●自由な不自由(2003.3.16)
最近、TVで流れているauのCMを知っているだろうか?売り出し中の俳優の大森南朋と、女優の忍足亜希子の「最後のメール」というCMである。大森南朋演じる男性が、その女性に恋してしまったのか、忍足亜希子演じる相手の女性へ、手話も交えて思い思いの言葉を伝えようとする。しかし、女性は耳が聞こえないせいもあるのか、たったひとつの「思い」がなかなか伝わらない。そのためにやがて2人の関係はこじれ、男性は最後のメールを打つことになる。最後のメールを送信した後、公開していたこともあったのか、男性は彼女を追いかけ、そして雨の中待ち受けていた彼女の携帯に「君ノ、トナリイイデスカ?」と、思いをつめた最後のメールを見る。彼女はじっと立ち尽くす…非常に感動的なシーンのあるCMだ。あまりに感動的なので、このCMをドラマ化してもいいのでは?と思う人がいるくらいだ。
ちなみに、このCMのナレーターは中島朋子で、チョイ役で真木蔵人も出ている。またCMで使われている音楽は、松田聖子のバラード「薔薇色の地球」であり、この曲をなんと中森明菜がカバーしてCMの中で歌っているのだ。
忍足亜希子が聴覚障害のある方であるということは、本屋で彼女のエッセイを読んだときから知っていたが、CMにまで取り上げられ話題になっている女優さんだとは、恥ずかしながら知らなかった。しかし、彼女の存在は、無論他の聴覚障害者の励みになるのは確かだろうが、同時に「ここまで感動させられるのか?」という驚きの念を禁じえない。
彼女はかつて、スチュワーデスになりたい夢があったそうだが、「耳が聞こえないのでは無理ですね」で一蹴されてしまったという。耳が聞こえないというハンデだけで、簡単に夢を断ち切らされていいものか? 彼女は今度は女優を目指し、そして今度はその夢をかなえた。昔であれば、彼女のような存在は特異なものだったかもしれないが、CMを見ていても、彼女が障害があるということをまったく感じさせない。逆に、あの人はトレンディ俳優なの?と感じさせてしまった。障害は、壁があるという想像を超えて乗り越えることができるものなのだ、と思った。
「五体不満足」の著者でも知られる乙武洋匡氏もそうだが、ハンデがあるのは明らかなのに、生き生きとしていて、ハンデを感じさせない。不自由さが、かえって本人を生き生きさせるきっかけになっているのかもしれない。いわば、「自由な不自由」という境地だ。この境地の前には、ひょっとして、彼らをかわいそうだと思っている俺のような健常者のほうが、あまり生き生きしている人がいなくて「かわいそうな」存在なのかもしれない。ひょっとして、ハンデがあることを意識したり、彼らを特別視しようとするほうが不自然ではないのか、そう思うようになった。
忍足亜希子は、どこまで活躍していくのだろう。同い年の女優さんでもあるのでこれから気になるし、楽しみな存在だ。