DON.BOO.LA.COO
CITROEN's future dream

シトロエンスージアストは、べつに故障自慢の自虐家ではない。
シトローエンの描く過ぎ去った未来を愛し、
ハイドロマチックの愛車は浮遊するエアカーそのものなのである。
ここでは、そうしたシトローエンの浮遊伝説を検証する。


DSによる試験記録

DS初めての浮上の瞬間

1955年、パリ郊外のテストコースで試作段階のDSが初めて浮上に成功した瞬間。ほぼフラットな姿勢を保ちながら、確かに車輪が浮いているのが確認できる。仕組みは、スフェアとアキュムレーター内の窒素ガスと植物油の圧力によって浮上するというもの。余った圧力はリザーバーに蓄えられるため、エンジンを切ってもしばらくは浮いていられる。
一般道での浮上実験
浮上実験に成功したDSはそのまま一般道での走行(浮上)試験へと移行した。しかし、シトローエンは重大な問題を見落としていた。浮上に成功したと言っても、タイヤが地面から離れてしまうと、舵を切ったり制動をかける方法がなくなってしまうことに技術者は気づいていなかったのである。
民家に突っ込んだ車両
そのため、カーブを曲がれず、道路脇の民家につっこんだり、
水中に突っ込む実験車両19号
ブレーキが効かず、水の中に突っ込んだりする事故が起こった。
ノズルの噴射方向
そこで、噴射するノズルを左右それぞれ2基づつ斜め後ろに向け、推進と方向をコントロールしようとした。
ノズルを備えた実験車両
初期型DSの実験車。斜め後ろを向いたノズルを見ることができる。
ノズルは、ハンドルと連動して油圧で方向を変える仕組みになっている。
アミの浮上実験車両
ところが、接地していない車体をコントロールするのは思った以上に難しいことであった。写真は珍しいアミ16の浮上実験風景。ロールは激しく、コントロールは困難であったという。
ロールを抑えることに成功したDS実験車両
そこで、左右のスフェアをメインアキュムレーターに結んでみたところ、想像以上にフラットな浮上状態を保ち、コントロールも容易であった。
埠頭に停まるDSの実験車両たち。
この写真は、浮上したまま水際ぎりぎりで制動するというデモンストレーション風景。これでもう、水の中に突っ込むことがなくなったことをアピールしたかったのであろう。左右斜め後ろに断続的に噴射するため、地面にはその痕跡が残っているのが見て取れる。この痕跡がシトローエンの社章である ダブルシェブロンの元になったことはあまりに有名である。ただし、現在のクルマは植物油から鉱物油に変更されているため、このような痕は残らない。
優雅に滑空するDSの浮上実験車両。
DSは1955年10月のパリサロンで発表され、エアカーの1号車として一躍人気を博した。市販車には完全にタイヤがなく、着陸時に格納式の脚が出るというものだった。着陸脚には当初小さな車輪が付いていたが、すぐにソリ型の脚に変更された。だが、タイヤのない自動車に対してタイヤメーカーのミシュランがクレームを付けたため、通常のクルマと同じようにタイヤを付け、浮上時に車体内に完全にタイヤが格納されるようにデザイン変更されてしまった。これによってシトローエンのオーナーは、自分が運転席に座り、浮上しないとタイヤが格納されないため、二度と自分のクルマの浮かんだ姿を見ることができなくなってしまったのである。そして、また新たな問題が“浮上”してきた。

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