2004年大回顧

さて、今年は2004年を回顧するにあたり、例年の映画私的ベストで物足りなかった部分を補強しようと思って、それぞれにコメントをつけてみたのですが、とんでもない量になってしまいました。これ、毎年やってられません。気まぐれな企画と思ってください。映画も昨年はかなり消化不良気味でして、今年はもう少し観る本数を減らした方がよいかなぁ、などと年頭において考えておるわけですが、そんなことは、その時にならないと分かりませんね、きっと。
改めて数えてみたら、映画を観た本数は例年とほぼ同じ。印象の残り方が今年は強いようです。漠然と映画館の闇にいた時間が長かったように思っていましたが、これは錯覚でした。
とにかく、今年は音楽やライヴ部門も設けましたが、たまたまこのようなバランスになったに過ぎません。
映画私的ベストは、わたくしを定点にしたロードショー状況の観測の意図も含まれているので、ロードショー作品のみを対象にしています。
(ロードショー映画としては、『殺人の追憶』『下妻物語』『ニワトリはハダシだ』『春夏秋冬、そして春』など、年内に観たかったのですが、叶わず。)
映画祭、特殊上映会、リバイヴァル作品は対象外で扱っております。
よく訊かれるのですが、疑問作とは、文字通り疑問が残った作品で、例年、期待値の高かった作品もこの部門に入っているので多くなっていましたが、今年は一本です。謎の映画でした。
映画の作品、部門別ともに現時点で深く印象に残っているものを、順番に整理しただけです。わたくし自身の整理のためです。映画雑感の頁の享受度の星の数と、相対的には全く一致していません。
部門別に付いている★印は特に印象に残ったものです。
下の方は、完全に息切れ気味。計画性ゼロです。どうぞ、よろしく。

目 次

2004年映画 私的ベスト25+α
部門別 外国映画
部門別 日本映画
名画座、レトロスペクティヴでの出会い(と出会い直し)
TV番組
放送音楽
ベストヒット
ヘヴィーローテーションCD
例年より、よく聴いた気がする音楽
ライヴと公演

 

2004年映画 私的ベスト25+α

 

 タイトル

 監督(敬称略)

コメント(敬称略)

1 白いカラス ロバート・ベントン わたくしの趣味にドツボです。構成はやや乱暴だが、カット内、カット繋ぎ、シーン構築における映画の内的構造が甘美。編集が違うらしい米公開版が恐くて観られない。
2 ジョヴァンニ エルマンノ・オルミ 特にヒットしなくても不朽不滅の作品。「ラスト・サムライ」「パッション」が描き損なったものがすべてある。細部がテーマを乗り越えていくこと。歴史の幻影はそこから立ち昇る。
3 父と暮せば 黒木和雄 舞台劇のまま、という風に観誤ることだけは避けたい。
4 ミスティック・リバー クリント・イーストウッド イーストウッド監督に賛同する訳にはいかないが、最も細心の注意を払わなければいけない監督である。監督自身が出てない作品の方が好き。
5 キル・ビルVol.2 クエンティン・
タランティーノ
これほど、映画中の空気を繰り返し思い起こすことが出来る映画も珍しい。
6 シルミド カン・ウソク ブレヒトの教育劇のようなシチュエーションが、息つく間も無くつるべ打ちのようにやってくるテンポの素晴らしさ。真の大娯楽。
7 イノセンス 押井守 台詞が説明的だ、という勘違いを巷に起したのは、やや弱味だった。すべての台詞を引用にするのは確かに困難だが、どうしても出来ない事ではないだろうに。
8 ツイステッド フィリップ・カウフマン 特筆すべき映画ではないが、これが非常に稀なタイプの作品であるという現状に、徹底的に抵抗する。
9 気まぐれな唇 ホン・サンス 構成が素晴らしいし、どの場面にも一切の迷いがないのは、たいへん観客に対して親切である。
10 珈琲時光 ホウ・シャオシェン 東京は電車に乗って移動するか、あるいは歩け。
11 血と骨 崔洋一 スクリーンの中に飛び込みたくなった。
12 オールド・ボーイ パク・チャヌク 観た時、体調が悪かったので、この順位。リヴェンジする。
13 子猫をお願い チョン・ジェウン 好きだが、嫌い。
14 トントンギコギコ 図工の時間 野中真理子 昨年観た、最も清々しく愉快な映画。
15 ヴィレッジ M.ナイト・シャマラン 登場人物の心理と、観客の心理を分断する演出力に、いっそう磨きがかかってきた。
16 誰も知らない 是枝裕和 一番長い間悩まされた映画。よく分からないカットがあって、少し突き放された感じ。
17 真珠の耳飾りの少女 ピーター・ウェーバー 野心的な映画。かつ限りなく成功している。映画はいつでも、カメラ・オブスキュラにまで戻りたいのだ。
18 ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還 ピーター・ジャクソン 最後まで観てきてホッとした。このシリーズで初めて、自分の未知の感情面に気付かされた。
19 かげろう アンドレ・テシネ 息苦し過ぎるとは思う。そしてラスト近くの衝撃度もまた高し。
20 LOVERS チャン・イーモウ アクション映画としては一番。ダンスシーンにもかなり可能性を感じたが、アクションシーンほど思いっきりがよくない。
21 オアシス イ・チャンドン イ監督のような作風がもてはやされるのには抵抗がある。どこか対抗文化風なのだ。しかし、これには痛快な魅力がある。
22 スキャンダル イ・ジェヨン 演出にあまりいいところがないが、役者と脚色が出色。酔える。
23 ドリーマーズ ベルナルド・ベルトルッチ 懐古趣味と着かず離れず、耽溺しながら放り投げるカッコよさ!
24 ふくろう 新藤兼人 まだ現役の監督の、膨大な作品群の一本に過ぎないことが、ちょっと恐い。
25 ドッグヴィル ラース・ファン・トリアー 無謀な戦いに挑む姿勢が、『華氏9.11』の監督より共感できる。
次点 ヴァンダの部屋 ペドロ・コスタ 神経が過敏になりフェティシズムに負けそうになる。
  スウィング・ガールズ 矢口史靖 上野樹里への演出にやや疑問がある。が、楽しい。
  青い車 奥原浩志 端正な文体の短編小説の趣き。思い切って75分にしていたら・・・
  海猫 森田芳光 デタラメな映画だが、印象に残りすぎる。
  ジョゼと虎と魚たち 犬童一心 長く心に残るかどうか分からないが。
  赤目四十八瀧心中未遂 荒戸源次郎 映画館で観るアトラクションとしては絶品。
  コラテラル マイケル・マン 冒険的な撮影がイカすが、ヴィジュアルがバラバラ。劇伴と劇中曲のミックスに上手く乗れない。
  トロイ ウォルフガング・ペーターゼン 見応え十分なのだが、歴史ものにするならするで、神話的要素を適当にごまかすのは反則。
対象外 世界で一番悲しい音楽 ガイ・マディン 本当はダントツの一番。フィルムを強奪したくなった。物質についてのフェティシズムとアイロニーを、そのまま物質に還元した幻燈宝飾。これで、マリア・デ・メディロスが不滅の輝きを残した。ロードショー待望!!
  WALKABOUT/美しき冒険旅行 ニコラス・ローグ 30数年前のカラーフィルムのスタンダードサイズでの密度の濃さに唖然。死生観は今観ても衝撃的。
  山猫(イタリア語完全復元版) ルキーノ・ヴィスコンティ 観る年齢でこれは見えてくるものが変わるだろう。執念のテクニカラー復元に感謝。近親婚への慄くような不安感が衝撃的。
  酔画仙 イム・グォンテク ワンコリア・フェスティヴァルの関連イヴェントで観た。なるほど、フェスティヴァルの意図に相応しい、堂々たる朝鮮時代劇だ。実は昨年の韓国映画では一番に推したいが、お正月映画なので、2005年に回すとしよう。
       
