◆hanwM2E4hc

俺は弱小テニス部の一年。4月にこの高校に入学して半月が経つ。テニス部に入ったのは中学の頃ずっとやってたからだ。
練習しながら隣のコートの女子テニス部の方をチラリと見る。
気になる先輩がいるからだ。俺はことあるごとに憧れの先輩を盗み見していた。「ちょっと!何見てんのよ!このエロガキ!」
突然後ろから声をかけられてビクッとした。恐る恐る振り替えるとニヤニヤしながら有希が立っている。
「なんだ有希か。」
「なんだってなによ。女子ばっか見て練習しないからいつまでたってもうまくならないのよ!」
「少なくともお前よりは上手だよ。中学の時やってたんだし」
有希は中学3年間の同級生だ。中学までは陸上をやってたのに高校からはテニスをやるという。
「ていうかさ。なんでお前テニス部はいったの?陸上で結構いい成績とってたじゃん?」
「う、うるさいわね。あんたには関係ないでしょ。」「ふ〜ん。まぁ頑張れよ。それにしても香織先輩っていいよなぁ」
「あんたそんな目で見てんの最っ低!」
「健全な男子ならだれでも…」
いきなりグーがとんでくる「いてっ。何もグーで殴る事ないだろ?」
「そんな事よりバックハンドの打ち方教えてよ。中学までやってたんでしょ」
「いいよ。」
ちょっと教えていると有希が汗ばんでくるのがわかった。Tシャツの下の下着が透ける。
こいつ結構良い躰してるじゃん。触って見たい。衝動に駆られる
「見てばっかじゃなくてちゃんと教えなさいよ」
ハッと我に返る。
「ちょっと違うかな。手はこうだよ」
「こ、こう?」
「違うってこうだよ」
「もうわかんないよ。教え方ヘタクソなんだからっ」カチンときた。教えてやってるのはこっちなんだぞ?頼まれたから教えてるんだぞ?
「こうだよ」怒りに任せて左肩を触ってしまった。汗ばんだシャツ、透ける下着。うなじ。怒りに任せて触っとはいえドキっとする。
怒りが体を通じて伝わったのか「ごめん」有希があやまる。
身長は俺よか低い。上目遣いで謝られると動揺する。
動揺してしまった俺。取り繕うのも変だし、焦る。
「今変な事考えてたでしょ?」
図星だ。
「どうせ香織先輩の事でも考えてたんでしょ?」
よかった。俺が有希に対して抱いた感情はバレなかったらしい。
「う、うん」
でも不思議だ。いつもは強きの有希が素直だ。変に勘ぐってしまう。
「バックハンド良くなってきたよ。素振りより実践実践。ボール打ってきたら?俺も練習あるし」
「そうね。」去ろうとする有希。
「おいっ俺に一言あってもいいんじゃない?」
「あんたの方がテニス歴長いんだから当然でしょっ。」
ちょっとでも可愛いと思った俺が馬鹿だった。はぁ。
その日はそのまま有希と口を聞く事なく部活は終わった。
着替えて学校をでようとすると暗い中校門に誰か立っている。
校門に人が立っているのは別に珍しい風景ではない。特に気にする事なく通りすぎようとすると有希だった。
「誰か待ってんの?」
「別に〜そんな訳じゃないけど」
「ふ〜ん。まっ暗いから気を付けて帰れよっ」
「言われなくてもそうします〜」
「ったく。可愛げないなぁ。じゃあな」
「ちょっ…」
普段は強きな性格の有希がなんかしおらしい。部活ではTシャツにハーフパンツで色気とは程遠いが今は部活も終わり制服の有希。薄暗い中、白い制服だと少し感じが違う。なんというか…
「なんだよ」
ことばでは強がって見せるが内心はドキドキしていた。
「今日は…ありがと」
小さい声で聞き取れなかった。
「えっ?何?」
「今日はありがとうっていったの。ばーか」
そう言って有希は走りさっていった。
なんでありがとうなのに馬鹿なんだよ。まったく。俺はしばらく校門の前で後ろ姿を見ていた。
俺は去って行く有希を見ていた。
バンッ。いきなり後ろから背中を叩かれた。思わずビクッとする。
「へへっ見てたわよ少年」
「か、香織先輩…?」
ビックリした。香織先輩とはまだ数回しか話たことなかったし、その殆どが部活の用事だったからだ。
「有希と良い感じだったじゃない?告白されたの?」
「全然そんなんじゃないですよ。ただちょっと話てただけで」
「そうは見えなかったけどな…」
「先輩こそ何してるんですか?」
「う〜ん私は有希と部室で話ててさ、なんか盛り上がちゃって。で、部活帰りに甘いもの食べて帰ろうって誘ったんだけど、用事ありますからってフラレちゃった。」
「へ〜」
ってかなんで俺こんな自然に憧れの香織先輩と話せてるんだ?相づちを打ちながらもそんな事考えていた。
俺は去って行く有希を見ていた。
バンッ。いきなり後ろから背中を叩かれた。思わずビクッとする。
「へへっ見てたわよ少年」
「か、香織先輩…?」
ビックリした。香織先輩とはまだ数回しか話たことなかったし、その殆どが部活の用事だったからだ。
「有希と良い感じだったじゃない?告白されたの?」
「全然そんなんじゃないですよ。ただちょっと話てただけで」
「そうは見えなかったけどな…」
「先輩こそ何してるんですか?」
「う〜ん私は有希と部室で話ててさ、なんか盛り上がちゃって。で、部活帰りに甘いもの食べて帰ろうって誘ったんだけど、用事ありますからってフラレちゃった。」
「へ〜」
ってかなんで俺こんな自然に憧れの香織先輩と話せてるんだ?相づちを打ちながらもそんな事考えていた。
街頭の光に虫が集まっている。
香織先輩はかまわず話を続けた。
「……でさ。ちょっと聞いてるの?人の話?有希を誘ったんだけど、行かないってゆうから付けてたの」
香織先輩はニヤっとしながら
「まぁ有希は先輩の私より君を選んだみたいだね」
え?正直な話どうなんだろう?有希は俺に用事があったんだろうか?
いや単に他の用事だったのかもしれない。頭の中を色んな思いが交錯する。
「あ〜お腹すいた〜。部活の後って甘いもの食べたいよね〜。よしっ君が有希の代わりに寄り道に付き合いなさいっ」
唐突すぎだっ!でも香織先輩と帰り道が同じ方向なので断る理由などない。むしろ願ったり叶ったりだ。
「はいっ行きます」
即答した。
先輩と自転車を押しながら並んで歩きだした。
「ここだよ。言っとくけどおごりじゃないからねっ」
甘党の店蜜柑屋。狭い店の中には部活帰りの学生がちらほらいた。和風な粋な店だ。
先輩は二人掛けのテーブルを選びすわると慣れた手つきでメニューをみている。「よしっ決めた。迷ったけどアンミツにするっ。ふふっここのアンミツ美味しいだよ」
「じゃあ僕も。」


