2. 1 三週間このかた、 5.11 息をきらして道を歩きながら、郷子は星が綺麗 9. 2 次の驛《えき》が長くなつたのか、長い汽笛が鳴つた。 12. 6 激しい動悸《どうき》と、淋しい歡喜が、郷子を 15. 5「あなた、疲《つか》れたでせう?」 18. 6 夕御飯《ゆふごはん》をたべるとき、 21. 9 省線電車が、坂の下をひつきりなしに走《はし》つてゐる。 24.10 かういふことは、どんなふうに一枝《かずえ》に傳へていゝのか、 28. 1 四角い白砂糖が二つ、熱い紅茶《こうちや》茶碗の中でじゆうと溶けていつた。 31. 7 寒い晩《ばん》だ。 35. 1 占師は天眼鏡《てんがんきやう》をのぞいて、また洟《はな》をすゝつた。 38. 4 路地の中ほどに、燈火《あかり》の明るい洗濯屋《せんたくや》があつた。 41. 6 名刺には佐山新《さやましん》一と書いてあつた。大久保の百人町に 44.10 バスを降りると、佐山《さやま》はパン屋へ寄つて、洋菓子を買つた。 48. 1 佐山《さやま》はしばらく默《だま》つてゐたが、郷子がハンカチで洟を 51. 5 新一は歌《うた》つてゐた。 54.10 凝つとちゞかむやうなおもひで、郷子はペアの船ばたを兩手でしつかり 57.13 白鬚橋の橋詰《はしづめ》の交番の處へ來て、新一は、 61. 7 新一が、澁谷の二|葉《ば》へかけつけた時は、もう八時前であつた。 64.12 佐山が電話《でんわ》をかけてくれたのか郷子がエレベーターで 68. 4 郷子が、錢湯《せんたう》からかへつてくると、夕陽を正面にして、 71. 9「あら、いゝ部屋《へや》ぢやないの‥‥」 75. 5 今日は立春《りつしゆん》である。あたゝかい陽射《ひざ》しが、 78.11 東京へ戻《もど》つてみると、東京は雪もなく、信州《ゐなか》より 82. 6「よし、俺が、細引きを買つて來る。次手《ついで》に何かいるものはないか?」 85.11 小雨《こさめ》のきさうな、どんよりした空であつた。郷子は早く起きて、 89. 4「おい、小見山、銀座《ぎんざ》に出て茶でも喫《の》むか?」 92.13 士官學校《しくわんがくかう》の馬場《ばば》では、白い上着を着た生徒が、 96.11 汽車はしばらく、轟々《ぐわう/\》と凄まじい音をたてゝ鐵橋の上を走つてゐた。 100. 1 ――僕はどんなに叱《しか》られたかしりません。お父さんとは、 103. 4 雜木林《ざふきばやし》の向ふに、焚火の煙があがつてゐた。 107. 1 昨夜、風をまじへて、降《ふ》りとほしてゐた雨も霽《は》れて、 110. 6「おい、當番《たうばん》、一寸來てくれ」 113.12 小見山《こみやま》がベルを押してゐる。 117. 1「私はどんなに苦しいことがあつても、幸福《かうふく》がすぐまた、 120. 9 郷子《くにこ》がエレヴヱータアを降りると同時《どうじ》だつた。 123.11「このあひだは、あれからすぐ歸りましたか?」 127. 3 別にこれと云ふ職業《しよくげふ》もないし、遊んでゐるのも退屈《たいくつ》 130. 6 鼻《はな》のあたまに、白いあぶらをためて、一枝《かずえ》がすやすや 133.13「支那にも虎《とら》はゐたのかい?」 137. 8 夕方から雨が霽《は》れた。新一は、兵頭と杉本一等兵と三人で 141. 2 敬太郎《けいたらう》は青い空を見上げて、 144. 7 飛行揚のかへり、省線電車のなかで、敬太郎は思ひ出したやうに、 148. 1 小見山は事務所の仕事で、一週間ほど秋田《あきた》の方へ 151. 6 岡部は、このごろ、ひま[#「ひま」に傍点]があるとニユース映畫 154.12 大野夫人が入院してゐると云ふ、四谷大番町の津田病院 158. 2 女中は、澁谷の家へ夫人の家具《かぐ》や寢卷《ねまき》を取りに 161. 5 醫者《いしや》が云つたやうに、大野夫人《おほのふじん》は 164. 