キャブレター
AR燃焼を実用化するには次のことが重要である。
1.AR燃焼効果を十分に得るためには、広範囲に正確な空燃比制御ができること。
2.ドライバリティにおいては常に使用条件が変動する中で、AR燃焼と通常燃焼間の移行が滑らかに行なわれること。
上記要件に対し、キャブレターには次の機能、性能が要求された。
スロットル開度の検出
AR燃焼は、スロットル開度7〜25%、エンジン回転数は3000rpm以上の部分負荷領域で発生する。AR燃焼はスロットル開度とエンジン回転数に応じたARC/V開度と空燃比に大きく影響を受け、特にスロットルが低開度になるほど安定したAR燃焼領域は狭くなる。このため広範囲にAR燃焼を発生させるためには、正確なスロットル開度を得て、それをARC/V特性、空燃比コントロールにフィードバックする必要がある。
スロットル開度センサーを取り付けるために、リンク式機構を採用しスロットルシャフト回転角を開度センサーで検出。これにより、正確なスロットル開度のアウトプットを可能にした。
広範囲な空燃比制御
AR燃焼が安定して持続する負荷範囲は給気比、エンジン回転数、冷却水温等によって変化する。
AR燃焼の特性上、低給気比ほどAR燃焼の安定する領域が狭くなり、理論空燃比の近傍に収束する。そのため、AR燃焼領域では、通常燃焼領域より許容空燃比巾が狭く、かつ従来よりもリーン側に空燃比を設定する必要がある。一方で通常燃焼領域の要求空燃比は、出力・ドライバリティを満足すると同時に、高負荷・高回転域のエンジン保護も考慮し、従来と同等の空燃比設定が必要である。しかし、従来のキャブレターでAR燃焼領域に適した空燃比に設定することは、特定のスロットル開度・エンジン回転数においては可能であるが、同一スロットル開度で、ある特定のエンジン回転数領域のみ空燃比を変えるような設定は困難を極める。
一般的にキャブレターの空燃比設定は、スロットル開度およびエンジン吸入空気量に対してほぼリニアな特性を持つキャブレターのノズル負圧をもとに設定を行なう。このためある特定領域の空燃比を大幅に変化させるには、このノズル負圧をコントロールする必要がある。そこで同一スロットル開度においてAR燃焼領域と通常燃焼領域双方の要求する空燃比を満足させるために、従来のキャブレターに対し、電子制御スローエアージェット(SAJC)を付設した。
AR燃焼領域では、付設したSAJCを開きスローノズル負圧を下げリーン化することで、AR燃焼の要求空燃比に設定することが可能となり、AR燃焼領域と通常燃焼領域双方の要求する空燃比に制御することが可能となった。その、一例を挙げると、スロットル開度15%でエンジン回転数2500rpmから4800rpmの間のみSAJCを開き、その領域だけ空燃比をリーン化することにより、AR燃焼に適した空燃比設定が実現でき、それ以外の通常燃焼領域はSAJCを閉じて従来の空燃比設定が可能となった。
減速時の空気量コントロール
AR燃焼の下限は、エンジン回転数により変化する。これをスロットル開度で表すと3500rpm付近が最も低いスロットル開度となりその値は7%。これに対してアイドリング時の要求スロットル開度は5%であり、AR燃焼下限のスロットル開度に近く、減速運転時に滑らかな減速感が得られない場合がある。そこで、アイドリング開度コントロールシステムを追加し、アイドリング時に必要な開度(空気量)と減速時に必要な開度をエンジン回転数をもとに制御した。その結果、2ストロークエンジン特有の減速時に発生する不整燃焼を改善し滑らかな減速感が得られた。