獣医療の品位を落とす治療法



必要な知識と技術を十分習得せぬままに治療をすすめる獣医師は未熟者です。しかし、努力によって今後成長することができます。無知を知り己を知る獣医師は、成長の可能性を期待されて飼い主と世間からある程度の理解を得ることができるでしょう。

他方、もっとも悪質で卑怯な医療は、その治療では治せない事、または治らない事を十分承知しながら、嘘と詭弁を盛り込んで飼い主と動物を翻弄する治療です。
治療効果よりも売り上げ確保を最優先させ、動物の苦痛と飼い主の労力をよそに飼い主を騙し、無用な継続治療を施し頻回に受診させて金儲けを企む治療です。

これは治療の腕がない無能な獣医師だけとは限りません。

むしろ、適度な治療能力を駆使して動物を無用な危険にさらし、私利私欲に走る獣医師が少なくありません。

『命を金に換えるために手段を選ばない』、確信犯としてその方法を実行した瞬間から、獣医師の堕落が始まります。
そして、獣医師の中には、「命を金に換えるのが獣医師の経営戦略、と肯定する獣医師が権力を持ち、新人を育成する立場になる」、という恐ろしい現実を、飼い主は覚えておく必要があります。

「信頼される獣医師」の理念を捨て去ったのです。
治療の名のもとに獣医師自らの手で命をもてあそぶ発想はあまりにも異常です。
日本の獣医療の品位と立場をおとしめているのは、まさにそうした獣医師の存在です。

正しく治療を行っている獣医師と獣医療にたいして、大きな迷惑をかける所業です。

医療ミス被害者の多くが語る言葉の中に以下があります。
「それまでずっと誠実そうで良い先生だと思っていた。こちらの質問に耳を傾けてくれ、知識豊富そうで優しく説明もしてくれていた。
しかし治療トラブルの説明を求めた途端、別人のように変わってしまった。あれこれと言い訳ばかりして問題を棚ざらしにする。口調こそ穏便だがおよそ誠意が見られない。無為に時間ばかりが過ぎていく。これが本音かと思うと信じられない。獣医師の本性を見抜けなかった自分が、飼い主として、動物に申し訳なく悔しい。」


またある勤務獣医師からは以下の意見が寄せられています。
「私は代診の身です。
院長は
『ミスは起きて当たり前なので、それを飼い主にご納得いただけるようにお話する話術は獣医師の腕のうち。飼い主さんに心の負担を与えないよう、気持を安らかにしてお帰しするのも、また獣医師の仕事だ』と教えますが、飼い主に嘘をつけと言っているようなものです。しかし同時に、飼い主に嘘をついてはならないとも言います。これは、飼い主にばれるような嘘をつくな、ということです。今は院長の時代とは違います。」

実際にも、自身の仕事に誇りを持たず、また、内心では飼い主を差別視しながら巧妙な見せかけの笑顔や小手先の処世術と接客術で診療を行う獣医師が多すぎるのが現状です。
そのため、飼い主が今の治療に疑問を感じ、口コミや雑誌情報などを頼りに転院したとしても決して安心は出来ません。
転院先の治療内容が前医と違う場合、医学的に正しいかどうかを飼い主が見極められなければ、再び乱診乱療の犠牲になりかねません。
悪化して転院してきた動物の状態を見ると、後医は前医での治療や状況を知ることが出来ます。
前医での臨床経過や治療内容は極めて重要で有益な情報であるにもかかわらず、それは無視して金儲けに励む後医がいます。
「こうなっては自分の腕では治せない、ほどほどの治療で誤魔化しておくか。」
「面倒なことまでしてこの病気を治す気もないし必要もない。前医の治療と、前医を選んだ飼い主がすべて悪いのだから。」
命の尊さと治療者の責任を完全に放棄し、嘘だらけの治療をたれ流す獣医師の存在は決して珍しいことではありません。

