参考資料
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心的外傷と回復<増補版>
ジュディス・L・ハーマン 著
みすず書房
(途中経過及び感想)
ネット上のDrの薦めで購入したもの。日本語で「解離・否認・抑圧」
について読める数少ない本。 「外傷性精神障害」において現在バイ
ブル的な書。僕は最初の30ページ位で、ちょっと挫折気味。心的外傷
のある当事者が読むのはしんどい。読むうちにフラッシュバックなどが起
きたら、読み進めないこと。
LINK:心的外傷と回復・ダイジェスト版(東北大学医学部精神医学ゼ
ミ読書会) |
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体は全部知っている
吉本ばなな 著
文芸春秋
(途中経過及び感想)
掲示板に書き込んで頂いた「おさる」さんに教えて頂いた本。短編集
で、現在二編読破中。 |
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よわむしのいきかた
神岡 学 著
大和書房
(途中経過及び感想)
WELFAREBOXというHPを立ち上げておられる萌花さんに教えて頂い
た本。小さな絵本である。まるで僕の人生が書いてあるのかと思ってし
まった。一ページに書いてある文字の数が少ないので、字を追っていく
のが苦手という人でも、読めます。たぶん、絵本なのに子供向けではな
い。自分の生き方に自信がなくなって打ちのめされた気分の時に出会
いたい本。ひきこもりの多い生活でも、超特急とは言えない生活でもこ
の本は肯定してくれる。 |
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家族の闇をさぐる-現代の親子関係
斎藤 学 著
小学館
(途中経過及び感想)
現在、僕が解離・外傷の先生のところで懸かっているカウンセラーさん
が現在の僕の状態を説明する為に、この本の中のサヴァイヴァーという
言葉で説明してくれた。治療の方向なども書いてある。ただ、著者の
斎藤 学氏は一時期なんでもAC概念で説明できるかのように考えて
い
た人かなってちょっと不安を感じさせる。 |
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TFT<思考場>療法入門ータッピングで不安、うつ、恐怖症を取り除く
ロジャー・J・キャラハン 著
春秋社
(途中経過及び感想)
まだ読んでなくて買って持っているだけだが、かつて参加していたメンタ
ル系のメーリングリストで話題に上っていたもの。僕自身もときどき恐怖
状態で行動できなくなるので読める余裕ができたらマスターしたいと思っ
ている。 |
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慢性的なトラウマからの回復と癒し
西尾 和美 著
ヘルスワーク協会
(途中経過及び感想)
主治医のクリニックの待合室の掲示板にこの本の紹介HPのプリント
アウトされたもので紹介されていた。もちろんまだ読んでいない。
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対象喪失ー悲しむということ
小此木 啓吾 著
中央公論新社 刊
(途中経過及び感想)
人間関係で過食が始まってしまうほど苦しんだ時期にカウンセラーさんに薦められて購入したもの。まだ本がたくさん読めた遥か昔にこの人の本だけはさっぱり分からなかった。 そのことをカウンセラーさんに伝えたら「当たり前よ。こういう分析系の人の文章は専門用語の翻訳した言葉がたくさん使われているからすぐに読みきろうなんて無理よ。思い当たった時にまた読み続ければいいのよ。」ということで思い返すと何度目かの購入。新書版なのでウエストポーチに入れて持ち歩いている。思いっきり悲しんで泣いた事など幼児期以外に一度もない。普通の感情なのに本当に泣いている人を(特に男性は)見たことが無いような気がする。 |
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解離性障害
以前、このページは自分の言葉で書けずに他のサイトからお借りした言葉で表現を濁しておりましたが、今は自分の言葉で書いてみたいと思って書き直しました。
