片瀬青葉
教室の窓の向こうには、乾いた筆でアクリル絵の具を塗りつけたような濃い蒼空が広がっている。
視線を変えると彼女の背中。じっとりと汗をかき、透けたブラウスがはりついてなまめかしい。後ろ
から突き上げるとはだけたスカートから見えるお尻の肉がそれに合わせて波打つ。
月は6月、季節は夏。
幸いエアコンが設置されている涼しい教室の中で互いに目線を合わせるで も甘い言葉をつむぐでも
なく、ただ抱き合い体をぶつけてる。
「……あっ…あっ…あっ…」
机に手をつき後ろから攻められてる女の方も冷めた顔で腰を振り、お義理で適当に喘いでる。はだ
けた制服の下から意外に肉付きのいい裸がはみ出して、浮いた汗が匂いになって鼻に入る。本来
なら不快にしか感じないだろう汗のにおいだけで背筋を快感が走るのを感じて、そんな自分は変態
なのかな、とちょっと思う。
「…さっさと、あ、出してよ…、長い、んっ…わ、ね…」
途中突かれるたびに喘ぎ声を混ぜつつ、こちらに一瞥くれるとそう言う彼女。
「も、もう、ちょっと、…あ、あ」「んんっ!あ、あぁ…」
彼女の腰に回していた腕に力が入る。コンドーム越しに彼女の中に射精。それで終わり。お互い
何も言わず、二人の荒い息だけがエアコンの風に乗って教室をただよう。
「はぁ…はぁ…はぁん…終わったら、さっさと抜いて…」
「──あ、あぁ、うん」
その言葉に我に返ると、彼女の中から離れて、ゴムを取ると口を結んで、ティッシュでぐるぐるくるん
でしまう。
その一連の動作を疲れたのかしばらくへたり込んで眺めていた彼女は、おもむろに取り出した
ポケットティッシュで股を拭き、後始末を済ますと、「じゃ」と立ち上がり、身支度を済ませてさっさ
と帰っていく。
こちらもそのなにも感情を見せない背中を見送って、電車一本分の時間を潰してから帰る。放課後
のこの関係が発生してからもう一ヶ月が過ぎようとしてた。
そう、事情を説明するには一ヶ月ほど遡る。五月末の中間考査2日目まで。
彼女の名前は片瀬青葉、僕の名前は柏木賢二。出席番号は36番と6番。女子は31番から始まるか
ら。名簿順に机を並べていけば僕たちは教室窓際の最後列に隣同士並ぶ事になる。
だからそれは偶然だ。
最後列窓際に座った片瀬がカンニングをしたのも、彼女がカンニングペーパーを仕舞おうとしたと
したその決定的瞬間に、ちょうど外を眺めようと顔を上げた僕と目があってしまった事も。
「柏木、ちょっといい?」
その日、帰ろうとした僕は隣に座る彼女に呼び止められた。
「なに?」
そうしているうちにクラスからはみるみる人がいなくなっていく。昨日もテスト、今日もテスト、明日も
テスト。早く帰りたいのはみんな一緒だ。
「見たわね?」
主語は必要ない。そう言いたげだ。事実そして必要は無かった。
「まー、見たけど」
「そう、見たか。ドアに鍵掛けて」
誰もいなくなった教室で、言われるままに鍵をかけて回る。たしかに人に聞かれたい話ではない
だろうから。
「柏木ってどうせ童貞でしょ?」
「はぁ!?」
背中から掛けられた問いに一瞬頭が真っ白になる。
「ふん、やっぱり」
「それとお前のカンニングとなんのかん─」
けいがある、と続けられなかった。振り返ると片瀬はブレザーを脱ぎ、胸のリボンを外し、ブラウスの
第3ボタンまで外していたからだ。
鍵の掛かった誰も居ない放課後の教室で服をはだけた少女がニヤリと笑う。
「この場でチクらないと誓うなら私の処女をあげるわ。悪い話じゃないと思うけど?童貞の柏木クン?」
「何を… 」
顔に血が昇っていくのを感じながら後ろずさる僕を相変わらずニヤニヤ眺めながら、彼女はスカートの
ホックに手をかける。ぱさりとチェックの布切れが落ちて下半身が露わになって落ちたスカートを紺の
ソックスをはいた脚がまたいでまた一歩こちらに近づいてきて意外にボリュームのある乳房が揺れた
「そっちも早く脱ぎなさいよ、見つかりたいの?」
二人っきりの教室で彼女の裸を見てしまって処女をあげるなんて言われてこのころにはこちらは