疑問作 パッション メル・ギブソン 映画を観て、腹が立つことなど滅多にないのだが・・・


部門別

外国映画(敬称略)

コメント(敬称略)

監督 ロバート・ベントン 『白いカラス』 
エルマンノ・オルミ 『ジョヴァンニ』
 クエンティン・タランティーノ 『キル・ビルVol.2』
■ベントン監督の演出タッチ、オルミ監督の監督力。飛びぬけて誘惑的だと思えるのだが。この二人がまだ映画を撮っている事が嬉しい。
脚本
脚色
原作
 エルマンノ・オルミ 『ジョヴァンニ』
クエンティン・タランティーノ 『キル・ビルVol.2』
 ブライアン・ヘルゲラント 『ミスティック・リバー』 
ラース・フォン・トリアー 『ドッグヴィル』
 ベルント・リヒテンベルグ 『グッバイ・レーニン!』
 イ・ジェヨン、キム・デウ、キム・ヒョンジョン 『スキャンダル』
■タランティーノの構成力には改めて舌を巻く。
■『ドッグヴィル』は完成品としては見苦しい部分があるが、シナリオにはたいへん喚起させられる。
■『グッバイ・レーニン!』は、撮られなければならない作品が実際に丁寧に作られたという驚き。
■まだ、よく知らない事なので、軽軽しくいえないが、韓国映画では、演出よりシナリオの粋に、目がいきがちになる。
撮影 チェ・ヨンテク 『気まぐれな唇』『オアシス』
 エドゥアルド・セナ 『真珠の耳飾りの少女』
 ジャン=イヴ・エスコフィエ 『白いカラス』
ファビオ・オルミ 『ジョヴァンニ』
 フレッド・マーフィー 『シークレッド・ウィンドウ』
 チャオ・シャオティン 『LOVERS』
 ピーター・デミング 『ツイステッド』
 ロジャー・ディーキンス 『ヴィレッジ』
■チェ・ヨンテクは全くタッチの違う作品で、フレーミングに対する潔癖なまでの精確さを見せる。これは大収穫。
■『ジョヴァンニ』は慈しむような官能性で撮られているからこそ、馴染みのない題材が俄然蠱惑的になる。
■フレッド・マーフィーが新たな職人芸で、かつての魅力を取り戻しつつある。決して今風ではない意地。
■チャオ・シャオティンはダンスシーンが惜しいが、野外撮影の勢いが素晴らしい。
■ジャン=イヴ・エスコフィエは『白いカラス』でロバート・ベントンと一期一会。と言わねばならないのが悲しい。これが遺作である。
■シャマラン監督は『ヴィレッジ』でも最適な人選。かれの全ての作品が撮られるべき撮影者によって撮られている。
■他に、『コラテラル』の撮影チームはナイトシーンで驚愕の映像を見せてくれたが、撮影監督が二人いるためか、視点に統一感が感じられず、観辛かった。
編集  ピーター・ボイル 『ツイステッド』
パオロ・コッティニョーラ 『ジョヴァンニ』
■ピーター・ボイルはほぼ毎年ランクイン。この人は何故賞を獲らないのか?
■パオロ・コッティニョーラは驚くべき神技である。時間が頻繁に行き来するが、最近米インディーズ系によくある時系列をバラバラにしたものとはかなり異質。観客を細心の手つきで夢幻に誘う礼儀正しいタイミング。
美術 ルイジ・マルキオーネ 『ジョヴァンニ』 ■イタリアは映画業界が斜陽だったりしないのだろうか?
音楽  レイチェル・ポートマン 『白いカラス』
イ・ジス 『オールド・ボーイ』『シルミド』
 梅林茂 『2046』
 ペーア・ラーベン 『2046』
 ヤン・ティールセン 『グッバイ・レーニン!』
 T−ボーン・バーネット 『コールド・マウンテン』
■『オールド・ボーイ』のテーマは、今年を代表する一曲だろう。『冬のソナタ』の助っ人だったイ・ジスは名より曲を先に忘れがたいものにする。ただし、『オールド・ボーイ』の選曲担当者は、その他の韓国映画と大差はない。
■梅林茂が、なんとペーア・ラーベンと並んで、より強い印象を残す。ただ、『LOVERS』の方はそれほどでもなかったか。
■『コールド・マウンテン』はガヴリエル・ヤーレとT-ボーン・バーネットがそれぞれ良い曲を書いているが、あまり上手く溶け合っていないのが惜しい。
■これと比較すると、『白いカラス』レイチェル・ポートマンは書き下ろしの劇伴を、既成楽曲と見事に溶け合わせて、美しい。
■また、『ジョヴァンニ』のファビオ・ビッキもストラヴィンスキーの既成曲と相まって、時代劇としては異例のアグレッシヴさ。
■ヤン・ティールセンが今や、最も個性的な映画音楽作曲家であることを思い知らされた。
選曲 ★『白いカラス』
★『ドリーマーズ』
 『キル・ビルVol.2』
 『ジョヴァンニ』
 『2046』
■『ドリーマーズ』はお馴染みの曲を、鮮やかに聴かせ直させてくれる。「ダーク・スター」と何かの映画音楽が交じり合うところなど、リミックスも抜群。
■『白いカラス』はかなり知的な選曲。「デイ・ドリーム」の聴かせ分け。テディ・ウィルソンとジェス・ステイシーの絶妙な対比。「チーク・トゥ・チーク」は無論、映画『トップ・ハット』からだが、この引用は、『ドリーマーズ』より一枚上手か。