人間には、自分を守るためのシステムっていろいろありますよね。心も体も発達してからなら「納得のいかない出来事に遭遇」したとき「とてもショックな出来事に遭遇」したときに「理屈」で、あれはとても特別な出来事で、あんなことに理解を示していたら自分が変になっちゃうから関わりたくないとか考えてその出来事から一定の距離を取ることができますよね。でも言葉とか理屈とかを覚えるまえの幼少期にはどうでしょう。大人と同じ自分を守るためのシステムは働きません。幼少期には自分の心は守れないのか、というとそうではないのです。無自覚、無意識の状態でも心には自分を守るためのシステムがあるのです。それがここでは使わない言葉も入っていますが「解離」「否認」「抑圧」という心に自然に備わったシステム(防衛機制というらしい)です。ここでは「解離」について書きますが、「否認」も「抑圧」も心の発達段階によって現れ方が違うだけで自分を無意識に守るためのシステムであることは同じです。すべて自分の身に「なかったこと」にしてしまうので、その意味では同じことなのです。これは理屈などを覚える前のことですが、そうやって自分の心を守ったことは意識はしなくても忘れません。「納得のいかない出来事に遭遇」する度にこの方法はスタイルとして習い性として発動されます。これは心や身体の発達した後も無意識に発動されることがあります。いままで本人としては自然にそうしてきたからです。
ComplexPTSDって
「心的外傷と回復」の著者ジュディス・L・ハーマンが学会誌に発表したものを日本の学会誌が転載したものらしい。ボクの主治医が診察の過程で渡してくれた資料の中にあったもの。
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Complex PTSD : A Syndrome in Survivors of
Prolonged and Repeated Trauma
Judith Lewis HERMAN
J.Traumatic Stress.5:377-391,1992
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要約 :遷延性で反復性の外傷体験者における外傷後障害の複雑型の存在をこの展望で証明する。この症候群はDESNOS(Disorder of Extreme Stress Not Otherwise Specified)の名でDSM-IVに含めるか否かが検討されている。現在のPTSDの診断は主として比較的限局された外傷的出来事の体験者の観察に由来している。この診断定式は、遷延性反復性の外傷のプロテウス的な残遺を、補足し損ねるのである。一度の外傷的出来事とは対照的に、遷延性反復性の外傷は、被害者が加害者の支配下で、ある種の拘禁状況におかれていた場合にのみ生じ得る。強制的支配への服従の心理的インパクトは、その服従が政治という公的領域においてであれ、家庭的性的関係という私的領域においてであれ、多くの共通する特徴を有する。
序
現在のPTSDの診断定式は主として比較的限局された外傷的出来事(戦闘、災害、レイプなど)の体験者の観察に由来している。この定式遷延性反復性の外傷のプロテウス的な残遺を補足し損ねることが指摘されてきた。限局された外傷的体験とは対照的に、遷延性反復性の外傷は、被害者が加害者の支配下で逃走不能なある種の拘禁状況におかれた場合においてのみ生じ得る。そのような条件には監獄、捕虜収容所、奴隷収容所がある。ある種の宗教教団、売春宿、性的搾取を目的に組織された集団、そしてある種の家庭においてもそうした条件が存在する。
被害者に加害者との長期間にわたる接触をもたらす捕らわれの状態は特殊なタイプの強制的支配を作り出す。このことは、被害者が捕らわれの状態におかれるのが主として物理的力(捕虜、人質のように)によってであれ、物理的、経済的、社会的、心理的手段の組み合わせ(宗教的カルトメンバー、被虐待妻、虐待児童のように)によってであれ、同じことである。強制的支配への服従のもたらす心理的インパクトには、その服従が政治という公的空間で生じるにせよ、性的家庭的関係という私的(しかし同時に政治的)と思われる空間で生じるにせよ、多くの共通する特徴がある。
本稿では、長期にわたる反復性外傷のサヴァイヴァーにおけるcomplex PTSDの存在の証明を、リヴューによって示す。このcomplex PTSDという予報的定式は現在DESNOS(Disorders of Extreme Stress)との名でDSM-IVに導入するか否かが検討されている。より広範な仕事の流れのなかで、私は最近、長期にわたる家庭内、性的被害者ないし政治的犠牲者に関する過去50年間の文献を調査した
(Herman.1992)。その著書ではサヴァイヴァー自身による報告、臨床的記述、利用可能な文献がある領域では、より方法論のしっかりした臨床研究を取りあげた。文献展望では現存のPTSDの診断基準には必ずしも当てはまらない報告例に特に注意を払った。利用した文献の著者の国籍は多数にのぼるが、英語の文献または英語の翻訳の存するものに限った。
