Column

●スパイダー(2002.2.28)

 小学校の頃、学校の校舎と校舎の間の壁を両手でつける程度の隙間があった。校舎は3階建てなんだけど、その隙間を両手両足を壁に張りつけ、左右交互に這わせながら1階から3階までよじ登るヤツがいた。その隙間には各階に校舎と校舎を結ぶ、両外側に手すり付きの壁のある屋根なしの短い廊下があって、そいつは3階までよじ登ると、その廊下の手すりにつかまってヒョイッ!と廊下まで到達していた。
 でもある時、そいつは同じように隙間をよじ登っていたら、3階にもう少しで到達というところで足を滑らせてドスン!と落っこちてしまい、全治何ヶ月かの大怪我を負ってしまった。確か両足とも骨折してしまったと思うんだが、とんでもないヤツである。
 階段使えばいいじゃん!とか思ってはいけない。そいつの考えでは、階段上るよりも両手両足で外側からよじ登ったほうがいいのだ!という固定観念があったのだ。もっとも、先生が見てる前では決してよじ登らんかったけど。(^_^;)

 こういうスパイダーみたいなヤツは、数は少ないけど身近によく存在するものだ。例えば、高層ビルの窓拭きマン。最近はゴンドラに乗っていることも珍しくないけど、昔ながらにロープを垂らしてワイパーで窓をフキフキしている様子は、今でもたまに見かける。
 窓拭きの仕事で、一番怖いのは「風」だそうである。高くなればなるほど風が強くなり、ロープで体を固定させるのが難しいらしい。以前、バイトでそういう仕事をしていた人がいて、ある時、10階くらいのところで作業をしていたら突風が吹いて、誤って清掃用のバケツをひっくり返してしまい、真下をたまたま通りかかったやーさん風のヤツにバケツに入ってた汚水がモロ直撃し、キケンを察知して慌てて15階の屋上まで登って逃げたんだそうだ。突風というより、人的ミスなような気もするけど…。

 俺自身は、ビルや建物をよじ登ってやろうとか、そういうスパイダーみたいな発想はない。なんてったって高所恐怖症だから。(-_-)でも、よじ登りたくなるという気持ちはよくわかるのだ。昔、「クレイジー・クライマー」というゲームがあって、左右2本のスティックをガチャッ、ガチャッと動かして高層ビルの屋上目指してプレイヤーがよじ登っていくというものだった。これはめちゃ面白かった!窓ガラスが開いているところしかよじ登れないし、窓ガラスが開いたり閉じたりしてすばやく上にいったりしないといけなかった。植木ばちが落っこちてきたり、キングコングが邪魔をしたり、途中で風船につかまってある程度の階まで上に上がれたりして、なかなかよくできたゲームだった。

 このプレイヤーそのものを地でいくおっちゃんも、そういえばいたなぁ。フランス人のクライマーなのだが、何を思ったのか「高層ビルの世界征服」をたくらみ、世界中の高層ビルを素手でよじ登っているのだ。シカゴにあるシアーズタワーという東京タワーより100m以上も高いビルを制覇したこともある、その「悪名高い」人が以前日本にやってきたことがある。やっぱし、高層ビルを見ると虫唾が走るのか、新宿の高層ビルに登りたいと交渉してきた。当然周囲は、「アンタのためにビルが立ってんじゃないんだ!」と猛反対。そのフランス人は悲しい顔をして断念し、周囲もやれやれという感じで引き上げようとした。すると、フランス人は「やっぱしヤダ!」と思ったのか、スキをついてビルの壁にしがみつくと、スルスルスルッと登り始め、とうとうそのビルの屋上まで到達してしまった。もちろん屋上に着いた時点で「御用」になったのだが…うーむ、タダ者ではないな。(-_-;)
 最近でも映画化されてる不朽の名作『スパイダーマン』の主人公は、ビルの壁や天井とかに張り付いてクモのように動き回れる能力があるのだが、その能力はなんと、放射能を浴びたクモにかまれたことがきっかけで授かったものなのだ。きっとそのフランス人も、放射能を浴びたクモにかまれていたに違いない。