■『ロスト・イン・トランスレーション』なんかは、お洒落な音楽の使い方ということになるのだろうが、「はっぴいえんど」の使い方など、あんなのでいいのだろうか?大いに疑問が残る。どうも悪い入れ知恵のように思えるのだ。
音楽演奏 ファンク・ブラザーズ 『永遠のモータウン』
ヒラリー・ハーン 『ヴィレッジ』
 ジャー・パンファン 『LOVERS』
■ヒラリー・ハーンのヴァイオリン演奏は『ヴィレッジ』の作品テーマを絶妙に集約している。音楽のジェームス・ニュートン・ハワードの慧眼。
■中国本格娯楽路線映画としては、ヨーヨー・マ『グリーン・デスティニー』、イツァーク・パールマン『HERO』よりジャー・パンファンの人懐っこさがふさわしいのではないか。エンディングのキャスリーン・バトルの歌は何だかよく分からなかったが。
■ファンク・ブラザーズをバックにジョーン・オズボーンがなかなかの好演。
主演男優 チェ・ミンシク 『オールド・ボーイ』
ソル・ギョング 『シルミド』『オアシス』
クリスト・ジフコフ 『ジョヴァンニ』
 
ブラッド・ピット 『トロイ』
 
マイケル・ピット 『ドリーマーズ』
 
ホアキン・フェニックス 『ヴィレッジ』
 
ペ・ヨンジュン 『スキャンダル』
■チェ・ミンシクは『酔画仙』でも夢中になったが、演技術というより圧倒的な存在感がカッコいい。かれが一見、憑かれたように熱演していているように見えるとき、実は役柄へのユーモラスなアプローチでもあるようで、何とも多義的で懐深い。
■ソル・ギョングは、全く新しい演技術の境地を開拓しつつあるのではないか。一つのエポックであろう。『力道山』が待ちきれない。
■『ジョヴァンニ』演ずるクリスト・ジフコフは、『パッション』中のイエス・キリストより真の慈愛を体現してしまっている。かれは『パッション』でヨハネを演じている妙縁が興味深い。
■ブラッド・ピットは新境地だが、アキレウスから神性を剥奪したかのような演出で分かり辛い結果となった。
■ブラッド・ピット、ジュード・ロウ、ペ・ヨンジュンらが、美しい尻を競っているが、さて美尻の誉れ高いレイフ・ファインズを越えたかどうか?
主演女優  ウマ・サーマン 『キル・ビルVol.2』
ニコール・キッドマン 『白いカラス』『ドッグヴィル』『コールド・マウンテン』
ペ・ドゥナ 『子猫をお願い』
 アシュレー・ジャッド 『ツイステッド』
 チャン・ツィイー 『LOVERS』『2046』
 エマニュエル・ベアール 『かげろう』
■わたくしも長年かかって、やっとニコール・キッドマンに共感できるようになった(実は同い年)。その完璧なディシプリン、計算された媚態が昨年ほど輝いて見えたことはなかった。
■ウマ・サーマンは相変わらず、演技らしい演技をしないのが良い。
■ペ・ドゥナは世界的に見ても稀な、生命感。動いているだけで楽しい。
■チャン・ツィイーがようやく、その身体性を充分に活かした作品にめぐり合った。今後ともより相応しいコレオグラフィーに出会うことを期待したい。
■エマニュエル・ベアールは、何と言うか本当に尊敬します。
助演男優 ティム・ロビンス 『ミスティック・リバー』
ベニチオ・デル・トロ 『21グラム』
デイヴィド・キャラダイン 『キル・ビルVol.2』
 ピーター・オトゥール 『トロイ』
ゲーリー・シニーズ 『白いカラス』
 ホ・ジュノ 『シルミド』
ユ・ジテ 『オールド・ボーイ』
■ティム・ロビンスとベニチオ・デル・トロがそれぞれ、真摯な態度で役作りの可能性に挑んでくれた。まだまだ米国は俳優術の進化に意欲的である。
■ところが、役作りなど鼻から問題にしないデイヴィド・キャラダインが映画俳優とは何であるかを嬉々として見せつけるのである。
■『トロイ』を観ると、やはりピーター・オトゥールにアカデミーの名誉賞は可哀想だろう。
■ゲーリー・シニーズの色気は、これまでのかれとは少し異なっており、この名作『白いカラス』の屋台骨である。
■ユ・ジテはそれらとはまた別の次元から、異様な存在感を放つ。チェ・ミンシク先輩と堂々の競演。化けるね。
助演女優  カン・ヘジョン 『オールド・ボーイ』
イ・ミスク 『スキャンダル』
 チョン・ドヨン 『スキャンダル』
 チェルパン・ハマートヴァ 『グッバイ・レーニン!』
 レニー・ゼルウィガー 『コールド・マウンテン』
 ナタリー・ポートマン 『コールド・マウンテン』
 ジャシンダ・バレット 『白いカラス』
 フェイ・ウォン 『2046』
 チュ・サンミ 『気まぐれな唇』
■助演部門は今年は、男優の圧倒的印象に比べて、女優の方はやや印象が薄い。 
■中では、イ・ミスクの余裕綽々の貫禄が一つ抜けているだろうか。
■フェイ・ウォンが久々に、最早映画スターとしか言いようのない揺ぎ無さを見せて驚いたこと。
■少しの出番だが、ナタリー・ポートマンのシーンは忘れがたい印象を残した。
■ジャシンダ・バレットのストリップティーズは、意味は違うが『ラスト・ショー』や『ナッシュヴィル』のストリップ(脱衣)シーンに匹敵する痛ましい感傷へ誘う。実はこれは構成の妙でもあるのだが、ともかく美しい。

