

後半に、犬猫用抗菌剤(キノロン系)の使用と用量について記載しています。
【T】 PK/PDの概念
(A) PK=Pharmacokinetics=薬物動態
PKは、投与した薬剤の体内動態(血中濃度、組織内濃度)を示します。
(B) PD=Pharmacodynamics=薬力学
PDは炎症部位(臓器)に到達した薬剤がどの程度の抗菌活性を有しているかを示します。
| PK 薬物動態 | PD 薬力学 |
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| 抗菌剤投与後、血中濃度は直ちに上昇し、ある時間で最高濃度となる。その後薬剤は、移動、拡散、分解、代謝され、徐々に濃度が減少する。(数時間〜数日) | |
| AUC=area under curve。 単位mg・hr/L Cmax=Concentration max。単位mg/L |
MIC=minimum inhibitory concentration。単位mg/L (試験管内の抗菌力) |
| 上記PKとPDを組み合わせると、(表1)のPK/PDとなります。 | |
| 表1 PK/PD |
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| PK/PDの理解は、細菌に対する抗菌活性効果を予測するために重要です。 また、抗菌剤の選択と適切な投与法決定にも不可欠です。 |
(表2) 抗生剤PK/PDの3種類の指標(パラメーター)

| 3つの指標 | 指標の意味 |
| AUC/MIC | 数値が高いほど有効 |
| Cmax/MIC | 同上 |
| Time above MIC (T>MIC) 単位(%) MICを超える血中濃度を維持している時間 |
%が高いほど抗生剤が有効 |
抗生剤は、その分類によって効果発現のパターンが違います。
従って、表3に従って抗生剤の1回使用量、1日使用回数等を検討する必要があります。
(表3)
| 抗生剤の特性 | PK/PDパラメーターと 投与方法のポイント |
左記特性を持つ 抗生剤 |
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| T 濃度依存性殺菌作用と 長時間持続効果 |
AUC/MIC またはpeak/MIC → 1日投与量増加、および 1日1回投与 が重要かつ効果的 |
キノロン系 アミノグリコシド系 |
キノロン系のAUC/MIC目安 | |
| グラム陽性菌に必要な数値 | 30〜40以上 | |||
| グラム陰性菌に必要な数値 | 100〜125以上 | |||
| U 時間依存性殺菌作用と 短時間持続効果 |
time above MIC → 分割投与が重要 1日2回より3回または4回 が効果的 |
ペニシリン系 セフェム系 カルバペネム系 モノバクタム系 |
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| V 時間依存性殺菌作用と 長時間持続効果 |
AUC/MIC (半減期が長い、またはPAEが長い) |
クラリスロマイシン アジスロマイシン テトラサイクリン系 バンコマイシン |
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【U】。 耐性菌を出現させないためのキノロン系抗菌剤の概念
(注。 以下の考え方は、あくまでもキノロン系抗菌剤についてのみ理論が確立されています。)
はじめに。
キノロン系抗菌剤に耐性の細菌が出現する理由は、治療によって感受性株(細菌)が耐性株になるためではありません。
自然界でキノロン耐性遺伝子を獲得した細菌が生き残って増加することが耐性化の主な理由です。耐性遺伝子は、プラスミド伝達によって耐性細菌を広めていきます。
なお、治療中に耐性菌が発生する可能性はゼロではありませんが、確率的にはほとんど無視できます。
| 表4 | |
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| 新語句 | MPC (Mutant Prevention Concentaration) =耐性菌阻止濃度 |
| MSW (Mutant Selection Window)=耐性菌選択濃度域) | |
| (表5) | |||
| 耐性化を誘発させないためのキノロン系抗菌剤の条件 | |||
| 1.MICとMPCが低値である=MSW)が狭いこと | |||
| 2.MPCを超える濃度が高値で維持し、MSWを超えて立ち上がる時間が早いこと | |||
| 表5 (A) |
上記1.2.を満足するイメージ図。 耐性株も死滅する |
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| 表5 (B) |
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| 1.2.を満足しないイメージ図。 もしAUC/MICを満たしていても、MPCが高く、MSWが広い。感受性株は死滅するが、耐性株は相対的に増加 増殖し、抗菌剤無効です。 |
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表6 耐性菌を発生させないためのキノロン系の使用方法 AUC/MICに加え、MPCやMSWをも考えての投与法が重要です。 |
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| 表6 (A) |
正しい投与法。 高濃度で短期間投与。MPCを超えている。 その結果、耐性菌も死滅する。 ![]() |
| 表6 (B) |
間違った投与法。 少量を長期間投与。耐性菌が生き残り増殖する。 ![]() |
| 小動物用キノロン系抗菌剤 (※農水省で正式に認可した処方例とは必ずしも一致しません) | ||||||
| 一般名 | 成分名 | 剤形 | 対象 | 効能、効果 | 特性、適応疾患 | 注意 禁忌 |