外傷後障害スペクトラムという概念はその領域の多くの主要な寄稿者によって提唱されていた。Am.J.Psyの編者への手紙(1989)でKolbはPTSDの"heterogeneity異種性"について書いており、「PTSDと精神医学との関係は梅毒と医学との関係のようなもので、PTSDは時期によりありとあらゆるパーソナリティー障害の形を呈し得る」との見解を示している。ナチによるホロコーストのサヴァイヴァーの研究に基づきNiederlandは「外傷神経症traumatic neurosisという概念は」サヴァイヴァー症候群(Krystal,1968,p.314)の「臨床症状の多彩性と重症度をカヴァーするには不十分であると思われる」としている。同じ対象を扱ったTanyは「精神症状は対象関係障害や仕事、世界、他者、神への態度の障害としてのみ顕われる性格変化の形に隠されていることがある」(同書p.221)と記載している。同様にKrollら(1989)は東南アジアからの亡命者についての研究に基づき、「強度の長期にわたるand/or広範な心身トラウマータの影響についての所見を考慮に入れる拡張されたPTSD概念」の必要性を提起している。Horowitz(1986)は外傷後性格障害"post-traumatic character disorder"という概念を提唱しており、BrownとFromm(1986)は"複雑complicated PTSD"についてふれている。 児童期虐待のサヴァヴァーを研究する臨床家も拡張された診断概念の必要性を懇請している。Gelinas(1983)は、幼児期性的虐待のサヴァイヴァーが解離症状、物質乱用、衝動性、自傷、自殺傾向を伴う慢性抑鬱患者として「偽装された外観」を呈することを記載している。彼女はその基底にある精神病理を複雑外傷神経症と規定している。Goodwin(1988)は、長期にわたる幼児期虐待の後遺を重症の外傷後症候群として概念化し、それに遁走その他の解離状態、自我分断化、情動および不安障害、再演reenactmentと再被害者化revictimization、身体化、自殺傾向suicidallyを含めている。 臨床知見から単なるPTSDを超越する三つの広範な障害領域が同定される。症候的なものがその第一の領域である。すなわち長期にわたる外傷のサヴァイヴァーにおける症候像はしばしば単純PTSDの場合より複雑で、び慢性で、執拗である。第二の領域は性格に関する領域である。すなわち長期にわたる虐待のサヴァイヴァーは関係性やアイデンティティの変形を含む特徴的なパーソナリティー変化を呈する。第三の領域はサヴァイヴァーにみられる自身および他者による反復損傷への脆弱性である。
長期にわたる被害者の後遺症状
1 <症状の多様性>
長期にわたる虐待は広範な精神医学的症状の発展を促進する。虐待歴、特に幼児期のそれは精神科患者となる人の主要な前駆因子のひとつのように思われる。慢性の幼児期虐待のサヴァイヴァーで精神科患者となる者は一部に過ぎないが、成人精神科患者のかなりの人達(40-70%)が虐待のサヴァイヴァーである。(Briere and Runtz,1987 Briere and Zaidi,1989,Bryer et al.,1987,Carman et al.,1984;Jacobson and Richardson,1987) 患者となるサヴァイヴァーは極めて多種多様な愁訴を呈する。虐待体験のない患者と比べ、彼らの窮状の程度は高度である。症状の詳細な調査で、いくつかの領域(身体、認知、行動、対象関係など)に重い病理が見いだされる。Bryerら(1987)は精神科の入院患者を調査し、身体的あるいは性的虐待体験のある女性は、標準化した測定で、身体化、抑鬱、全般性および恐怖性不安、対人過敏性、パラノイア、「擬似精神病psychoticism」(解離症状は特別には測定されなかった)に関し、高得点であった、と報告している。Briere(1988)は精神科救急部門の外来患者を調査し、幼児期虐待のサヴァイヴァーでは不眠、性機能障害、解離、怒り、自殺傾向、自傷、薬物嗜癖、アルコール中毒の頻度が有意に高いと報告している。「症状チェックリスト」を用いた研究のうち、恐らく最も印象的な知見は幼児期虐待の既往と有意に相関することが見いだされた症状リストの総花性である(Browne and Finkelhor,1986)。この広範な症状のうちPTSDの古典的診断基準に直ちには合致しない三つのカテゴリーを筆者は選んだ。それは長期にわたるトラウマの後遺症状として
の身体症状、解離症状、感情症状である。
