Column

●プロ野球再編・これだけある問題点(2004.8.14)

 リーグ再編問題、明大・一場投手の献金問題などで揺れるプロ野球。近鉄・オリックスの合併問題も、合併反対・2リーグ維持を掲げるプロ野球選手会がストをちらつかせ、一触即発の危機に瀕している。1リーグを強行しようとするパリーグと巨人、2リーグを維持しようとする巨人を除くセリーグとの間で揺れるプロ野球の再編に、どのような問題点があるかについて触れてみたい。

 まずは、今回の再編の発端を作った近鉄の経営のずさん振りについて。近鉄は元々文化の貢献には積極的で、近鉄バファローズに限らず、OSKや近鉄劇場・近鉄小劇場、あやめ池遊園地など、数々の文化・娯楽施設を作ってきた。
 ところが、本体の鉄道経営が怪しくなると、それまで抱え込んでいたこれらの文化事業を次々に閉鎖あるいは手放し始めた。当然、近鉄バファローズにも矛先が向けられ、ネーミングライツの提案が失敗すると、今度はオリックスとの合併である。

 もちろん本体の経営状態だけでなく、近鉄球団自体も大阪ドームでの観客動員の伸び悩みや高い賃料などが影響している部分もある。そもそも、大阪ドームが作られた経緯が、当時まだ出来て間もない東京ドームで観客動員が満員札止め状態だったのを見て、時の大阪市長が、「ドームを作れば儲かる! 近鉄の今の赤字も一気に解消や!」。それに近鉄も乗ったわけだが、いかんせんドームの建設地が近鉄沿線から外れた九条という場所。それでも、赤字が解消するなら、と甘い誘惑を呑んで藤井寺から移ってきたんである。
 ところが、ドームの初年度こそは物珍しさから観客動員が増えたものの、その後はジリ貧状態に。年間10億円もの賃料も重くのしかかって、かえって経営圧迫に拍車をかける結果になったわけである。

 別に九条じゃなく、OCATか「なんばHATCH」の上に作ればよかったんじゃないか? そもそもOCATなんて空港受付カウンターが全て撤退してしまって今や「エアターミナル」とは名ばかりのただのどでかい箱だし、なんばHATCHもライブのとき以外は閑散としている。それらの施設を「大阪ドーム」として一緒にまとめればよかったんじゃないのか。最寄り駅は近鉄難波駅だから、近鉄沿線に本拠を構えているしファンの利便性も期待できたはず。それを近鉄沿線から外れたところに本拠地を構えてしまうというあたりの先見性・計画性のなさが、今の問題の根本の一つになっている気がする。
 それでも現在、阪神西大阪線が、現在の終点である西九条駅から大阪ドームを経由して近鉄難波駅に至るルートで延伸工事中だ。完成は2008年ごろの予定だが、これができれば近鉄も阪神西大阪線に乗り入れてくるので、一応「近鉄沿線」のフランチャイズになるところだったのに…それまで待てんのかい。(-_-#)

 今話題の合併問題だが、だいたい、大阪と神戸、千葉と福岡などという、違う地域の球団同士を合併させるという発想自体、完全にファンを無視している。ファンのことを考えるなら、合併ではなく球団を残した形での経営譲渡が妥当だというのはわかるだろう。オリックスが近鉄との合併に応じたのも、1リーグに向かう布石になるとの計算があったからだ。こんな計算をしているからこそ、ライブドアへの譲渡など論外として突っぱねてしまうのだ。

