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Le Ditie de Jehanne d'Arc -- Christine de Pisan ジャンヌ・ダルク讃歌 -- クリスティーヌ・ド・ピザン著(1429.07.31) 邦訳 by cygnus_odile |
はじめに - 著者及びジャンヌ・ダルク讃歌の紹介 (英訳引用サイトの紹介文より) ジャンヌ・ダルクへの讃歌 クリスティーヌ・ド・ピザンは、フランスの女流詩人であり歴史家ですが、実は生まれはイタリア人なのです。彼女は、ある高名な医術師かつ占星術師の娘として、一三六四年にヴェネチアに生まれました。彼女は五歳のときに父親に連れられて共にパリに赴き、彼女は古の言語と文学の教育を受けました。彼女は十四歳のときにピカルディからやってきたエティエンヌ・ドゥ・カステルという貴族と結婚しました。その幸福な結婚生活は十一年の後エティエンヌの急死によって突然終わりを告げました。彼女は生計を立てるために詩や文学作品を執筆しようと決心しました。おそらく彼女のもっとも有名な文学作品は、『婦女の都』という本で、その中で彼女は古代や聖書の時代、さらには神話を起源とする勇敢で高潔な女性達であふれた都市について語っています。 一四一七年から一四一八年にかけての頃、パリでの恐ろしい出来事のために、彼女は彼女の娘が修道女となっていた、とある修道院(ポワシーの修道院)へ移りました。彼女はそこで十一年間暮らしました。一四ニ九年、ジャンヌ・ダルクが現れてロワール渓谷を奪い返し、そして王太子を戴冠式へ導いた時、クリスティーヌ・ド・ピザンは喜びに感極まる程でした。それゆえ、彼女は、 ジャンヌ・ダルク讃歌(Le Ditie de Jehanne d'Arc)を創りました。それは戴冠式から二週間の後のことでした。敵からフランスを開放するために来 れと彼女が祈ったその人物、ジャンヌ・ダルクは、素朴な羊飼いの娘であり、最高の力と勇気を神から授けられており、その力と勇気は古来の人々が比肩すべくもないものでした。詰まるところ、彼女 はその人生を通じて、「婦女の都」の住人にふさわしい一人の女性でした。 ※ 訳者注記 一四二九年の経緯 三月 六日頃 ジャンヌ・ダルクがシノンにて 王太子シャルルと会見。 四月二十九日 ジャンヌがオルレアン入城。 五月 八日 ジャンヌ等がオルレアン解放。 六月 十八日 パテーの会戦で仏勢大勝利。 七月 十七日 ランスにて、シャルル戴冠。 七月三十一日 クリスティーヌ、讃歌を著述。 婦女の都 Le Livre de la Cite des Dames (1405) (The Book of the City of Ladies) ピザンが女性の治める理想郷を描いた著作ジャンヌ・ダルク讃歌 一四二九年 七月三十一日 クリスティーヌ・ド・ピザン 著 cygnus_odile 訳(英訳からの重訳) ( 01 ) 私こと、クリスティーヌは、閉ざされた修道院にて十一年もの間泣き暮らしておりました、私は、(なんと奇妙なことでしょう!)王の息子シャルルがパリから、敢えてこう言いますが、尻に帆かけて(疾風のごとく)逃げ出して以来これまでずっとそこで暮らしておりました。この裏切り行為のためにここに閉じ込められて以来、私は今初めて心から笑い始めます。 (02 ) 私は喜びで明け透けに笑い始めます、なぜなら檻(鳥かご)のなかで悲しく暮らしていた冬は去っているのですから。そして今や良いお天気が戻ってきた……私は繰り言から詩歌へと言葉を変えるつもりです。私は課せられた負担によく耐えてきたのです。 (03 ) 一四二九年、太陽は再び輝き始めた。それは、多くの人々を悲嘆にくれる生活に追いやった長い時期には私たちがけっして本当に見たことがなかったような素敵な新しい季節を連れ戻してくれる。