2 <身体化症状>
反復外傷はPTSDの身体症状を増強し、全般化させるように思われる。慢性的に外傷を被った人には、冷静さや快適さの基底状態に何ら認め得る異常なしに、過覚醒、不安、焦燥が存する(Hilberman,1980)。いずれ彼らは不眠、驚愕反応、焦燥感のみならず、その他多くの身体症状をも訴える。緊張性頭痛、胃腸症状、腹痛、背部痛、腰痛は極めてありふれている。サヴァイヴァーはまたしばしば振戦や息苦しさや嘔気を訴える。ナチによるホロコーストのサヴァイヴァーの臨床研究では心身反応が実際上普遍的であった(Hoppe,1968:De Loos,1990)。東南アジアの難民収容キャンプの亡命者についても同様の知見が報告されている(Kroll et al.,1989;Kinzie et al.,1990)。サヴァイヴァーのなかには、長期にわたる捕虜状態からくる損傷を主として身体にまつわる用語で表現する者もいる。非特異的身体症状は大変長期にわたって訴えられ、時ととも増加する(van der Ploerd,1989)。臨床報告文献も身体化障害と幼児期虐待との関連性を示唆している。Briquetの名が冠せられている身体化障害についての彼の最初の記載には、夫婦間暴力と児童虐待に関する逸話への言及が多数記載されている。12歳未満の87名のヒステリーの子供を取り上げ、1/3で「日常的に両親から手荒な扱いを受けるか常時恐怖にさらされるか苛酷な命令に支配されていた」と指摘している。別の10%の子供については、親からの虐待よりも外傷体験が症状の原因であるとしている(Mai and Mersky,1980)。60名の身体化障害の女性に関する対照研究(Morrison,1989)では、55%が子供時代に性的いたずらを、たいていは近親者から受けていることが見いだされている。この研究は早期の性的体験にのみ焦点があてられている;身体的虐待や家庭内のより一般的な暴力的風土はたずねられていない。身体化障害患者の幼児期の生活史に関する体系的研究はなお遂行されねばならない。
3 <解離>
捕らわれの状況下の人は意識を変容させる技術の熟練工である。解離の実践、考えることの意図的抑圧、狭隘化、時には徹底的否認を通じて、耐え難い現実を変化させる術をおぼえる。囚人はしばしばトランス状態の誘導を互いに教え合う。これらの手段は飢餓、寒さ、痛みを我慢するために意識的に用いられる(Partnoy,1986;Sharansky,1988)。長期の幽閉や隔離の間に、陽性および陰性幻覚形成能力やパーソナリティーの一部を解離する能力を含む、通常は極めて高い被催眠性のある人にのみ見られるトランス形成能力を発達させる囚人もいる。[Elaine Mohamed in Russell(1989)and Mauricio Rosencof in Wenschler(1989).] 時間感覚、記憶、集中の障害はほぼ必ず報告されている(Allodi,1985;Tennant et al.,1986;Kinzie et al.,1984)。時間感覚の変容は未来の閉塞とともに始まるが、最終的には過去の閉塞にも行き着く(Levi,1958)。現在と過去との連続性の破綻はしばしば囚人が解放された後にさえも持続する。囚人は一見通常の時間に復帰したように見えても、心理的には監獄の無時間性のなかに閉じ込められたままである(Jaffe,1968)。 長期にわたる幼児期虐待のサヴァイヴァーではこれらの解離能力が極限まで発達する。Shengold(1989)は「いい親という妄想」を保持するために被虐待児童が作り上げる「心の寸断化操作」を記載している。彼は「自己や両親の矛盾するイメージが決して合体することのない心の隔離された分画の確立」を指摘している。例えば、多重人格障害に見られる名人芸のような解離はほぼ必ず広範で長期にわたる幼児期虐待歴を有するものである(Putnum et al.,1986;Putnum,1989;Rose et al.,1990)。児童期虐待の重症度と解離症状の広がりとの類似の関連は境界パーソナリティー障害においても(Herman et al.,1989)、一般大学生においても(Sanders et al.,1989)報告されている。
4 <感情の変化>
