第4回(H13.12.17)
    ザ・ブルー・マックス


     なんでこんなことで4回に亙るのかさっぱりわからんが、アルバトロス1機作るのに4週間かかってんだからそれもまたよしとしてもらおう。もちろん、かかりっきりで4週間てゆうわけではない。何事にも散漫なわたくしは同時にブリストルF2bを制作していて、あまつさえ息抜きと称してフェラーリなんぞちょっかいを出してみた。これが大失敗だったのは云うまでもない。なまじ資料が完璧に揃っていたりすると、細部まで作り込まなきゃならず、二度と使うもんかと云いたくなるような塗料も揃える羽目になって、まるきり息抜きになんかならんのであった。

     今次大戦を題材にした映画は星の数ほどあるが、1次大戦ものの映画となるとそうはない。これがもう百年遡る(ナポレオン戦争)とまたちょろちょろ出てくるのだが、見渡す限りの塹壕戦じゃあ、「西部戦線異常なし」並みに人生哲学にでも耽るしかない。泥濘と弾着が風物詩の戦場における唯一の華が、つまりヒコーキだった。映画「ブルーマックス」で、泥にまみれた主人公が塹壕の中からドッグファイトを見上げる冒頭のシーンがそれを端的に表している。この映画はストーリーはともかくとして、数少ない複葉機ものとして重宝する(ほかに「華麗なるヒコーキ野郎たち」がある)。ブルーノ・シュタッヘルBruno Stachel、つまり主人公だが、演じてるのはジョージ・ペパードGeorge Peppardである。ああ、誰だそりゃ? 「ティファニーで朝食を」で<フェアリー>オードリーの相方を演ってた俳優だよ。つうか、「特攻野郎Aチーム」の<ハンニバル>って云ったほうが早いかも。どうみたってアメリカ人顔の彼がドイツ人パイロットを演ること自体無理があるのだが(ライバルのウィリーや上官ハイデマンはドイツ顔してる)、それはそれでまあよい。
     肝心のヒコーキだが、これはわりによく考証してある。舞台は1918年の春、ドイツ機は名機と名高いフォッカーD.VIIにDr.Iと、ファルツD.IIIが出てくる。イギリス側はS.E.5aで、複座機がちょっと特定しにくいがB.E.2シリーズあたりだろう。最後のほう、シュタッヘルがプロシャ将校団の名誉のために墜死に追いやられる試作単葉機が出てくるが、これはさすがにわからない。ただし、いずれもレプリカというか現用機の改造で、スピナーの位置やカウリングの形状が異なるのはご愛敬。往年の「パイパー戦車集団」のように、あからさまにM4シャーマンにジャーマングレイをぶっかけただけのPz.Vパンターなんぞが出てくるよかよっぽどましである。モデリングには泣きたくなるようなローゼンジパターンにしろ、ビッカース機銃があるのに何に使うのかわからんルイス機銃(S.E.5aの話だ)にしろ、ちゃんと再現してあるのは誉めていいだろう。
     主人公の所属する部隊は不明だが、まるで似ていないリヒトホーフェン兄が、上級指揮官としてではなく迷い込みで出てくるので、JG1の隣接作戦区に展開していることだけは判る。ちなみに兄、有名なフォッカー三葉機に乗っているが、シリアル425/17が描かれているのは間違いだ。彼はシリアル番号も赤で潰している。

     さすがに資料の役には立たないので、飯でも食いながら眺めるだけのことだが、もひとつ、資料になりそうでやっぱりそうはいかん代物だったのが、第2回でルールブック扉だけ紹介した「The Blue Max」だ。3W社の機関誌の綴じ込み付録だった「Aces High」とサプリメント「The Blue Max」をローカライズする際に1パッケージにまとめたやつで、1次大戦の空戦シミュレーションゲームである。もちろんゲームといってもコンピュータゲームではない。どうも最近はゲームというとコンピュータゲームのことを想像する連中が増えて難儀するのだが、わたくしの世代ではゲームといえばボードゲームなのだ。ついでに云うとロールプレイングゲーム(RPG)って云えば会話形式のなりきり物語生成遊び、つまりテーブルトークRPGのことであって、一人さみしくブラウン管に向かってちまちまやる指の遊びじゃないのだ。文句があるやつあ前に出ろ。
     とりあえずこの「ブルーマックス」、収録機種が大変多い。イリヤ・ムウロメツがないのだけが心残りだが、そんな巨大爆撃機でもゴータやカプロニくらい名が知れてるのはともかく、フリードリヒスハーフェンやショート・ボンバーなんてあなた、たとえゲームでもフツー使ってみたいと思いますか? え、なんのことだかさっぱり判りませんか。おまけに豊富に用意されたシナリオは、これが結構マニア泣かせなのだ。ホーカー対リヒトホーフェンならなんとかメジャーにもなるだろうが、バーカー最後の飛行なんて、知ってても再現しようと思わんだろ。え、やっぱり判らんですか。ゲーム自体はプロット方式なので、今となってはやる暇がほとんどない(最大の難関は同好の士がなかなか・・・)のが残念。模型製作に関しては、膨大な各機のデータブックが稼動年代とエンジン、機銃の確認には使えるものの、所詮ゲーム用なので飛行高度や速力などは判らないし、イラストも上面図しかないので、ほとんど役に立たないのは確かだが、古き良きボードゲーム時代のマストアイテムとしてやっぱり手放せないのである。
    左)「ブルーマックス」の飛行機データカード。上に機体の基本データ、中に飛行性能、下に視界と武装データ。右)ソッピース・キャメルのデータカードから。飛行性能欄の旋回データが「B/A」とあるのは、左旋回より右旋回の旋回半径が小さいことを表している。回転型エンジンにつきものの右トルクを利用した、いわゆる「ロータリー・バンク」のためだ。
     んで、肝心の模型のほうだが、飽きっぽい性格がここでも発揮されて、最初のアルバトロス完成前に4機+1台手を付けてしまって、えらい目に遭ったよ。12月半ば現在、5機同時進行中。あほやな。


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