 

 

部門別

日本映画(敬称略)

コメント(敬称略)

監督 黒木和雄 『父と暮せば』
 押井守 『イノセンス』
 ホウ・シャオシェン 『珈琲時光』
■黒木和雄の演出らしい演出にとても感銘を受けた。これは絶対失ってはいけない感覚だと感じたのである。また、最近世界で流行の、死者と生者の対話形式は、やはり日本でこそ堂々たる形式になりうるだろう。だが、この『父と暮せば』の演出は、日本にも増えつつある生死の境目のあいまいな作劇とは根本的に異なる、毅然とした態度だと思う。
■ホウ・シャオシェン演出の贅沢さはもしかすると、非常に特別な時代の産物のような気がする。量産体制の撮影所映画が持っていた緊迫した時間と、ちょうど正反対の時間が流れている。
■押井守のような監督のあり方も、是非の問題ではなく、今後もこのような映画が製作しうるとはあまり思えないので、貴重な産物だと思えてくる。
脚本
脚色
原作
新藤兼人 『ふくろう』
渡辺あや 『ジョゼと虎と魚たち』
 岡田惠和 『いま、会いにゆきます。』
井上ひさし 『父と暮せば』
■『ふくろう』は本当に面白い戯曲だと思う。
■渡辺あやの鋭い台詞の数々は忘れがたい。今後を楽しみにしている人はたくさんいるだろう。
■岡田惠和 が本格的に映画に乗り込んできた年、
野沢尚は自ら命を絶ったのだということ。
■井上ひさしのダイアローグは、深い省察を呼び覚ます。また生者と死者との関係に優れた考察がなされているため、死者ものの多い現在において、映画化される意味は大きい。また、この原作を映画にしようと考えた製作者の意気込みも素晴らしい。
撮影 鈴木達夫 『父と暮せば』
 山崎裕 『誰も知らない』
柴主高秀 『解夏』『いま、会いにゆきます』『スウィング・ガールズ』他、
 夏海光造 『トントンギコギコ 図工の時間』
 斎藤幸一 『青い車』
 浜田毅 『血と骨』
 リー・ピンビン 『珈琲時光』
 笠松則通 『赤目四十八瀧心中未遂』
■昨年、最も記憶に残らなければいけないのは、撮影の篠田昇が亡くなったことだが、かれの昨年の作品『世界の中心で愛をさけぶ』と『花とアリス』を、昨年中に観る事が出来なかったので語れない。これらは勿論、勿体無くて、ヴィデオで観る事など出来ない。
■篠田はまだまだこれから日本映画の画面を作りあげていくところだっただろうし、人材も育てていくところだっただろうが、反対にというのも変な言い方だが、ベテランの鈴木達夫が、久々にその映像技術をそれに相応しい作品で披露してくれたことは、嬉しい話題ではないだろうか。
■一般映画で柴主高秀が益々充実していて、画面に深い奥行きを与えているのは、映画館に新たな客層を呼び込みつつある今、非常に貴重なことだ。
■また、リー・ピンビン、山崎裕、夏海光造らが小規模映画で成し得ているヴィジョンは今後の世界の映画の基準となっていくものだと思う。また、この三人を同列に語ることが嬉しくもある。これは決して恣意的なことではなく、実際、東京での上映事情に鑑みてのこと。
■リー・ピンビンは今までになく、ぞんざいな手つきで、キャメラを即興的に扱い、夢幻の心地。
■山崎裕は、フィックスに溜め息が出るような繊細さが。
■夏海光造は光の採り入れかた、対象との距離の取り方が絶妙で大好き。
■そういえば、『スウィング・ガールズ』での柴主の場合、至近距離からのシーンで常に主人公がキャメラを意識しているのが、演出なのだろうが、居心地悪かった。
■斎藤幸一の色彩感覚も印象的。
■浜田毅の切り詰めた構図も力強かった。
■『血と骨』がヴィスタながら、限りなくスタンダード的であったとすれば、『赤目四十八瀧心中未遂』の笠松則通はスコープサイズのなんたるかを見せつける。爽快。
編集 奥原好幸 『父と暮せば』『血と骨』『赤目四十八瀧心中未遂』
 野中真理子 『トントンギコギコ 図工の時間』
■これまたベテランで申し訳ないが、昨年編集部門に北野武を入れてしまった反動であろうか。勿論監督による編集というのも今後更に増えていくだろうから、評価しなければならないが、本来は編集という作業はコミュニケ―ションや共同作業の問題であったはずで、編集者の目はまさに監督と観客の橋渡しであると思っている。編集者という重要な技術を考える上で、奥原好幸の隙のない繊細かつ大胆なカットはとても心に響く。ここに挙げた三本は全く違うタッチだが、強いて言えば『父と暮せば』が最も印象深い。観客に対して思いやるやさしい心持ちがするのである。