大変強固で安定した信念の体系を保有する人達がいて、そうした人は長期間にわたる虐待という厳しい試練に耐え、信頼感を無傷のまま保持することができる。しかしながら、このタイプの人というのは極稀である。多くの人は人にも神にも見放される辛酸を体験する(Wiesel,1960)。このような著しい動揺を与える心理的喪失は多くの場合頑固な抑鬱につながる。遷延した抑鬱は、慢性的外傷を被った人についての、ほぼすべての臨床研究において最も頻度の高い知見として報告されている(Goldstein et al.,1987;Herman,1981;Hilberman,1980;Kinzie et al.,1984;Krystal,1968;Walker,1979)。長期の外傷体験のあらゆる側面は抑鬱症状の悪化に結び付く。PTSDの慢性過覚醒的および侵入的症状は、Niederlandが「サヴァイヴァーの三徴」と呼んだ不眠、悪夢、心身症的愁訴を生じる鬱病の植物系症状と混在する(Krystal,1968,p.313)。PTSDの解離症状は抑鬱の集中困難とともに出現する。慢性外傷の主体性麻痺は抑鬱のアパシーや無力性と結び付く。慢性外傷による愛着attachmentの崩壊は抑鬱の孤立と引きこもりを助長する。慢性外傷により低下した自己イメージは抑鬱の罪責的反すうの火に油を注ぐ。慢性外傷で体験される信頼感の喪失の苦しみは抑鬱の無力感とともに出現する。 収監された人の屈辱の怒りは抑鬱の重苦しさに付け加わる(Hilberman,1980)。虜囚である期間、侵害者に対する怒りを表出することはできない;そうすることは生き残りの可能性を危険にさらすことになる。釈放後でさえ、捕獲者への怒りの表明に対する報復を恐れ続けることもある。さらに、サヴァイヴァーは無関心のままで救出することのできなかったすべての人々に対して表出されない怒りの重圧を引きずる。この怒りを統御する努力はサヴァイヴァーの社会的引きこもりと主体性の麻痺を憎悪させる。時折見られる他に対する怒りの爆発はさらにサヴァイヴァーを疎外し、関係の回復を妨げる。怒りの内在化は悪性の自己嫌悪や慢性自殺傾向を招来する。帰還した戦争捕虜の疫学的研究は、殺人、自殺、疑わしい事故の結果としての高い死亡率を一貫して報告している(Seagal et al.,1976)。被虐待妻の研究も同様に頑固な自殺傾向を報告している。100人の被虐待妻を対象にした研究では、42%に自殺企図が見られている(Gayford,1975)。長期の被虐待者にしばしば大鬱病の診断が下されているが、外傷との関連はしばしば失われている。治療不能の抑鬱の外傷由来性が認識されていないと、患者は不完全にしか治療されたことにならないのである(Kinzie et al.,1990)。
長期間の犠牲による性格変化
prolonged victimization characterological sequelae
1 <関係性の病的変化>
幽閉状況では侵害者が犠牲者の生活における最も強力な人物となり、犠牲者の心理は時とともに、侵害者の行動や信念によって形作られる。一人の人間が別の人間をコントロールする方法は著しく似通っている。これらの方法はアメリカ人戦争捕虜におけるいわゆる「洗脳brainwashing」において初めて体系的に詳細が明らかにされた(Biderman,1957;Farber et al.,1957)。その結果、アムネスティ インターナショナル(1973)は広範な文化圏からの政治犯の証言にもとずき強制の手段の体系的総説を出版した。被虐待妻(Dobarsh and Dobash,1979;NiCarthy,1982;Walker,1979)、被虐待児(Rhodes,1990)、被強制売春婦(Lovelase and McGrady,1980)の強制手段の説明は人質、政治犯、強制収容所のサヴァイヴァーのそれと気味悪いほど酷似している。政治組織的ないし性的搾取の侵害者は強制手段を互いに教え合うが、家庭内虐待の加害者は再発見しながら侵すのである。 他者のコントロールを確立する手段は体系的、反復的に心理的トラウマを加えることである。この手段は恐怖と無力感を染み込ませ、侵害者との関係における犠牲者の自己意識を破壊し、侵害者への病的愛着を育てて行くよう仕組まれる。暴力は恐怖感を染み込ませる普遍的な手段の一つであるが、犠牲者あるいはその親近者への重篤な危害や死の恫喝のほうが実際に用いられる手段として、暴力よりはるかに多いものである。予測不能な暴力の暴発や数限りない些細な要求や小規則も恐怖感を増強する。 恐怖感を与えることに加え、侵害者は犠牲者の自律感覚を破壊しようとする。それは犠牲者の身体および身体機能の支配を通じて行われる。食物、睡眠、シェルター、運動、清潔、プライヴァシーの剥奪が実行されることが多い。一度侵害者がこの程度のコントロールを達成すると、侵害者は凌辱のみならず慰謝の潜在的源泉となる。ちょっとした甘やかしを気まぐれに承認することは、不断の剥奪や恐怖より、はるかに有効な犠牲者の心理的抵抗を打ち砕いて行く手段である。 犠牲者が他者との強い絆を維持している限り、侵害者の力は限定される;それ故、侵害者は必ず犠牲者を孤立させるものである。