腕の良い獣医師の中にも次のように考える獣医師が少なからずいることも大きな問題です。
「「死なせて返すから騒ぎになる。死なせなければ発覚しない。動物病院の経営の意味でなら、動物を殺してしまうのは下手なやり方だね。殺してしまったら元も子もないじゃないか。それよりだったら、生かしておいて治療に通わせ病院のお客さんになってもらってさ、お金にした方がずっと賢いというもんだよ。そうすれば口コミで無料の宣伝をしてくれるし、今の動物が亡くなってもまた新しく飼ってお客さんになってくれるからね。」


「ペットライフの最後は結局は”どう死ぬか”につきる。
治療うんぬんよりも、最後のところをうまく演出して飼い主を納得させるようにするのが獣医の仕事。中身より形をつくれるかどうかだ。」


弱い立場にある飼い主と動物を私利私欲の経営のために利用する考え方は、
真摯な医療者とはかけはなれています。技能の優劣以前の問題です。
ところが、このような悪質な獣医師は決して希な存在ではありません。獣医師の誰もが、生命への尊厳を忘れ、治療の謙虚さを失う可能性を持っています


大切な動物を守るため、飼い主は賢明になる必要があります。欺瞞に満ちた診療態度を見抜き、正しい医療者を見極める必要があります。
こうした飼い主の厳しい選択眼は正しい獣医療を支援することにつながります。


以下には悪質獣医師が頻繁に活用する方法を記載します。

嘘と詭弁の方法 内容(例) 飼い主の心理 治療者の意図
飼い主の不安を異様に煽る。 軽症にもかかわらず、今すぐ治療しないと命にかかわるかのごとく説明して加療する。 命が危ないと説明されると気が動転してよく理解しないまま治療を依頼する。 あらかじめ難しく説明しておくと、
1.治療ミスしても言い訳が立つ。
2.治ると名医として信頼される。
3.助かった場合は運命が味方をしたといって人徳を演出する。

ミス時の予防線を張り、かつ、治療に手を抜くことが出来る。
治療の不手際を病気のせいにする。 検査の見落としや治療の失敗などのすべてを、動物の特異体質や病気の特殊性のせいにする。 難しい病気になってしまった、といって断念する。 「飼い主は医学的に無知でデータは読めないし治療経過も理解できない。」
嘘が通用する飼い主であるとふんでいる。
検査結果をでたらめに利用して、ありもしない病気を作る。 1項目だけでは確定診断すべきではない場合や、またはデータの解釈が間違っていても、病気があると断定する。
例)GOT(AST)単独高値=肝臓病と断定する。
データの異常値と、それに相当する診断であれば納得するしかない。 とりあえず診断をつけてしまえば治療の大義名分ができ、治療費を請求できる。
「それは病気とは断定できない」と、追究されるおそれは少ないと知っている。
ずさんで無責任な治療を繰り返したあげく、困りはてた状態になった時、問題点を飼い主の選択権に転嫁する。 事前には説明せずに、治療が失敗してせっぱ詰まってから、安楽死か手術に賭けるか、と飼い主に選択を迫る。 我が子の運命を決定するという重圧感が心を占める。

