Column

●Qちゃんはアテネに行けるか?(2003.11.18)

 俺はスポーツ観戦が好きなので、野球やサッカーとかに限らず、陸上競技もよく見る。陸上競技の中では、とりわけマラソンは一番見ていると思う。
 マラソンは2時間以上もずっと同じような展開を中継しているように見えるので、スポーツ競技のハラハラした展開が好きな人には、やっぱし「なんちゅう退屈な競技や。オレはマラソンなんか見ん!」という人も少なからずいたりする。その気持ちはよくわかるのだが、長いロードの中で、抜き抜かれつのデッドヒートを見かけることも多いし、周りの風景も流れていくので、俺的にはマラソンは面白いと思う。

 マラソンを初めて見たのは、ちょうど瀬古選手と中村監督の2人三脚で日本の男子マラソンが黄金時代を迎えていたときだったと思う。TVを見ると、瀬古選手のS.B≠フ入った赤いウェアを見ただけで、俺に勝ってみろと言わんばかりの貫禄のようなものを感じた。ライバルとして、旭化成の宗兄弟やダイエーの中山選手などがいて、福岡国際など大きなレースで常に激しいレースを展開していた。
 しかし、瀬古選手はオリンピックに関しては不遇で、一番絶好調のときに、モスクワ五輪の日本不参加で涙を呑んだ。ロス五輪のときも練習のし過ぎに加え、中村監督がガンと知ったショックや、レースぎりぎりに現地入りしてロスの環境に慣れなかったという思わぬ計算ミスで、本来の力を発揮できなかった。中村監督亡き後のソウルも入賞さえできなかった。無念だっただろうと思う。他の選手もいいところまではいくがメダルには届かず、日本は選手層が厚いと言われながら、なかなかオリンピックでは勝利に恵まれなかった。92年のバルセロナ五輪の森下選手の、君原選手以来の銀メダルで、一矢報いる形をとったが。

 今、黄金時代を迎えているとすれば、やはり女子マラソンということになってしまう。男子マラソンが全盛のときは、日本の女子選手は厚い世界の壁に阻まれ続けていたし、日本新を連発してエースと言われた増田明美選手も、なぜか棄権するシーンばかり見てしまい痛々しかった記憶がある。
 状況が変わったとすれば、やはり有森裕子選手が登場してからだろう。バルセロナ五輪で銀、アトランタ五輪で銅と、日本女子陸上史でただ一人2大会連続でメダルを獲得する快挙をなしとげた。ゴールしたときにもらした、「自分で自分をホメたいと思います」は、とりわけスポーツ選手で流行語になってしまったくらいだ。

 そして、Qちゃんこと高橋尚子の登場。Qちゃんが有森選手の師匠でもあった小出監督に弟子入りのような感じで指導を受け、世界レベルにのし上がったのは有名だ。しかし、彼女のすごさは、小出監督の要求する練習レベルを驚異的に消化しきってしまうところだろう。監督の言うことに素直なのだ。この素直さが、恐るべき実力を世界に見せつけることになる。シドニー五輪の金メダルは、Qちゃんの強さを決定的に印象付けることになる。

 Qちゃんが出る試合は、常に優勝だ…事実、Qちゃんは16日の東京国際女子マラソンを前に、マラソン6連勝中だった。体調もひたすら絶好調と言われていた。だから、連勝が止まるなんて、俺も含め誰も思わなかったに違いない。いつかは止まるとも思わずに。
 しかも、東京国際は途中の展開ではダントツのトップだっただけに、完全に安心しきって見てしまった。正直、はるか後方を走っていたエチオピアの選手に抜かれてしまった瞬間を見たときは、阪神が日本一を逃した瞬間を見たのと同じくらいショックだった。(T_T)

 タイム的には平凡かもしれないが、ケガから遠ざかって復帰した久々のレースだったこと、レース当日に限って異常に気温が高かったことなど、いろいろ運悪くマイナス要因が見事に結びついてしまった結果だと思う。だから、Qちゃんに力がなかったと言い切るのは酷だろう。ただ、今回の結果がアテネ行きにマイナスに働いたことは明らかだ。俺的には、Qちゃんは名古屋での追試を受けてもいいのではないかと思う。名古屋市長がテスト用紙を持って待っててくれてるし。(^_^) 
 無論、追試を受けることは、下手をすると彼女の選手生命を縮めることにもなりかねない。小出監督の判断もあるだろうが、周囲に左右されずに、Qちゃんが悔いのない判断を自分自身で決めてくれることを切に願う。