Column

●胃カンメラ(2004.1.21)

 昨年の末ぐらいから、俺は随分胃の調子がよくなくて、辛いものとか刺激のあるものを食べるたびに、かなりの胃もたれをおこしていた。それで、から揚げとかがよく入っている弁当類とか脂っこいものを食べるのは止めて、消化によい炭水化物をすすんで食するようになった。
 しかし、俺はさほど時間を決めずに、食べたいときに食べるということを繰り返していたので、胃は一向によくならなかった。あばら骨のすぐした辺りが、何となくシクシク痛む感じがしていたのである。そして今年に入って初出勤の前の晩、寝ているときに突如強烈な胃の痛みを訴え、一睡も出来ずに朝を迎えた。今年の初出勤ではあったが、調子があまりにも悪かったので、悩んだ末に、会社を休んで病院で診察を受けることにした。

 近所の病院の内科で診察を受けた際、俺は鈍い腹部の痛みを訴えた。軽く腹部をチェックした医師はひとこと、

 「一度、胃カメラで検査しましょう」

 と言った。俺は胃カメラで検査を受けたことがなかったし、この機会に受けてみようと思った。けれど、この医師の何気ない一言が、俺にとってとんでもない地獄を味わせることになるとは、このときは夢にも思わなかったのである。

 胃カメラでの検査は、病院に駆け込んできたこの日から2週間後と決まった。その間、病院でもらったマルファ液の、歯磨き粉を水で溶かしたようなまずい味に耐え、「今度胃カメラ検査するんです」というべきところを、繰り返し「今度胃カメラ検査するんです」と言いまくり、失笑を買われるのにも耐えた。まだ胃カメラでの検査を受けてもいないのに、今度胃カメラで検査を受けるというだけで、周りからは「胃カメラ野郎」というありがたくない名前をもらう始末だ。おぅ、もう何とでも言うてくれぃ。(-_-;)

 そしてついこの間、いよいよ胃カメラの検査を受ける日が来た。胃カメラはかなりツラいと聞いていたので、検査前からいらない想像はするまいと、極力医学書は見ないようにしてきた。検査前日は、夜の7時までに食事をして以降は絶食ということになっていたから、しっかり「なか卯」で最後の晩餐≠烽キませてきた。準備は万端である。もうどっからでもかかってきなさい!…という気分で、意気揚々と俺は病院に入っていったのである。内視鏡室に着くと、技師が、

 「Amaryさん、これを飲んでください」

 と言って、まずは紙コップに入った、胃をきれいにする飲み薬を飲まされた。味はあまりなく、少し粘り気があってあんまり旨くはない。次に、肩に胃の動きを止める注射をされた。胃なのになんで肩やねん!という突っ込みを使おうかと思ったくらい、ここまではまだ全然元気だった。

 地獄は、その次から始まったのである。注射が終わると、今度は同じく紙コップに入った、喉から胃カメラを受け付けやすくするための喉用の麻酔薬を渡された。透明な液体で、なんだかドロッとしている。「これを喉に溜めたまま、2、3分置いていて下さい」と言われたので、俺は麻酔薬を飲み、喉の奥まで麻酔薬が浸透するように、首を上に向けて喉の奥に溜め込んだままジッとしていた。
 しばらくして、麻酔薬が喉全体に広がり、気管が塞がってきた。やばい! 麻酔薬を口から出さねば…しかし、紙コップは麻酔薬を飲み終えてから技師が持って行ってしまったので、吐き出せない。思い切って飲み込もうとしたが、飲み込もうにもドロッとしていて、喉の奥より先にうまく流れ込んでいかない。
 ますます呼吸が苦しくなって、痰まで溜まり始めたようだった。すでに喉の感覚は失われつつあって、鼻で虫の息のごとく呼吸するのが精一杯。助けを求めようにも喉が塞がって声も出せず、ひたすらもがき苦しむだけ。周りに人もいない。もう10分が経過しているのに…助けてくれ〜!
 
 15分くらい経過してからようやく検査技師たちがやってきた。その頃、俺は行き絶え絶えになっていたのだが、何とか麻酔薬は完全に喉の奥を通過したようだったので(全部飲んでも問題はないらしい…)、かろうじて呼吸は回復できた。
 だが、ここからもっとすごい地獄が待っていた。いよいよ胃カメラのご登場だ。スプレーでさらに喉に麻酔薬をかけてもらってから、俺はベッドで横向きになり、マウスピースを口にくわえさせられ、そのマウスピースの真ん中に開いた穴から、ソロリソロリと7ミリほどの太さの胃カメラの先端部が入り込んでいった。
 十分、喉に麻酔を施したはずなのだが、胃カメラが喉に入った瞬間、物凄く強い嘔吐感が出てきた。いわゆる、オエッオエッ、というヤツである。前の晩から絶食していたので、胃にはほとんど吐くものなどないのだが、食道をある程度通過していくまで嘔吐感は止まらなかった。胃カメラをやったことのない人は感覚がわかりにくいかもしれないが、喉の奥に何か異物が突き刺さって中からえぐるような感覚と言ったほうが近いかもしれない。当然息も苦しく、口呼吸はほとんど不可能だ。ムリに口呼吸をしようとすると、また嘔吐感が出てきてしまう始末。ホントは鼻呼吸をすべきなのだが、鼻呼吸をしようという意識が働かず、口の中に入っている胃カメラの動きにどうしても気をとられてしまう。あまりにもつらい。
 
 胃に胃カメラが入っていく感覚は、腹の中ではっきりわかる。胃カメラが内部をこすりながら胃に到達していくのが感覚でちゃんとわかるのだ。内部をこするから、鈍い痛みも伴う。
 ようやく胃に到達し、技師がいろいろ見ているようだが、俺はまたまた虫の息になりながら、早く検査終わってくれー! この管を口から早く抜いてくれ! と祈るばかりだった。
 「それでは、胃カメラを抜いていきますね」と技師は言うが、なかなか胃カメラが出てこない。いろいろ見ているようだ。胃カメラを胃から抜いていく際も、先端部が喉の奥に近づいたあたりで、また強くオエーッと体が自然にエビゾリ状になりながら苦しんだ。それからしばらく嘔吐感に苦しみ、やっと先端部が口から出てきた。
 「はいっ、お疲れ様でした」…ほんの10分足らずの検査だったが、俺には1時間くらいに感じられた。検査が終わったとき、俺の目からは自然に涙がこぼれていた。(T_T) 検査後、胃カメラが内部をこすったせいか少し違和感が残ったので、しばらく飲食する気が起きず、違和感が減って食事が出来たのは、検査から6時間も経った午後3時過ぎからだった。重湯から食べ始めたのだが…

 「検査しましたけど、特に異常はなかったですよ」という言葉には、安堵感を覚えた。まぁ、エコーや血液などの検査結果をまだ聞いてなくて、それは今月末に聞く予定になっている。
 あとで聞いた話では、診察する医師は大抵、予め胃の検査を勧める際、「バリウムと胃カメラ、どっちにしますか?」と聞くんだそうだ。俺の担当医師も、そういう風に聞いてくれたら、バリウム選んで、あんなつらい思いしなくても済んだのに…! 今度あったら首絞めないとイカンな。(-_-#)
 人によっては胃カメラはどうもないと聞くが…(特に高齢者は)、胃カメラがこんなにつらいものとは思わなかった。みなさんもこんな検査受けないためにも胃を大事にしよう。ホンマ、胃カメラはイカンねぇ。