クルド人の定義 侵略と支配の歴史 イラク戦争とクルド人問題

 イラク戦争の開戦直前、米国の同盟国であるはずのトルコは、米国からの巨額の経済援助提案を蹴ってまで、イラク北部に展開しようとした米軍部隊の駐留と基地使用を拒否、米・英軍とは別にイラク北部に進軍する意思を明らかにした。トルコがそこまで強固な姿勢を貫いたのは一体なぜか? フセイン政権の崩壊によって、これまで弾圧されてきたイラク北部のクルド人の勢いが付けば、トルコ国内のクルド人勢力の分離・独立に向けた機運が高まることを強く懸念したからにほかならない。日本人にはあまりピンと来ない問題だが、中東情勢に少なからず影響を与えてきた「クルド人問題」を軸に、戦後のイラクが抱える問題を考察してみたい。

 

クルド人の定義

  クルド人とは、トルコ南東部からシリア北東部、イラク北東部、イラン北西部にまたがる山岳地帯を中心に分布する少数民族である。総人口は推定2,000万人。その半数以上がトルコとイラク領内に居住している。

  人種的にはイラン人に近く、もともとは遊牧民族だが、現在では必ずしもそうではなく1カ所に定着する傾向が強い。クルド人は単一民族で単一の言語を話すと主張するが、言語学的にまた社会的にそうではないとする説もある。クルド語の中には「ザラ」「キルマンチ」「ゴラニ」といった方言があるが、言語学者はそれらの間に英語とドイツ語ほどの違いがあるというのだ。例えば、トルコ南東部ではクルド人の方言の違いがありすぎて、1つの村に住む人が隣の村に住む人と会話で意思疎通ができない、といった具合である。

  クルド人の多くはイスラム教スンニ派に属していていて、その中にも数多くの宗派や派閥があるが、宗教がクルド人のアイデンティティーを強く決定付けているわけではない。クルド人の居住地域はしばしばクルディスタン(クルド人の国)と呼ばれるが、彼らがこれまでに祖国を建設したことはないし、新国家創設のために政治的な統一が実現したこともない。

ブックメーカー | ネッテラー | ピナクルスポーツ | ウィリアムヒル | bet365