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ばいおあざーっす・総集編
「ジル…大丈夫か?」
男が枯れた木の後ろから姿を現した。
手にはリボルバーが握られている。
「ええ…クリス…」
100エーカーほど離れた岩の影から女が額の汗をぬぐいながら姿を現した。
二人の立つ荒野を風が吹き抜けて行くたびにほこりが舞う。
たくさんの倒れている人らしき姿が見えるが動いているのは彼らだけだ。
「クリス…その血は!?」
女…ジルと呼ばれたその女が、クリスと呼ばれた男の元へと駆け寄る。
クリスの足元には今も血が滴っており、小さな血溜りができている。
クリスははっとしたように顔に手をあてた。
「く…しまった…エロ本を…読みすぎ…」
すべてを言い終わる間もなくクリスの体が地面へと崩れ落ちる…
「クリス…
クリスー!!!」
荒野に響くジルの絶叫もむなしく、ただ風の音にかき消されていった…
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「大丈夫?クリス…」
「ああ…すまないジル…」
荒野にたたずむ小屋を見つけジルとクリスはそこにいた。いったい誰が建てたのか、隙間から入りこむ風がガタガタと
戸をならし今にも崩れ落ちそうである。
「おれはもう駄目かもしれない…」
「…クリス?」
ジルは内心あせった。普段泣き事など言ったこともないクリスが…
だがここで取り乱してはいけない。ジルは気丈にもクリスに微笑みかけた。
「お馬鹿ねクリス。そんな台詞似合わないわよw」
「おれは…この3年間で…大事なことを…学んだ…」
ジルは何も言わず耳を傾けた。これが最後の言葉になるかもしれない…。本能がそう感じ取っていた。
「Macの…検便は…進化して…い…る……」
「クリス…!?
クリスー!!!」
ガクッとクリスの首が横に落ちたまま動かなくなる。
しかしそれよりジルの胸にはある不安が渦巻いていた。
検便…どこかで聞いた事のある…。そう、研究所に捕らわれていた頃研究員の誰かが口にした言葉…
そしてMac…。
聞いたこともなかった。だがなにか途方もなく恐ろしいような予感がして…
ジルは全身をブルっとふるわせた。
もうすぐ日が沈む…
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「大丈夫?クリス…」
「ああジェシカ…」
「私はジル、よ」
クリスは何とか一命を取りとめた。ジルが一か八かでかけたホイミが効いたのかもしれない。
…しかし、クリスの記憶の一部が失われてた。
Mac…この言葉のこともきれいさっぱり忘れている。
「ここはどこだアメリア…」
「私はジルよ。
わからないわ。でも早く逃げないと…」
辺りは真っ暗。夜動き回るのは危険だが仕方がない。あの連中があっさり逃がせてくれるとは思えなかった。
昼間襲われたときは何とか撃退したが…クリスが戦力にならない今襲われたら…
「乳をさわらせろやあきぽん…」
「…クリス?
クリスー!!!」
メキョッ
ジルのアッパーがクリスの顎に見事に入った。
吹っ飛んで転がるクリスの体を眺めながらジルは恐怖でガタガタ震えだした。
実験の…影響が…出はじめたんだ…
このままでいけばクリスは人格を失うだろう…そのとき自分は…彼を殺すしかないのだろうか?
そして…自分が…狂い出したら…
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「うう…あああ…」
目の焦点の合わない幾人もの男たちがだらだらとよだれを流しながらジルの潜んでいる路地裏のすぐ横を通り抜け
て行く。
…ようやく町を見つけたと思ったらこの有様だった。
クリスはまだ目覚めない。仕方がないからスモールライトで小さくして四次元ポケットに入れておいた。
「ううう…」
ゾンビ…そう、それはまるでゾンビのようだった。だがゾンビではない。
「ん…ょこ…」
彼らは何かをつぶやいていた。
ジルは耳をじっとすます。
「…ちょこ…」
!!!
唐突にジルは思い当たった!今日は2月15日!
そうか!バレンタインでチョコをもらえなかった男たちがチョコを求め夜の町を徘徊していたのか!!!