■監督による編集では、是枝裕和の『誰も知らない』は、これまでのかれの作品の中で、最も違和感が少なく、誰か編集者が付いたのかと思いかけたが、意味の分からないカットもあった。
■野中真理子のリズム感が昨年の北野武よりずっと心に残ったことは特筆しておきたい。ドキュメンタリーだから、余計にそうなるのだろうが、ショット内に写ったりズムが作品構造に広がっていく様が美しい。
美術 小澤秀高 『解夏』
 種田陽平『いま、会いにゆきます』『イノセント』
木村威夫『父と暮せば』
■種田陽平は、今、本当に乗りに乗っている感じ。『いま、会い』はちょっと美術の存在感がありすぎるかなと思ったが、『イノセンス』(これはプロダクション・デザイナーとして)はあまりの凄さに口あんぐり。
■『解夏』の美術は、何でもないのだが、心の風景に残り続けるような温かさがある。
■『父と暮せば』で木村威夫は、奇を衒わず、物の持つ物質としての質感を丁寧に表出し、言葉を失わせる。
木村威夫の初監督作は観ませんでした。
録音・音響 ドゥー・ドゥージ 『珈琲時光』
若林和弘 『イノセンス』
 米山靖 『トントンギコギコ 図工の時間』
■昨年観た、世界中のどの映画よりも、この2本が印象的。『珈琲時光』はあくまでも日本映画ということで。
■例えば、『ヴァンダの部屋』の音響は圧巻だけれど、神経過敏になりすぎてしまう。それを思うと『トントンギコギコ 図工の時間』は、聴いていて楽しい。そのやさしさが好きだ。
音楽 松村禎三 『父と暮せば』
 林光 『ふくろう』
 くるり 『ジョゼと虎と魚たち』
立川智也 『トントンギコギコ 図工の時間』
 千野秀一 『赤目四十八瀧心中未遂』
 曽我部恵一 『青い車』
 川井憲次 『イノセンス』
■今や松村禎三や林光が、日本映画音楽の脈々とした流れを守り抜いている事を痛感。しかも全く衰えを見せていない。
■が、くるりや曽我部恵一が、いかにも風土的音楽に聴こえるのもまた確かではある。
■立川智也は、映画との語らいという点において、群を抜いているように思えた。
■千野秀一は期待通りで、相応しい映画に相応しい音楽をつけているという感じ。前にも書いたが演奏者のクレジットが欲しい。
■これら以外に、『スウィング・ガールズ』のミッキー吉野と岸本ひろしがスウィング一点張りでくるのかと思いきや、フォーク・ロックもちゃんと出してきて、『青春の殺人者』なんかを思い出してしまった。
■『血と骨』の岩代太郎はエンニオ・モリコーネばりの堂々たるスコアだったが、果たしてこの映画に相応しかったのかはやや疑問。
■反対に、『海猫』の大島ミチルは、最早、メロドラマ音楽としては斎藤一郎なんかの域に達しているので、大いに他の監督の映画にも浸食していってほしい。(あっそう、『北の零年』もやるんだ。)
■また、七里圭監督の『のんきな姉さん』の音楽(侘美秀俊による)を、映画は観ていないのだが、コンサートで聴いた。小規模映画に、往年の撮影所映画のアンサンブル楽団のような音楽がついていることに、すこぶる興味を持った。
■そして、日本映画音楽の脈々とした流れの辺境に居続けた
池野成の死を書き留めておかねばならないだろう。
選曲 ★『珈琲時光』
 『スウィング・ガールズ』
■江文也という作曲家を作品のアイデアに据えたことが、まず大手柄なのだが、この映画が撮られる前に江文也作品のCDが録音されていた状況にも負う所が大きい。同時代的共犯関係に敏感な監督のセンスだろう。
■『スウィング・ガールズ』は、必ずしもスウィングルーツではない曲をピックアップしているところがよい。これも例えばブライアン・セッツァーなんかが長年かけて育成してきた、ジャンプ音楽を受容する耳に敏感に反応しているからだろう。別にスウィングの定義が広がろうが、それは大したことではない。また、作品のアイデアの根幹をなす「カミン・スルー・ザ・ライ」には、黒澤明へのオマージュすら感じさせられて唸った。
脚本段階できっとボツになっただろうが、何とか「その手はないよ」は入れてほしかったなぁ。
音楽演奏  コーラス 『イノセンス』
 スウィング・ガールズ 『スウィング・ガールズ』(ほんまか?)
一青窈 『珈琲時光』
■偶然かもしれないが、『珈琲時光』のラストは、この映画の主人公に歌手をキャスティングしたことの恩恵をこれでもかというほど痛感させる。ポエトリーリーディングからさびへの展開も見事。実はこれまで一青窈に、こんなにうっとりさせられるなんて考えてもみなかったのだ。