病態把握やミスの可能性まで頭が回らない。
飼い主に決めさせておくと責任の所在が飼い主に移る。医療ミスはその陰になって隠しやすくなる。
治らないのを知りながら治るかのような治療を延々とする。 ・病状が治らないのを知りながらその説明はせず、回復の可能性をにおわせ、「全力を尽くします」といって無意味な治療を繰り返す。
薬効や副作用を無視して、本来の病状改善とは無関係な高額な薬を処方する。
・意図的に更なる合併症をつくりだし、通院地獄に落とし込む
治るのを期待して最大限治療を受ける。 どうしようもなく悪化してきたら、病気が急速に進んだと説明し、できるだけの手を尽くしたかのごとく振る舞えばよい。それまで頻回に通院させて診療費を稼ぐ。
未熟な治療で病態をぐちゃぐちゃにしても飼い主にはばれはしない。
だめになってきたら最後は安楽死を薦めるのも獣医には許される選択肢だ。
より正しい治療法の存在を知っているが、自分に能力がない場合は別の治療法を押しつける。 手術療法が唯一の腫瘍で本当はそうすべきだが、手術が苦手なので内科的に治すと主張する。手術は危険すぎると説明する。 手術ができるならして貰いたい。しかし手術もできないような大変な状態であれば内科治療に賭けるしかないと考える。 癌や肉腫、しかも切除不能と説明すれば、早期であっても重症感を醸し出して説得できると知っている。
最終的に治らなくても追究されにくい。
他院へ転院すると、飼い主が不利益をこうむるかのごとく説明する。 ・今転院すると悪化するおそれが高いと言う。
・行くなら勝手に行けばよいと突き放す。
・今後はあたかも診ないかのように示唆する。
もう少し同じ病院に通院してみようかと悩む。 ・これまで診てやったのに今さら転院は許さない。
・でたらめな治療内容がばれると飼い主に追究される。
・売り上げが下がるのは困る。
種の違い(人間とはちがう生き物である)をことさらに強調して、治療方針と内容の誤りを正当化する。 動物治療は人とは全く違うので素人は口出ししないようにと牽制する。
医学的に既知の事実でも、動物ではデータがないなどと主張する。

例)
動物では血糖500の糖尿病性ケトアシドーシスでもインスリンは必要ない。嘔吐しても内服治療とする。
「種が違うと生理的変化も医療概念も全然違う」と説明されるとなんとなく反論し難い。 人医療はかなり進んでいて、獣医療もそこから学ぶ必要があると内心では知っている。

しかし比較されると落ち度がばれるので、「動物は特別」と言って逃げておく。


なぜ違うのかは飼い主に説明しなくてもこと足りる。飼い主が論文を調べて追求するのはあり得ないだろう。
正当に努力している他の獣医師を誹謗中傷し、あたかも自分だけが優秀であるように見せかけて集客する。
どの獣医師でもできる一般的治療にもかかわらず、
「この治療法は私以外の獣医師はできない。他の病院に行ったら失敗するおそれが高い。あそこは危ない。」などと説明する。
治療の専門家と言われると頼りにしたくなる。他の病院よりも優れているように見える。期待できるかも知れないと考える。 飼い主は治療の是非や優劣を理解していないから、優秀な専門家のように見みせておけば飼い主は信頼する。
飼い主がセカンドオピニオンを求めて受診して来た時、故意に前医の治療を否定する。
飼い主を
取り込もうと画策する。
「前医の治療は今ひとつ足りないから治らなかった。私なら別の治療法ができる。そうすれば治ります。」といって転院治療を勧める。

しかし前医を越える能力はなく、より積極的な治療もしない。
後医ではもっと優れた治療が可能であると期待する。
特に治療が優れていなくても、「後医は名医」になりやすいことを悪用する。
前医で治らなかったのだから、前医の治療を否定しておけば言い訳ができる。
別の治療を選択して結果が悪くとも、前医の治療が悪くて手遅れになったと説明できる。
飼い主の希望を無視し、嘘をついて無断で薬剤や医療器具を使用する。
飼い主「手術では絹糸は使わないでください」