9 横林《わうりん》へ鐵道修理に來て、新一の班《はん》は、 168. 2「追撃《ついげき》、また、追撃‥‥で、無錫《むしやく》まで 171. 9 郷子《くにこ》は夫人と三保へ來た。 174. 1 近所の、赤屋根の別莊で鶯《うぐいす》が鳴いてゐる。 177. 8 小見山は、郷子への土産《みやげ》に時計を買つて來たのだと云つて、 180.13 小見山がしづかに二|階《かい》へあがつて來た。 184. 2 郷子が東京へ着いたのは晝《ひる》すぎだつた。 187. 7 隅田の河風《かはかぜ》が、歩きつかれた郷子と安子《やすこ》の顏に、 191. 1 應接間《おうせつま》のピアノの上に、少女の寫眞が掛けてあつた。 194. 6 こゝは小さいミルクホール。岡部《をかべ》は椅子に腰《こし》をかけるなり、 197.12 郷子が部屋《へや》をかたづけてゐると、奈津子がそつと郷子を覗きに來《き》た。 201.11「戸田さんから、家庭ヘ師《かていけうし》に來てくれるひとを、貴女ではどうかと、 205. 1 天文臺の裏門《うらもん》のところで、郷子たちが、バスを降りると、岡部が、 208. 9「郷子さん、蝉《せみ》が鳴いてゐるのね」 212. 1 久しく新宿《しんじゆく》の街をみないので、郷子は天文臺の歸り、新宿驛へ降りて、 215. 9 ―お手紙、二|通《つう》ともみました。務めてをられるところをよされるそうですが、 218. 8 律子《りつこ》が、ゴムの長靴をはいて、路地口から出て來た。 222. 1 六月にはいつて佐山達の部隊は、蕪湖の近くの大橋と云《い》ふところへ行つてゐた。 225. 7 兵頭が、佐山の枕もとで佐山《さやま》の病床日誌をよんでゐる。 229. 1 小見山《こみやま》が、いよいよ、明日は大阪へ發つと云ふ日、岡部は小見山を誘つて、 232. 8「私、つくづく、男の方《かた》つて、怖いと思ひますわ‥‥」 236. 4 郷子は鋏を握つたまゝ縁側《えんがは》へ出てゐた。 239. 8 四五日して、郷子はひとまづ一枝《かずえ》のアパートへ落ちついた。 242.14 一枝がパンを燒いてゐる。郷子は新聞の職業案内を見てゐた。 246. 6 約束の九時に、小見山が自動車で、郷子達を迎へにやつて來た。 249.10 佐山は六月の二十四日に蕪湖から御用船に乘つて、揚子江を南京に下つて行つた。 253. 4 佐山は、大橋で分隊とも別れてしまひ、南京に駐止してゐたら、 256. 7 魚屋をしてゐる律子の叔父が、召集令状を受けて出征することになつた。 259. 9 郷子達が藥王寺へ引越した日は日曜日であつた。 262.13 ――お躯の工合は如何でいらつしやいますか。此間も、お手紙しましたやうに、 266. 2 朝、郷子が臺所口で洗濯をしてゐると、敬太郎が霜降の職工服姿で訪ねて來た。 269. 7 秋すぎるまで、父や、義母や、瀬田の親類から、手をかへ、品をかへて、 272.10 十月の初め、佐山はなつかしい東京へ歸つて來た。 275.12 夕飯のあと、水藥を持つて何時もの看護婦が佐山達の部屋へ這入つて來た。 279. 2 蒲田區仲六郷二丁目矢野方――黄昏頃に、郷子はやつと母の住居を探しあてることが出來た。 283. 4 今日は、神田の學士會館で、天文臺長の宮城から招待を受けてゐたので、 285. 7 律子の姿が小さくなるまで郷子は車窓から顏を出してゐたが、 289. 1「私は、なにもねえ、そのお金がどうつて云ふのぢやありませんよ、―― 292. 5 十月二十六日、武漢陷落の號外が全國を火の粉のやうに飛んだ。 295.12 郷子は湖上をゆく白い周遊船を二階から眺めてゐた。 299. 1 郷子は、叔母に連れられて大阪へ行つた。 302. 5 郷子は大阪驛に近ひこんでゐるのではないかと、 305. 9 佐山は四圍を眺めながら、樂々とした氣持でソフアに腰をおろした。 309. 1 食事なかばに、女中が來客を知らせて來たので、遠藤は中座して應接間に出て行つた。 