(T) 皮膚
(皮膚の構造は、表皮、真皮、皮下組織から成ります)
皮膚縫合は外科手術の基本手技です。
皮膚は外界からの刺激を遮断する極めて重要なバリアーであり、確実な縫合閉鎖が必要です。
また外観も大事な要素であり、できるだけ創が目立たないようにすべきです。
(A)結節縫合
結節縫合は1針ずつ縫合結紮する方法です。1本ずつ結び具合を調整でき、部分的な抜糸が可能です。
(A-@) 全層結節縫合
もっとも標準的な縫合です。
縫合糸は針付きモノフィラメントナイロンがよく使われています。
針を皮膚に対して直角に刺し皮下組織を丸く包むように運針して直角に抜くと、皮膚創面同士が密接に合います。
(A-A)垂直マットレス縫合
緊張のかかる皮膚や深い創に適します。創面の密着性は高く、創が平面でない場合や厚さの異なる組織縫合にも有効です。浅層の縫合はできるだけ創縁に近いところで行うと創がきれいです。
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垂直マットレス縫合横断面 垂直マットレス縫合外観
(A-B)水平マットレス縫合
創面を強く結ぶことができます。緊張のかかる部位であまり深くない場合に適します。創の表面の密着性が弱いため結節縫合追加が必要なこともあります。
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水平マットレス縫合外観
(B) 連続縫合
連続縫合は1本の長い糸を連続して縫合する方法です。結節縫合よりも操作が簡単で糸の消費も少なくできます。しかし、部分抜糸ができないため感染時に不適です。また1カ所が切れると創全体が開く危険性があります。きつく締めると創縁がずれて密着しづらい欠点があります。
(B-@) 単純連続縫合
操作が簡単ですが創面密着性は劣ります。
(B−A) 連続かがり縫合
糸が創に直角に締まり創面の密着性があります。糸の緩みも防止できます。しかし抜糸時に時間がかかります。
(B−B 連続皮内縫合)
図のように皮下を連続縫合しながら創面を合わせていきます。
創の外観はきれいで、また、真皮縫合よりも縫合時間が少なくてすみます。
抜糸は必要ですが、糸を切ることなく一端から引き出します。
運針は皮下組織から真皮に向かって入れると創面がうまく合います。
(C)真皮縫合
皮下組織から真皮方向にかけて糸をかけて結ぶ方法で、糸が表面に出ません。
いわゆる埋没皮下縫合です。抜糸が不要であり、創の外観もきれいです。
ただし、縫合の労力と時間はかかります。
通常の結節縫合の糸結びは創に直角の方向ですが、真皮縫合の糸結びは創に沿った方向に緊張が緩まないように締めます。
また、組織の高さのズレを修正するために真皮縫合の前に皮下組織を縫合することもあります。(以下図では皮下組織も縫合)
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A.針を皮下組織から真皮にかけて縫います。
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B.対面する創面では針を真皮から皮下組織に向けて縫います。
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C.糸を創方向に締めながら皮下で結紮します。
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D.糸を皮下で切って縫合を終了します。 皮膚表面にテープを貼ってきれいに合わせます。
補足)
糸以外の皮膚縫合用器材
スキンステープラー
(SKIN STAPLER)
皮膚縫合では、糸の代わりに金属針(ステープラー針)を用いることもあります。
スキンステープラーはホッチキスの要領で瞬時に皮膚を合わせることができます。
また金属針の抜去は専用の抜鈎器を用いて容易です。
糸と比較して以下の特徴があります。
スキンステープラーの特徴 利点 欠点 手術時間の短縮 創面がずれる可能性あり 組織反応が少ない 動きの多い場所、眼瞼周辺、粘膜部等には不適 縫い痕(suture mark)がつかない 創面の止血効果は少ない 抜去時の痛みが少ない コストが高くつく
(U) 消化管
(消化管の構造は、漿膜、固有筋層、粘膜下層、粘膜、から成ります)
消化管は治癒が早い組織であるため、異物として残らない合成吸収糸(3-0,4-0バイクリル(マルチフィラメント)など)が適しています。
一方、糖尿病などの基礎疾患がある場合や下部消化管(大腸、直腸など)では感染の危険性が高いため、モノフィラメント合成吸収糸(PDSU、モノクリル、など)が適しています。
(A)漿膜接合型吻合
(A-@) Albert-Lembert 縫合
Albert法(全層縫合)と、Lembert法(漿膜筋層縫合)との組み合わせです。
強固な漿膜を二重に接合させることによって、物理的な接合力を重視する縫合法です。
簡便で安全です。
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Albert法
Lembert法
(B) 断端接合型縫合
層と層を確実に合わせることで創傷治癒機転を重視する縫合法です。
特に粘膜下層は血流が多く創傷治癒には重要な層です。
血流がよく保たれ、びらんや潰瘍の形成が減少します。
(B-@) layer-to-layer(層・層) 縫合
粘膜と粘膜下層を吸収糸で、漿膜と筋層を非吸収糸で別々に縫合します。
(B-A) Gambee縫合
layer-to-layerと同様の目的ですが一層縫合のため組織の挫滅がより減少します。
腸管の前壁と後壁とでは針の入り方は異なります。
(V) 血管
(血管は内膜、中膜、外膜の三層構造です)
血管縫合は心臓血管手術に限らず一般的な腹腔内手術時にも必要になることがあります。
血管縫合の原則は全層一層縫合で内膜同士を接着(外翻)させることです。内膜の連続性が絶たれると血液の凝固や閉塞の原因となります。
縫合糸は長期間抗張力を維持する必要性があるため、8-0から3-0ポリプロピレン糸(合成非吸収性モノフィラメント)が適しています。血管内膜は繊細で傷つき易いため摂子でつかまないようにします(non touch technic)。
血管壁が弱い場合や張力がかかる血管ではマットレス縫合が適しています。
(A)結節縫合
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(A−@) 単純結節縫合 (A−A) 結節マットレス縫合
(B)連続縫合
(B−@) 単純連続縫合 (B−A) 連続マットレス縫合
「縫合組織別」