 また、プロ野球は収益についても問題点がある。アメリカのメジャーリーグの場合、テレビの放映権や商標権をコミッショナーが一括して握っていて、収入はきちんと各球団に均等に分配しているのだ。日本のJリーグも、これとほぼ同様の制度を採っている。
 ところが、日本のプロ野球はというと、各球団に放映権や商標権が与えられているため、新聞・TVを使った独自の放映網を持つ巨人が抜きん出て収入を集めてしまう。他球団より極端に収入が多いから強い選手を刈り集められるし、球界への発言権も大きくなる。今のプロ野球制度は、巨人以外にはほとんど恩恵がない仕組みなのだ。
 他球団がどれだけ経営努力しようと、この放映権や商標権を均等に分配する構造に変えない限り、まず黒字転換など不可能だ。オーナーも、球団経営は親会社の宣伝のためだと考えているのなら、なぜ放映権などについてもっと声高に改革を呼びかけないのだろう? アホとしか言いようがない。
 松下やトヨタ、日立、日産などの大企業が、プロ野球の経営ではなくJリーグの経営に賛同するのも、巨人主体のプロ野球の構造に辟易し、Jリーグのほうが誠実なスポーツ文化の理念を浸透させやすいからだろう。結果として、チーム名に企業名なんかつけなくても、Jリーグのほうが少ない予算で大きく企業イメージを高めることにも役立っているのだから、これらの企業は実に賢い。俺が今の状況でスポーツ経営する資金があれば、やるのは古い経営構造のプロ野球じゃなく、間違いなくJリーグだろう。
 現在のプロ野球の年棒の不適正を指摘する声もあるが、1試合あたりの平均観客動員がアメリカと大差ないのに、平均年棒はメジャーリーグの5分の1。収益的には、放映権・商標権の問題を解決すれば、年棒の問題は二の次になってくることがお分かりだろうか。

 散々話題に上る1リーグ制移行の問題だが、たとえ4チームでも、2リーグ制は維持すべきだと思う。逆に言うと、パリーグが6チームをどうしても維持できないなら、5チームよりむしろ4チームにしておいたほうが試合が組めるので好都合だ。4チームではリーグが成り立たないと言うオーナーのオッサンらもいるが、それならメジャーリーグのアメリカン・リーグ西地区も4チームしかないが、立派に4チームの中から地区優勝を出しているぞ。これをどう「成り立たない」と説明すればいいのだ? ある程度交流戦でもやれば、4チームでも全然問題ないはずだ。
 所詮、パリーグのオーナー連中は、本音は巨人と同じリーグになって分け前が欲しいだけなのだ。数年前は交流戦が実現するだけでいいといっていたくせに、近鉄とオリックスの合併の動きに便乗して甘い汁だけ吸おうという考えこそ浅はかというものだ。経営難が理由だというのなら、企業論理としてとっくの昔に経営は放棄しているはず。それを今頃になって「企業経営の観点から、合併・縮小はやむを得ない」とほざくのだから、笑うしかない。
 普通に考えればわかることだが、仮に1リーグになって、例えば7位と10位とか、8位と9位の試合を見たいと思うだろうか? ただでさえ、5位と6位の対戦は面白くないのに、だ。ヘタをすると、6月から消化試合が出始め、恐ろしい数の消化試合を生み出していくことだろう。

 正直、1リーグは欠点ばかりだが、そこまで巨人と同じリーグにどうしてもなりたいのであれば、ちょっと提案。5年に1度、リーグの組み換えをしてはどうか。例えば、来年から5年間は巨人・広島・ヤクルト・ダイエー・近鉄・ロッテがセリーグ、阪神・中日・横浜・西武・日本ハム・オリックスがパリーグになるとか。組み換えは、現在のイースタン・ウエスタンが3チームずつ必ずバラバラで組み入れられるようにしておけば、地域が隔たるということもないだろう。ついでに他のリーグ6チームとホーム&ビジターで年に6試合ずつ(計36試合)交流戦を入れておけば、盛り上がりもあるに違いない。これなら、たとえチーム数がセ・パとも極端に言えば4チームずつでもOKだ。
 この案すら却下して、「試合が成り立たないから1リーグ」とは言わさないぞ。

 以上、問題点を挙げてみたが、もちろんこの他にもまだまだ尽きない。俺は、去年は随分熱心に見ていたのに、プロ野球再編問題で紛糾するようになってからは、こんな情けない構造のプロ野球を観戦することに辟易して段々関心が薄れ、今どのチームが首位争いしているかさえわからないくらい関心が低くなってしまった。もっぱらサッカーやアテネ五輪、メジャーリーグのことばかり注目するようになってきている。こんなプロ野球に関心を失いかけているファンが俺だけじゃないことに、オーナー連中はもっと気づくべきだ。