もはや私は何につけても悲しむことは無い、なぜならいまや私は私が切望するものを目の当たりにしているのだから。 (04 ) 私がここに隠れ住むためにやって来たとき以来の深い悲しみから世間は新たな喜びへと変わりました、そして、有難いことに(神に感謝します)、私があんなに切望していた、人が全てが生まれ変わる春と呼ぶ、素晴らしく新しい季節が乾ききった国土を緑に変えてしまいました。 (05 ) これはすべて、長い間多大な難儀に苦しめられ、そしていま(王都パリに)近づいている、追放されたフランスの正当な国王の子供が、戴冠した王として現れて、金の拍車を身につけて、素晴らしくそして強大な権力における夜明けへ向かう人のように立ち上がったからなのです。 (06 ) さあ我らの王を祝いましょう! 彼の帰還を歓迎しましょう! 彼の高貴な姿に喜びましょう、さあ皆で行きましょう、身分高きも卑しきも――誰も引きとめはしません――そして喜びに満ちて彼に挨拶しましょう、彼を守護する神を称賛しながらそして大きく叫びましょう「ノエル(おめでとう)」と。※ 注 Noel (クリスマスを意味する仏語、ラテン語の natalis (「誕生(日)」)から派生。)意訳で『万歳』としてもよいかと思う。 (07 ) さて、私はこれから神がその恩寵によってこのすべてをいかに為したかを語ろうと思います。神様、願わくは私が何も省かぬようお導き下さい。 これはあらゆるところで語られるべきなのです、なぜならそれは心に記憶され筆で記録されるに値します――たとえ誰か不快に思うものがあろうとも――年代記や歴史書に! (08 ) さあお聴きください、世界中のどんな事にもまして驚異的なことを! さあ見て下さい、慈悲あふれる神様が、結局のところどちらが正当なのかということを支援して下さらないのかどうか。 手近な事例を考慮すれば、この事実は注目に値します! 失望した人々や運命の女神が打ちのめした人々にとって価値がありますように。 (09 ) そして誰も不幸な出来事によって不運にも失望するべきではないことに心を留めてください、皆から自分が不当に軽蔑されそして攻撃されていると思う時でも! あれほど多くの人を害して来た、運命の女神がいかに常に変わりやすいか見てください。なぜなら、全ての誤 てる行為に異を唱える神様が、希望を胸に抱き続ける人を勇気づけてくれるからです。 (10 ) はなはだ驚嘆すべき出来事を――あらゆる方面から注目され記憶されるべき――あらゆる人々の意見ではすっかり打ち負かされていたフランスが、神聖な神の命令によって、堕落からあのような偉大な善に変わったことを、 (11 ) そして、実際あのような奇跡を通じて、例えその事がどのような方法によってもあまりよく知られておらず曖昧だったとしたら、誰もそれを信じようとしない出来事を、そのとき、一体誰が目の当たりにしたのでしょうか? これは良く覚えておく価値があります、つまり、神はフランスに恩寵を賜ることをお望みだった――そしてこれは本当のことなのです――こころ優しき一人の処女 を通じて。 (12 ) おお、この神聖な証しによっていかな名誉がフランスの王冠に与えられたことか! というのは神がそれに与えた恩寵によって、神がそれを支持したこと、そして他のどこよりもその王の領地において神への忠実な信仰を見出したことが明白であるからです。そして――これはいまさら口にする程の事ではありませんが――フランスの百合の旗は決して信仰において誤ったことはないと私はずっと考えております。 (13 ) そして汝シャルル、フランス王にして、あの高貴な名の七世よ、汝は物事が貴方 にとってよい方へ変わる前に大きな戦を行いました。しかしいまや見なさい、神の慈悲により、貴方の名声が『乙女』によっていかに高められたか、彼女は貴方の敵を貴方の旗のもとに征服した――そしてこれは今までになかったことだが―― (14 ) ほんの短い間に。