創作術について

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推敲 

1推敲とは何か



 まずは辞書を引いてみよう。推敲って何?
【唐の詩人が「推す」を「敲く」に直したという故事から、詩文を作るのに、字句をさまざまに考え、練ること】
 ……ははは! よくわからん!
 でも、微妙なニュアンスを文章に加えるということか。
 自分一人ではよくわからないのが、ここからの作業です。正解のない、終わりのない作業がやってきたという感じです。
 
 文字をいろいろ入れ替えて、自分の胃の腑にすとんと落ちればいいわけだ。
 なんだ、簡単じゃないか。自分好みの言葉を探して入れ込もうではないか。どうせなら、教養高く美しい文字に直したりして、雰囲気のある日本語に直してみたりして、誰もがつかわないようなオリジナルの言葉に直してみたりして。
 それでいい場合もあるし、悪い場合もあると思います。
 そもそも、その語句が「いい」のか「悪い」のかを、決める基準は何か。その基準もなく、言葉を入れたり抜いたりしても、時間ばかりがかかって意味のない作業だと思う。
 なぜ、推敲をするのかを考えてみたい。

 それは、その文字列が構想通りの効果を生み出すかどうかを、確認するための作業なのではないか。だから、事前に構想が必要で、書き終わってからもう一度構想を確認するのである。完成品を作り上げるのに、利用している言葉や文字列で過不足がないかどうかを、構想と実物を読み比べて推測する。目的に沿ったものができたかどうかを。
 ただ、文字を入れ替えるだけではなく、完成形に近づけるためにニュアンスを変えて考察を深めるのだ。また、構想通りの効果が出ていない場合、どこを手直ししたらいいのかを考える。大幅な加筆や修正が入る場合も出てくるわけです。

 これが、私の考える「推敲」です。
 ただ、なんとなくカッコイイ、何となく自分らしい創作を作るためのものではなく、結論を結論として際立たせるために、必要な技術を再度考察するために必要な作業だ。
 だから、私はこの作業をするために、作品の雰囲気と文体の特徴を構想に加えて書き残しておくのです。悲劇を書くつもりだったのに、書いている間に軽くなってしまうこともよくあるし、話の雰囲気が変わることもあるからです。私は最初の計画書通りに作れない人なので。
 計画書よりも、出来上がったものの方が目的に沿っていて、ふさわしい場合はそれでもいい。でも、冒頭とラストの風合いがかなり変わっているはずだから、そこを直すために推敲作業が必要になる。

 それから、校正ではもう完成に向けた細かい作業が始まってしまうので、その前にやれることを全部やっておく。執筆後に加筆・修正しただけでは見えなかった不備を、今度はプロットを横に並べて、考察する。物語に必要な設定を全て説明できているかどうか、必要な描写が全て入っているかどうか、すべての動きを読者が想像できるように描けたかどうか、特殊な知識の必要な語句を使っていないかどうか、物語に出てくる人物の説明は最初の方できちんとできているかどうか、伏線はきちんと消化できたかどうか。
 何度も読んで、作者以外が理解できない箇所がないかを確認する。
 この時期はとても苦しいです。客観視がなかなかできないというのもあるけれども、つじつまの合わない話を無理やり書いていたり、ありえない展開を書いていたり、都合の良い設定を使っていたり、嘘っぽい流れになっていたり、自分の作品の粗が見えてくるからです。それらは訂正できる範囲ならば、加筆修正を繰り返して、何とかものにできますが、ひどい場合は全部やり直し、または、使えずにお蔵入り、いや削除されます。

 そんな嫌な作業をこれから説明するわけです。
 何だか気分が暗くなってきますが、私はこの作業を近頃は見直しつつあります。小説作りにおいて、この作業は絶対に重要だ。楽しんでやれるようになったら、作品の質が格段に上がります。
 真面目に推敲すると、まるで違った印象の話を作り直すことも可能になるのです。もう少し華美にしたいなー、と思ったら、そういう語句を散りばめて印象がガラッと変わります。和風で始めてみたけれど、やっぱり中華風の話にしたいなー、と思ったら、キャラクターの名前やオブジェクトを書き直し、使用する言葉を工夫したら、ガラッと印象が変わります。←でも、これは禁じ手だ
 ゴシック風味の古い言葉使い、耽美小説風の華麗な言葉使い、怪奇風のどんよりした空気の言葉使い、現代風のかっちりした言葉使い、ファンタジックな言葉使い、落語のようなリズムの良い言葉使い……構想で最初に文体を考察したはずですが、その色をさらに強めてみたり、別の色合いを混ぜて雰囲気を変えてみたり、そういうことが自在にできるようになる。
 推敲で、小説の空気は作られる。執筆時は、ただあらすじを形にしただけの味わいのない話を作るだけです。推敲を経てようやくそれは作品になるのではないか、と思います。
 だから、これから、推敲について考えてみようと思う。
推敲