中学の入学式を明日に控えたふたり、TとSを連れて、佐世保までドライブに行くことになった。 ふたりには、学童クラブで過ごす最後の春休みだった。 アルバイトの人手が足りなくて、TとSにバイト役を頼んだ。 Tはあたしの背をとうの昔に追い越していて、既に高1くらいに見えるので、どこからどう見てもバイト役がピッタリだ。 Sは小柄だけれど、しなやかな動きと優しさが女子に人気で、チビたちも、ちゃんと彼の言うことをきくので、これまたハマり役だ。 そんなわけで、晴れて指導員からバイト役に選ばれたふたりは、4月5日の新入生歓迎映画会で、上手にチビっ子たちの世話をしてくれた。 このバイト役を頼むときに、「バイト代替わりにどっか連れてってやってもいいよ」などとつい言ってしまい、「マジ?」と、ふたりが乗り気になったので、佐世保までドライブ、ということになったわけだ。 佐世保バーガーを食べに行くのが目的だったのだが、映画の日、「ボウリングもつけて♪」とSがかわいく言うので、そのかわいさに負けてしまった。 いささか不安はあったが、6年生を卒業旅行に連れて行ったりするクラブもあるんだし、大勢引き連れていくわけじゃないし、大丈夫だろう。 待ち合わせは団地内にある小さなスーパーで、ずいぶん早くに着いてしまったあたしは、暇つぶしに店内をのぞいていた。 立ち読みしていた本からふと顔を上げると、窓の外にSの姿が見えたので、飲み物を買って外に出る、と、その真横に、ふたり。 「おはよう」 「…」 「なんか飲み物買う?」 ドライブに飲み物は欠かせないと、あたしは常日頃から思っているので普通にきくと、ふたりとも、 「いや、よか」 という返事。 「そう?」 おごってやるつもりでいたのだが、いらんと言うならまあいいか。 あたしの車じゃ窮屈だろうと、妹に借りたLifeにふたりを乗せる(っていうか、なんでふたりとも後ろに座るわけ?どっちか1人助手席に座ってよ〜淋しいたい)と、 「なんかいつもと違うよね」 Sが言う。 「先生もいつもと違うよね」 また、S。 「そう?髪結べばいつもと一緒やろ」 なるほど、それでふたりともなんかヘンなのね? クラブでのあたしは、いつもTシャツにジーンズか短パンで、ホントに子どもと同じ格好をしてるけど、今日は仕事じゃないんだし。ブーツカットのジーンズに黒いカットソー、その上に透かし編みの白いニットセーターを着ていた。 いつもと違う雰囲気だなって思ったわけね。 それに、たぶん、クラブ以外でこうして子どもをどっかに連れて行くのは初めてだから、ヘンな緊張感が漂っているんだろう。 出発してから長いこと、ふたりは黙ってただ風に吹かれていた。 あまりにもずっと黙り続けているので、だんだん可笑しくなってきた。 「なんでなんも喋らんと、ふたりとも」 笑いながら訊くと、 「いや…なんか、ねえ…」 『なんか』ってなによ〜っ!( ̄w ̄) ぷくくっ 途中で道を確認する為にコンビニに寄る。 ついでになんか買おうよと、また提案したけど、 「え〜、よか〜」 って、また、ふたり。 「おごってやるって」 と言うと、 「え?!なら買う!」 あんたたちぃ〜…。 アイスとジュースとお菓子まで買って、車に戻るとしばし休憩。 Sはひとりでハバネロを食べ、それを見て「うわっ、辛そー」とTとあたし。 「食べる?」 「いやぁ、食べん!ふたりでじゃがりこ食べよーね、T」 って言いながらも、後で一口もらったけどね。 アイスを食べ終えると出発。 「どこのお店にしますか?」 まずは佐世保バーガーを食べるというので、じゃらんから切り抜いてきた佐世保バーガーShop mapを見せると、ふたりで覗き込んだ。 「どこにする?」 なんてふたりでしばらく言ってたけど、そのうちSが、 「あ〜、オレ具合悪くなってきた」 と、唸りだす。 