人々はそれは不可能だと考えました、貴方がかつて失った国へ戻るだろうなどということは。いまやそれは明らかに貴方のものです、なぜなら貴方に仇を為した全ての者どもに反抗して貴方はそれを回復したのだから! しかも、有難いことに、その責務をやり遂げた賢き『乙女』のおかげで! (15 ) 私は固く信じます、もし貴方 がいずれ時至れば偉大で厳粛な職務を達成しかつそれに良き結末をもたらすべく神によって定められたのではなかったなら、そしてもし貴方が最も偉大な数々の事業の統率者になるように運命づけられているのでなかったならば、神はこの恩寵を貴方に賜りはしなかっただろうと。 (16 ) なぜなら、シャルルの息子にして、シャルルと呼ばれる、全ての王の上に立つ至高の統治者になるであろうフランスの王がそこに現れるからなのです。数々の予言が彼に「空飛ぶ雄鹿 」なる名前を与えました、そして多くの偉業がこの征服者によって成し遂げられ(神はこの仕事のために彼を召したのです)そして最後に彼は皇帝となることでしょう。 (17 ) この全てが貴方の魂の利益へ通じています。私は神様に祈ります、貴方が私がすでに述べたような人物になりますようにと、そして神が貴方の長き寿命を許し、誰の害ともならずに、それゆえ貴方が息子の成長を見届けるようにと。わたしはまた祈ります、貴方と彼等のおかげで全ての喜びがフランスにもたらされるようにと! しかし、貴方が常に神に奉仕する限りにおいて、貴方は再びそこで死を齎 す戦争を行うことはけっしてないのです! (18 ) 私は貴方 が善良で正直なることを、そして正義を愛する人であることを望みます、そして貴方の行為がうぬぼれによって汚染されないように律した上で、貴方が他の全ての人を凌ぐことを望みます、貴方がその人民に向かって優しく気立ての良いことを望みます、貴方が奉仕者として貴方を選んだ神をいつも愛することを望みます、(そして貴方がこの最初の声明を行うことを)、貴方の義務をまっとうする限りにおいて。 (19 ) そして如何 にして貴方 はこれから十分に神に感謝することができるようになるのでしょうか?、貴方の全ての行為において神に仕え神を敬いなさい(なぜなら彼はあのような酷い逆境から平和へと貴方を導き、そしてフランス全土をあのような荒廃から立ち上がらせたからです)、神の最も神聖な神意の現れが、貴方をあのような栄誉のしるしに値するものにしたときに。 (20 ) 偉大なる神よ!貴方 はこれ故に讃美されますように。これらの恩恵がもたらされるように時と場所を定めたあなたに感謝することが私たちの必ず果すべき務めと心得ています。 両手を握り合わせて、身分高きも卑しきも双方、天にまします主よ、我々皆が貴方 に感謝致します、我々を大いなる騒乱(大嵐)をくぐり抜けて平和(にあふれた水面 )へと導いてきた貴方 に。 (21 ) そして貴女 、祝福された『乙女』よ、貴女はこの全てにおいて忘れられてしまうべきでしょうか? なぜなら神が貴女にたいそう多くの名誉を与えたが故に、貴女はフランスを固く縛りつけていたロープを解 いたのですから。戦争による屈辱を被 ったこの国へ、貴女が平和を与えた時に、人は貴女を十分に誉 め讃 えることができたでしょうか? (22 ) ジャンヌ、貴女はまさに時宜を得て生まれました、貴女をお創りになった神に祝福されて! その中へと聖霊(貴女の内にあって高貴な贈りものを携えた非常に気前のよい者であった)が神の多大な恩寵を注ぎ、そしてどんな貴女の要求もけっして拒まなかった、神に遣わされた『乙女』よ、私たちはどのように貴女に報いることができるでしょうか? (23 ) どのようにすれば他の誰かのまたは過去の偉大な業績よりも多くのことを語ることができたのでしょうか? 神が寛大にも多くの祝福と美徳を与えた予言者モーゼは、奇跡によってエジプトの外へ人々を導きました、それに倦むことなく。 