●座頭市(2003.10.4)
少し遅れたが、先日、北野監督作品で話題の邦画「座頭市」を見てきた。俺自身、映画館で邦画を見るのは久しぶりだ。たしか、「不夜城」以来だったんじゃないかと思うからかなり久しぶりだ(「不夜城」も、香港との合作だから厳密な邦画ではないんだけど…)。邦画をほとんど見ていないのは、邦画自体に、どこか暗い、つまらない印象を抱いていたから。
ではなぜ邦画、しかも「座頭市」を選んだのは、海外で賞を取るほど話題性があったというのもあるが、ビートたけしこと北野武が描く時代劇というのは一体どんな感じか、北野作品を見たことがなかったせいもあり、この機会に見てみたいと思ったのだ。
見た感想としては、単純にエンターテイメントとしてならば、この作品は絶賛してもいいのではないかと思う。本作の話の流れは比較的単純で、普通に見ていれば話の展開はある程度読めてくるので、そういった意味では安心して見ていられる映画だ。ただ、逆に「こういう1シーンになるのでは」「こういう事実なのでは」という風に思ったカットや背景、ラストまでがことごとく裏切られたりする。観客は中高年の人が多く、ほぼ満員だったんだが、映画を見終わったとき、後ろの席のオバちゃんが
「たけし、ステキ!!」
と声出して感嘆していた(笑)。ただ、時代劇好きのおっちゃんとかは、眉をひそめていたような気も…(-_-;)
たけしの演じる座頭市だが、このキャラクター、過去も未来もない、ナゾの人物とも言える。一応勝新太郎の十八番「座頭市」のリメイクということになっているが、勝新の本家「座頭市」とは、盲目の居合い斬りという設定以外は全く別物の映画と考えていいだろう。北野監督自身も、あえて勝新の従来作品と似せず、あえて冒険をしようと話を大幅に変えたんだとか。
今回の座頭市の場合は、とにかく「斬る」。相手が悪者とわかれば、仕込み杖を片手に片っ端から次々に切り殺してしまうのである。まさに殺人マシーンである。まぁ、この映画全体でも、やたらと人が殺されるシーンが出てるのだが、座頭市の抜き身は恐ろしく素早く、向かうところ敵なしと言ってもよい。こんなに強すぎるヒーローを見たのは、ジャンルがちと違うがダーティハリー以来かも知れない。ダーティハリー、車の下の爆弾が爆発して同乗者が重症負ってるのに、隣の本人無傷だったりするからね。(^_^;)
その座頭市と相対するのが、素浪人の服部源之助役の浅野忠信。彼がいずれ座頭市と相対するんだなというのは、予告編を見ていなくても前半の導入部ですぐにわかるのだが、2人の決着は、他の殺陣のシーンと同様、あっという間についてしまう。これも、ある意味裏切られたところだ。意外にも、浅野忠信の演技で感心したのは、源之助の強さを感じる殺陣のシーンではなく、剣術師範代時代の御前試合でのたすきがけ。スルスルスルッとくくってしまったのだから驚きだ。あの作法だけで強い剣士のイメージが伝わってくる。
ストーリー自体は、過去の時代劇でよくある話を流用している点が多々ある。剣の凄腕の浪人がライバルを求め旅をする、衆人を苦しめ裏で悪さをするヤクザ、親を殺された子供たちが、仇を討つために長い年月をかけ敵を探す、「座頭市」の中で出てくるこれらの話はいずれも、時代劇では典型的なプロットだ。なので、この作品にストーリー的な斬新さを求めるのは難しい。
注目するならば、ストーリーではなく、やはりスピード感あふれる殺陣だろう。正直こんなんで殺されてもええんかいなと思うときもあるくらい、簡単に相手は切られてしまうのだが、これらの殺陣のスピードは、恐ろしく気持ちのいいくらい素早い。
「座頭市」の映像自体は、決して美しいものではなく、目を見張るような光景が期待できるものではない。その代わり、大勢人が切り殺されていくという残忍さの中に、音と画像を効果的に踏まえたパーカッション、さらにはギャグを織り交ぜたりなど(ちょっとギャグ寒いかも…)、少しほっと一息つけさせる場面・光景が随所に出てくる。
たけしが金髪なのも、タップダンスを取り入れているのも、劇中ではそれほど違和感を感じなかった。金髪がむしろ白髪に見えて初老のあんまという感じが出てたし、タップダンスも話の流れを損なわないように、殺陣のシーンと相対してうまく導入されている。太鼓のリズムと合わせ、和風タップダンスといった様相で見ごたえもある。
ただ、そうは言っても細部を見ていくと、どうしても「ん?」といわざるを得ないシーンも多々あった。座頭市の仕込み杖の刀の切れ味は、どう考えても凄過ぎなんである。普通であれば、石灯籠などがあんなにスパスパ切れるものなんだろうか。まるでルパン三世に出てくる五ェ門の斬鉄剣のようである。(-_-;) それに、あれだけ切り殺して返り血を全く浴びてないのも変だし。
しかし、考えてみると、時代劇も役者はかつらをつけ頭でっかちだし、座頭市自体盲目なわけで、常識から言えばそれで居合い斬りの達人が勤まるわけがないのだ。どうせ観客にウソを見せるなら常識破りの冒険をしようと、従来の時代劇に加え、エンターテイメントの要素を徹底的に取り入れているのはさすがだ。時代劇はこうでなくては!といった先入観とか、ストーリーへのこだわりとかを持たなければ、十分楽しめる作品だと思う。音がなかなか凝っているので、殺陣や音楽など迫力を体感したいのであれば、将来出るDVDやビデオで見るより、ぜひ映画館で見ることをおすすめしたい。
でも、続編が出来るとしたら、ホンマに座頭市はターミネーターや赤影とかと対決するんだろうか? そうでなくても、仮面ライダーやショッカーあたりと座頭市が対決でもしたら、時代劇ファンの誰かはショック死するに違いない。(^_^;)