思考力なんてものは校舎の外にフルスイングで放り投げていた僕はそれはもう言われるがままに
流されてまくってかちゃかちゃとベルトを緩めてパンツを脱いでしまった片瀬も最後に残った下着も
脱いで机に手を付いてこちらにお尻を向けていて初めてモザイク無しで見るそれはとてもとてもグロ
テスクでこれを舐めたりする心理は多分一生理解できないだろうなと思いながらソコに手を伸ばして
触ってみると穴は予想とはズレた位置にあってビックリしながらボクはもっとそれが見たくなってさら
に顔を近づけてみるてもやっぱりそれはグロテスクでこんな小さな穴にホントに彼女の脚が動いて
「バカ!」
蹴っ飛ばされた。真っ赤になった顔がこちらを向く。
「鼻息荒くしてなにジロジロ見てんのよ!さっさと終わらせてよ」
「ホントにいいんだな」
微妙に震えている腰を掴むとさっき確認した穴にあてがう、ものすごく熱くてその感覚がかえって
非現実的だった。
「黙ってくれるなら。…ほ、ほらさっさと挿れなさいよ」
それでも目の前の彼女がそう言うので、ムリヤリこじ開けて入っていく。熱さに加えて壁にムリヤリ
侵入してるような強い抵抗で亀頭が潰されそうな感覚。
「いた、痛い! 、痛いって!」
だがそんな感覚は彼女の痛みの比ではないようで、机の端を握る彼女の両手はぎゅっと握られて
いた。
だけどこっちはまだ入れたばかりで興奮して血が逆流した頭でさらに侵入を試みる、この感覚を
もっと貪ってみたい。ギチギチと擬音が聞こえそうな程の抵抗でそれは彼女の痛みに正比例して。
頭を振り乱し全身を震わせて痛みに耐えていた。噴き出している脂汗。
「ちょっ、ちょっと、ホントに痛いから!抜いて、一度抜いて!」
苦しい声で、悲鳴に聞こえるその声で、我に返った僕は一気に腰を引いた。そのときの最後の
勢いの摩擦だけで
「あぁ。あ」
発射してしまった。射精された精液が彼女のお尻やふとももにかかって、それは彼女がかいた
汗と混ざり合っていく。
「…はぁ、はぁ、はぁ」
しばらく言葉も出なかった彼女だったが。
「もっと優しくしてよ」
それだけをなんとか口にしたという感じだった。そして沈黙。あとはずっと。
何かしゃべるきっかけをつかめないまま重い沈黙だけが続いていく。
「…………あの、大丈夫?」
ようやく口を付いて出たのがこれかよと思うが、これが限界。
片瀬はため息をついて言葉を繋げた。
「──ヘタクソ」
ぐうの音もでません。片瀬はノロノロ立ち上がると股の血や尻に付いた精液をティッシュでふき取る
と服を着始めた。
僕も居心地悪い気分でパンツをはく。
「一緒に帰って誰かに見つかると困るから、柏木は次の電車に乗って」
ドアにかけた鍵を開けながら背中越しにそう言われた。
「あぁ、わかった」
「何も喋るんじゃないわよ」
「わかってるよ」
「明日からちゃんとゴム持ってきてよね」
「わかったよ」
ぴしゃん、とドアを閉めて去っていく背中に答えた。
誰も居なくなった教室。篭った匂いに辟易して窓を開けて。次の電車は何分だっけと時計に目を
やり、そこでようやく気が付いた。
「……明日?」
バカバカしいと思いながらもわざわざ10駅近く遠出した先のドラッグストアで4時間近く店内をウロ
ウロしてコンドームを買った。
次の日のテストは散々なデキだった。
そしてテストが終わった教室で僕はなぜかというかやっぱりというか片瀬とセックスして、時間差を
つけて帰って。そんな関係がそのまま7月に入っても続いている。
夏服の白がびっしりと詰め込まれた電車を降りて、改札から吐き出されてるように出て行く。この
小さな駅が混雑するのは登下校の時間だけだ。
生ぬるい朝の空気を感じながら駅前のコンビニに寄ってファミ通と目覚まし代わりのブラックの
缶コーヒーを買う。残金169円。来週になれば小遣いが入るがそれまでは厳しい事になりそうだ。
コンビニのビニール袋を提げていつもの道を歩く。山を削って作られた土地に住宅地とともに整備
されたこの学校、登校中の景色はいいが勾配のある道をせっせと歩くのが難点。自転車通学のヤツら
