こういう時代劇が観たかった
(、はちょっと言い過ぎか)

映画『丹下左膳 百万両の壷』

        2004.8.18. Wac@映画生活に投稿  改稿2004.9.9.

   


最近、時代劇風の映画が多い中で、思いがけず往年の時代劇の風情を感じさせる作品でした。

最初、豊川左膳のイメージショットみたいなのが映し出された時は、これ『RED SHADOW 赤影』(2001、中野裕之監督)や『陰陽師』(2001、滝田洋二郎監督)みたいなことをやるのかと思ってあせりましたが、ところどころ意味不明な展開はあるものの、たいへん落ち着いて観られました。

この映画はリメイクであることを大々的に謳っているので、これが最も心配の種でしたが、時代劇だからリメイクこそ王道であることを知らされました。

リメイク元の『丹下左膳餘話 百萬両の壷』( 35年 山中貞雄監督)は、わたくしにとって、名作とか傑作以前に、大好きな作品なので、それを下手なリメイクをされれば、比べるもなにも不快になるでしょうね、多分。ですが、意外やこの作品は原作に対する愛情と敬意が溢れていて、今では巧く再現できないところは何とか別のアイデアに置き換えつつ、かなりオリジナル愛に溢れたリメイクになっていると思います。

たいへん失礼な言い方ですが、撮影監督であった津田豊滋さんが監督デヴュー作でこんなかわいらしい作品をお撮りになるとは思いませんでした。

兎に角、変な野心とかお遊びとかがなくて、極力キャメラを据え置いて丁寧に撮ってあります。

矢場の鮮やかな色彩がオリジナルではあり得なかった独特の世界に誘ってくれます。

この落ち着いた雰囲気の中で今の旬の俳優さんたちが活き活き動いているのがたいそう面白い。

豊川悦司さんは大河内傳次郎のようなこぼれんばかりの可笑しさ(殺陣もね!)には欠けるものの、やさしい情緒が勝っている。
和久井映見さんは、待ってました!本当に待ってました!9年ぶりの銀幕登場です。未だに『虹の橋』(93、松山善三監督)のイメージが残ったまま、見入りましたが、ちょっとキャラを作り過ぎたかな、という感じ。もっと奔放に出来たらなぁ、と少し残念かもしれない。TVドラマ『動物のお医者さん』あたりから感じていたのですが、この人はキャラを作りすぎるとややそのイメージに縛られる傾向があるように思います。また、和久井さんはかつては和製ポップスの名歌手としても鳴らした人。小唄をどう聴かせるか、興味津々でしたが、ちょっと線が細すぎて味わいは少ない。あと、啖呵の声が音程が高すぎて粋が不足している。ぜひとも時代劇での益々の研鑚を期待したい。

野村宏伸さん、麻生久美子さんコンビは実に面白そう。それだけでも観てる方はウキウキしますよ。この二人は原作の澤村國太郎、花井蘭子コンビに引けをとらない。笑えました。野村さん。『花と蛇』(2003、石井隆監督)での演技に物凄く不安を覚えましたが、相応しい役にあたれば、こんなに活き活きするじゃないですか。

元々、原作の山中版は数ある丹下左膳ものパロディとして作られたものなので、そんなものを元にして現代に「丹下左膳」を蘇らせていいの?とちょっと思わないでもないですが、一般的な強面の左膳より、この方が今の時代にはあっているかもしれません。このキャラクターのまま他のエピソードを連作する手もありですね。

そのかわり、山中版にあったブラックな笑いはなし。普通に人情劇になっています。
捨てるにはあまりにも惜しいギャグが割愛されていたり、変な情緒的な落ちになっているのは正直不満ですが、全体の雰囲気が楽しいのでいいです。

一つあまりにも納得いかないのは音楽。
山中版は音楽でどれだけ笑わされたかしれない。トーキー初期にこれだけバカバカしい音楽センスを持っていたことに驚嘆しますが、今作の音楽は、あまりに印象に残らないのがいただけない。サントラが売っててビックリしましたよ。

やはり、時代劇というのは伝承です。アクション映画にしてみたり、歴史観の見直しにだけ力を入れたり、時代考証に凝ったりして、特別なものを作ろうとしても、突然傑作が生まれたりはしないのではないでしょうか。
昔の映画を手本にしながら、余計なことに囚われず、同じ話を語り直していくことにも、結構意義を感じました。

これから、役者さんやスタッフたちが時代劇の面白さを掴んでいってくれたらいいなぁと思います。

蛇足ではありますが、チャンバラシーンはあまり見せ場とは言えなかったかも。話の落ちも、まぁ、あまり必要なかったかも。



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映画『丹下左膳 百万両の壷』(2004、津田豊滋監督 )
2004.8.14.恵比寿ガーデンシネマ2にて

























「わたくしの心を支えとなっている100本の映画」にもランクイン。
       

       
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