●酒乱エクスタシー(2003.11.21)
俺は付き合いでなければ酒を飲まないほうである。飲むのは決して嫌いではないが、酒というのは、どこか気分を高揚させる効果があるので、そんな効果を思いっきり発揮できる場でなければ飲まないというわけだ。そういう場は、大抵は宴会か友達といるときだが、宴会はともするとヤケ酒になりかねないので、どちらかというと、友達とチビリチビリ飲んで長時間しゃべるほうがリラックスできる。
ところが、世の中には、酒を飲んでから思わぬ行動にでたりするヤツらがいたりするんで、微笑ましい場合もあるけど、実に困ったもんだ、と思うことはしょっちゅうだ。
だいぶ前だが、地下鉄の駅で、電車が発車しそうだったので小走りに走ったことがあった。そのときは俺は電車に間に合わなかったのだが、俺のすぐ横をすり抜け、ヨッタヨッタしながら、
「待て〜〜〜っ! 俺の電車が行ってしまうぅぅぅ〜〜っ!!」
と言いながら、いかにもずれそうなズボンを引きずりながら、ホームを去っていく電車をひたすら追いかけていくおっちゃんがいた。ま、完璧に酔っ払っとったね…(+_+)
別のときは、やはり地下鉄の駅で、思いっきり白線の外側、ホームの線路側に背を向けてギリギリのところに立ち、電車が来るまで振り子時計のように体全体をゆ〜らゆ〜ら揺らしているおっちゃんもいた。足がおぼつかない様子で、本人はまともに電車を待っているつもりだったんだろうが、酔いが醒めていないというのは一目瞭然だった。
また、俺が帰宅するため道を歩いていると、前をふらふら酔っ払って歩いていたおっちゃんが、すぐ横の深さ50センチはあろうかという溝に足からはまって、ステーンッと転んでしまった。俺はすかさず近寄り、「大丈夫ですか?」と声をかけると、そのおっちゃんはなぜか、
「大丈夫でゴワす」
と答え、自分で溝から這い上ると、今度は、しゅぱぁーしゅぱぁーっと大またで飛び跳ねながら歩き出し、どこかへ消えてしまった。あのおっちゃんは一体何者やったんやろう。(-_-;)
大体、酒を飲むと人格が変わると言うが、こういった微笑ましい酔っ払いならまだ許してしまおうと思える。ところが、ゲェーゲェー道端やホームで吐きまくるヤツとか、通行人や駅員に食ってかかるヤツ、勝手に線路に入り込んで電車を止めちまうヤツ、こういったヤツらはちょっと許せない。ホント迷惑である。
今年阪神が優勝したときも、喜びというよりは酒乱で道頓堀に飛び降りたり、街頭によじ登って騒いだり、「かに道楽」のカニの目玉を引っこ抜くヤツがいたりして、結構アタマに来てたりする。
一方で、酒を飲みすぎてちょっと心配になってしまうこともある。去年東京に行ったとき、駅のトイレで倒れてドバドバ血を吐きまくっているおっちゃんを見かけた。駅員が介抱していたが、エクソシストみたいで非常に恐ろしい。
この間も、地下鉄梅田駅の階段で、酔っ払って転んで仰向けにひっくり返り、頭から血を流して顔面真っ白になったまま意識がなくなっているというおっちゃんを見かけた。これもなかなかに怖い。酒が人を魔物にしてはいけないのである。
こう書くと、おっちゃんばっかりおかしいように思うかもしれないが、女性も飲めば結構変だ。女友達で、酒を飲むとなぜか笑い上戸になってアゴが外れそうになるというヤツもいるし、前にも居酒屋の横で、地ベタに座ってうつむきながら、「ひゃへるへー」と言ってヘベレケになっているコを見かけたこともある。飲む量を守るのか、さすがに野郎ほど強烈ではないが…
酒乱になる人の多くは、自分が酒乱になることについて確信犯みたいなところがあるように思う。つまり、酒乱に対してエクスタシーを求めている気がするのだ。酒を飲むから楽しい、楽しいから自分が変わる、自分が変わるから悦楽の境地にたどり着ける…このようなエクスタシーは、ある種酒乱の人間だけが得られる世界なのかもしれない。それでも、周りに迷惑をかけるのも困るのだが。
昔働いていたところに、酒に弱いくせによく飲む社員さんがいた。ある時、終電間際まで仲間と飲んでいて、すっかりホロ酔い状態になり、千鳥足状態で帰宅の途につこうとした。他の仲間が皆朝まで飲んでいようと別の店に行くということになり、その社員さんは家に家族がいるので一人先に帰ることになった。駅まであと100メートルというところで、仲間の一人が、
「ちゃんと電車乗って帰れそうか?」と聞くと、その社員の人は、
「ああ、任せてよ、大丈夫、大丈夫…!」
そう答えて、駅と反対方向に歩いていってしまったそうだ。(-_-;) やはり、酒乱はこう微笑ましくなければいけないと思う。