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シトロエンスージアストは、べつに故障自慢の自虐家ではない。 |
DSによる試験記録
| 1955年、パリ郊外のテストコースで試作段階のDSが初めて浮上に成功した瞬間。ほぼフラットな姿勢を保ちながら、確かに車輪が浮いているのが確認できる。仕組みは、スフェアとアキュムレーター内の窒素ガスと植物油の圧力によって浮上するというもの。余った圧力はリザーバーに蓄えられるため、エンジンを切ってもしばらくは浮いていられる。 |
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| 浮上実験に成功したDSはそのまま一般道での走行(浮上)試験へと移行した。しかし、シトローエンは重大な問題を見落としていた。浮上に成功したと言っても、タイヤが地面から離れてしまうと、舵を切ったり制動をかける方法がなくなってしまうことに技術者は気づいていなかったのである。 |
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| そのため、カーブを曲がれず、道路脇の民家につっこんだり、 |
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| ブレーキが効かず、水の中に突っ込んだりする事故が起こった。 |
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| そこで、噴射するノズルを左右それぞれ2基づつ斜め後ろに向け、推進と方向をコントロールしようとした。 |
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| 初期型DSの実験車。斜め後ろを向いたノズルを見ることができる。 ノズルは、ハンドルと連動して油圧で方向を変える仕組みになっている。 |
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| ところが、接地していない車体をコントロールするのは思った以上に難しいことであった。写真は珍しいアミ16の浮上実験風景。ロールは激しく、コントロールは困難であったという。 |
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| そこで、左右のスフェアをメインアキュムレーターに結んでみたところ、想像以上にフラットな浮上状態を保ち、コントロールも容易であった。 |
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| この写真は、浮上したまま水際ぎりぎりで制動するというデモンストレーション風景。これでもう、水の中に突っ込むことがなくなったことをアピールしたかったのであろう。左右斜め後ろに断続的に噴射するため、地面にはその痕跡が残っているのが見て取れる。この痕跡がシトローエンの社章である ダブルシェブロンの元になったことはあまりに有名である。ただし、現在のクルマは植物油から鉱物油に変更されているため、このような痕は残らない。 |
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| DSは1955年10月のパリサロンで発表され、エアカーの1号車として一躍人気を博した。市販車には完全にタイヤがなく、着陸時に格納式の脚が出るというものだった。着陸脚には当初小さな車輪が付いていたが、すぐにソリ型の脚に変更された。だが、タイヤのない自動車に対してタイヤメーカーのミシュランがクレームを付けたため、通常のクルマと同じようにタイヤを付け、浮上時に車体内に完全にタイヤが格納されるようにデザイン変更されてしまった。これによってシトローエンのオーナーは、自分が運転席に座り、浮上しないとタイヤが格納されないため、二度と自分のクルマの浮かんだ姿を見ることができなくなってしまったのである。そして、また新たな問題が“浮上”してきた。 |