は特にこの季節、毎日汗まみれになって登校してきている。
登校して3階の教室のドアを開けると窓際の席にいつもどおり片瀬が座っている。その隣の机に座り
カバンを横に引っ掛ける。
「おはよ、柏木」「おはよう、片瀬」
毎朝繰り返してるいつもの挨拶。このあと「○時に」と片瀬が時間を指定し、それに「わかった」と返せ
ば1日の会話は終了するのだが、
「しばらくは相手しないわよ」
言いながら机に突っ伏し、ダルい口調で「体調不良」と続けた。その言葉に実は少しホッとする。
最近は痛いとかは言わなくなったがそれでも慣れたようでもない行為を義務感でこなされているようで
罪悪感めいたものがぬぐえないわけで。
「わかった」
いつもどおり返すと、買ってきたファミ通を読み始めた。コーヒー缶を開ける。ぷしゅっと音が響く。
だから「私の体調不良よりファミ通が大事か」という呟きはそのときは気が付かなかった。
となりで片瀬はカバンからバファリンを取り出すとペキペキと2錠出して口に含む。
「ふぃづ」(どうやら水と言いたいらしい)
「トイレまで行けば水道水が」
そう言い終わるより先に机の上においておいたコーヒーがひったくられる。彼女の白い喉が動いて
ぐいぃっと一気飲み。
「…ぐ、にガッ、なによこれ!? ブラック?」人の飲み物をパクっておいてこの態度。
「だったら水道水でガマンしとけよ」
「絶対イヤよ、あんな臭いの」
空になった缶を僕の机の上に戻すと、こちらが反論する前にもう一度突っ伏して目をつぶり居眠り
モードに入られてしまった。
そこからその日の授業が全て終わるまで──それはいつもどおりなんだけど──二人の間に会話
はなかった。カバンに教科書詰めて難儀そうに引きずるようにして帰っていく片瀬を横目に見て、それ
がいつもの習慣に基づいている事に苦笑する。別になにもしないなら電車を1本ずらす必要はない。
むしろさっさと帰るのが自然だ。校舎から駅に向かって一斉にあふれ出す人の波に乗って朝とは逆に
坂を下っていく。
坂にそって続く人ごみの中に片瀬の後姿を見つける。ここ一ヶ月見慣れた背中が歩いている。
思えばなんなんだろうかこの関係は。特別仲がいいわけではない。1日隣にいてなにか会話がある
わけじゃないし、向こうからも話しかけてくる事もほとんど無い。放課後の時間を除けば一緒に行動
するのを避けてるようだし、セックスはしたけどキスはさせてくれない。ついでに言うと「アンタの顔見な
がらするなんてイヤ」という理由で後ろからしかさせてくれない。そもそも事の発端となったカンニング
の動機や、そこからなんでこんな関係になったのかなんて想像の限界を超えていて理解不能だ。
始まりからしてアレなんだから何か特別の理由があったわけではないのだろうなというのは解る。
例えば僕がアカギって苗字だったりしたら、逆に片瀬がアイカワだったりしたら、それだけで何も始ま
らない関係だったわけだ。
だからやっぱりこれを機会に何にもなくなって終わってしまっても、それはそれでしょうがない…、
のかなぁ、やっぱり。
なんていうかとりあえず並んでるけど絶対に交わらない感じ。
遠く陽炎の向こうから伸びてくる2本のレールの間に、挟まれるようにこじんまりと立てられた駅の
ホーム。やってきた電車の二両先のドアから乗り込む彼女を横目で見るしか出来ないでいた。
土曜日。隔週週休二日制なので出て行かないといけない日は出て行かねばならない。
いつもどおり家を出て金欠のためコンビニをスルーし、いつもどおりに登校していつもの教室。
「ふぃづ」体調不良2日目の片瀬。
「今日は無い」
「ふかえないあね」(使えないわね? )
バリボリとクスリを噛み砕いて飲み込んだ。
「…うー…今日はパス、保健室で寝てくるわ」
椅子から立ち上がって教室を出て行った。
そのまま片瀬は本当に1日帰ってこなかった。もう下校時間で隣の机には片瀬の鞄が掛かったまま。
帰る時間である。用事は何も無い。一応荷物まとめて保健室まで届けたほうが良いのだろうか?