■反対に素人が音楽を演奏する愉快さを、これだけ上手く伝えた『スウィング・ガールズ』も大したものだ。実は、CDを先に店頭で試聴した時には、こんな下手な演奏、聴けたもんじゃないと思っていたのだが、映画では、まんまと泣かされた。なので、CDが売れるのには若干不信。楽譜が売れた方がいいんではないだろうか。原曲を上手く初心者向けに単純化し、聴き応えを演出した編曲の力がかなり大きい。また、キャラクターで楽器をキャスティングしたのも大当たり。
■川井憲次が編成してきた、民謡コーラス隊はやはり素晴らしい。昨年は、川井とやや近いアプローチをしていたアーティスト「
姫神」が惜しくも亡くなってしまったので、川井のこの路線の発展には期待したい。
音響設計 『イノセンス』 ■今や、5.1サラウンドが標準規格の時代だが、本当にサラウンドが必要と思えることは実際のところ少ない。ましてや、感動することなどないに等しい。が、『イノセンス』の音響設計には感動した。THXシステムで観た一回目の鑑賞の時だけである、普通のシステムの映画館では、むしろ逆効果だった。しかし、音響設計で感動したのは、思うに『シェルタリング・スカイ』以来じゃないだろうか。
主演男優 ビートたけし 『血と骨』
 原田芳雄 『父と暮せば』
柳楽優弥 『誰も知らない』
 中村獅童 『いま、会いにゆきます』
 豊川悦司 『丹下左膳 百万両の壷』
■以前、ロシアの舞台女優さんが、映画の中のたけしは、世界的にも非常に個性的な素晴らしい俳優だと力説していて、訝しく思ったことがあるが、そんなわたくしが遅まきながら、『血と骨』のビートたけしには痛く感銘を受けた。やはり、自作自演よりずっといい。暴力シーンも凄まじいが、とりわけ中村優子とのからみがある場面でのいたわりの情感、寂しげな人間同士の秘めやかな共振に、胸を打たれた。中村優子もそうだからなのだが、肉体そのものが、寂しさを放出しているのだ。
■柳楽優弥は『誰も知らない』で、卓越した演技を示したわけではなくて、生来のスタア性が開花する瞬間を、記録されたのだ、と思っている。
■中村獅童が、こんなに上手いなんて全く気付いていなかったが、竹内結子が相手だと、助演に見えてしまうのが惜しい。
■同じく中村獅童も演じている丹下左膳を、まさかの豊川悦司が演ずる。こういう軽妙なヒーローものがもっと受けてもいいのに。これはかなり大胆なチャレンジとして応援したい。
主演女優 宮沢りえ 『父と暮せば』
鈴木京香 『血と骨』
 大竹しのぶ 『ふくろう』
 伊藤歩 『ふくろう』
 寺島しのぶ 『赤目四十八瀧心中未遂』
 伊東美華 『完全なる飼育 赤い殺意』
 伊東美咲 『海猫』
■宮沢りえは、数年前から磨いてきた型から入る演技の集大成を見せた。このアプローチは台詞回しにおいても、全く狂いがない。かの女のやっていることは、極めて重要だと思う。それに比べれば、若い女優さんが一時、憑かれた様にテンションの高い演技をやってみせることなど、よくあることに過ぎないのだ。宮沢は、課題だった長い時間の持続した集中力もものにしたように見える。
■鈴木京香が、いかに本気の俳優であるか最早疑う余地はないだろう。全編の約8割が老けメイクだというチャレンジ自体が面白くて仕方ない。またそれが映画的にいかに面白いかを、かの女は分かってやっている。こういうのは昔は、『黄色いリボン』のジョン・ウェインとか、『生きものの記録』の三船敏郎ぐらいが出来ただけだ。
■大竹しのぶは、アンサンブルの上手さではぴか一であって、伊藤歩とのコンビも愉快だ。
■寺島しのぶは、様式的な芝居でやはり映える。
■伊藤美咲は、台詞にあまり良い所は見出せなかったが、CMなどで見せているモデル風の颯爽とした身振りへの違和感を、やっと払拭することができた。『海猫』で見せるかの女の異様な身のこなし、澄んだ瞳と生命力のない声のギャップは、決して弱点ではなくて、映画的には極めて雄弁なものになっていたと思う。演出の意図をかなり正確に体現しているのではないか。
■伊藤美華は、若松孝二監督の演出の力か?被暴力者の慄きと無気力を無残に印象付ける。いったいどんな現場だったのだろうか。
■他に『隠し剣 鬼の爪』の松たか子が巷では評判だが、わたくしは不満だ。映画の側からは、かの女で充分過ぎるほどの恩恵を受けているが、かの女の資質からすればあのような役では物足りない。松を本気で映画遺産として残したいのなら、誰か他の者が手を挙げよ。
■竹内結子は単独主演に見える映画ばかり出ない方がよい。コンビとして対等にカップリングできる相手が必要だと思うのだ。だから、わたくしは木村拓哉との再タッグを期待する。今、作品の質を左右するのは芸能プロダクションなのだから、これが出来なければダメだ。(木村とドラマで共演したのも昨年かぁ。それだけ竹内の勢いにはスピードがあるんだ。)