・獣医師「はい、絹糸ではなく吸収糸を使いました」
と嘘をついて見えない部分に絹糸を使用する。
体内の糸を確認することは不可能。
獣医師を信じるしかない。
手術でどの糸を使おうが獣医師の自由である。
何の糸を使ったかは誰も確認することができない。万一感染などの問題が起こるとしても先の話でどうせ飼い主も覚えていない。
そもそも飼い主は、絹糸も吸収糸も名前だけ知っているが本物は見たことがない。判るはずがない。
無意味な治療をダラダラと続け、集客と収入のみを目的とする 全く意味を持たない治療(もどき)で治すフリをして、病状が変わらない、または悪化しても、飼い主を頻回に受診させる 治療の内容を理解できない多くの飼い主は獣医師の治療を鵜呑みにする
飼い主は費用と時間がかかっても最大限のことをしてあげたいと考えるが、獣医師はそれを悪用する。
経営的に動物が死んでしまっては意味がなくなる。ほどほどの治療にしておいて何回も受診させておけば飼い主も満足するし収入も増える。
そこを上手にやるのも獣医の腕の見せ所。
生かさぬよう殺さぬようにほどほどの治療で十分だ。
飼い主の意見を取り合わない。 ・飼い主
「静脈炎の予防のため、今入っている点滴の針を左右変えてください。」
「この薬を飲んでから調子がおかしいのですが。副作用ではないですか?」

獣医師
飼い主の意見を聞くフリはするが実行しない。
詳しく調べることもしない。
もしかしたら実行しない医療上の特別な理由があるのかも知れない。
飼い主が得た知識では重要と思っていたが、実はあまり重要なことでないのかもしれない。
飼い主は気持ちが揺らぎ、自分に言い聞かせて無理に納得する。

あるいは、どう考えても獣医師に問題があるが、担当獣医師の対応はしょせんその程度なのかと、あきらめる。
いちいち飼い主から細かいことを聞くのは面倒であり対応するほどでもない、と決めつける。
または、対策を省略しても病気の体勢に影響しないだろうと、根拠もなく勝手に解釈する。

「どうせ一時的な問題で、病気が治ればそれで文句はないだろう。」
というおごりを持つ。
思いつきや当てずっぽう治療の結果、収拾がつかなくなる。
必要な薬剤も使用せず、治療の限界と言って飼い主に嘘をつく。
・無用なステロイド多用のために感染のコントロールができなくなる。
・治療が全く分からないまま悪化したので、とりあえず重症で入院が必要と言う。
MRSAや耐性緑膿菌などへの抗生物質はいつも使う薬剤ではないので常備は不要だしそもそも在庫はかかえたくない。
難しい感染症にかかったら面倒な治療はせずに断念する。
重症で難しい治療をしているのだと納得する。 飼い主には医学の粋を尽くしたと言えば説明がつく。

入院させてとりあえず点滴しておくと,、飼い主が見舞いに来たとき、格好がつく。

治療内容はでたらめでも難しい状態と言えば飼い主は満足する。

詳細なデータを求める飼い主はほとんどいない。まして抗生剤の感受性といっても飼い主は分かるはずがない。
経営最優先で治療内容を決定し進める。 ・最も効果が期待できる薬剤を知っているが一回で治してしまうと利益が生まれないので、最初は効きが悪い薬から使用して頻回に通院させ最後に効く薬を出して儲ける。
・治療に全く不要な薬剤を処方したり検査を繰り返したりして少しでも利益をを出そうと飼い主を囲い込む。
飼い主は内容は理解できないので、治療にとって必要な薬剤や検査であると言われると承諾する。 ・経営安定のための収入確保は獣医師の重要な仕事でもある。多少の嘘がはいったり、治る時間が遅れても、それくらいは許容範囲である。

・動物と飼い主が余計な身体的負担、金銭的負担を受けるのは認めるが、最後に治れば文句はないだろう。その間にもし合併症が発生しても病気なのだからしかたがないだろう。飼い主も治療内容の本質までは理解できないだろう。




悪質な獣医師が、医学的に無知な飼い主を騙すことは極めて容易です。
飼い主は、騙されていることすら判らないことも多々あります。



悪意を持って騙す獣医師がいるとは理解しがたいことですが、現にいることも事実です。
悪質獣医師に騙されないためにも、飼い主は治療を不信に感じたら必ず質問をすべきです。


以下は具体例です。
今後適宜追加予定です。

それは本当ですか?(例) いろいろな問題と可能性があります。 確認すべき事があります。 そのまま治療を続けると今後どうなるでしょうか?

