ホワイト・デイ
卒業式以来、彼とは連絡をとっていない。
貰った第2ボタンを所在なしに見つめる。
いったいどういうつもりで俺にくれたんだろう。
彼は約束だからと言った。
約束だけで男にくれてやるものでもないだろうに。
否、彼だったらわからないかな。
あー…
俺って女々しい野郎だぜ。
携帯のぼたんをプッシュすりゃあ彼に繋がるのに。
それができないでいる。
思いでの品を眺めながら彼を想ふ。
恋する乙女かよ俺は。
ちくしょー!昼食のパスタに感動してやるっ。(ネタ古っ!)
感動するにはまず茹でないとな、と思って立ち上がりかけたとき、インターホンが鳴った。
「ほいほい誰でんがな」
「ぼくです」
どんがらかっしゃん。
うっわ、思いきりつまづいちまった!
いーたん!?
「どうしたの、何かあった?」
ドア越しに聞こえるのはやはり彼の声。
「なんでもねえ!いま開ける!」
俺はぶつけた弁慶の痛みを無視して鍵を開けた。
「零崎久しぶり、と言っても約二週間ぶりだけどね」
軽口を叩くいーたん。
俺にはその二週間が何百年にも思えたぜ。
「ほんと久しいよな。入れよ、なんか飲むか?」
「ううん。今日は渡しに来ただけだから」
「渡しに?」俺は首を傾げる。
渡すって何をだ?
まさか果たし状とか!?
お・俺に愛しのいーたんは倒せないぞ!
一人慌てているといーたんは自分の鞄から可愛いらしい包みを取り出した。
「はい」
いーたんに俺が乙女ちっくになってることを気付かれたのだろうか?
「なにこれ」
「なにってお返しだよ」
お返し?
「乙女返し?」
「は?零崎、今日何日か覚えてないの?ホワイトデーだよ」
白い日?
「バレンタインにチョコくれたでしょ。三倍返しとはいかないささやかなものだけど、よかったらもらって」
いーたんにこう言われて断れる奴がいるだろうか。
否、いるわけがない。
「あ・ありがとさん」
「それじゃあ僕これからバイトだから、またね」
いーたんは渡すものだけ渡すと爽やかに去っていった。
素っ気ねえ…。
たった五分足らずの再会。
それでも俺は幸せでたまらなかった。
やはり俺は乙女なのかもしれない。
いーたんに貰った包みを開くと可愛らしいくまのぬいぐるみが出てきた。
「お前の名前はいーたんだな」
俺はくまに話しかけにやりと笑った。
「まったく誰が白い日なんてつくったんだか」
彼は一人ごちて自分のあげたものを思いだし、一人顔を赤くした。
「絶対あのくまの意味わかってないよな…。零崎のばかやろうっ。慣れないことするんじゃなかった」
溜め息をつく彼の指には絆創膏。
「まあ、いいか」
結局乙女だったのは果たしてどちらだったのか。
それは神のみ知るというやつである。
さとりさんの「ゼロボクホワイトデーに甘々」というリクで書きました。
パラレル可だったのでパラレルで!お題の「春の雪」の続編みたくなっています。
気に入っていただけたら幸いです。
このくまのぬいぐるみの元ネタは「CCさくら」
参考にしたのがこれなので乙女ちっくになっていまいました。偽者万歳!