昔からすぐこうだ。 腹に響く音がダメ、人が吐いてるのを見るとダメ、車の中で本を読むのがダメ…。 「Sこういうのダメやもんね〜」 クラブであった出来事をいろいろ思い出して、思わず笑ってしまった。 結局、ふたりが選んだのは「ヒカリ」という行列の出来るお店で、大通りに面していて、わかりやすい場所にあった。 なのに、道を間違えてしまったあたし…(-_-;) 「あら、間違ったね〜、ごめーん」 と、ちょっと焦り気味に言うと、 「うお〜、すでに帰れるかどうかが怪しくなってきた〜」 T…『すでに』って何よ、大丈夫って…(;´д`) 何度か同じところをぐるぐる回って、ようやくヒカリにたどり着くと、お店の前にはすでに行列。 ちょうど昼ごはん時だったので、学生さんとか、ちびっ子連れの若いカップル、果てはセカンドライフを楽しんでいるようなご夫婦とかまで並んでいる。 米軍基地の宿舎の近くに車を停め、ふたりを行列に並ばせて、どれくらい待ちか見に行くと、カウンターには『只今20分待ちです』のカードが出ていた。 「20分待ちってよ」 列に戻ってふたりに伝え、「何食べる?」と、3人でメニューボードを見上げる。 佐世保バーガーはそのサイズの大きいことで有名だ。 「どのくらいデカイとやろうね」 などと言いながら、待つことしばし。 ようやく先頭まで来て、あらかじめ決めていた内容をオーダーすると、番号札を持って列を抜けた。 そう、『20分待ち』、というのは注文してから『20分』なのだ。 あたしたち3人が列を抜けると同時に、カードが『60分待ち』に入れ替えられた。 「今から注文する人 60分待ちってよ〜、よかったね、うちら」 ヒカリの2階にはログキットという、これまた佐世保バーガーのお店があって、イートインになっていた。 階段の上り口には、『ご来店してくれた芸能人!』みたいなピンナップボードが置いてあり、 「ハリーポッターの双子だ!」 とか、言いながら眺める。 『双子』って…ちゃんとウィーズリー兄弟って言おうよ…。 何かを待っている時間って、どうしてこんなに長く感じるんだろう。 でも、その間、ふたりがじゃれるのを見ていたり、中学の話やクラブのことなど話して、のんびりと風に吹かれる。 本当に心地いい。 ヒカリの看板をカメラに収めているあたしに、 「そがんと撮ってなんすっと?」 って、聞くから、 「ホームページに載せると」 と答える。 「ホームページ作っとっと?」 「うん。あんたたちネットとかせんと?」 「する」 「なら、チョコタビで検索して、出てくるけん」 くだらない話をしながら待つこと20分少々、ようやく持っていた札の番号が呼ばれて、バーガーとジュースを3つずつとポテトを受け取ると車へ戻った。 開け放した窓から風が入り込んでくる。 マックとかロッテリアなんかとはまったく違う、いかにも手作りです!っていうハンバーガーは、シンプルで本当においしかった。 やはりボリュームはけっこうあったので、バーガー一個で十分おなかいっぱいになった。 アームレストを倒してポテトを載せ、3人でつまんでいたら、あたしが肘をぶつけてしまって、ポテトは見事、下においていたゴミ箱にダイブ…。 「あっ!」 とT。 「ごめーん、いや、大丈夫やろ、ゴミ箱何も入ってなかったろ?食べれる食べれる」 とあたし。 「えー、俺の鼻水入っとるとぞ」 とS・・・。 もー、いつの間に鼻なんかかんでたの…( ̄Д ̄;) 結局拾って食べたけどね≧(´▽`)≦ のんびりと佐世保バーガーを堪能すると、次はボウリング。 ヒカリからわりと近い場所にあるボウリング場へ。 佐世保まで来たなら他に行くとこあるんじゃないのかと思ったけど、まあ、ふたりのご希望なのでしかたない。 でもさぁ、春休みにクラブでボウリング大会したばっかりじゃん。 