心臓
健康診断時の聴診で心雑音があるので心臓病があると言われた。
「治療しないといずれ心不全で死ぬかもしれない」と。

ただちに利尿剤と降圧剤(アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACEI)やカルシムブロッカー)とジギタリス剤を処方された。

その後2年間定期的に通院し内服を続けたが特に体調の変化はなかった。
その後たまたま別の病院を受診したら心臓雑音は聞こえず心臓病はないと言われた。


診断が全く違うのはどうして?
1.聴診器上の雑音は、聞く獣医師の独断で決定できます。
聴診器の性能が悪い場合や、獣医師の聴力が悪くても雑音に聞こえることがあります。

2.雑音と言っても多様です。呼吸音や皮膚との摩擦音もあります。

3.心雑音は主に2種類があります。
・収縮期の駆出音(ejection murmur)(狭い場所を血液が早く通る時の音。弁狭窄時や貧血時など)
・収縮時の逆流音(regurgitant murmur)(弁が壊れたときや、心室に穴が開いている時の音)

4.無害性心雑音もあります。
雑音があるからといって病的とは断定できません。
1.聴診でどのタイプの心雑音が聞こえているのでしょうか?

2.心臓エコー検査で確認していますか?
・心音図で心雑音の有無、駆出か逆流かが、だいたい判ります。
・心筋の動きや弁膜の動きが判ります。
・カラードップラーエコーでは逆流と駆出が色で証明できます。

3.胸部写真や心電図を検査して心疾患の状況を総合判断していますか?

4.臨床的に心臓疾患を疑う状況でしょうか?例えば頻呼吸、呼吸困難、息切れ、むくみ、尿量減少などがありますか?

5.治療の必要性とその理由が合理的で妥当でしょうか?
緊急性の有無や、治療の最終目的など理にかなっていますか?

6.心疾患があった場合:
心疾患の内容によって治療薬剤は違います。
・心筋収縮力の問題には、収縮刺激または抑制剤
・不整脈の問題には抗不整脈剤、
・冠動脈(心臓への栄養動脈)の問題(狭心症、心筋梗塞)には血管拡張剤など
・循環体液量や血圧の問題があれば、利尿剤または補液(腎不全時の心不全など)による調整が必要。

薬剤の副作用が出る可能性があり、十分な観察と定期的検査(写真、採血等)が必要です。
もし誤診であれば、有害であり直ちに中止します。

●利尿剤:
強制的に尿を生成させ体内を脱水傾向にします。そのため多尿、口渇。多飲となります。
臓器への血流低下が生じ、時には腎機能が低下し、腎不全になります。
●降圧剤:
低血圧や頻脈となり、かえって心臓に負荷をかけることがあります。
特に、低血圧はショック状態と同じで意識がなくなります。補液や昇圧剤などの適切な処置をしなければ生命の危機となります。

●ジギタリス製剤
(代表的薬剤ジゴキシン
心筋収縮力を増加させる薬剤です。至適有効血中濃度が厳密に決められています(血中濃度0.8〜2.0ng/ml)。
2.5ng/ml以上になると中毒の危険性が大きくなり、危険な不整脈そして心臓停止となります。従って、定期的に血中濃度を測定し、また効果の有無を心電図で確認すべきです。

呼吸器
ひどい咳をするので受診したら、ただ肺炎と言われた。

「年だから抵抗力がなくなった」と言われて検査もせず、スタドール(鎮咳剤)とペニシリン系抗生剤を延々と注射され続けた。

治りが悪いので他院を受診したら、今度は、心臓が悪いので咳をしていると言われた。


1.咳の原因は肺炎以外にも、喉頭の炎症、気道の閉塞、気道の異物、心臓疾患(うっ血性心不全)、胸膜刺激、横隔膜刺激など多数あります。
症状だけで確定診断するのはできません。
咳=肺炎か心臓病、とは限りません。

2.感染の場合はウイルス性か細菌性かによって使用薬剤は異なります。

3.咳の性質(乾いているか湿っているか)、痰の有無、痰の性状、呼吸の回数、呼吸が浅いか深いか、など、詳細な身体所見を調べる必要があります。
1.全身所見を十分にとっていますか?
他の疾患を除外できていますか?

