明治から平成を駈けた女 第16章
イクは、出会って別れた数え切れないほどの多くの人々を思い出していた。 昭和6年の新年が来たが、須磨の事があってから、その後、外勤部の仕事はやはり来なかった。しかし、イクは今は諦めていた。少し優しさを見せてくれるようになった矢助と心を寄せ合うようになり、今は細々と、だが、何とか生活を営むことが出来るようになっていた事もあった。といっても、イクは、仕事がしたかった。近所の奥さん達との井戸端会議にどうして参加する事が出来なかった事もあった。
2時間たったら迎えに来ると言って、イクは道頓堀に出かけた。
倉石軍医の手配してくれた車でイクはその負傷兵を目的の場所へ送ると、時間を潰すために道頓堀へ行った。