まあ、いいけど。 Tはボウリング大会では毎回優勝していたのに、この春休みは最後だというのに絶不調で、1位の座は同学年の子に奪われた。 納得いかないよねぇ。 だって後ろで散々ヤジ飛ばすんだもん、他の子たちが。 そんなこともあって、今日はボウリング。 さて、久々にあたしもやってみよう。 って、エントリー用紙に記入してるのをのぞきこむふたり。 「はい、靴何センチ?」 「27」 「25」 ときて、あたしが「23.5」と書くと、ふたり揃って、 「小っちゃ!」 …。 「しょうがないじゃん、これでも普通サイズよ」 「いや、小さすぎやろ」 え〜・・・そりゃぁ、だって、オンナですから、あんたたちみたくでかかったら気持ち悪いでしょ。 ひっさびさのボウリングはなかなか面白かった。 クラブでボウリング大会をする時は、子どもたちに「ボールは前に投げるとよ」なんて言ってるくせに、やっちゃいました。 振りかぶった拍子に指が抜けてボールは後ろに飛んでった…。 「きゃあぁ〜!」 って、もう、すっごい恥ずかしいんですけど(*///ー///*) 「ありえんやろ」 「なんしよっと」 くぅ〜っ!冷静に言うな〜(/_<。) 「だって指すべったとって!」 まったく、自分の握力の無さが本当に情けないよ(>_<。*) TとSはプロボーラーさんの投げ方をまねして遊ぶ。 「こうって」 とか、投球動作の研究してるけど、その投げ方でいくとガーターばっかり。 なのに! スコアはあたしが最下位ってどういうこと? 2ゲームしてTの圧勝で終了。 Sはふざけてたせいだろうけど、2ゲームめはあたしとそう変わらず。 これで本気出されたら困っちゃうよね…。 ボウリングの後はちょっとだけドライビングのゲームをするふたり。 あれ?全額あたしが払うのね…。 いいけど、別に。 このゲームをしたせいか、今度は「バッティングしたい!」とか言い出すし。 佐世保のバッティングセンターなんて知らないってば〜。 仕方ないからとりあえず長崎へ向かうことに。 長崎スポーツセンターにでも行くしかないでしょ。 佐世保を出る前に、「カラオケとかは?」って、シダックスが見えたから提案してみたけど、「いやだ、俺ら歌わんよ」 って、ふたりとも。 「そうよね…」 あたし一人で歌うわけ行かんしな〜と思っているところへ、 「人前で歌いたくないし」 って、T。 「え?あんたさっき歌いよったやん、SEAMOの『マタアイマショウ』」 行きの車の中で流れていたMDと一緒に歌っていたのを思い出して言うと、 「なに?聞こえていたとは〜!」 頭を抱える T。 「いや、めっちゃ聞こえとったよ。ねえ」 「うん。普通に歌いよった」 そういえば、彼女とは別の中学になるって言ってたっけ、T。 “ 笑顔で別れたいから言う マタアイマショウ マタアイマショウ ” な気分だったわけね…(= ̄∇ ̄=) かわいいなぁもうっ(・ε・*)♪ スポーツセンターに着いた頃にはもう4時半。 まずはストラックアウト。 フツーにこなしますねSくん。 Tくんちょいと力みすぎ? とどいてないよ〜。 ふだん手にしてるバスケのボールとはサイズが大違いだもんね。 さて目的のバッティングをすると言って自販機で買うために財布を出すT。 それを見て、Sが 「あ、俺サイフ車に置いてきた」 え…(=_=;) さっきのストラックアウトは100円くらいだったけど、バッティングって安くないでしょ。 でも、ふたり平等じゃないとやっぱダメよね…なんて考えちゃう、こういうとこが学童の指導員よね、あたし。 「じゃぁ5回分ば買ってやるけん、ふたりで2回ずつせんね」 と、財布を開くと「ありがとうございま〜す」って、ご丁寧なふたり…。 バッティングなんて、間近で見るの、実は初めて。 