同じように貴女は災厄から私たちを導いてきました、選ばれし『乙女』よ! (24 ) 貴女の人となりをよく考えてみますと、一人の若い乙女に過ぎぬ貴女に、フランスにその平和で甘美な滋養たる乳房を与えかつ反逆者たちの意気を挫く勇者に成るべく、神は力と能力とを授けました。いかにこれが自然に反している(尋常ではない)かに刮目すべきです! (25 ) もしあれほど多くの土地を征服しあれほど多くの敵を降したヨシュアを通じて神が多くの奇跡を演じたとしたなら――彼は強くて能力のある男でした! しかし結局、一人の女性、一人の素朴な女羊飼い、がこれまでローマ帝国にいたどんな男よりも勇ましかったのです。 神にとっては、これは容易 くできることでした。 (26 ) しかし私たちにとっては、私たちはそのような偉大な驚異が語られるのを決して聞いたことがありませんでした、なぜなら、私たちの敵の意志を挫 こうと奮闘するこの女性に対して、過去の全ての勇敢な男たちは戦場での武勇においてけっして肩を並べることはできないからなのです。もっともこれは彼女に助言する神の行うことであり、彼女は神からどんな男よりも多くの勇気を受け取っていたのでした。 (27 ) 私たちは素朴な労働者に過ぎなかったギデオンを尊重しています、そして物語はこのように進行します、神は彼を戦わせた、誰一人彼に対して抵抗できなかった、彼は全てを征服したと。しかし神がどんな指図を彼にしようとも、神は決して、私たちの場合に神が行ったような明白な(疑う余地の無い)奇跡を行ったことはありません。 (28 ) 私はエステル、ユデトそしてデボラといった立派な女性たちについて学んできました。彼女等を通じて神は抑圧されていた民草を回復しました、そして私はまた勇敢だった多くの他の女性たちについても学んびました。しかし、かの『乙女』を通じて演じたよりも偉大な奇跡をその者を通じて神が演じた者は誰もいません。 (29 ) 彼女は神のお告げにより遣わされ、神の庇護のもと、神の天使によって国王の許へと導かれました。彼女の言動や行いは幻想や錯覚ではありません、というのは彼女は審問会(私たちはその結果によってある事柄が証明されたと結論を下します)にて十分に試されたからです、 (30 ) そして人が彼女を信じたいと思う前に、そして神によって国王の許へ遣わされたと知られるようになるより前に、彼女は聖職者や賢人の前に連れて行かれて彼女が真実を語っているのか否かを見極めるために十分に調べられました。しかし人は歴史書に彼女はこれらの事績のために運命づけられていたと記載されているのを見いだしています。 (31 ) というのは五百年以上前に、魔術師(或 いは高徳の予言者)マーリンが、(古代ギリシャとローマの)巫女 が、そして聖ベーダが、彼等の心の中で彼女を予見しそして彼女を自分等の著作に挿入しそしてフランスの救済者たる彼女について予言をしていました。彼等は彼女はフランスの戦争において旗を携えるだろうと言っていました。そして彼等は彼女の業績について正確に予言しました。 (32 ) そして彼女の美しい暮らしは、私は誓って申し上げますが、彼女が神の恩寵に浴している事を示しています、そしてそれゆえ人は彼女の偉業により多くの信頼を与えるのです。なぜなら彼女のすることはなんであろうとも、彼女は常にその目の前に、行為と言葉で彼女が呼びかけ奉仕し祈りを捧げる神を見ているのですから。そしてどこであろうとも彼女はその信仰を減じることはありません。 (33 ) おお、この彼女の能力が最初に現れたオルレアンの包囲攻撃に際してこれは何と明らかであったことか! 私は信じています、これよりも明白な奇跡はこれまで一切なかったと、というのは神は彼の民をたいそうお助け下さったので敵どもは死んだ犬と同じように無力であったからです。