でもそれをすると余計な事するなと怒りそうでちょっと考える。女子の私物に触るのに抵抗もある。そう
だこれはヤツの鞄だ僕があずかり知るところではない。帰ろう帰ろう。うんうん。
教室を出て階段を一階まで降りてくる。このまま目の前の出口を出てしまえば家まで直行だ。しかし
ここで右に曲がればすぐ保健室に行けることに何故だか気付いてしまってやっぱり考える。
一応様子だけは見てみるか、寝てたり帰ったりしてたらそのまま僕も帰ればいいや──。
気まぐれに近い、と自分では思う、そんな気持ちで保健室まで来てしまう。土足厳禁らしいので靴を
脱いでスリッパに履き替える。
「しつれーしまーす」
中には机に座った保険医が一人。保健室なんて考えてみればお世話になったことなんてなくて
ちょっと緊張する。
「えーと2-Bの片瀬さんは? 」
50超えた世話好きオバちゃん風体の保険医は「そこで寝てるわよ、起こして連れて帰ってちょうだい」
とボールペンでベッドのあるほうを指した。
カーテンをこっそり開けて入ってみる。
「…………」
すー、とキャラに似合わない可愛い寝息を立てて片瀬が寝ていた。今まではこんな普通の顔なんて
見たことないので少しドキドキする。妙に意識してる自分がメンドクサイ、どう起こせばいいんだろ、肩
でもゆすってみればいいのかな、怒るかな。でも起こせって言われたしな。
「片瀬、片瀬」
とりあえずシンプルに肩をゆすってみる。すぐに反応があってぼんやりとまぶたを開いた。
「…んー……?あ?あああああぁあああ!?」
寝ぼけ眼を思いっきり見開いて驚き、壁に頭ぶつけそうな勢いで後ずさる。
「あ、なっ、なななんで!?、何でアンタがいるのよ!?」
色が薄いから顔が赤くなるとすぐ分かるなぁ、とズレた所で感心する。
「いや、ちょっと、様子見に、かな…?」
「片瀬さーん、もう大丈夫でしょ?そろそろ帰りなさい」
保険医が座ったまま声を掛けてくる。
「あ、はーいっ。──もしかしてもう放課後?」
前半は保険医への返事。後半の問いに頷いて、ついでにケータイを出して時刻を見せる。片瀬が
ため息を一つ。
「そうか、んじゃ帰るか」
ベッドから降りてスリッパを履きながら彼女がこちらに手を出す。「ん」
「ん?」
「ん?鞄。アタシの」
「あー…、教室」
「はぁ?持ってきてくれなかったの?」
もう一度こんどは盛大なため息をこれ見よがしに吐く。「アンタって心っ底使えないわね」
一度降りた階段をまた登って教室まで戻る。先を歩く結構元気な人からブツブツと「あーまったく、
使えないし、気が利かないし、頭悪いし、ヘタクソだし」とか色々聞こえるが聞かないふりをする。
ドアを開けて教室へ。誰も居ない。「……なんだ、そういうことか……」今日何度目か知らない盛大な
ため息をついた彼女が荷物をまとめ始める。そういえばどうせ帰りは別々でとか言われるならここまで
付いてこなくてもよかったんじゃないだろうか。こちらをチラチラ伺いながら鞄を詰める片瀬。
「で、したいの?」鞄を閉めてからこちらを向いて一言。
「え?」
「昨日できなかったし、わざわざ心配でもないのに保健室まで来て、こんな手の込んだ事して2人
で教室まで戻ってきたんだし、したいんでしょ?」
「ムリなんだろ、別にいいよ。帰らないの?」
普通に答えたつもりだったが、返ってきたのは「え?」とあっけに取られた表情。
教室中に妙な沈黙が広がっていく。
お互い見つめあったまま無言。
「ねぇ、もしかして、ホントに気が利かないだけだったの?」
「えーっと、そう、なんだけど………」
もう一度沈黙。空気が白くなっていくのが見えるよう。
「わ、悪かったな、気が利かなくて!」
「ホント、あきれ返るわ、まったく」
呆れつつもちょっとだけ笑った彼女が、屈んで膝を付いて僕のベルトに手をかける。
