宝永地震と同程度の地震が300〜700年間隔で発生したらしいといわれている。また、高知県の蟹ヶ池、徳島県の蒲生田大池、三重県の須賀利大池の津波堆積物から、約2000年前に宝永津波を上回る巨大津波が生じたことが推測されている。“きわめて希”な事象が起きてしまったのが3.11だったのだから、私たちは、宝永を上回る巨大地震津波が数十年以内に発生しても不思議ではないと思ったほうがよい」(p151)と論述している。
地震調査研究推進本部は、南海トラフ全体を一つの領域と考え、この領域では大局的に100〜200年で繰り返し地震が起きていると仮定して、「マグニチュード8〜9クラスの地震の発生確率は、今後30年以内に、70%」との予測を発表している。「マグニチュード9クラスの地震」の発生も、間違いなく想定されている。
(2)静岡県を襲う南海トラフ超巨大地震
@「南海トラフの巨大地震検討会」の警告
中央防災会議の南海トラフ超巨大地震の被害想定は、静岡県に大きな衝撃を与えた。静岡県は南海トラフ超巨大地震の震源域の真上に位置しており、想定される超巨大地震は「直下型」になる。中央防災会議の想定によると、県土の半分以上の地域が震度7の強震に襲われ、下田市には津波高33mの津波が押し寄せてくることになっている。津波高の最大値は、一部の地域を除くと、10mを超えることになっている。しかも、津波の出足は、きわめて早い。中央防災会議がまとめた『南海トラフの巨大地震による津波高・浸水域等(第2次報告)及び被害想定(第1次報告)』(2012年8月29日)は、「駿河湾の沿岸地域のようにトラフ軸のすぐ傍にある地域では、地震発生から数分後には5mを超えるような大きな津波が襲来する」と推定している。東北地方太平洋沖地震の際には、震度3以上の地震動が4分近く続いた。避難は強い地震動が一段落してから始まる。中央防災会議(2012年)は、「避難開始時間は地震発生の5分後になる」と推定している。津波安全地帯への避難は、健常者でも容易ではない。津波による死者数は、最悪の場合、約22万4000人に達すると想定されている。津波による死者数は、全員が発災後すぐに避難を開始しても、約8万5000人に達すると想定されている。
津波被害には、当然のことながら、大きな地域差がある。前掲『被害想定(第1次)』は、静岡県の津波による死者数を約9万5000人と想定している。勿論、都道府県別の順位は全国第1位であり、全国の津波による死者数の約41%を占める。津波による死者数の第2位は和歌山県の7万2000人、第3位は高知県の3万7000人である。
A大きな衝撃を与えた『静岡県第4次地震被害想定』
静岡県は、1976年に「東海地震」説が発表されて以後、1978年、1993年、2001年と3次にわたって、独自に地震被害想定を発表してきた。そして、「3.11」を踏まえて、2013年6月27日、「静岡県第4次地震被害想定」を発表した。それによると、レベル2の地震による最大津波高は、下田市では33m、御前崎市では19m、浜松市では14〜15m、静岡市では11〜12m、焼津市では10mになると予測されている。最大津波の到達時間は、西伊豆地方では6〜7分後、静岡市清水区では13分後、浜松市では22〜23分後と予測されている。避難開始時間は、地震発生後、5分と想定されている。津波による死者数は、最悪の場合、約9万5千人と推定されている。津波による死者数は、「全員が発災後すぐに避難を開始した場合」でも、最悪の場合、約5万1千人に達すると推定されている。津波による死者数を市町村別に見ると、最悪の場合、市町村別で第1位となる浜松市では1万5950人になると推定されている。東日本大震災の際の津波による死者の総数に匹敵する。津波による死者数は、沼津市と牧之原市では1万3000人、静岡市では1万2600人、焼津市では1万1000人と推定されている。浜松市は総人口が80万人を超えている。このため、総人口に占める津波による死者数は、2%弱にとどまることになる。総人口に対する津波による死者数が最も高いのは西伊豆町であり、何と56.8%に達すると想定されている。松崎町の33.7%、南伊豆町の26.2%、牧之原市の25.4%、下田市の18.8%が続いている。東日本大震災では、死者・行方不明者が最も多かったのは、宮城県石巻市であり、3890人であった。総人口に占める死者・行方不明者の比率が最も高かったのは岩手県大大槌町であり、11.3%であった。東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震は「レベル2の地震・津波」であった。南海トラフ超巨大地震による静岡県の津波被害は、東北地方太平洋沖地震による東日本大震災をはるかに上回るものになる、と想定されている。静岡県と静岡県の市町村は、どのように備えようとしているのか。
