無謀とは言わせない
長編歴史(大捏造)ファンタジープロジェクト

「多聞転生」

 

(背景)
 時に13世紀初頭。バラモンの神々の国であったインドへ、ムスリム勢力が侵略をはじめる。強大なムスリヌ王朝(ガズナ朝)に立ち向かうのは、デリー近郊に本拠を持つ小国(ラージプート諸王国)連合であった。最初のうちは地の利を生かして防戦していたラージプート諸国の将兵たちも、度重なる侵入に、一人また一人とガズナ朝へ投降していくようになる。なおも抵抗し続けるラージプート王の領土では、戦費の負担とヴェルナ制度(こんにちのカースト制度の原型)からの自由を求めて、賎民−特にカースト以下とされた不可触民たちが積極的にムスリヌの傭兵へ身を投じるようになる。そのような、インドのイスラム化前夜に物語は始まる。

 

(登場人物)

カーファ公:デリーの南に版図を持つ小公国の王。先王の3男であったが、兄弟を倒し王位についた。猜疑心が強く、縁者を次々に謀殺し恐怖政治を続けていた。物語のはじめでは、50歳。子供が無く後継者に悩んでいる。

スライ:カーファ公の王子。国随一の覚者に薦められ、孤児院から乳飲み子の頃に貰われてきた(ただしこの事実は数人しか知らなかった)。やがて、政争に巻き込まれ、出生の秘密が暴かれる。妹との後継者争いに勝ち抜くために、ムスリヌとの無謀な戦へ立ち向かうことに。

テララ:カーファ公の王女。スライが貰われた一年後に生まれた、カーファ公の実子。幼いころからスライを慕っていたが、政争により引き裂かれ、やがて兄と王位を争うようになる。しかし、彼女の胸の奥ではアンビバレントな思いが。

ブンナ:ひょんなことからスライと知り合った、中国からの流れ者。棒を自在に操り敵を昏倒させる秘術は、敵軍を恐怖に陥れる。

おさげ:これまたスライにひょんなことから雇われたスパイ。小柄で根は臆病な男。決断は遅いが、一度決めると果敢な行動を取る諜報の天才。

ラーフラ:普段は自己矛盾に悩みつつも、50人の手下を百倍の人数にも見せてしまう、スライの数少ない股肱の臣。

ガエナ:舞踊の師範を母に持つ。男の子だが、幼いころから当然のこととして、母の跡目を継ぐように教育されてきた。が、母の死とともに、貧しさのゆえにムスリムの傭兵として働かざるを得なくなる。

ラファド:ガエナの相棒(間違っても、C minorのコードではない)。三日月刀の達人だが、戦いそのものよりも、ブンナとの一騎打ちに燃えている、ちょっと困った傭兵。

アレン:遠くローマから放浪してきた、元祖ヒッピー。何をしにきたのかは今ひとつ不明であるが、シャカムニの教え(古代仏教)に目覚め、ラブアンドピースを説き続ける。物語の終盤で、大どんでん返しの活躍をしてもらう予定(うまくいくかな?自信ないけど)

 

(おことわり)

 僕の能力が及ぶ限り、当時のイスラム社会や、ヒンディー社会を的確に描写するつもりですが、なにせ、インドやイスラム社会に属する国に行ったこともなく、その地域の人たちとも接触がありませんので、かなりの部分想像をタクマシクして描くつもりです。描写に不自然な点や僕の誤解をお知らせくださると、非常に嬉しいです。喜んで修正いたします。

 また、イスラム教やバラモン教の教義について仏教徒の僕が書くとどうしても批判的に書いてしまいがちになると思います。そのようなバイアスの掛かった記述は、できるだけなくしますが、どうぞ大目に見てやってください。

 さらに、物語の進行上、カースト制度の原型になった「ヴェルナ」制度(特に、長い間存在を対外的に隠してきた「不可触民」のありよう)を、是認しているような書き方になる場合があると思います。その場合には、僕の思想ではなく、僕の文学的な力不足を批判してください。

 いまなおインド社会において影を落とすカースト制度問題は、振り返って考えれば日本の被差別部落問題と似ている面があります。特に制度的に解消されてから半世紀以上経つのに、「記憶」から消えないという点は、大きな共通点でしょう。(かつての被差別部落民への「差別戒名」も、「ヴェルナ」制度の最下層民をさす言葉−シュードラの音訳が当てられていたのです!)

そう考えると、僕(日本社会に生まれ育ったヤマト族の人間)にとっても、目の前の問題です。敢えて描くのは、現在の日本社会の暗喩として、なのです。

 インドやその周辺に暮らす、イスラム教徒、ヒンズー教徒、仏教徒、シーク教徒(この物語ではシーク教ができていませんが)、少なからずおられるクリスチャン…が、より自然に親密にご近所付き合いできる日がやってきますように、そして、ぼくらヤマト族の人間とも自然な隣人であり続けられますように!

この物語が、その願いに向かって気高く収斂していきますように。

 

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