「うわぁあ、なにすんだよ!?」
「動かないで。今日気付いたけど、要するに挿れなくても出せば満足なんでしょ」
そのままずり下ろされる。で、、そこで手が止まってじっと見つめられてしまってこちらとしても
居心地が悪い。
「…そういえばちゃんと見るの初めてだったわ」
あぁそういえば。数はこなしたと思うけどずっと後ろからだったし。
「ねぇ、昨日お風呂入った?これ、ちゃんと洗ってるよね?」
「洗ってるよ!だから嫌なら別に」
「うっさいわね、やってあげるって言ってんだから黙ってなさいよ、いい、いくからね、…いくわよ」
意を決したのか指を伸ばしてくる、つまむように触った指から感じる熱が暖かい。
「あ、大きくなってきた」
包まれるように持たれて彼女の指や手のひらのしっとりとした感触が自分の想像しない動きで、
今までとは違ったその刺激が気持ちいい。
「へー、こんなんなんだ、思ったよりグロい、って!ねぇいま皮が、皮がズルッって!」
…お願いですからそこは実況しないで下さい…。
「痛くないの?」
「いちおう、こういうものなんで…」
「そーいうものなの、変なの。それじゃ、舐めるわよ」
片瀬の顔が近づいてくる。躊躇してるのか直前で一旦動きが止まったけど、そこから掛かる息が
くすぐったくて、それだけでも気持ちいい。なんか今ならなにされても気持ちいいと思う気がする。
舌を出してペロっと舐める。思ったより固い舌がざらりと下から上に上がっていく。その感触が強烈で
背中が思わずくの字に曲がる。
「ふふん」
その反応に気を良くしたのか「勝利の笑み」めいたものを浮かべて、勢いつけて舐め始めた。片瀬の
荒くなっていく息がくすぐったくて、たまに唾液が音を立てる。
「ん…ん…ぺちゃ、んっん…」
その顔と舌を懸命に動かして舐めてる仕草が猫みたいというか小動物で可愛いな、と見つめてい
たら「ん…」と舌だけ動かして上目遣いになって目が合った。なんだか照れくさいって思ってる隙もなく
顔を離した片瀬が右手をぐーにして下から一気にその拳を突き上げて「なに見てんのよー!」「ぐエェ」
アッパー!? そして顔はいつもどおり真っ赤っか。
「ははハズかしいでしょっ!見るんじゃないわよスケベ!」
ノドに手が伸びてするするっとネクタイがほどける。「コレで目隠しするから目瞑りなさい」
抵抗したら今度は蹴りとか来そうなので大人しく目を瞑る。ネクタイでぐるぐるにされてるのが感覚だ
けでわかる。「それ取ったら噛み千切るわよ」と言われては何も出来ない。とりあえず右手左手で手近
な机や椅子に手を添えて体を支えて、あとはもう目を瞑ってされるに任せる事にする。
(※目隠しされたのでここからは音声でお楽しみください)
ttp://www.tactics.ne.jp/~score/mikolove/sozai/akari_sogeki4.mp3
ttp://www.tactics.ne.jp/~score/mikolove/sozai/akari_sogeki5.mp3
ttp://www.clockup.net/dl.php?dl=svm010
それが上手いかどうかわからないけれど、視覚が閉ざされて敏感になった体は攻められるたびに
反応を増していて、せり上がって来るように襲ってくる快感で下半身が痺れて感覚がなくなり立って
いるのかも判らなくなってくる。
ttp://www.clockup.net/dl.php?dl=svm011
「うあ、あ、あぁ、ああっ!」びくんっ、体が震えて限界まで我慢していた精液が爆ぜる。
「んっっ!んんー、うんっ、んんんっ」
口の中で凶暴に暴れて精液を吐き出し続けるモノに驚いたのだろう、動きは止まったが、それでも