■また、わたくしは映画雑感の中で『丹下左膳』での和久井映見に若干批判的であったが、これでも擁護しているつもりなのである。
■『ジョゼ虎』での池脇千鶴について少し。造り込み過ぎな芝居に見ている間中、違和感があったが、観終わってからジョゼという人間が確かにいた、という手応え。これを素直に受け止められない自分の狭量が歯がゆい。
助演男優  オダギリジョー 『血と骨』
柏原収史 『血と骨』
 内田裕也 『赤目四十夜瀧心中未遂』
 平岡祐太 『スウィング・ガールズ』
石橋蓮司 『花と蛇』
 小澤征悦 『隠し剣 鬼の爪』
 田中泯 『隠し剣 鬼の爪』
 木村祐一 『誰も知らない』
■オダギリジョーが文句なくカッコいいが、何故だか当然すぎるような気もする。
■それに比べて、柏原収史の秘めた青い炎、爬虫類のような揺ぎ無い存在感に惹きつけられた。主演作は観られなくて残念。
■内田裕也が当り前のように映画の中に居るという、映画の凄さ。
■わたくしは、ガールズより平岡祐太に圧倒的に共感したんですけど。
■石橋蓮司はTVでの露出も増え、人のいいおじさん役が妙に板に付いてきていたところだが、『花と蛇』での面妖極まりない怪演は、まさに役者連司の本領発揮。あのメイクは大スクリーンで観て欲しい。
■小澤征悦はえらくスクリーン映えする役者だ。一人だけ、往年の時代劇の匂いを纏っている。
■田中泯は登場時間こそ少ないが、主人公に立ち稽古をするシーンでの足の捌き、下半身の重心移動に、いまだかつて観た事もないような、しなやかな気配を見せる。これは何事だ!殺陣師と舞踊家の共犯的独創か?
■『誰も知らない』を見ていると、達者な役者たちが、木村祐一の前に霞んで見えることだろう。是枝演出とは、いわばそういうものなのか?
助演女優 田畑智子 『血と骨』『隠し剣 鬼の爪』
 麻生久美子 『青い車』『CASSHERN』『丹下左膳 百万両の壷』
富司純子 『解夏』
 中村優子 『血と骨』
 北浦愛 『誰も知らない』
 YOU 『誰も知らない』『いま、会いにゆきます』
余貴美子 『珈琲時光』
 榊原良子 『イノセンス』(声)
 上野樹里 『ジョゼと虎と魚たち』
 大楠道代 『赤目四十八瀧心中未遂』
■田畑智子の映画出演が『お引越し』以来だなんて、迂闊にも全く意識していなかった。肝の据わった堂々たる姿には、心からお帰りなさい、と言ってあげたいが、わたくしが言うのも変だな。
■日頃から麻生久美子の賛美者であるわたくしが、かの女の演技を念入りに観ていることを考慮に入れたとしても、麻生はここに挙げた三本の映画で、全く違う新境地を開いている。他に主演作もあり、その感性の開かれ具合からすると、まさに役者としては絶好調といえるが、ゆえにもう少し骨のある作品との出会いが今か今かと待たれるのである。
■今年は改めて富司純子の魅力に惹かれた。何気ない仕草、立ち姿に映画的記憶の膨大な堆積が透けているからだ。で、久々に名画座で富司の全盛期の作品を観まくってしまった。『解夏』の磯村監督(50年生まれ)は今年発表した2本の映画で、富司(45年生まれ)と星由里子(43年生まれ)という同世代の東映と東宝の看板女優を脇に配しているが、なるほど、かの女たちの往年の輝きは、今最も日本映画に欲しいものかもしれない。韓国映画に見出せるのがそれに近いものだからだ。
■中村優子のことは『火垂』以来、どうしているのか気になっていたが、また恐ろしく衝撃的な役柄でその姿を見せてくれたものだ。今後は、これまでの役柄のイメージに縛られない自由な発想でキャスティングされてほしい。
■北浦愛は上記の柳楽と反対に、芝居的感性をどんどん研ぎ澄ましていく様子が記録される。
■YOUの場合、日本の芸能界の人材の豊饒さを象徴しているのだと思う。
■ホウ・シャオシェンが余貴美子からあんな一面を引き出すとは!この嘘のような自然さは本当に外国人によって撮られたのか?
■榊原良子に代表させて申し訳ないが、日本の声優芸の見事さを『イノセンス』ほど印象付ける作品はないだろう。カンヌではオリジナル音声で上映されたのだろうか?アニメだからといって吹き替えで世界に配給するのは勿体無い。
■上野樹里は『スウィング・ガールズ』で爆発させた主演の魅力より、こちらの方がより役者らしい。
■大楠道代は役柄にそれほど共感していなかったというが、かの女は映画の全体像を束ねる帯のようなものなのだ。
■ご贔屓の岡本綾は、出演作があったが、ファン以外には薦められないのが痛い。