侵害者は通信や物質的支援を禁じようとするのみならず、犠牲者と他者との情緒的つながりをも破壊しようとする。犠牲者「調教」の最終段階は、他者への犯罪を目撃したり、それに参加して最も基本的な愛着対象を裏切るよう強制されて初めて達成される。 犠牲者は隔離されると、次第に侵害者に依存的になって行くようになる。それは生き残りや基本的な身体的ニードのためばかりでなく、情報や情緒的支えのためでさえもある。死の恐怖や孤立状態への長期にわたる幽閉は捕獲者と犠牲者との同一化による結合を確実に醸成する。これが人質に生じる「外傷性結合traumatic bonding」であり、人質は捕獲者を救済者と見るようになり、救済者を恐れたり憎んだりするようになる。Symmonds(1982)はこの過程を、「犠牲者の生命を危険に晒す当の人物にしがみつくように強いる『心理的幼児症psychological infantilism』への強制的退行」として記載している。同じ外傷的結合は虐待者abuserと被虐待妻battered womanとのあいだ(Dutton and Painter,1981;Graham et al.,1988)や被虐待児と虐待する親とのあいだ(Herman,1981;van der Kolk,1987)にも生じ得る。同様の体験は全体主義的宗教「カルト」に導かれた人々によっても報告されている(Halperin,1983;Lifton,1987)。 侵害者への増大した依存性とともに主体性や計画性が狭隘化する。完全には「調教」されていない囚人は環境に能動的に関与する能力を放棄してはいない。逆に、彼らはしばしば特有の巧妙さや決意をもって生き残りのための小さな日常業務に邁進する。しかし、主体性の領域は侵害者によって命じられる幽閉により次第に狭小化する。囚人はもはや逃げ方を考えなくなり、生き残り方やもっと耐え易い虜囚をどうやって得られるかを考えるようになる。主体性の領野のこの狭小化は長期のとらわれの状況下で普通のこととなり、囚人は解放された後に学習のし直しをしなくてはならない。[例えば、Hearstの証言(1982)やRosencof in Weschler,1989.を参照] 世界への能動的関与の能力のこの狭小化のために、慢性的に外傷を被った人はしばしば受動的で無力性であると記述される。被虐待女性や他の慢性的外傷被害者の状況に「学習された無力性learned helplessness」の概念を実際に適用している理論家もいる(Walker,1979;van der Kolk,1987)。長期の虜囚状態は、試行錯誤への若干の耐性のある比較的安全な主体性の領域の通常の感覚を侵食し破壊する。慢性的に外傷を被った人にとっては、どんな独立した行動も陰惨な懲罰の危険をもたらす非服従なのである。 解放の後になお存在する、侵害者がいる、という感覚はサヴァイヴァーの対象関係世界の主たる変化である。幽閉中の必要から犠牲者の注意が単極化する強制された関係は内的生活の一部となり、解放後にも注意を奪い続ける。政治犯では、この存続する関係は、特別な侵害者の犯罪歴や世界の悪の検閲されない力についてのより抽象的な関心についてくよくよ考え込む形をとることがある。解放された囚人は捕獲者を追跡したり、恐れたりし続ける(Krystal,1968)。性的、家庭内、宗教カルトの虜囚では、この存続する関係はより両価的な形をとりうる;サヴァイヴァーは以前の捕獲者を恐れ続け、捕獲者が最後には自らを追い詰めることを期待し続ける;犠牲者は捕獲者なしでは空虚で、混乱していて、無価値であると感じたりもする(Walker,1979)。 逃亡後でも捕獲前に存在したような関係を単に再建することは不可能である。今やあらゆる関係は極端なレンズを通して眺められる。ほどほどの関与や主体性の危険性の幅がないのとちょうど同じように、ほどほどの関与と関係を持つことの危険の幅もないのである。サヴァイヴァーは、あたかも生と死の問題がかかっているかのように、濃密な愛着と恐怖に彩られた引きこもりとの間で動揺しながら、すべての関係に向き合う。 幼児期虐待のサヴァイヴァーにおいては、こうした関係の障害はさらに増幅されている。強度で不安定な関係を伴う愛着attachmentにおける動揺はしばしば観察される。こうした障害は境界パーソナリティ障害について最も充全に記載されているが、そうした患者の大部分は幼児期の虐待歴を有している。臨床観察に基づく広範な文献を省猟した最近の経験的研究は特異なパターンの関係困難性を詳細に輪郭化している。そうした患者は一人でいることに耐えることが極めて困難であるが、他者に対して過剰に用心深い。一方では見捨てられることに対して戦々恐々としており、他方では支配されることを恐れており、卑しむべき服従と凶暴な反逆とのあいだで行きつ戻りつする(Melges and Schwartz,1989)。彼らは、通常の境界が認められない「特別の」依存関係を、理想化された世話をしてくれる人との間に形成しようとする(Zanarini et al.,1990)。境界侵犯、葛藤、搾取の可能性を秘めた、濃密で高度に「特別な」関係を発展させる傾向を含む、大変よく似たパターンがMPD(多重人格)の患者について記載されている(Kluft,1990)。
