
知れば知るほど面白くなるのがバスケットボールです。ほんと、奥が深い。深みにはまります。そして、深まると、広がるんです。何がって? 世界が!
今や常連となったお父さんたちは、練習試合の合間、顧問の先生たちと話す機会ががぜん増えていました。先生たち、です。そう、相手校の先生だろうと関係ありません。話題は「バスケットボール」ですからね。共通していたんです。それで…、ここはどういうんでしょう、娘との距離感がそうさせた、ということもあったかもしれません。父親の、立ち位置、といったようなもの。少し離れたところから、そう、体育館の、扉の陰から見るような。その境界線。
娘の様子を見にいくうちに、バスケットが面白くなって、先生たちと話すようになり、何より、お父さんどうしが顔見知りになっていきました。ええ。相手校のお父さんだろうと、関係なかったのです。娘をもつ父親、という意味で共通していました。
深まって、広がった。そして、気になり始めました。
もし今見ているバスケットが終わったら、娘たちは…。
(つづく)
ひとつを見る目と、全体を見る目、という見方があるとします。うちの子、がんばれ、と思う目と、チームが勝つか負けるか、行方を見守る目。同じ試合を観ていても、見方によって、面白さの中身は少し変わります。
お父さんはその意味で、たくさんの面白さを発見することができました。何せ、何度も体育館に通いましたからね。娘のチームメイト、ほかの子たちの顔を覚えただけでなく、前にできていなかったことが今日はできてる! おお!という発見も。そんなことがわかってくるとますます楽しくなって、そのうちに、顧問の先生のことなんかも気になり始めたんです。試合でいえば、指揮を執る監督。会社でいえば…上司?(笑)
指揮官はこの場面でどうするか。何を考えているか。どうしようとしているか。今コートに叫んだセリフはいったいどういう意味なのか?? バスケットは専門用語だらけ。ちんぷんかんのこともありました。でも何か重要な意味がある?
前回、お茶当番があるとお話ししましたね。知らないことは聞きましょう。年代も、そう離れてなさそうな相手です。
さてさて、そうやって、扉の陰からこっそり応援しているうちに、顔見知り、が できてきた。もちろん、向こうもお父さん。境遇は、似ているんです。かもしだす空気で わかります。
(あなたも?)(ええ、わたしも)
お母さんたちは、知り合い作りが得意ですが、実は、お父さんたちだって、負けないくらい、うまいんですよ。「どうも、どうも。」でつながります。少数派のなせる業、というのもあったかもしれません。そのうちに、連絡を取り合うようになりました。誰かが体育館に行くと、ほかの誰かに知らせます。
「今日、練習試合、やってますよ!」
「えっ、ほんとですか!」
そうして、いそいそと出かけていくんです。
その学校では、たまたまお茶当番のようなものがあったそうです。これはいい口実になりました。
お手伝いしなくっちゃ。そんな理由をつけながら、いつのまにかお父さんたちは、体育館に出かけていく回数が、少しずつ、増えていったのでした。
それはとても身近で、よくあることからでした。
あ、いえ、今のお父さんたちは、そうではないかもしれません。父と娘の関係って、世代によって少しずつ、変わっていくものですもんね。
とにかくそのはじまりは…、中学生になった娘の、選んだ部活、バスケットボール部の、ある日の練習試合でした。
「お父さんは見に来ないで!」
そう言われていたかどうか(笑)、でも来ちゃった。
お母さんはもうとっくに体育館の中、並んだパイプいすに座って、お隣さんと談笑しながら観戦しています。
さて、お父さん。
体育館の脇の、コンクリの、通路。ドアのふち。
うんうん、ここで十分。
こっそりと、娘の、いえいえ、学校の、部活動のようすを、のぞきにきたのです。