片瀬はくわえた口を離さずに最後の一滴が出るまで受け止めてくれた。全てを解き放った開放感は
まるで電流のように脳を直撃して真っ暗だった視界が靄がかって真っ白にみえた。
「あぁ……、はぁ…、はぁ…」
「……グッ、ゴホッ、うゥ、んうう、……オぇぇぇ」
「ごめん大丈夫?」
惚けたままだった意識をムリヤリ戻してネクタイの目隠しを外すと、彼女はゴホゴホと咳き込んで、
口元を押さえてる手のひらには吐き出した精液がべっとりと垂れていた。
「出すなら出すって、オエェ、ちょっと飲んじゃったじゃないよ!あー、もう、気持ちワル」
「ごめん、まさか本当に最後までしてくれるとは思ってなくて」
「ゴホッなによそれ、気持ち良かったんだからいいでしょうが。それとも気持ちよくなかったとでも!?」
「あ、いや、違う!気持ちよかったよ!」
とっさに答えてお互い赤面
「そ、そう、ならいいじゃないの」
「そ、そうだね」
「私、トイレ行ってくるから、鞄持ってきて」
「あ、あぁ、わかった」
「その前にパンツはきなさいよ」
「……はい」
一番近い女子トイレまで行くとちょうど片瀬が個室から出てきたところだった。蛇口を目一杯ひねって
じゃぶじゃぶと手を洗い、手のひらの匂いを嗅いでたりする。
「なんか、何度洗ってもにおいが取れない気がするわ」
しばらくは必死に洗ってたが諦めたのか飽きたのか蛇口を止めた。
「まぁいいわ、帰るわよ」
そのまま持ってきた鞄を受け取って歩き出す。いつもの通りその背中を見送る、と。
「アンタ、なに突っ立ってんの?置いてくわよ」
「へ?」
「『へ』じゃない、さっさと帰るわよ」
「あ、あぁ。わかった」
いつもの背中を今日は追いかけながら、そういえば呼び方が「柏木」から「アンタ」に変わったのは
いつごろからだろう、と考えていた。
ぼく達は並んで坂道を歩く。
土曜の昼。そろそろおやつでもほしい時間。いつもの坂道は時間が中途半端でぼく達以外制服で
歩いている人は誰も居ない。元々学校が建ったのを機に駅も建てられたような場所なので学生以外
の人通りもない。
日差しは強烈で空はいつにも増して蒼かった。
「あっついわね〜」
片瀬は校門を出た瞬間から制服のリボンを外して、ブラウスの襟元をつまんでパタパタあおいでる。
眉間にしわを作って口は「〜」の字をしていて何処から見ても完璧に不機嫌に見える。
「片瀬、体調は大丈夫なのか?」
「だいぶマシよ、どうしたの?」
しわを寄せた眉のまま答える。
「いや、不機嫌そうだから」
「日差しがまぶしいの。あと……、アンタの味がまだ口の中に残っててマズいのよ」
にらまれた。
「それは、……ごめん」
「いいけど。私、基本的に体弱くてね。夏は苦手なの」
手をおでこまで持ってきて影を作りながらそう答える。
「へぇ、知らなかった」
「繊細なのよ、アンタと違って」
坂道もそろそろ終わり。いつもの駅前のコンビニが見える。時計を見ると電車の時間までは
少しある。ちょうどいい。
「コンビニ寄りたい」
「そーね。私もちょっと涼むわ」
二人して自動ドアを通る、片瀬は雑誌コーナーに直行。僕はお菓子や文房具の棚を突っ切って
一番奥のドリンクコーナーへ。夏季限定の清涼飲料水が並んでいるが、何を買っていいのかわか
らないのでとりあえずミルクティーあたりが妥当か。
レジで会計、147円也。雑誌コーナーへ。
「なに、ミルクティー? コーヒーじゃないんだ」
雑誌を戻した片瀬とコンビニを出ると、僕の手を見て意外そうに言う。
「片瀬の分だからな。やる」
ペットボトルを差し出す。このときの片瀬の表情の変化のめまぐるしさはなかなか見ものだった。
「あ、あんたの分がないじゃないのよ」
「僕のはいいんだよ」
残金22円。
「ま、まぁ貰っといてあげるけどさ」