2 <アイデンティティの病的な変化>
強制的支配関係への服従は犠牲者のアイデンティティに甚大な変化を招来する。自己の構造全体はーある種の一貫性と目的を与えてくれる身体イメージ、他者の内在化したイメージ、価値観や理想ー侵食され、体系的に打ち壊される。ある種の全体主義システム(政治的、宗教的、性的/家庭内)内では、この過程は犠牲という名を消し去る程のものとなる(Hearst and Moscow,1982;Lovelace and McGrady)。単発の急性外傷の犠牲者は、『あの出来事以来私は「私自身ではない」』と言うことがあり、慢性外傷の犠牲者は自己を所有しているという感覚を喪失していることがある。サヴァイヴァーは人間でない生き物になってしまったと自分のことを記述することがある(Lovelace and McGrady,1980;Timerman,1981)。Niederland(1968)は、難民収容キャンプでの臨床経験で、個のアイデンティティの変化はサヴァイヴァー症候群に必発の特徴であると記載した。彼の患者の大半は「もう私は別人になったんです」とこぼしたが、もっとも重症の被害者は単に「私はもはや人間ではないんです」と述べた。 幼児期虐待のサヴァイヴァーはもっと複雑なアイデンティティの変形を示す。罪責的、邪悪なといった色彩を混じた悪性の自己感は広く見られる。自己感覚の断片化もよく見られ、最も劇的な極として多重人格障害を見る。Ferenczi(1933)は虐待児のパーソナリティの「霧状化」を記載している。Rieker and Carmen(1986)は被害児の中心病理を「他者の判断に合わせることに由来するアイデンティティの障害と断片化」として記載している。アイデンティティ形成の障害も境界および多重人格障害患者の特長であり、その大部分の者に深刻なトラウマの既往がある。MPDにおいては、自己の分断化による解離性の変化が中心的特長であることは当然のことである(Bliss,1986;Putnam,1989)。BPDの患者では分断化を形成する解離能力を欠いているが、統合されたアイデンティティの形成困難は同様に存在する。不安定な自己感はBPDの主要な診断基準の一つであり、自己と他者の内的表象の「スプリッティング」が基底にある中心病理であると考えている理論家もいる(Kernberg,1967)。
長期間の犠牲に晒された後の
傷の反復repetition of harm
反復現象は重篤なトラウマの後遺症として広く指摘されている。その問題は最近van der Kolk(1989)によってきちんとリビューされた。単純PTSDでは、この反復現象は当該トラウマの侵入的記憶、身体感覚的再体験reliving現象、行動上の再演reenactment現象などの形をとる(Brett and Ostroff,1985;Terr,1983)。長期間の反復性トラウマの後、サヴァイヴァーは自傷であれ他者によるものであれ反復的に損傷を被る危険性があることは好対照である。この反復現象は最初のトラウマとは直接的関係はない;その現象は単なる再演や再体験ではない。むしろ、変装された症状や性格の形をとる。 精神科患者の約7〜10%は故意に自らを傷つける(Favazza and Conterio,1988)。自傷は自殺企図とは全く異なるものと思われる反復行為である。自己損傷のこの強迫型は長期反復性のトラウマ既往と強い関連があると思われる。単回の急性トラウマの後にはまれにしか見られない自傷行為は遷延性の幼児期虐待のよくある後遺症である(Briere,1988;van der Kolk et al.,1991)。自傷行為やその他の突発性の身体への攻撃は虐待が幼児期初期に始まったものに生じることが多いとされている(van der Kolk,1992)。 繰り返し犠牲者となる現象も遷延した幼児期虐待の既往と特に関連しているように思われる。大規模な疫学的研究は、幼児期虐待のサヴァイヴァーは大人になってからの反復損傷の危険性が高いことを証明している。