これまでの人生の中ではまったく興味なかったし、野球にはいや〜なトラウマがあるし…(´へ`;) でも意外と面白かった〜。 って、あたしが打ったわけじゃないんだけどさ。 時速100キロにいきなり挑戦したのはS。 もちろん、最初の2球はまったく打てず。 3球目でバットに当てて、次はしっかり打っていた。 あたしにはゼッタイ無理だなぁ・・・。ボールが見えないもん。 Tは70キロくらいにチャレンジしたけど、なんとか当ててる感じ。 Tくん…構え方がSと違うよ。あんた棒立ちだよ…。 そんなふたりの横では、たぶん野球少年であろう中学生が、130キロを打っていい音を響かせていた。 バッティングの後は卓球までしたいと言い出したふたり。 「え〜、遅くなるってば」 って言ってるのに、結局2時間1000円で借りました。ラケットとボールと台。 もう5時だよ?2時間もしてたら7時じゃん。 「よかって、大丈夫って」 何が?! 結局1時間くらいふたりでやってましたけどね。 あたしはすっかり体が冷えて寒かった〜(>_<。) なんでって、多分、スケート場と隣接してたからでしょうね、卓球場が。 寒くて寒くて…。 なのに、きなこもちアイスなんか食べたりするからよけいに冷えた。(;´д`) おまけに自販機で買ったお茶まで冷たいし。 しっかり1時間体を動かして適度に汗をかいたふたり。 Sがのど乾いた〜って、言うからさっき買ったお茶をやると、一気飲み(・□ゞグビグビ… 駐車場に戻りながら、晩ご飯食べに行こうって話になった。 すでに、時計は6時を回ってるのに、大丈夫?って思いながらも、それぞれ家に電話。 お母さん方の許可が取れたので、食べに行くことは決定したけど、お店が決まらない。 ふたりが知ってる食事処といえば、ファミレスだもんな〜…。 さんざん悩んだ末、決まったのはお好み焼きかハワイアン料理のお店のどちらか。 で、車を駐車場に停めて、どうするどうする?ってまだ言ってる3人。 3人揃って優柔不断…。 最後にはTが 「よし、じゃぁ、セン(あたしのこと)と一緒じゃないと行けんようなとこにしよう、ってことで、そのハワイのお店」 と決定を下し、住吉商店街のHAREIWAというハワイアンカフェに行くことになった。 夜7時の商店街。商店のシャッターが下り、ゲームセンターとか、ブックオフとか、居酒屋や小料理屋が目立ってくる時間。 そんな時間に、明日中学の入学式を迎える男子生徒をふたり連れ歩いちゃったりなんかしてるわけで、いくら保護者の許可をもらっているとはいえ、さすがに早く帰さなくっちゃって、気になってしまう。 店内の角っこの席に落ち着くと、3人ともロコモコを注文した。 料理が来るまでの間、窓辺に置いてあったハワイの写真集を広げて3人で覗き込んだり、明日からの中学生活について話したりした。 料理が運ばれてくると、黙々と食べ、食後のコーヒーとジュースも堪能して(ちなみに、コーヒーを飲んだのはTで、Sとあたしがマンゴージュース)、時計を見ると8時30分。 これは本当に遅くなってしまった。帰り着くのは9時だな…。 窓の外は真っ暗で、帰りの車は静かだった。 丸1日だったし、さすがに疲れたのだろう。 明日、入学式の最中に居眠りしないでね…。 ふたりを送り届けて、あたしも家路に着く。 長い1日が終わる。 楽しかった1日が。 こんなふうにまた、卒所生を連れて、どこかへ行くことがあるだろうか? もしかすると、これが最初で最後かもしれないし、これから恒例になるのかもしれない。 それは判らないけれど、とにかく、明日からまた、いつもの日々が始まる。 |
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画面の中では芝生を激走しちゃってるふたり 100キロのボールを打つSくん。見事に振り切ってます。 |