岡山県美作市のどぶろく作りと鳥獣対策
小林正太郎
昨年の12月末に帰省し、父と周辺を巡ってみました。その一つとして、「どぶろく酒房力亭」を訪ねてみました。たまたま社長の船曳秀彦さんとお会いでき、少々お話をしてきました。そのことを報告したいと思います。
(1)「どぶろく特区」を訪ねて・・・要点だけまとめると
・2002年の構造改革で、美作市が「どぶろく特区」に指定された(2006年)。
・製造と販売が許可される条件は、
@自家水田の米を使用すること。
Aなおかつ、製造したどぶろくを提供する飲食店等を経営していること。
・船曳氏は、農業を営む傍ら、焼き肉店も経営しており、製造許可が下りたようです。(農業・生産・販売をいずれも行っている「第6次産業」者ともいえる。)
・市内には船曳氏を含め、2軒がどぶろく生産を行っている。(「特区」に指定されても、そう申請が出てくるわけではないのが現実。)
・船曳氏はどぶろく作りの勉強のために遠くまで勉強に行ったそうです。
・現在、「れいし(麗姿)」を製造・販売するに至った。(商品名は、剣豪・宮本武蔵に由来するそうだ。)写真2参照
*購入はネット販売も行っており、「どぶろく酒房 力亭」で検索してみてください。
*ちなみに全国にも「どぶろく特区」があり、埼玉県近隣では、片品村、みなかみ町、古河市などが指定を受けているようです。埼玉県にはないようです。
(2)有害鳥獣による被害に苦しむ美作市・・・要点だけまとめると
船曳氏との話で「害獣」駆除の話もあったので追記しておこうと思います。
・美作市でも農作物などの被害が大きく、「害獣」駆除を市としても奨励金を出しています。
イノシシ=5000円/1頭、 シカ=12000円/1頭、 ヌートリア1000円/1匹、 野猿14000円/1頭、 カワウ1000円/1羽 (美作市ホームページより)
*カワウは、水産物(放流鮎など)の被害が甚大であるためだと思います。
・船曳氏も「害獣」捕獲のための許可を得て、捕獲に協力している。
・「びっくり足くくり罠」で「害獣」の足を狙います。(詳しくはユーチューブでご覧ください。)
・捕獲したら、その証明(切断した尻尾や鼻、写真を必要とする場合が多い)を提出する。
・捕獲用の仕掛けは毎日見に行くことが必要である。(動物福祉上の問題)
*岡山県の北東部に位置する美作市は、シカの個体数が特に多い地区で被害も甚大のようです。農林水産業被害金額は6128万円(2010年度)に上っています。市として、「害獣」捕獲を推進してきてはいますが、「害獣」の個体数の増加に追いつかないようです。
皆さんから
市町村消滅論について考える
市町村消滅論がささやかれる中、心強い本が出た。小田切徳美氏による『農山村は消滅しない』岩波新書である。若者の田園回帰傾向や中国山地の挑戦などから、新たな展望も見えてくる。ところで、政府が推し進めようとしている地方創生は、中核都市形成による農山村の破壊に他ならない。アベノミクスによる道路建設やTPPは、生産基盤の縮小のみならず環境破壊を引き起こす。水田が太陽光パネルに覆われるのも、実に味気ない。消滅した地域は、産廃業者が狙っている。放射能汚染物質だって-----。ところで、高齢化の問題は、農山村地域に限らない。深刻なのは、人口の多い大都市近郊である。小田切氏も言っているように、問題の解決には都市と農山村が共生する社会を目指す以外にない。それには、国民の充分な議論が必要である。(多田統一)
火山と原発