そこで彼等は捕らえられ死に追いやられたのでした。 (34 ) おお、何という名誉でありましょう、女性にとって! 神が女性を愛していることは明らかです、一人の女によってこれらの哀れな人々と王国全体を荒廃させた裏切者とが打ち倒されそして王領土が鼓舞され回復されたことをもってすれば――それは十万人もの男どもが為 し得なかったことなのです! 以前は、人はそんなことができるとは信じようとしなかったものでした。 (35 ) 十六歳の若い少女(これが自然を超越していないでしょうか?)、その者にとって武器はまるで重さがないように見え、彼女はまるでこの為 に育て上げられたかのようです。彼女はそれほど強く勇敢です。 そして敵は彼女を面前にすると逃げだし、誰一人彼女の前に立ちふさがるものはいません。 衆目の見守る中、彼女はこれを為し、 (36 ) そしてフランスから彼女の敵どもを駆逐します、城や町を奪い返しながら。そのように強大な力はけっして百人の或 いは千人の男のなかにもあった例 がありません。そして彼女は私たちの勇敢で手練れの人々の卓越した統率者です。ヘクト-ルもアキレウスもそれほど偉大な強さを持っていなかった! しかもこのすべては彼女を導く神が為すのです。 (37 ) そして貴方 がた、(勇気ある)行為の数々を行い自らが善良で忠誠なことの証しをたてる忠実な兵士たちよ、人は必ずや貴方がたについて言及し(貴方がたは洋の東西を問わずそれについて称賛されるでしょう!)そして他の誰よりも貴方がたのことを、そして貴方がたの勇気のことを語ることでしょう、 (38 ) あのような辛辣な痛みと危険と血の渦巻くなかで、体をそして命を正義に捧げ、そしてあのような危険のなかでも大胆にも前進する貴方がたのことを。 固く誠実でありなさい、私は貴方がたに約束しましょう、このために貴方がたは天の栄光と称賛を受けるであろうと。敢えて私は申しましょう、正義のために戦う人は誰でも天国を勝ち取るであろうと。 (39 ) そして、それだからあなた方英国人よ、あなた方の角笛の音を低くしなさい、というのはあなた方は決して勝ちを得ることはないからです! フランスでの無益な行為を続けてはなりません! あなた方はもう万事窮しているのです、それはあなた方があのように私たちを脅かすように見えたつい先程にはあなた方が不可能であろうと考えた事柄でしょう。しかしそのとき、あなたがたはもう(正しい)道筋を辿ってはいなかったのです、神がその誇りを切り落としたところでは。 (40 ) あなた方は、既にフランスを征服してしまったと、そしてそれは永遠にあなた方のものだと思ったことでしょう。万事はすっかり様変わりしてしまっているのです、あなた方誤 てる人々よ! あなた方はどこであれ(退却の)太鼓を打ち鳴らさなくてはならなくなるでしょう、もしあなた方が、狼どもが存分に貪り喰らうであろうそのお仲間のように、人間に死を味あわせたいとは思わないならば。あなた方のお仲間は戦場で死んで横たわっているのですから。 (41 ) そして彼女(ジャンヌ)は英国軍を打ち倒すであろうことを、そこでは立ち上がれる者は誰もいないことを知っておくとよいでしょう、なぜならこれこそが彼らが傷つけようと欲した善良な人々の声を聞く神の意志であるからです! 永遠の死に就いた人々の血は、彼等英国勢に抗議の叫び声をあげています。神はもはやこれを我慢することなく、彼等を悪であると非難するでしょう――これは紛れもないことです。 (42 ) キリスト教国と教会においては 彼女を通じて一致調和が優勢となるでしょう。彼女は所謂不信心者たちや堕落した道を歩む異端者たちを打ち滅ぼすでしょう、なぜならそのように預言されているからです。彼女は人が神のことを悪しざまに話すところにはどんな場所であれ一切情けをかけることは無いでしょう。 (43 ) 彼女は聖地(エルサレム)を征服して、サラセン人たち(イスラム教徒たち)を滅ぼすでしょう。