312. 7「おい、戰友、今日は、第二病棟で、音樂會があつたンだぜ」 316. 1 郷子は小見山の家に寢かされてゐた。 319. 4「小見山さん、私は、此頃、一度だつて死んでしまひたいなンて思つたことはありませんのよ。 322. 5 十二月にしては、珍らしくからつと晴れた、暖い日であつた。 325.10 千鶴子が自轉車を愉しさうに乘りまはしてゐる。雪江は時々、 329. 1 電氣が皎々とついてゐる廣い部屋で、四十人ばかりの若い女がタイプライターの 332. 5 新橋の驛の入口で岡部は郷子を待つてゐた。 335. 8「佐山さんが逢つて下さらない氣持ね 339. 3 今日は、正月二日、長閑な陽射しが、新しい障子に 342. 8 夕方から吹雪になつた。 346. 2 小見山は外套を引つかけると、夜汽車で歸ると云つて宿を出て行つた。 349. 7 朝早く、遠藤氏がキヌ子達を迎へに來た。 352.12「この事變以來、私は、製鐵の生産力擴充の促進を考へ、資源會社の 356. 2 谷あひの笹の斑雪は日のひかりともしくさしてとくることなし 359. 7 一枝はゲレンデヘスキーをかついで行つた。 362.12 地獄谷には小さい宿屋が一軒あつた。 366. 3 四圍は黄昏てきてゐる。 369. 7「釜石へ來て下すつても、僕の生活は、さつきもいつたやうに、 372.13 郷子と一枝が信州へ發つて行くと、律子は一人で映畫を觀に 375.13 翌日、律子は、夕方、事務所で小見山に會つた。 379. 6 郷子と、一枝が、信州から歸つて來たその夜、 383. 2 律子がいよいよ小見山と結婚することがきまると、 386. 5 郷子は奉天の車輛會社ヘタイピストで行かうと思つた。 389.11 佐山が、東北本線の花卷へ着いたのは、朝の十時頃であつた。 392.13 千人峠の驛へ着いたのは四時頃だつた。 396. 3 下りは何でもないだらうとたかをくゝつてゐたが、 399. 5 旅館は製鐵所の直營なので、どの部室も、鑛山や 402. 6 「負傷した兵隊だつて、ぐん/\積極的に働けることが 405. 8 佐山も蟇目《ひきめ》も六時には飛び起きた。 408.10 佐山は尾形氏《をがたし》の盡力で 411. 9 「この取鍋は、外側は鐵板で覆はれてゐて、 414.11 佐山が、釜石の製鐵所へ來て、丁度一ケ月たつた。 417.12「私は帝大の經濟を出たものであります。 421. 1 小見山と律子は、東京でさゝやかな結婚式を濟ませると、 424. 4 ――これから船に乘るところです。波は青くて、 427. 7 渡利鈴子も奉天の車輛會社へ行つてしまつた。 430.13 今日は、神田の學士會館で、岡部と雪江の結婚式の日である。 434. 2 岡部の結婚式の歸り、郷子は歩きながら、涙が溢れて仕方がなかつた。 437. 6 岡部たちの乘るロツクヒードは、早朝七時に離陸するのだ。 440. 9 飛行機が、青い空の彼方へ小さく消えてゆくまで、 443.12「敬ちゃん!」 447. 2 月が路地の上へ出てゐて、美しい月夜であつた。 450.10 郷子は、雨宮が、經濟的な援助をして、 453.11 鑛山へ行く列車の沿線は、すつかり春景色で、 456.13「僕は學校を出たてのほやほやですが、どうも、このごろ、 460. 1 若い鑛夫はなつかしさうに佐山達のところへ走つて來た。 463. 7 佐山と蟇目が、里仁寮へ歸つて來たのは黄昏頃であつた。 466.13 尾形氏はこんなことを云つた。 470. 6 さかしい眼をするあをい狐よ 473.10 郷子は朝の食事が濟むとすぐ、驛へ釜石までの切符を買ひに行つた。 476.12 こんな氣持になつたことに、むつかしい説明はつけられないけれど、 480. 5 車窓からのぞいてゐると、白い雲が風に吹かれて、違い山の向ふや、 483.10「釜石を、こんな處だとは思はなかつたでせう?」