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☆ 地下活動 ☆

夏
補習授業4日目。

倫理の太った教師がくしゃくしゃ」になったハンカチで
汗をぬぐいながら「エロスとアガペー」について説明している。
エロの知識と妄想については昔から得意なのだが・・・。
なんてったって中学の頃は「エロ博士」と言われていたくらいだ。
それにしてもキンタマまで半熟卵になりそうな高校最後の夏。
他校の奴らはバイトをしたり、プールに行ったり女の子と
×××したり〇○○したりしているんだろうなあ。
いいなあ。いいなあ。共学の奴らはいいなあ。
担任からは「この夏休み中に偏差値を55まであげないと道はない」と宣告されたが
そんなことはどうでもいいのだった。
俺の裏目標はこの夏休み中にHをする事だ。
そのための具体策が見つからないでいたのだ。
「バンドでもやんねえか?」
音楽をやるとモテるんだってよ。彼女できるかもよ。ひひひ。
そう言ってきたのはアツシだった。
彼女が出来たらあんなこともこんなこともしちゃうんだから・・・
うーし!!明日で補習授業も終わりだ!!
心ある者、楽器を持って集合だ!!
この小さな街からR&Bの嵐を吹き起こそうぜ!!
ほんの少し鼻息を荒くした我々は夏休みの初日
楽器を持ってトールの家に集合することにした。
次の日・・・
お姉ちゃん譲りのクラシックギターを誇らしげに持参した者。
雑誌の通販で買ったすぐチューニングが狂うギターを持参するもの。
高いギターを買ったもののFを押さえられない奴。
何より痛いのはみんなギターしか持っていない、という事だった。
それにしても何とかなるものなのだ。

グラス1,2杯のビールで上機嫌になりへなちょこ演奏を始めるメンバー達。
それにしてもメンバー達の溝を埋めがたいのが、音楽の志向性だった。
アツシは「マイケルジャクソン」を崇拝していたし、ITOは「クリーム」が好き
だった。オレは「ブライアンアダムス」、トールは「元春」
幸一に到っては「安全地帯」をこよなく愛していた。
みんなメチャクチャだ。
ただ唯一、共通の音楽がビートルズ。
そこで我々のバンド名を
LONELY HEARTS CLUB BAND
とすることにした。
三顧の礼
同じ教室のギターがめちゃくちゃ上手いって奴がいた。
街で唯一のライブスペース「ダイヤモンド会館」でストーンズの
カバーを弾いていたのを見たことがあった。
なーーーーんもないこの街の唯一のイベント会場。ダイヤモンド会館・・・・。
イベントがある夜はいつもと違い、表通りがほんの少しだけにぎやかになる。
蠅もどき暴走族、きれいなお姉ちゃん、フィリピーナ、チンピラ。
そして待ち構える補導員達。
早速我々は勧誘作戦に乗り出した。
またしてもギター要員が増えるが格がちがう。
なんてったって本物のライブに出たことあるんだもん。
▲▲▲▲▲▲▲▲

▼▼WANTED▼▼
断られることを覚悟して交渉にあたったが
GUCCIと呼ばれるその男は我々の差し出したエロビデオ3本と引き換えに
いとも簡単に「へなちょこバンド」に魂を売り渡した。

Xマスだってえのに期待できそうな事はなーんもない。
ないったらない。これっぽっちもない。全然ない。
・・・それならば盛り上げ役に徹しようではないか!
「しかしただ演奏するのではなくてテーマがあるんだ」
伸ばし始めたあごひげをなでながらアツシ言う。
アメリカとイラクが戦争をはじめた。
反戦だ!!
早速我々はアコースティックギター2本とボブディランの魂をもって
1990年の冬の街へと繰り出した。
酔ったおじさんのリクエスト、「昴」
今日籍を入れてきた、というカップルのリクエスト「長渕」

「反戦の魂」はどこへやら?
我々は0.2秒で魂を捨て去り営業スマイルで演奏するのであった・・・・。
そんなわけで
魂を売った収益
¥1464
・・・何にしても初めて自分達で稼いだカネ。

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