そこへ神が守護するシャルルを導くことでしょう! 彼は亡くなる前にこの遠征を行うでしょう、彼はそれを征服する人です。そこで彼女は人生を終え、そして両者は栄光を得るでしょう。そこで万事が成就されることでしょう。※ 訳者注記: ここで、クリスティーヌ・ド・ピザンは十字軍の遠征のことに言及しています。そして彼女がシャルル王を導いて聖地を回復しそこで彼女は人生を終えると予言さえしています。アナトール・フランスの著で紹介(こちらを参照 )されているように、当時の善良なカトリック教徒にとって、聖地エルサレムの回復は大きな念願だったのでしょう。そして、ここの書きぶりからして、クリスティーヌ・ド・ピザンにとっては、もうフランスは勝利し、イングランドの軍兵がすでに大陸から一掃されることは既定の事実も同然だと考えていたのでしょう。(ピザン老女史の浮かれぶりが窺えるような気がします) (44 ) それゆえに、過去の勇敢な男たちすべてに立 ち優 り彼女は栄冠を頭上に戴くにちがいありません、なぜなら彼女の功績は、人々が語るすべて男たちより多くの勇気を神が彼女に与えたことを明白に示しているからです。 そして彼女はまだやり遂げておりません! 彼女は、彼女の偉業を通じて平和がもたらされるようにと、地上の我らへ神が賜った贈り物である、と私は信じています。 (45 ) そして英国軍を滅ぼすことは彼女の心配事では最も些細 なことに過ぎません、というのは彼女の希望はむしろ他のところに在 ります、すなわち真正の信仰を破壊する行為を防ぐことにあります。英国軍に関して申しますと、それについて人が笑おうが泣こうが、彼等は瀕死の体たらくです。何度来ようが人は彼等をものともしないでしょう。彼らは既に打ち負かされているのです。 (46 ) そしてあなた方すべて、彼等(英国人)と手を結ぶ卑しい反逆者たちよ、いまやあなた方はおわかりでしょう、あなた方は退くよりはむしろ前進するべきだったことがそしてしており英国人の奴隷になっているということが。 気を付けなさい、他の何事 もあなた方に起こらないように(なぜならあなた方は十分長い間大目に見られていたのですから)、そしてその結末についてよく考えてみることです! (47 ) 盲目の人々よ、あなた方はこれに神が手を下していることを理解しないのですか? これが分らない者は本当に愚かです、いかにしてこのあなた方皆を打倒して死に至らしめる『乙女』がこのように我々に遣わされ得たのでしょうか? あなた方はもう満足な力を持っていません! あなた方は神を相手とする戦いに突入したいのですか? (48 ) 彼女は彼女の手によって彼の戴冠式へ国王を導かなかったのですか? それよりさらに偉大なことは聖墓の前であろうと為 されたことはありません。 その上そこには、多くの妨害がありました。しかし全ての敵対者に拘らず彼はそこで輝かしく正当に迎えられそして(聖油を塗られて)聖別されました、そしてそこで彼はミサを聴きました。 (49 ) 偉大な勝利と力の誇示とを伴って、シャルルはランスで戴冠されました。一四二九年という年、まさしく七月の十七番目の日に、多くの武装兵や貴族たちに取り巻かれて、疑いもなく、彼はそこに無事に居りました。彼のそこでの滞在は五日間でした、 (50 ) そして彼は小さな『乙女』と共に居りました。 彼が自分の領土を通って戻るに際しては、どんな都市も、城塞も、また小さな町も、征服されずに残っているものはありません。彼が好かれようが嫌われようが、住民が打ち滅ぼされようが安堵されようが、それらは皆降伏するのです。攻撃する必要は一切ありません、彼等は彼の権勢を大そう恐れているのです! (51 ) 愚かな考えから一部の人は抵抗したのは事実ですが、それができたのはほんの少数でした。結局、神は彼等から善良でなかったことの代償をもぎ取りました。