明治から平成を駈けた女 第28章
葉は枝を離れ、風はイクの心を震わせる。
秋も深くなってくると、庭の木々から一枚一枚と木の葉が落ちて、柔らかな太陽の光が小さな縁側に直接入る様になった。その光の中で、イクは庭を眺めていた。息子の太郎の転勤で、イク達も一緒に東京に出る事になった。
東京に出てきた事によって、イクの生活は、大きな変化があった。以前のような、虚しさは、暫く影を潜めた。最近のイクは、毎日が面白くなかった。
この頃の働く人達の所得は、総理府統計局の家計調査によると、1世帯当り年間実収入は105万円(月平均 8万7600円)と言われていた。ボーナスも1世帯当り夏期が6万2400円、年末が11万3900円で、前年に対して伸びていた。地平線を境に空の青色と田圃の黄色の対比はとても綺麗だった。
イクは、最近、自分が生まれた故郷を良く思い出した。本当に、綺麗な故郷だったと思い出す。故郷の人間は全て嫌いだったが、風景が思い出されてならなかった。秋になった今は、一面に黄色く色づいた田圃をかき分けるように伸びた道を進んでいくと、そこに母親の実家があった事が思い出される。