これは、古儀君男著の岩波ブックレットのタイトルである。この中で、古儀氏は、地震と津波によって引き起こされた福島原発事故とは違った、火山災害による原発への影響を警告している。火砕流によって、電源と冷却機能の喪失によってメルトダウン(炉心溶融)が起こり、それに続く爆発が避けられないと述べている。再稼働した川内原発の場合、南九州の超巨大噴火が心配されている。九州電力は、川内原発の半径160q圏内の14の活火山について、超巨大噴火の可能性は小さく、その兆候をモニタリングで把握でき、もしもの場合には原子炉の運転を停止して燃料体等を搬出できると評価している。規制委員会も、このことに関して、火山影響評価ガイドを踏まえているとして容認した。古儀氏は、九州電力や規制委員会が根拠としたドゥルイット論文の問題点を指摘している。大規模噴火の可能性だけではない。火山灰によるコンピュータや電子機器の故障、取水口や給水管が詰まり冷却水が供給できなくなることによる壊滅的な被害まで想定しなければならない。地理A,地理Bにおける自然災害の扱いだけでは、真の防災教育にならないことは明白である。工場や原発などの人工物と災害との関連の追及が必要である。このブックレットは、そのことの重要性を我々に教えてくれる。(多田統一)
都倫研夏季研究協議会に出席して
退職後、三部制の高校に公民科の非常勤教員として採用されたこともあり、東京都倫理・現代社会研究会(都倫研)の集まりに出ることがある。8月21日に授業実践交流会(都立西高校)が開かれ、他校の様子を知りたいと思って出てみた。やはり、公共に関する話題が印象に残った。倫理などは、カリキュラムに配置できる学校が少なくなり、専門の教員がいなくなることが心配されている。それに比べ、「地理は良かったね」と声をかけられる。西高校などでは、地理の専任教員を2名にということも囁かれている。公共の問題は、カリキュラムの問題だけに止まらない。義務教育での道徳との関連で考えると、かつての修身になってしまうという懸念がある。さらに、現代社会の失敗を総括しないまま公共が導入されるようだと、同じ失敗を重ねる危険性がある。地理も、「ひとまず安心」だと、喜んでばかりはいられない。GISの流れなどは、情報産業との関連だけでなく、国の軍事戦略上の意図が見え隠れしており、注意を払っていく必要があるであろう。 (多田統一)
全国地理教育学会例会に出席して
8月22日に、高輪中学・高等学校で全国地理教育学会の例会が開かれ、これに参加した。個人史的に地理教育を振り返るというテーマで、4名の発表があった。副会長でもある横山満氏(現在東星学園中・高等学校非常勤講師、立正大学時代の私の1つ先輩、稲永ゼミ)の発表を、ぜひ聞きたいと思ったからである。私地研の会長も務めている横山氏をはじめ、発表者の方々の地理教師としての長い経験には、学ぶ点が多かった。しかし、このような会に出席していつも思うことであるが、「地理にはドラマがない」ということである。定時制の生徒に個人史を書かせると、壮絶な親子のドラマがあるし、文学や哲学の分野では人間の生き方そのものが研究テーマになる。地理は、客観的な目を維持しなければならないことは事実であるが、それにしても個人の生き様と地理との関わりが見えてこない。教科書記述にも、そのことがよく表れているように思える。歴史は、地域を舞台に人間のドラマが展開する。一方、地理にはドラマがない。特に、系統地理は地域を意識していない。主催者側にとっては、教員経験を通して学習指導の方法の変遷などを検討したかったようであるが、地理学や地理教育の本質に関わる議論をもっとやってもらいたかった。 (多田統一)
地理教育への一抹の不安
今年の夏は、それぞれ1日ずつであったが、全国地理教育研究会東京・日本地図センター大会、地理教育研究会桐蔭横浜大学大会の両方に参加した。偶然か必然か、両大会とも地図が主役に躍り出た内容で、地理必修化に向けての強い意図が感じられた。ところで、最近のマスコミ報道によると、地理歴史科の中で地理が埋没してしまうといった危険性は、回避されそうな流れである。しかし、私が昨今の地理教育に抱く一抹の不安は、地理が埋没してしまうといったことだけではない。地理教育の内容が、GPSやGISといった技術的なものに傾斜していることにある。情報化や国際化に対応することが、国の教育政策の大きな柱になっていることは事実であるが、地理教育はもっと文化的なものに固執してもらいたいものである。地図指導であれば、数理的なものだけでなく、地名が持つ文化的・歴史的な情報をもっと活用すべきであろう。もう一つの不安は、国家戦略と地理との関係である。義務教育での道徳の教科化、大都市部を中心に広がる日本史必修化の動き、それに公共科の登場などから、地理がかつての地政学に戻る危険性を考えてしまうのは私一人だけであろうか。気付けば子どもたちが銃を握っていたなんてことは、悪い夢だけにしてもらいたいものである。地理が重要視されるのは、必ずしもいいことばかりではない。 (多田統一)
日本人のノーベル賞受賞について
