●すてんしょ亭(2003.12.15)
落語は、江戸と上方を中心に、江戸時代からずっと続いている伝統芸だ。笑いをメインとするので、歌舞伎や浄瑠璃とかと比べるとどうしても下のほうに見られがちだが、代々の噺家が優れた話芸を後世に残し続けたこともあって、伝統の中にも笑いの格式のようなものが見られる。その格式は、古典落語から現代落語、はては英語落語まで、どんどん広がっているように思う。非常に奥が深いのだ。
ところが、落語というのは、どうも敷居が高いイメージがあって、俺はこれまで生で落語を見たことがなかった。聞いたとしても、話が難しすぎて、よくわからないだろうと思ったのだ。それが、JR西日本により、「すてんしょ亭」という寄席をJR大阪駅でやってしまおうというスペシャル企画が実現し、若手の有望噺家が集って笑わせてくれるというので、興味を持ってしまった。
今回、JR大阪駅前の「Tis大阪支店」のフロアの中に設けられた「すてんしょ亭」の前に着いたときは、結構半信半疑で、はたして笑えるのかな〜と思いながら、まだ誰もいない高座と客席を眺めていた。ラッキーなことに、早めにインターネットでしていた寄席の事前予約ができているか訪ねに行ったことが幸いして、一番前の席になった。(^_^)
しかし、一番前の席になったことで、少し不安が出てきた。そのときは連れと一緒に見に行ったのだが、俺らだけだったらどないしよう…そんな心配をしていたのだ。開演は8時15分だったので、8時の入場まで8時前からTisの入口前で待っていたんだけど、案の定俺らだけ。はたして、客はくるんやろうか…
8時の開場で中に入ると、すでにポツリポツリとだが、人が座っていた。定員が50人だったので、まあ半分くらい埋まるかなと思って、気長に開演を待っていた。
ところがアンタ! そのあとどんどん人がやってきて、開演直前にはもう満員御礼になってしまった。俺たちだけじゃなくてホッとしたけど、やっぱり落語って人気があるなー(笑)。
来ている客の顔ぶれを見ると、実に様々な人がいた。俺たちみたいに会社帰りの人間もいるし、年配の夫婦とか、あとなぜかどう考えても落語なんか見そうにないオネエ系のお姉様までまでが、興味深そうに開演を待っていた。世の中わからんもんやねぇ〜(-_-;)
開演の8時15分になると、高座の袖から突然、
ドドンッドッドッドンッ
と太鼓の音が鳴り出したかと思うと、今度は反対の袖から、
ペンッペンッペペペッペンッ
と三味線の出囃子が流れてきた。音が大きくて生々しくてびっくりしたよ(汗)。
最初に高座に上がってきたのは、桂阿か枝さん。阿か枝さんは、桂文枝師匠の20番弟子にあたるそうで(ちなみに、1番弟子は桂三枝師匠。他に桂文珍師匠や桂小枝師匠なんかも文枝一門)、兵庫の明石に住んでいるのでこの芸名になったそうだ。東京のおばさんと大阪のおばはんが子供を叱るときの違いとか面白く、小噺も割と古風な語り口で、よく通るしゃべり方がよかったと思う。ただ、阿か枝さんの小噺は俺にはちょっと難しかったかなー。年配の人はよくわかっているようで、結構笑っていたけど。
もう一人上がってきたのが、桂吉弥さん。吉弥さんは、桂吉朝師匠のお弟子さんで、来年のNHK大河ドラマ「新撰組」に出演するというのが、「すてんしょ亭」のパンフでしっかり宣伝されていた。(^_^;) この人の落語は結構テンポがよく、うどん屋の小噺も爆笑モノだった。なんて言うんだろう、話に陰陽をつけるのがうまい気がした。うどんを扇子を使ってすするしぐさとかがリアルで、生の落語芸を堪能することが出来た。
TVとか、今回見た落語もそうなんだけど、小噺というのはウィットの利かせ方一つで随分テンポが違うなと思った。例えば、誰かを呼びつける場面。当然一人で演じてるんだけど、「おう、なんだい?」「実は…」と、性格も威勢も異なる二役を交互に素早く切り替え、しかもその切り替わるタイミングの間の開き方が、噺家さんによって随分違う。これは、年季の入った人ほど間の開き方がうまい気がする。こんなところにも、落語の面白さがあると思うのだ。
そんなわけで、俺は「すてんしょ亭」に行ってから、妙に落語を見たくなってしまい、今はインターネットで無料配信されている全く別の企画の寄席を見てたりする。「すてんしょ亭」は期間限定だけど、こんな風に落語を身近に、もっと公の目立つ場所でガンガンやってくれたら、ファンはもっと増えるんじゃないだろうか。まあ、落語のおっかけギャルとか出てきて、高座に紙テープが飛ぶようになっても困るけど。(^_^;)