例えば、レイプ、セクハラ、暴力の危険性はあらゆる女性にとって高いものではあるが、幼児期の性的虐待のサヴァイヴァーの場合約2倍となる(Russell,1986)。ある臨床家はこの現象を「座っているあひる症候群」とさえ名付けている(Kluft,1990)。 最も極端なケースでは、幼児期虐待のサヴァイヴァーは受け身的傍観者の役割で、あるいはよりまれではあるが、侵害者として他者の虐待に参画していることに気づくこともある。例えば、Burgessら(1984)は一年間以上にわたってセックス仲間に搾取されていた子供は加害者の考え方の体系を取り込み、他者に搾取的となり易かったと報告している。長期の幼児期虐待は特に男性においては虐待者となるリスクファクターであるように思われる(Herman,1988;Hotaling and Sugarman,1986)。女性の場合、家庭内暴力domestic violence目撃の生活史(Hotaling and Sugarman,1986)あるいは幼児期の性的被害者であったこと(Goodwin et al.,1982)が虐待する相手との結婚につながる危険性を高めるように思われる。しかしながら、「虐待の世代間サイクル」というよく知られた概念に反し、圧倒的多数のサヴァイヴァーが他者を虐待することはないということを記憶に止めておくべきである(Kaufman and Ziegler,1987)。サヴァイヴァーはその子供たちに、自らにまで押し広げることのできなかった世話/保護能力を、動員すべきである(Coons,1985)。
結 論
文献展望は、長期反復性犠牲のサヴァイヴァーに於ける複雑complex外傷後症候群という概念への、非体系的ではあるが概括的で経験的な支持を与える。これまで定義されることのなかったこの症候群は単純simple PTSDと共存するが、それ以上のbeyondものである。その症候群の特徴は多型的なpleomorphic症状像、持続するパーソナリティ変化、自傷か他害かを問わず高い損傷harm反復の危険性
である。 予見可能な長期の反復性トラウマの結果としてのこの症候群を見落とすことは、サヴァイヴァーの誤解すなわち一般社会や精神保健の専門職種にある人々に等しく共有される誤解に、寄与することになる。慢性的に外傷を被る人々についての社会の判断は粗いものであった(Biderman and Zimmer,1961;Wardell et al.,1983)。犠牲者の性格のあら捜しをする性癖は政治的組織的な大量虐殺においてさえ認められる。かくして、例えばナチによるホロコーストの二番刈りはユダヤ人の「受動性」に関するいつまでも続く知的論争や彼らの運命における彼ら自身の「共謀」をさえ認めている(Davidwicz,1975)。長期間にわたる恐怖を一度も体験したことのない観察者、強制的な支配手段についての理解のない観察者は、自分たちなら同様な状況下にいても犠牲者より強い心理的な抵抗力を示すとしばしば高をくくるものである。サヴァイヴァーの困難は、トラウマが知られているときでさえ、あまりに安易に元来の性格の問題に帰せられがちである。おうおうにして性的/家庭内暴力の場合がそうであるように、トラウマが秘密にされている場合にはサヴァイヴァーの症状や行動は素人のみならず精神保健の専門家にさえも、訳の分からないものに見える。 生き残りへの関心に帰趨してしまった人の臨床的状態像は、なおもしばしばサヴァイヴァーの生来の性格傾向と誤解される。強制的支配という条件下で生じたパーソナリティの変形を理解する事なく、普通の条件下で発達したパーソナリティ概念がしばしばサヴァイヴァーに適用される。こういうわけで、慢性トラウマの複雑後遺症に
悩む患者は、パーソナリティ障害を有するものと、しばしば誤診される可能性がある。彼らは「依存的」、「自虐的」、「自滅的」と記載されることがある。旧来のマゾヒズムや反復強迫という概念は、複雑外傷症候群という概念に取って代わられる方が、より有用であるように思われる。 パーソナリティ障害という概念の誤った適用は最もスティグマを押し付ける診断的誤りであろう。しかし、それが唯一の誤りではない。一般に、PTSDを含む現存の精神医学的規準としての診断基準は、長期にわ
たる反復性のトラウマのサヴァイヴァーのために作成されたものではなくて彼らにはうまくフィットしない。本稿リビューで証明されたことは、短期の限局性のストレス反応から単回性の急性トラウマ、さらには単純PTSD、反復トラウマへの長期の暴露に続発するDESNOS(complex disorder of extreme stress)までの広がりのある障害スペクトラムを包含するために、PTSD概念拡張への強い支持を提供するものである。
Jun.17,'95. 中山 訳
文献 省略