Column

●技術1つで吹っ飛ぶ職人芸(2001.4.26)

 ふと、思ったことがある。技術の進歩って、ホンマにいいんだろうか、と。

 世の中、どんどん流動的になってきている。例えば、ポケベルが携帯に取って代わり、銀塩カメラはデジタルカメラに、駄菓子屋はコンビニに、レコードはCDに取って代わられてきている。旧産業に従事していた人たちは職を失い、どこか別の職種に転身を図らなくてはならない。技術革新は、同時に既存産業に従事する人々の雇用を、体内に侵入して体内の肉をむさぼり食うエイリアンのごとく奪い取っていく。便利になるからといって喜んでばかりもいられない。

 前に、TVで両手で器用にタマゴを素早く割ることのできる達人が紹介されていた。どこかの食品工場で働いてる人だったと思うが、もう神業的職人芸だ。1分間で100個以上も割ることができるのである。
 こりゃすげーっ、と思っていたら、最近卵自動割り機が他のTVで紹介されていた。これはもっと早い。もう何倍ものペースで、達人が100回死んでも追いつかないくらいの量をこなすのである。しかも疲れたなどとは何も言わない。休みなく卵を割りつづけられるのである。この機械の登場で、もう達人はいらなくなってしまうのではないかと思った。

 したがって、どんどんいらない人間が増えていく。ネットの登場で新たな雇用も生まれているが、それ以上のペースで技術革新により雇用が失われていっている。機械やロボットがあれば、仮に人間を時給100円で雇っても割に合わない。また新たなネットワークの登場により生活環境まで一変し、企業は人件費削減に精を出すようになった。おそらく、これから正社員の定員はどんどん減りつづけるだろう。経営をするもの、創造力や技術力を持つもの、まだ技術革新の手が及んでいない職種にいるもの、それ以外はほとんど正社員でなくなっていくだろう。

 あなたのいる業界は、安泰だろうか。今は、平穏でいることが限りなく難しい時代に入ろうとしていると思う。伝統工芸がどんどん消えていっているように、1つの技術は、仕事で鍛えぬかれた人たちの経験と職人芸を一瞬にして奪い取っていくのだ。