2.胸部写真をとって確認していますか?
 肺炎の有無、心臓肥大の有無、肺うっ血の有無などを確認していますか?

3.発熱など、感染の徴候がありますか?

4.原因菌の確認(培養検査)は実施されていますか?

5.抗生剤の効き方を頻回に確認していますか?
  ペニシリン系以外の抗生剤を用意、検討していますか?

6.スタドールの慢性使用は呼吸抑制と喀痰排泄抑制を引き起こし肺炎を悪化させる危険性があります。鎮咳剤使用時は、咳が治まったことと肺炎が治ったこととは必ずしも一致しません。
咳の根本原因を考えずに対症療法のみを続け、原因疾患が不明のまま漫然と投薬すると、時には状態を悪化させます。

●スタドール(モルヒナン系鎮痛剤)
強力な鎮咳作用があります。一方、最も注意すべき副作用として呼吸抑制があります。頻回の投与によって呼吸が弱まり、低酸素に陥る危険性があります。

●ペニシリン系抗生剤
ペニシリンに感受性のある細菌をターゲットに使用します。ウイルス、真菌には無効です。またペニシリン耐性の細菌にも無効です。
原因菌を特定せぬまま漫然と使用すると、無意味であるばかりか耐性菌の出現を誘発して治療を困難にします。
3手術。絹糸 避妊手術を受けたが1週間後にお腹の傷の治りが悪くて膿が出てきた。よく見ると皮膚から絹糸が見えている。

担当医からは、
「糸はそのうち消えてなくなる。塗り薬で治る」と言われて毎日通院している。

このままで大丈夫か心配。
1.感染(膿)の場所が皮下組織であるのか、腹腔内からなのかによって緊急度や治療法が異なります。
感染が皮下と腹腔内でつながっている場合は腹膜炎や敗血症となります。

2.絹糸は吸収されないため放置すると感染は改善しません。速やかに除去する必要があります。

3.腹膜炎も併発している可能性がある場合は直ちに抗生剤の全身投与が必要です。

4.お腹の中の縫合糸に絹糸が使われた場合は、将来絹糸(異物)による腹腔内膿瘍や反応性肉芽腫ができるおそれがあります。
1.感染の深さや範囲は十分に診断されていますか

2.感染した領域の糸(異物)は除去しない限り治りません。その処置はありましたか? あるいは検討されていますか?

3.膿の培養検査は提出されていますか?
どの種類の抗生剤が有効であるのか確認する必要があります。

4.全身の感染徴候はありませんか?もし腹部の感染があって重症化する場合は、異物除去または排膿のために再手術も視野に入れる必要があります。
腹膜炎あるいはそこからさらに波及して敗血症になると危険です。
炎症を引き起こしている細菌の種類を決定して直ちに適切な抗生剤投与が重要です。
また、全身状態の回復を図った後に、異物(絹糸)の除去を計画する必要があります。

仮に抗生剤で一時的に改善しても、絹糸がある限り再感染の危険性はあります。
感染の発症時期も数日から数年間と幅があります。

数年後に腹膜炎症状を起こした場合は腹部レントゲンを撮影すると石灰化した絹糸が見える場合があります。
4手術。感染 皮膚の腫瘍を取る手術を受けたが術後感染を起こした。

後に培養でMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)と判った。

効く薬はないから様子を見ましょうと言われた。

執刀獣医師は、手術に感染は付き物だといって平気な顔をしている。普段の手術でも特に無菌には関心がないようだ。
1.MRSA感染症は、背景に基礎疾患や異物などの可能性があります。内科疾患の有無、創異物(糸など)の有無、創の異常(死腔の存在)などの確認が必要です。