彼らは足 掻 きましたが虚 しいものでした。彼らはその意向に係 わらず、全てを償いました、というのは『乙女』の断固とした猛攻に遇って鎮まらぬ抵抗は一切なかったからです。 (52 ) 彼らが、国王を待ち伏せるべく、強大な軍隊を集結させ、そして待ち伏せした場所で国王を襲撃したにもかかわらず、その後誰も医者の手当てを必要とするものはありませんでした。 というのは裏切りどもはみな死ぬか捕えられて、私が噂に聞いたところでは、そして一人ずつ各々は、その者に相応しく天国または地獄へと送られたからです。 (53 ) (彼等(ジャンヌたち)は未だそこへ到達していないから)パリが持ちこたえようとするのかどうかは判りませんし、それともパリが『乙女』を迎えいれる準備をしているかどうかも判りません。 しかしもしパリが彼女をその敵とするならば彼女はそれを厳しく攻撃するのではないかと私は恐れます、他の場所で彼女がそうしてきたように。 もし彼らが一時間、或いは半時間の間でさえ抵抗するならば、彼等は困ったことになるだろうと、私は信じています、 (54 ) というのは国王はそこへ入るだろうからです――彼らの好悪にかかわらず! 『乙女』は彼にそれだけのことを約束しています。 パリよ、貴女はブルゴーニュ勢が彼の入城を妨げるだろうと考えていますか? 彼等はそうはしないでしょう、なぜなら彼は彼等の敵として現れることはないからです。 誰もそれを妨げる力を持っていません、そして貴女も貴女の厚かましさも制圧されてしまうでしょう! (55 ) ああ、パリよ、貴女 は悪い助言を受け入れてきた! 信頼に欠ける愚かな住民たちよ! あなた方はあなた方の王子と和平を結ぶというよりはむしろ追い出そうしませんでしたか? もしあなた方が気をつけないならあなた方の偉大な敵対者は確実にあなた方を破滅させるでしょう! もしあなた方が謙虚に慈悲を請 うていたならば、もっと良いことだったでしょうに。 あなた方は間違いを犯しつつある! (56 ) 私は悪い住民たちについて話しています、というのはそこにはまた多くの善良な人々がいるからです、それについては疑いないと思っています。しかし彼等は敢えて声を出そうとしません。 私は確信しています、人があのように彼らの王子を追い出してしまったことは、彼等を不愉快にしたのだと。これ等の人々は罰を受けるに値していたというわけではありません。パリは多くの人が彼らの暮らしを失うであろうところへ向かっています。 (57 ) そしてあなた方、反抗的な町よ、そしてあなた方の王を拒絶した人々よ、あなた方もう一人の(王の)ために彼との関係を断ってしまった人々よ、全ては平和裡に処理されるでしょう、あなた方が彼の容赦を請うことによって。というのもあなた方が武力を以て服従させられたなら、彼の寛大さはあなた方にとって遅すぎることになるからです。 (58 ) そして人々を殺害し傷つけることを避けるために彼はできる限りの間待ちます、なぜなら血を流すことは彼を悲しませるからです。 しかし、最終的に、もし人々が正当に彼のものであるであるものを平和的に引き渡そうとしないならば、もし彼が武力と殺戮によってそれを回復しようとするならば、彼は首尾よくやってのけるのです。 (59 ) ああ、悲しや、彼はあまりにも寛大なので彼は全ての人を許したいと思っているのです。そして『乙女』は、神のお告げに従って、彼にこれを為さしめます、忠実なフランス人として身も心も彼に捧げなさい! そうすればその知らせが広まった時に、あなたは方は誰によっても非難されることは無いでしょう。 (60 ) 私は神に祈ります、神がこのように振る舞うことをあなたの心に留め置きますように、そうすれば、これらの戦争の凶暴な嵐はその痕跡を消され、あなた方の偉大な統治者のもとで、平和に暮らすことができるでしょう、そしてあなた方が二度と彼の感情を害することがありませんように、そして彼があなた方にとって良き領主でありますように。 