愛に問う(ジャン) 

 
「あ…ジャン!
ん?うんあたしは平気よ…てーかどうしたのよ!やだなぁ、そんな深刻な顔をして!
別に今生の別れじゃないし、また一緒に冒険するかもしれないじゃない!」

あなたはそう言っていつものように笑った。
…わかっている筈だ。この別れがいつもと違うことが。


『悪いがお前はもう連れて行けない。』

グレイが突き放すように彼女に告げた。
仲間をパーティーからはずす時、普段だったら吟遊詩人に頼んでいたのに。

わかっている。あいつは気づいていた。彼女の気持ちに。

それでも彼女と冒険を続けてきたのは決して嫌いじゃなかったから、のはずだ。
それに彼女は利口だった。利口すぎたのかもしれない。
あいつが嫌がると知っていたから…踏み込まなかった。
だからあいつもこれまで一緒に居れたんだろう。



「…ごめんね、心配かけちゃって!」

ペロリと舌を出して笑う。隙のない笑顔。

私の中に黒い感情が宿る。

壊したい…壊したい…あなたを。

滅茶苦茶に壊して…私なしでは生きられないように。



「ねぇ、あいつと知り合ってどれくらいなの?」

「3年くらいですかねぇ。」

「えへへ勝った!あたしの方が長いもんね!」



そう言ってとても嬉しそうにあなたは笑った。
時間なんか関係ない。自分が一番わかっているはずなのに。

グレイの心に踏み込んだのは他の女性だった。
あなたとは正反対な、もの静かで…でも何か高貴な威厳のようなものを感じさせる女性。
彼女は初めから彼を恐れてなかった。

彼女に惹かれた時期もあった。でも…



「どーしよっかなぁ…これから。
あ!ガラハドに会いに行ってみようかなぁ!」


奪えばいいんだ。壊してしまえ!
自分が本当に望むのなら、滅茶苦茶に壊して、壊して、
泣いて叫んで血を吐いて、すべてを捨てて、

悪に魂を売り渡そうとも


……

でも

あなたにはできない。私は知っている。

…最初から最後まであいつに気を使いすぎなんだ。
本当は辛いくせに、泣きたいくせに。



「実は、向かいのホテルの部屋を取ったんですよ〜。」

「え?向かいってちょ〜高級なホテルじゃなかった?」

「ええ!1000金もしました!いや〜ミリアムさん泊まってみたいって言っていたじゃないですか。
どうです?行ってみません?」



あなたの動きがピクリと止まる。だがそれも一瞬で。

「…そうね!面白そう!行ってみるわ!」

いつもの笑顔であなたは言った。
森から来たあの少女も何の疑いも持たずついてくるでしょう。

でもあなたはわかっているはずです。

男と女が二人きりでホテルに行くことで…。
何かが起きるかもしれないということを。


それでもついてくるのは寂しいからですか。


ええ、私は最低な男かもしれません。


あなたの弱みに付け込んで…自分のものにしようとしているのですから。


私にはあなたにできないことができるんです。


あなたを壊して壊して…

私なしでは生きられぬよう



私にすがり付いて泣いてください。

そしてもう二度とあいつのことを思い出さないでください。






愛しているんです。



悪に魂を売り渡してでも…私はあなたを手に入れたい。