Column

●私鉄の特急(2002.2.7)

 俺は小さいころから私鉄の電車が好きで、よくいろんな電車に一人で乗っていた。俺が一番よく乗っていたのは阪急電車で、当時住んでた家が阪急沿線だったので、非常になじみがあった。あの小豆色の独特の車体色に木目調の壁、鉄の窓サッシなどが、いかにも阪急らしい落ち着いた感じを漂わせる。

 よく聞く話だが、首都圏の私鉄よりも、関西の私鉄のほうがサービスでは優れているのだそうだ。確かにそうかもしれない。例えば、自動改札機も首都圏より10年以上早く普及していたし(俺が上京したとき、まだ自動改札機が多くのところでなかった)、「スルッとKANSAI」という改札機に直接通せるプリベイドカードを使うと、それ1枚でほぼ全ての関西の私鉄で乗り降りが可能になっているのだ。車両のデザインや内装もなかなか凝ったものが多い。

 だが、なんと言ってもすごいのは特急だ。首都圏では、特急と言えば特急料金を取るところが多いが(取らないとこもあるけど)、関西では「これは特急料金とってもいいんとちゃう?」と思うようなものが特急料金不要で走っている。その極めつけが京阪電車の特急だ。
 京阪の特急は、全車両が転換式クロスシートになっていて、それだけでも特急という感じがするのだが(同じようなものが阪急の京都線を走る特急にもある)、8両編成のうち1両がテレビカーになっていて、連結のトビラ入り口の上にテレビを設置していて座席から音声が流れるようになっている。また別の1両は2階建てになっていて、他の車両とは座席のつくりが少し豪華になっている。これだけの設備を誇りながら、なんと特急料金は不要なのだ。おそらく特急料金不要の特急では、日本一の豪華さだろう。友達と京阪のこの2階建ての車両に乗ったとき、普段京阪に乗らない友達が「この車両、料金払わなくて大丈夫?」と、やたら気にしていた。
 また、阪急電車は停車駅の異なる3種類の特急を走らせて利便性を図っているし、阪神電車の特急に至っては停車駅が多いにも関わらず、扉が閉まって出発する初速度が異様に速い。減速もあっと言う間だ。スタートダッシュが早いので、早く次の駅に着かないかな〜とお客をいらいらさせることが少ないのだ(各駅停車の電車はもっと高加減速が早くて、「ジェットカー」というあだ名がついているほどだが(^_^;)。

 特急料金を取る私鉄でも、サービスが結構いい。南海電車では特急の車掌は女性だし、関西空港行きのラピートなんかは車体のデザインが斬新な上、車掌は英語が話せたりする。日本最大の私鉄である近鉄はJR並に特急網が発達していて、駅弁を売りに来たりするところはほとんどJRかもしれない。 名古屋と大阪を結ぶアーバンライナーにはアーバンレディが乗っていておしぼりを配ったりなど車内サービスをしてくれるし、近鉄・南海ともJRよりもはるかに安い料金で、グリーン車に相当する豪華なシートでゆったり音楽を聞いたりできる。 

 これだけ特急の性能や設備がいいのは、JRや他社の私鉄との競合が激しいからである。例えば、阪急は大阪から京都、神戸に路線網を持っているので、京都線ではJRと京阪、神戸線ではJRと阪神と競合している。京阪は、阪急やJRと異なり京都と大阪の間の路線が大きく迂回するように伸びているため、先のような特急の設備でお客を引きとめようとしているわけである。南海もJRと競合してるし、近鉄は大胆にも新幹線と張り合っている。
 だが、今のところどの私鉄もスピードに勝るJRには勝てない。大阪〜京都間でみると、JRの新快速は29分で駆け抜けるのに対し、阪急は特急で42分、京阪も特急が50分もかかるので初めから勝負にならない。ならばサービスで、というわけだ。

 もっとも、首都圏の特急だって最近サービスがよくなったと言うし(東武のスペーシアとか)、京王線などは料金を値下げして新たに準特急を走らせ、JRの中央線からお客を奪っているほどだ。どのような業界でも、競合によって顧客サービスが向上するのは、利用側である一般客には喜ばしいことに違いない。