2.手術の感染防止とその対策は必須です。清潔の意識と無菌的操作を努力しない限り手術感染は減少しません。

3.MRSAに効果的な抗生剤は数種類あります。
代表的な薬剤として、バンコマイシン、アルベカシン、テイコプラニンがあります。その他にアミカシン、ミノマイシン、ホスホマイシンなども効くことがあります。使える薬剤を確認しておくべきです。

4.院内感染としてMRSAが蔓延している可能性があります。
手術場の環境やスタッフの清潔操作に問題があるかも知れません。
術後感染症のコントロールができない病院では手術は危険な行為となります。
1.創の状況を詳細に観察していますか?
絹糸や死腔などありませんか?
感染を受けやすい内科的疾患(糖尿病や甲状腺機能亢進症など)の可能性はありませんか?

2.感染は全身には波及していませんか?
  獣医師はどんな考えで今後の方針を立てていますか?

3.MRSA対策用抗生剤は確保されていますか?
また、獣医師はMRSAに対する知識を持っていますか?

4.スタッフは手洗いを励行していますか?
  スタッフの白衣は汚れていませんか?
  スタッフ全員に清潔操作の意識はありますか?
 
MRSAは弱毒菌であるため、局所感染であれば一般的には重症化しません。
排膿(ドレナージ)、異物除去など、適切な対処で自然治癒することもあります。
しかし、感染が広がるようであれば、直ちに抗MRSA剤を投与する必要があります。
判断の遅れが致命的な全身感染症まで進行してしまうことも珍しくありません。

またMRSAの感染源のほとんどは医療者自身です。
清潔観念や手洗い消毒の重要性を感じない獣医師であったなら、感染症そのものの理解も皆無と考えられます。
転院などの対応を早急に実行すべきです。


5.輸液 夏に元気がなくなり脱水の診断で点滴した。獣医師は短時間に大量に入れたところ、まもなく呼吸困難を起こした。
点滴の量が多すぎるのではないかと指摘したが、もともと心臓が悪かったと言い張った。
輸液量は脱水の程度(%)と体重に応じて決定されます。ショックなどの緊急時を除き、一般的な維持輸液速度は1〜10ml/kg/h程度です。

特に初期輸液ではNaClが多いため、急速投与は循環量の急激な増加をもたらし、心臓や腎臓に負荷を与えます。衰弱、高齢者、臓器障害などでは時間をかけてゆっくり投与するのが原則です。
1.気泡検知器付きの自動注入ポンプ(輸液用機器)が使用されていますか?
ポンプ装置には注入速度が表示されているので、1時間あたり投与量と総投与量を確認できます。

2.ポンプを使わない点滴では、チャンバー(滴下が見える部分)内の滴下速度を参考にします。
(表1参照)
一時的な大量の水とNaCl負荷による急性うっ血性心不全は緊急を要する状況です。
ただちに、利尿剤注射、酸素吸入を開始しなければなりません。
血圧低下がなければ強心剤は必須ではありませんが、心筋収縮力増加と腎臓血流確保の目的で、強心剤(ドーパミン、1〜5μg/kg/min)を使用することもあります。
呼吸困難の症状が落ち着くまでは慎重な観察が必要です。


表1 点滴セットによる1分間の滴下数換算表(輸液セット別)
成人用輸液セット 15滴=1ml   (1秒1滴では1分間に60滴(=4ml)、1時間で240ml)
小児用輸液セット 60滴=1ml   (1秒1滴では1分間に60滴(=1ml)、1時間で 60ml)

mL/H 成人用キット
(1ml=15滴)
小児用キット
(1ml=60滴)
30 8滴 30滴
60 15滴 60滴
90 23滴 90滴
100 25滴 100滴
120 30滴 120滴
150 38滴 150滴
200 50滴 200滴
250 63滴 250滴
300 75滴 300滴




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2006/3/30 作成
獣医療の品位を落とす治療