「ちょこ…」
不意に耳の後ろで聞き覚えのあるささやきが聞こえた。ジルがあわてて振り返ると…
「…クリス…
クリスー!!!」
よだれをだらだらと流して目の焦点の合わないクリスがそこにいた。
そうだった…!昨日義理でもやっておけばよかったんだ…
後悔の念にさいなまれながらジルはクリスにヘッドバットをおみまいしていた…
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「クリス…クリス…どうして死んでしまったの…?」
冷たく動かなくなったクリスにすがりついてジルは泣いた。
ヘッドバットがあざやかにきまり吹っ飛んだクリスは近くの岩に頭をぶつけてそのまま帰らぬ人になった。
「ファ…ファ…ファ…我々から逃げようとするからだ。」
突如後ろからラスボスのような笑い声が聞こえジルははじかれたように後ろを振り返った。そこには…
「…ラスボス!!」
そう、そこにはラスボスが立っていた。
白い顔に赤い丸鼻、目に十字のメイクをしたおばさんヘアーのラスボスが。
「クリスは蘇らせてやろう…アレイズ!!」
なんとクリスが生き返った!
しかし
「いらっしゃいませ、ご注文をどうぞ!!」
張り付いたような笑顔で機械的なセリフを喋るクリスがそこにいた。
…いや、あれはクリスではない。まるで壊れたクラウドだ。
「クリス…
クリスー!!!」
「店内でお召し上がりですか〜?」
「ファ…ファ…ファ…」
「サイドメニュ〜はポテトでよろしいですか〜?」
ラスボスの笑え声がむなしくエコーするなか、ジルと壊れたクリスを残しラスボスはフェードアウトしていった…
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「これがクリスの記憶の中…?」
ジルはザ・セルという映画を見て、クリスの記憶の中に潜入することに成功した。
そこは立派なお屋敷だった。家の中はピカピカに磨かれており、数々の高価そうな調度品が並べられている。
おぎゃー…おぎゃー…
屋敷の奥から赤ちゃんの泣き声が聞こえてきたと同時にバタバタと使用人が駆けて来た。
「だんな様!御生まれになららました!」
「おおそうか!」
それまで居間のソファーに腰掛けていた紳士が、使用人が噛んだことを指摘せずに勢いよく立ち上がる。
立派な髭をたくわえたマッチョな紳士である。
使用人と紳士が向かう先にジルも一緒についていった。
立派なベット(おそらくパラマウント)に一人の女性が横になっている。腕には赤ちゃんが抱かれていた。
ニコラスケイジによく似た生え際のその赤ちゃんは、間違いない。クリスだ。
「あなた…元気な男の子よ…」
「おお…よくがんばってくれた…。」
「ねぇ、名前どうしようか?」
「私が考えたのでいいのか?」
「もちろんよ。」
紳士は赤ちゃんを抱きかかえ高らかにこう告げた。
「息子よ…お前の名は…
トンヌラだ!!!」
「クリ…
トンヌラー!!!」
まさかクリスの名がトンヌラだったなんて!!!
規定範囲外の真実にジルはただうろたえるしかなかった…。
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「う…」
「目が覚めたのねトンヌラ…もう3年問も眠っていたのよ…」
ベットの横にジルがいた。幾分年をとったのか、パツ金に白髪が混じっている。
自分は三年も眠っていたのか…下の世話をジルがしてくれたのだろうか…
数々の疑問が頭をよぎったが、それよりも気になることがある。
「…ジル、トンヌラってだr…」
「窓の外を見て・・・トンヌラ…」
…自分はトンヌラではなくてクリスと言う名前だったはずだ。少なくとも3年前までは。
追っ手から逃げるために偽名を使っているのだろうか。だとしたらもっとセンスのいい名前にしてもらいたいものだ。ひ
ろきとか。
ジルは相変わらず鷹揚の無い顔で窓の外の宇宙を見ている。
一体なぜ自分たちは今宇宙船に乗っているのだろうか?
「ナメック星に向かっているのよ…。」
ジルがポツリとつぶやいた。
ナメック星?聞いたことも無かったが、何故か行ってみたい衝動に大いにかられた。
いや、そんなことしている場合ではない。早く地球に帰らないと。
クリスはコックピットに座った。コックピットには数個のボタンがある。
Aボタン、Bボタン、スタート、セレクト、十字キー、とそれぞれ明記してあった。
それとは別にマイクらしきものもついていたが、90年代生まれのクリスにはそれが一体なんの役に立つのかまったく
わからなかった。
「ジル…
ジルー!!!」
クリスはページの都合上突然叫んだ。すると…
「…私のセリフ取らないでー!!」
後ろからジルのブーメランアタックがクリスの頭に直撃した。
「ぶほぉぉ…」
反動でモニターに顔面を強打しつつもクリスは胸をなでおろした。
よかった…いつものジルだ…
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