第46回(9.30配信)433
7月28日(土)・・入国15日目(交換義務金150ドル。所持金1580米ドル)・・時間を見計らって、もう1度ヤミドル交換オフィスに行ったのに、締まっている。土曜日で運が悪かったのか、それとも手入れがあって場所を変わったのか、本来ならもうとっくにバルパライソに帰っているころなのに、ピンチだ。ホテルのフロントに頼めば銀行よりも、よいレートで両替ができるだろうか。
もうすぐサンチャゴに住みついているオサムと会う。昨晩やっと遊びまわっているオサムと連絡が取れた。奴が余分なエスクードを持っていえばラッキーなのだが・・・
正午過ぎ、オサムは、中央郵便局の前で待っていた。女の子を3人も連れている。サンチャゴに着いたときに会った女の子たちより少し若い。
「彼女たちは、専門学校生。美味しいものをご馳走するよ、冗談で誘ったらついてきちゃった。食事代、半分頼むよ」
オイオイ、なんというこっちゃ。こちとらエスクード切れだい。
逃げる訳にもいかず、彼の案内で、ウェルファノス通りのレストラン・サンマルチンにはいった。
白いテーブルクロスの上にメニューが立て掛けてある。珍しく日本語が併記されている。さすが、首都サンチャゴ??
*カサ・デ・アベ(スープの一種、ニワトリのぶつ切り、ジャガイモ、玉ネギ、トウモロコシ、米が煮込んである)
*エンパナデス・デ・オウモ(ブドウ、オリーブを挽肉や玉ネギと混ぜてパイに詰めたもの)
*カルリロ・デ・ロコス(魚のシチュー)
*チョペ・デ・ロコス(カキのスープ)
*パンチョビラ(ニンニクを薬味とした肉のスープ)
いろいろなオードブル、スープ、デザートが、大きなメニューいっぱいに書きつらねてある。
値段は、物価の変動に対処するため、いつものように消してある。さて、何を食べるか?
「カサ・デ・アベ!、カサ・デ・アベ!」専門学校生たちが、言い始めた。
有名なチリ料理、メニューの中で、多分一番高いのでは・・・。
第47回(10.4配信)437
マイボ(中部で作られる最高級のワイン)も、彼女らの希望で運ばれてきた。この国は、何歳から飲酒が許されているのか(?)
彼女らは、なにしろよく笑い、よくしゃべる。可愛いゆえ、なんでも許されるような気がしてくる。
笑いの合間に急にオサムの顔が、マジになった。
「ヤミドル交換に行った奴がつかまった」
「エッ、いつ?」
「1週間ほど前」
悪いニュースだ。だから閉まっていたのか。
「バルパラの仲間に伝えておいてよ」
オサムは、新しい交換場所を教えてくれた。(モネダ通り、中華レストラン・龍)
「それと、もうそろそろこの国を出ろって」
「クーデターが起こるって」
「そう、ヤミドルが2000近くなった。危険だ」
ヤミドルの交換価格が1米ドルあたり2000エスクードを越えるとクーデターが勃発するとの噂が流れている。クーデターが起こるとすべての出国ルートが閉ざされ、外国人への安全は保障されない。いわば国全体が牢獄となってしまう。
ウワーと歓声が上がった。ボーイがカサ・デ・アベを運んできた。彼女らは、つぎつぎに湯気を上げている鳥肉の塊を皿に取り分ける。トマトやレタス、オニオンなどをドレッシングであえた野菜サラダが、色どりを加える。
昔は、この程度の料理は、誰でも食べられたときく。しかし今は・・・。彼女らが楽しく、ドンドン食べる様子をみていると、庶民の食べ物がいまや、特別な階級の人だけの物になっていく気がしてくる。
第48回(10.7配信)439
午後2時過ぎ。バルパライソ行きのバスがない。ストライキで運転手がいないのか、それともガソリンがない?
しかたがないので、汽車の駅まで歩いた。これから5時間ほどの列車の旅。オサムが40米ドル分、両替してくれたので、チリの貨幣、エスクードの心配は当分なくなった。専門校生たちへの出費もヤミドル交換が出来なかったと考えれば、ちいさいことだ。
車内は、意外とすいていた。ローカル列車のため、少し動いては、小さな駅でとまる。ときには、プラットホームがなく、線路に直接おりる場所もある。とまるたびに籠にバナナやブドウ、パンなどを詰めたセニョーラやセニョリータが窓越しに売りにくる。車内に乗り込んでくる売り子もいる。そして決まって1、2駅を過ぎると降りていく。入れ替わりに別の売り子がくる。縄張りがあるのだろうか。
列車の窓から農作業をする若者の一団が見えた。そういえば福岡さんだったか、ヒロだったかに聞いたことがある。
奉仕活動・・・アジェンデを支持する若者たちは、ここ1年ほどデモやストライキで手薄になったところに労働力の無償提供をしている。ジャガイモを植えたり、小麦や大麦、ライ麦を刈ったり、トウモロコシ、エンドウ、インゲン豆などを摘み取る。ときには、ヤギやブタの飼育を手伝ったり、ヒツジの毛の刈り込みまでする。それもすべて自分たちの築いた社会主義国家を守るために・・・
炎天下でもくもくと働く彼らが、奉仕団かどうかわからない。
車窓からの風景はとても美しいのだが、アジェンデ政権賛成派と反対派、デモをする者と奉仕活動をする者、この2つの勢力の激しいぶつかりあいは醜く、今後おおくの不幸をうむような気がしてくる。