| イバフロキサシン | Ibaflin | 経口 15mg錠 300mg錠 |
犬 15mg/s 経口 24時間毎 |
広範囲スペクトラムを有する 作用は濃度依存的。DNAジャイレース阻害により殺菌性。 ブドウ球菌、緑膿菌、クレブシエラ、大腸菌、プロテウス、サルモネラ、マイコプラズマ、等のグラム陰性菌に有用。偏性嫌気性菌に無効。 |
脂溶性が大きく、軟部組織、泌尿器臓器、皮膚への移行良好。 大腸菌、プロテウス、腸内細菌属、クレブシエラによる急性単純性膀胱炎と、ブドウ球菌、大腸菌、プロテウス感受性株による膿皮症、鼻炎及び上気道感染症 |
NSAIDSとの併用禁忌: 成長期動物への使用は軟骨異常あり。 てんかんには慎重投与。 シメチジンは本剤の効果を増強する。 |
| エンロフロキサシン | Baytril バイトリル |
注射: 25、50、100mg/ml 経口: 15,50,150mg錠 |
犬、猫 5mg/s 皮下24時間毎 経口1日 5mg/s 分1または、2.5mg/s 1日2回 小型ほ乳類 皮下、経口とも5-10mg/s1日2回または20mg/s1日1回 鳥類 筋肉内、経口とも10mg/s1日2回または20mg/s1日1回 は虫類 筋肉内、経口とも5-10mg/s24-48時間毎 |
広範囲スペクトラムを有する。 作用は濃度依存的。DNAジャイレース阻害により殺菌性。 ブドウ球菌、緑膿菌、ミコバクテリウム属、クレブシエラ、大腸菌、プロテウス、サルモネラ、マイコプラズマ、等のグラム陰性菌に有用。偏性嫌気性菌に無効 |
脂溶性が大きく、軟部組織、泌尿器臓器、皮膚への移行良好。 大腸菌、プロテウス、腸内細菌属、クレブシエラによる急性単純性膀胱炎と、ブドウ球菌、大腸菌、プロテウス感受性株による膿皮症、鼻及び上気道感染症 |
成長期動物への使用は軟骨異常あり、成長期には禁忌。 8週齢前の猫には使用禁忌。 猫では網膜性失明が用量依存性に発症する。 てんかんには慎重投与。 シメチジンは本剤の効果を増強する。 静脈内投与は認可されていないが、重症敗血症には使用できる。 |
| オフロキサシン | OFLX (タリビッド)(ただしタリビッドは人体用) |
点眼 0.3%溶液 |
犬、猫: 6時間毎に1滴 |
ブドウ球菌、緑膿菌を含む | 動物では点眼のみが認可されている。 | 耐性化が進んでいる |
| (人間用)タリビッド100mg錠、10%散剤) | ||||||
| オルビフロキサシン | ビクタス | 経口 ビクタスS錠 10mg, 40mg 注射 5%液 20ml,100ml |
犬 2.5mg/s経口 1日1回 筋肉内注射 1日2.5〜5.0mg/s |
広範囲スペクトラムを有するフルオロキノロン系抗菌剤。 作用は濃度依存的。パルス療法が有効。DNAジャイレース阻害により殺菌性。 ブドウ球菌、緑膿菌、ミコバクテリウム属、クレブシエラ、大腸菌、プロテウス、サルモネラ、マイコプラズマ、等のグラム陰性菌に有用。偏性嫌気性菌に無効 |
脂溶性が大きく、軟部組織、泌尿器臓器、皮膚への移行良好。 大腸菌、プロテウス、腸内細菌属、クレブシエラによる急性単純性膀胱炎と、ブドウ球菌、大腸菌、プロテウス感受性株による膿皮症、鼻及び上気道感染症 |
NSAIDSとの併用禁忌: 成長期動物への使用は軟骨異常あり。 てんかんには慎重投与。 シメチジンは本剤の効果を増強する。 耐性化はまれ。 |
| シプロフロキサシン | シプロフロキサシン (CPFX) |
点眼 0.3%溶液 | 犬、猫: 初期15分毎に1滴を4回(初回負荷) その後6時間毎 |
動物では点眼のみが認可されている。 | 局所刺激あり | |
| 人間用 錠 100mg、200mg 点滴用注射 300mg/mL |
人間用 内服 1回100〜200mg 1日2〜3回 注射1回300mg 1日2回 |
シプロフロキサシン感性の、ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、淋菌、炭疽菌、大腸菌、赤痢菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、インフルエンザ菌、緑膿菌、アシネトバクター属、レジオネラ属、ペプトストレプトコッカス属 | 表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、乳腺炎、肛門周囲膿瘍 咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染 膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎(急性症、慢性症)、精巣上体炎(副睾丸炎)、尿道炎 胆嚢炎、胆管炎、感染性腸炎 バルトリン腺炎、子宮内感染、子宮付属器炎 涙嚢炎、麦粒腫、瞼板腺炎 中耳炎、副鼻腔炎 炭疽 |
NSAIDSとの併用禁忌: 成長期動物への使用は軟骨異常あり。 てんかんには慎重投与。 シメチジンは本剤の効果を増強する。 |
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| マルボフロキサシン | ゼナキル | 犬猫専用 25mg、50mg、100mg錠 |
1日1回 2.75〜5.5mg/kgを原則として5〜7日間、経口投与する。7日間の投与後、動物の症状を観察した上で追加投与が必要と判断された場合は、投与開始から14日を上限として適切な期間投与する。 | スタフィロコッカス・アウレウス(黄色ブドウ球菌)、 スタフィロコッカス・インターメディウス、 パスツレラ・ムルトシダ |
犬、猫: 細菌性皮膚感染症 |
NSAIDSとの併用禁忌: 成長期動物への使用は軟骨異常あり。 てんかんには慎重投与。 シメチジンは本剤の効果を増強する。 猫では網膜性失明が用量依存性に発症する。 耐性獲得はまれである。 |
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2009/01/31 作成
(抗生剤 PK/PD 薬物動態と薬力学 特にキノロン系について)