仲良し三兄弟 進化シリーズ5

 昔、昔、あるところに、一郎、二郎、三郎と言うとても仲のいい兄弟がいました。
 密林のジャングルをどすどす風を切って歩くのも三匹は一緒、可愛い女の子を軟派するのも三匹は一緒、もちろん毎日大切な狩りをするのも三匹は一緒でした。
 狩りは、まず足の早い一郎が、これはと見つけた獲物に襲いかかります。一郎に驚いた獲物はのっしのっしと逃げ回ります。
 二郎が隠れている岩場まで獲物を上手に誘い込めは一郎の仕事は終わりです。
 岩場に潜んでいた二郎は、のっしのっしという音が聞こえてくると、それまで熱心にやっていた牙のお手入れをやめて、獲物を狩る準備をします。
 のっしのっしのっし、口から泡を吹いて、ふらふらになった獲物が来るのをじっと眺めて、二郎はぱくりとお口をあけて獲物の首ねっこに大きな牙を差し込みます。
 ぎゃあああ・・・ジャングルに獲物の悲痛な叫びがこだまします。その声を聞くとすべての生き物が凍りつきそうになるぐらい悲痛な声です。
 断末魔の叫び声を聞くと草を食べる生き物たちは、今日は無事に生き延びることができたと安心し、再び草を食べはじめます。お肉を食べる生き物たちはあの三匹のように上手に狩りができるように、再び牙のお手入れをはじめます。
 こうして二郎が狩りに成功したことがわかると、近くにいた三郎がとことことよってきて二郎が仕留めた獲物にぱくりと食いつきます。二郎と三郎が大きなお口を血だらけにしてぱくりぱくりと獲物を頬張っていると一郎がとことことよってきて、大きなお口をあけて獲物をぱくぱくぱくりと食べはじめます。
 だけど、三回に一度は二郎は獲物を牙を入れるのに失敗します。二郎が失敗したときは岩場の奥で待っている三郎が獲物に襲い掛かるようになっています。最初一郎に追っかけられて、二郎の襲撃にあうと、無事逃れた獲物は、どんなに若くて、強靭な肉体を持っていても、三郎の元についたときにはもうふらふらで走ることはおろか歩くことにも十分にはできなくなっています。
 そこへ三郎の鋭い爪が獲物の内臓へむけて、ばりばりばりと爪が内臓に突き刺さり獲物の息の根を完全にとめてしまいます。
 どくどくどく・・・あたり一面に甘酸っぱい血が風に乗っていきます。その匂いをいを嗅ぐとすべての生き物が凍りつきそうになるぐらいの甘い匂いです。
 鼻をふんふん鳴らして草を食べる生き物たちは、明日もどうか無事でありますようにとお祈りして、再び草を食べはじめます。お肉を食べる生き物たちはあの三匹のようにおいしいお肉を食べれるようになりたいと、再び爪のお手入れをはじめます。
 三郎がとったお肉はとても甘くて、柔らかいので、二郎はすぐにとんできて、ぱくぱくぱくりと食べはじめます。一郎は少し遠くにいるので、少し遅れてしまいます。
 こうして仲の良い三匹はいつまでも、仲良く暮していけば良かったのですが、そうなると物語が面白くありません。
 遅れて獲物をかぶりつく一郎は三匹とも同じように狩りをしているのに、どうして自分だけが遅れてしまうので、二郎、三郎が一郎に隠れて、先においしいところを食べているように思えてたまりませんでした。
 一郎は二郎に、おい二郎おまえはお肉の美味しいところばかり食べているのだろうと聞きました。
 すると、二郎は笑いながら、そんなことないですよ。おにいさん、ぼくはおにいさんのためにいつも堅いところを食べているのですよ。おにいさんのお肉が堅いと思うのは三郎が柔らかいところを食べているからでしょうと言いました。
 あの立派な爪を持つ三郎が、そんなことをするはずがないと一郎の小さい頭で思っていても、あんな立派な爪になるには、一郎や二郎より先においしいところを食べているのだと思い込むようになっていきました。
 そんなある日、一郎は三郎に相談があるといって、岩場につれていき自慢の足で蹴りを入れて突き飛ばしました。
 日頃、獲物を狩る爪は鍛えていても、あまり走ったことのない三郎です。足元がふらついて、強烈な一郎の強い蹴りが入ったとたん、おにいさん、なぜ? と三郎は悲痛な目で、ひゅるるるると岩場から落ちて、二度と登ってくることはありませんでした。
 一郎はおいしいお肉をたくさん食べていた三郎がいなくなったので、今まで食べれなかったおいしいお肉をもっとたくさん食べれると小さな頭で考え喜びました。
 一郎が獲物を追っかけて、二郎が岩場の影に隠れて、獲物の首に牙を差し込みます。
今までどおりの狩りの仕方なのに、一郎のお口に入るのは硬くて苦くておいしくないお肉になってしまいました。
 おいしくないお肉ばかり食べさせられている一郎は、本当はおいしいお肉を食べていたのは、三郎じゃなくて、二郎だったのだ。本当は二郎がおいしいお肉を食べていたのだ。二郎はおいしいお肉をもっと食べたいために、一郎をそそのかして、三郎に蹴りを入れて岩場から叩き落とすように仕向けたのだと思い込むようになりました。
 そんなある日、一郎は二郎に相談があるといって、岩場につれていき自慢の足で蹴りを入れて突き飛ばしてしまいました。
 日頃、獲物を狩る牙は鍛えていても、あまり走ったことのない二郎です。足元がふらついて、強烈な一郎の蹴りが入ったとたん、おにいさん、なぜ? 二郎は悲痛な叫びを残して、ひゅるるるると岩場から落ちて、二度と登ってくることはありませんでした。
 一郎はおいしいお肉をたくさん食べていた二郎がいなくなったので、今まで食べれなかったおいしいお肉をもっとたくさん食べれると小さな頭で考え喜びました。
 ところが、走ることばかりやっていたので、爪や牙のお手入れを一度もやったことがない一郎は、走っても走っても満足な狩りをすることができませんでした。
 仕方なく、一郎は今まで一度も食べたことのないものすごくおいしくないお肉、病気に掛かって死にそうな獲物しか取るしかなかったのです。
 病気の獲物ばかりとっていた一郎は、やがて病気になって、地べたにごろりんと横になるだけになってしまいました。
 ごろりんと横になって目を少し開けている一郎は、ちゅうちゅうと小さな生き物がたくさんうよめいているのがわかりました。それにお空からは、一郎が一度も見たことのない白いものが降ってくるのがわかりました。
 白い冷たいお布団にくるまれて、二郎と三郎がいる世界に行こうとしている一郎は、三匹一緒のころが一番おいしいお肉を食べれて、楽しかったな。もう一度、三匹一緒に狩りをしたかったと考えました。
 どんなに一郎が考えても、三匹一緒の一番楽しかったときは戻ってくることはありませんでした。
 だってもう冬が来たのです。