大村智・北里大学特別栄誉教授が医学・生理学賞、梶田隆章・東京大学宇宙線研究所教授が物理学賞を受賞した。大村氏については、元都立の定時制の教員をしていたということで親近感を持つが、研究の内容としては土壌中の放線菌から抗生物質を発見し、これがアフリカの風土病オンコセルカ症の治療薬の開発に繋がった点が評価された。疾病地理学は、かつて地理学の分野として研究者もいたが、最近はあまり注目されないようである。保健体育科は別にして、地理教育で扱われることも少ない。研究の流れとしては、土壌地理学や風土病研究と言うよりも、遺伝子研究や創薬の開発に中心が置かれる。いかに、地理学が脇役の性格を持つかがよく分かる。一方、梶田氏の研究は、素粒子物理学の分野である。宇宙線研究所へは、「文芸広場」の取材で訪ねたことがある。光電子増倍管も、見学することができた。ニュートリノの研究は、宇宙形成にせまる壮大な可能性を秘めている。地理学も、いっそのこと宇宙の地理に飛躍する必要があるのではないだろうか。近い将来、そのようなことを考える時が来ると思われる。(多田統一)
お知らせ
通信14号で、再来年の大会の会場を筑波大附属駒場高校と書きましたが、会場は別のところになるそうです。いずれにしても東京開催です。
第7号 2013年9月3日発行 発行責任者春名政弘 wdstwyun@tcat.ne.jp
越谷の竜巻被害に関する緊急報告
春名
皆様、暑い夏を終えられ、学校が始まり、暑さに耐えつつ働かれておられると思います。昨日、越谷市から松伏町、野田市に至る竜巻がおきました。本日、現地を少し見てきましたので、報告します。今日は尊敬する先輩の葬儀で春日部まで行きました。草加在住の私は帰りに大袋で途中下車し駅周辺を歩いてきました。朝の新聞に掲載された地図で大袋駅の少し南側が竜巻の通過経路となっていたためです。したがって、大きな被害が報じられている北陽中学校のあたりに行っておりません。
竜巻の起きた当日ですが、私は家におりました。大きな雷鳴が聞こえてきたので、急いで洗濯物を取り込み、北の方を見たところものごく黒い雲がありました。雨は全く降りませんでしたし、風も感じませんでした。その日も夕方からお通夜に春日部まで行きましたが、5時過ぎに東武鉄道は平常運行しておりました。私は竜巻があったことなどつゆ知らず地教研の原稿書きに没頭していました。通夜の席で仲間から聞いて初めて知りました。竜巻通過地から10キロ南の草加市北部はそんな状況でした。下の図は、私が歩いた範囲で見かけた屋根に被害があった家屋の分布です。見やすくするために赤のシールを貼っていますが、家屋の大きさはシールの半分程度です。この分布図を見るときわめて狭い幅で大きな被害が起きていること、南南西から東北東方向に被害域が伸びていることがわかります。詳しい解析図が出てこないと何ともいえませんが、竜巻は発達しながら進んだと考えられますから、このあたりでは規模が小さかったのかもしれません。
以下何枚か写真を紹介します。
この写真は地図中バイパスの西側に二軒並んでいる被害家屋の北側のものです。右の家屋は壁が相当破壊されています。

右の家屋の壁面の写真です。

下の写真は吹き飛ばされた納屋と思われる家屋のあった場所です。柱が一本残っています。写真奥に小さくがれきのたまり場らしきものが見えますが、ここに納屋の残骸があります。地図ではパイパスをまたいで反対側に薄くAの数字が見える箇所です。

納屋の残骸をとったものです。最初はこの残骸が何かわかりませんでした。

折れ曲がって立っている庭木、最初の写真の場所に入る表通りで撮りました。

どうしたものかと思いつつ、現場を見て、伝えなければならないと思いました。新聞の写真や映像では出てこない資料かと思いまして、通信を私物化したように感じ、後ろめたさもありますが、速報性を大切にしたいと思い作りました。会員の皆様の地域で、さまざまな地域の問題や事件があり、取材されましたら、データを送ってください。速報性を大切にして、速やかに通信を出したいと思います。ご意見などありましたら、お寄せください。FAXは冒頭の電話番号で受信できます
東京地教研10月例会に参加しましょう。
今回の例会は、埼玉の鳥羽先生が退職後、お住まいの三芳町の地域を歩かれ調べられた成果を元に企画されたものです。「東京地教研」を冠していますが、誰でも参加できます。埼玉ですし、鳥羽先生企画ですので、是非ご参加ください。時間に遅れないようにご注意ください。