蓋を開けると相変わらずぐいぃっと勢いで飲む。
「はー、ウマイ。ようやく口の中がマトモになったわ」
ようやく表情を崩してくれた片瀬にほっとする。改札を通って駅に入ると上りの回送電車が止まっ
ていた。帰るときに乗るのは下り方面なので関係ないんだけど、
「この路線で回送なんてはじめて見た」
「そう? たまにあるわよ。上りはあと一駅で終点で、車庫があるでしょ。本線からたまに回ってくる
のよ」
手にしたミルクティーを飲みながら説明してくれた。
回送はなかなか発車しない。
「駅が空くの待ってるんでしょ」
「空くって?」
彼女はホームから上り方面を指差した。伸びるレールが陽炎で揺らぐそのさらに先。
「ここ出るとすぐ、2本あるレールが1本になるのよ。だから一度終点に行ってから車庫に行こうと
しても、下りに降りてくる列車がある場合は鉢合わせになるわけ」
「──へー、びっくりだ」
こうやって片瀬と二人並んで喋ってるのが。
「正確には1本が2本になったって言うか、開発されて学校が出来るまで元々単線だった名残
なんだって。予算なかったのかしら」
そう解説したところで陽炎の向こうから下り電車が来た。入れ違いに回送が出発する。
扉が開くと、車両は空っぽだった。乗客は僕たちだけ。この路線の経営が激しく不安になる。
二人で長椅子の真ん中にどかっと座ってやる。エアコンの効いた車内、窓ガラスには流れていく
夏の空とガラスを通って刺してくるような太陽の光。
そうして並んだままひと駅が過ぎる。相変わらず乗客は僕たちだけ。奇妙だが少し安心する沈黙に
身を任す。
「いいね、こういうの」
椅子に深く体を沈めた片瀬が呟いた。
「私、人ごみも苦手でさ。登校時間が早いのもラッシュを避けたいからなんだ」
いつもと違う落ち着いた雰囲気が不思議と違和感なかった。
「あの……、あのね。受験の日にね。今までの勉強疲れと緊張がピークだったのに他の受験生と
一緒に電車の中に詰め込まれて大混雑でもう限界。駅着いた途端に倒れたの」
「あー、僕の受験の組もいたよ、駅についてすぐ目の前で女の子がばたー…、ん、…って…?」
隣に座る彼女に目線を動かす。片瀬は目線を伏せてこちらを見ようとはしなかったが
「あの時は……、あの、アリガト…」
小声でそう言ったのが確かに聞こえた。耳が真っ赤だ。
「あー…、そっかぁ、そうだったんだ……」
キッっといきなりこっちに向きなおす片瀬。
「やっぱり!アンタ全然気付いてなかったでしょ!」
「いや!だって!ほら、中学の制服だったし」
「それでも私は一目でわかりました!あんた目がフシアナなんじゃないの!? あームカつく!」
首を…、首を絞めながらは止めて……。
「いいわ、アンタ罰として明日1日あたしに付き合いなさい、10時待ち合わせ、いいわね!?」
「なんで!?」
「なに、嫌なの? ……もしかして都合、悪い?」
それは反則だ、そんな顔されてそれでも断れる男なんて絶対いない。
「うん、わかった10時に」
だからこちらも素直に気持ちを表現する事にする「楽しみにしてる」
「そ、そう。なら問題ないわね、このミルクティーのお礼にコーヒーくらいは奢ってあげるわ」
駅に着く。彼女が降りる駅。
「遅刻するんじゃないわよ。──また、明日ね」
降りてからこちらに手を振る、初めて背中以外のさよなら。
「うん、明日」
それに手をあげて答える。
電車はすぐに走り出して駅を通り過ぎて彼女の姿は見えなくなるけど。明日になればまた会える。
いつもと変らないはずの流れる景色、夏の空。
違う何かが始まったのは、だから自分たちの中の事。見える蒼すら違って見える新しい始まりだった。
翌日。
「はぁ!? お小遣い前借するの忘れた? 全財産にじゅーにえん!? アンタねぇ……、ヤル気あんのー!!!」
-fin-