 

名画座、レトロスペクティヴでの出会い(と出会い直し)

 

 タイトル

監督(敬称略)

コメント(敬称略)

1 明治侠客伝 三代目襲名 加藤泰 これを今まで観ていなかったことで、どれだけ損をしたか。やや苦手だった加藤泰への認識を改めました。こういう誰もが傑作と言うものを観ておかないといけませんね。また、三島由紀夫が評価した、後年の苦渋に満ちた鶴田浩二より、この位の爽やかさが残っている時の方が感情移入しやすい。
2 侠骨一代 マキノ雅弘 マキノが何かの対談で、純子の最も印象に残る二本のうちの一つに挙げていた。なるほど、まばたきの一瞬一瞬までもに、溢れんばかりの情感が感じられる。これが、わたくしが多くの人の評価に反して愛している『日本侠客伝 斬り込み』と、ほぼ同時期に撮られた作品であることに納得。上の表で触れた東宝の星由里子と2枚看板で共演した『日本侠客伝 花と龍』を見逃したのが、たいそう悔しい。
3 酒と女と槍 内田吐夢 これは、大スクリーンが初見でよかった。ヴィデオだったら、この魅力、見逃していたかもしれない。辰巳柳太郎の大芝居に不安だったが、そんなことは大した問題ではなかった。天から地、地から天へとまっ逆さまに旋風を巻いて舞い躍る情念のジェットコースター。多分日本映画の最も恐ろしい時代なのではなかろうか。
ラスト、墓石からロングへのワンショットは鳥肌もの。
4 世界大戦争 松林宗恵 これは、日日覚書に書きまくったので、そちらを参照してください。
5 不知火海 土本典昭 被写体の人々の圧倒的な表出力に釘付けになる。他人にキャメラを向けることの敬虔さ。監督本人が不意に写り込んでくることで、安心して観通せる部分もある。

 

TV番組(連ドラを観る気力があったのは春まで、以降体力的に連ドラはきつくなった。連ドラを楽しむには映画よりたくさんの心身の余裕が必要です。)

  タイトル   O.A.

コメント

白い巨塔

フジテレビ

リメイクはどんどんすべきだ。
エースをねらえ! テレビ朝日 上に同じ。

 

放送音楽(ネット中継というものを初めて受信した。これをやり出すと果てしなくなりそう。)

  タイトル(敬称略)   O.A. コメント(敬称略)
 ☆

クラウディオ・アバード指揮ルツェルン祝祭管弦楽団、Sop.ルネ・フレミング
R.シュトラウス作曲『四つの最後の歌』、
8月13日ルツェルン文化会議場コンサートホール

8月13日、RAI Radio3からネット生中継

フレミングは言葉が立っているが、深いところから声が届いてくる。オーケストラは自然の山並みや、空気のさざ波そのもの。人為が限りなく自然に似てきたようだ。
  クラウディオ・アバード指揮ルツェルン祝祭管弦楽団
ベートーヴェン作曲交響曲第一番、
8月23日ルツェルン文化会議場コンサートホール
8月23日、RAI Radio3からネット生中継 この曲。ベルリンフィルとの録音を聴かない月はないくらいなのに、この時のものもまた、目が醒めるような新鮮な演奏。旋律線、リズムの切れ、惚れ惚れする。
これは、ほとんどマーラー室内管じゃないのかなぁ。アバードとマーラー室内管が、最近とってもいい組み合わせ。
 

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキー指揮NHK交響楽団、Vn.パトリツィア・コパツィンスカヤ
ベートーヴェン作曲ヴァイオリン協奏曲、
4月21日サントリーホール

4月21日、NHK-FMにて生中継

スクロヴァチェフスキーとN響は、いつもスリリングだが、この組み合わせは一体!!
名演揃いのシンフォニーより、こっちの方が印象に残ってしまった。
深刻かつ几帳面なヴァイオリン演奏が多い昨今、コパツィンスカヤの、楽器をあまり重々しく扱わないプレイに、胸がすく。変な演奏だが。
  サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、Sop.フェリシティ・ロット
R.シュトラウス作曲歌劇『カプリッチョ』からフィナーレ、
2003年11月5日ベルリン・フィルハーモニー
8月18日、NHK-FMで録音放送 ラトルは、シンフォニーはどこか鯱張っていて、取っ付きにくいが、オペラが意外にまろやかなのに気付いた。ロットもニクイ。これは、録音しておかなくて惜しかった。
  ルー・リード@FUJI ROCK FESTIVAL、
7月30日新潟県苗場スキー場
8月25日WOWOWにて放送 たった2曲だけだったが、びっくりした。かつて観た来日公演と相当変わっていた。これをきっかけに未聴だったアルバム『エクスタシー』を聴いて、またびっくり。当分音楽観に影響しそう。

 

ベストヒット

コアラッコ byラレコ(日日の慰みです。)

 

ヘヴィーローテーションCD

  タイトル   発売 コメント

クラウディオ・アバード指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ベートーヴェン交響曲全集

2000年

発売されて以来ずっと。

 

例年より、よく聴いたような気がする音楽(ほとんど図書館のCDや過去のカセットテープを聴いていた。)

エノケン、マーラー、ブルーノ・ヴァルター、リンダ・ルイス、ヴァン・モリソン、ヴァーグナー、宇多田ヒカル(日本語詞)など(敬称略)

 

ライヴと公演(上段の2つは全身が入れ替わるような体験。ともに屋外。)

    タイトル(敬称略)   日時と場所 コメント
 ☆

THE WHO初来日公演@Rock Odyssey

7月24日 
横浜国際競技場

炎天下にて。わが人生の一大事件。
この時を約20年待ち続けた。これについては、改めて回顧することもあるだろう。(つまり、まだ感想を書けないでいる。)
 

国際共同制作ダンス・プロジェクト [気配の探究] シリーズ
「森の微笑」
構成・演出:田中 泯

9月4日 
井の頭恩賜公園

土砂降りの雷雨の中で。心持が軽やかに。
目の前に、がまがえるがいた。
  クラウド・ゲイト舞踊団初来日公演
「行草」
Cursive
振付 リン・フワイミン (林 懐民 LIN HWAI MIN)
2月26日 
新宿文化センター
待望の公演。立派な公演だった。その分、少し遠く感じられた。興行(芸術)としての完成度と伝統的身体との齟齬に違和感もあり、公開レッスンの時にいろいろ質問したのだが、疑問は深まる。もっとよく知りたい。
  Quikion 3月20日 
下北沢・カフェPIGA
これは、ある日常の一コマとして忘れがたい。
       

       
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