アーメン。 (61 ) この詩は上で述べた年一四二九年、七月が終わる日にクリスティーヌによって完成されました。しかし私は、誰かその内容に満足しない人がいるだろうということを理解しています、なぜならもし俯向 いていてその瞼が重いならば、人は光を見ることはできないからです。 ここにクリスティーヌによって書かれた最も美しい詩を終えます。 ( 了 ) 原著:Le Ditie de Jeanne d'Arc 1429 著者:Christine de Pisan (1365年頃 ― 1430年) 注記: ※ http://maidjoan.tripod.com/ditie.html には、スタンザ 16 - 20 が欠落していました。ので、http://www.maidofheaven.com/joanofarc_song_pisan_contents.asp に掲載の英訳を元に、当該個所の和訳を試みています。 なお、ブログ掲載の対訳は、こちら。但し、ブログ掲載分から若干手直ししています。
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"Le Ditie de Jehanne d'Arc" (1429) - Christine de Pisan 元ネタ(英訳掲載サイト):http://maidjoan.tripod.com/ditie.html 元ネタ2(英訳掲載サイト):http://www.maidofheaven.com/joanofarc_song_pisan_contents.asp 閲覧に当たっての注意事項、などこのページは、縦書き文庫様提供の、 javascript で動作する組版エンジン 「涅槃2(Nehan2-1.22)」を利用させて頂いて、縦書き表示を行っています。(頁の横幅は760 pixel 固定)。表示確認は Mozilla Firefox 18 で行っています。 ですので、閲覧に際しては、 (1) インターネットに接続されているコンピュータ類にて、ウェブ・ブラウザで閲覧すること。 (2) ウェブ・ブラウザにて、javascript が動作している(許可されている)こと。 が、必要です。(多分、大抵は問題ないと思いますが。) なお、ブラウザの動作しているウインドウの横幅は760ピクセル以上のサイズでご覧ください。 また、基本的にオフラインでは閲覧できません。悪しからず。 【 補 足 】 ジャンヌ・ダルク讃歌 by クリスチーヌ・ド・ピザン 原題:Le Ditie de Jehanne d'Arc (1429.07.31) 原文はフランス語です、この頁に掲載している和訳は、主に、http://maidjoan.tripod.com/ditie.html 掲載の 英訳 を元にした、重訳(by cygnus_odile)です。 2012-12-02 から 2013-01-14 にかけて、Blogに対訳を連載したものをまとめました。但し、ブログ掲載分から不自然な日本語などを若干手直ししています。 著者:クリスティーヌ・ド・ピザンについて、参考リンク: (1) Wikipedia Wikipedia (ja)のクリスチーヌ・ド・ピザンの項 (2) クリスチーヌ・ド・ピザン研究家の 記念講演記録
( 2013-02-05 cygnus_odile )
履歴:
2013-02-05 : ウェブサイトへ掲載。 2013-02-05 : ピザン女史の引用する、旧約聖書やギリシア神話等の人物名に、Wikipedia(ja)へのリンクを付加。 2013-02-04 : 若干、和訳修正、ルビタグなど体裁や書式を整える。 2013-02-03 : 縦書き組版エンジン:涅槃2(Nehan2)を利用してひとまず縦書き化。 |