「さっき部室で盛り上がったって言ったけど何の話してたと思う?」
「え?わかんないですよ」
「君の話だよ」
「えっ?」
「ビックリした?本当だよ。だからさっき君と有希を校門で見た時、なんか納得しちゃった。有希ってさぁすっごく嬉しそうに君の話するんだよ?バックハンド教えてもらっちゃいましたって。本当に嬉しそうだった」
「いやあいつとは中学の腐れ縁で」
内心はドキドキしていた。有希が俺の話を嬉しそうにするなんて
「ねぇねぇ有希の事、本当になんとも思ってないの」
どう答えていいのかわらず
「そ、そうですね」
目の焦点をどこにもあわせず曖昧な返事をした。
「そっかぁ。でもいいなぁ。なんか青春って感じがする。」
香織先輩は伸びをしながら言った。伸びをした拍子にお腹がチラリと見えた。綺麗だ。雑誌のグラビアと比べても遜色ない。
意識しないようにしても見てしまう。
「香織先輩お腹見えてますよ。」
「きゃっ!見たわね〜高いわよ?」
「あ〜あ、甘いものばっかり食べてるから太るのかなぁ」
「全然太ってないですよ。それに顔だって綺麗だし」
「お世辞うまいじゃん」
「いやお世辞っていうより本当の事だし。」
自分でも自分の言う言葉に驚く。
「みんなも憧れの先輩だって言ってます」
違う!本当は俺が憧れてるって言いたいんだ。でもそんな勇気もなく「自分」を「みんな」と言う主語に置き換えた。
「ありがと」
先輩はちょっと照れながら言った。
「そろそろでよっか。あ、お金はいいよ。やっぱり私おごるね。綺麗って言ってくれたお礼。」
「ありがとうございます」
「先に店でて待ってて、途中まで一緒に帰ろ?」
もちろんいやじゃない。
店をでてからは先輩はあまり喋らなくなった。
俺も何を話していいのかわからず、ただ時間が過ぎた。
俺と先輩は並んで歩いているが間に二人の自転車があるので距離は遠い。
でもこの位がちょうどいいんじゃないかな。あんまり近すぎると今以上に緊張してパニックになるに違いない。
「あっ」
先輩が何かに気付いた見たいだ。先輩の向いてる方向をつられて見ると有希がいる。でも有希はこっちにきづいてない。
どうしよう。有希だけには香織先輩と二人でいるとこを見られたくなかった。
「有希〜何してんの〜?」
先に声をかけたのは香織先輩だった。
有希が香織先輩に気付く。俺は有希の死角になるよう先輩の後ろに立っていた。
「あ先輩!今から塾行くとこだったんですよ」
「そっかぁ頑張れ有希」
「先輩、誰かと一緒に帰ってるんですか?」
有希がこっちを覗きこむ。見つかってしまった
「あ、あんただったの。」有希は興味なさそうに言い放った
「よかったじゃない先輩と帰れて。」
「先輩気を付けてくださいね。こいつHですから。襲われますよ?じゃ塾あるんで」
有希は振り向きもせず走っていった
「私も帰るね。送ってくれてありがと。じゃあまた明日部活でね」


その日の夜は眠れなかった
次の日。俺はいつもより早めにテニスコートに向かった
コートには十分過ぎる程早く行ったのに人影があった。
有希だった。バックハンドの自主練をしている。
気まずい。
俺はできるだけ目立たないようにシューズをはいたり、柔軟などをやっていた。有希を避けるかのように
話し掛けてきたのは有希の方からだった
「昨日はよかったじゃない?」
「たまたまだよ」
「たまたまって。それ言い訳のつもり?」
いつもは受け流すのに、なぜかムキになってしまった
「なんだよ言い訳って!?先輩と帰るのに一々有希に報告しなきゃいけないのかよっ。もしかして嫉妬してるのか?」
有希は押し黙った。
そして下をうつむきポツリと言った。
「知らないっ」
少し長めの髪が顔を隠しているので表情は見えない。
「ごめん言いすぎた」
沈黙が続く。
突然有希は顔をあげ
「ばっかじゃないの?なんで私があんたにヤキモチ焼かなきゃいけないのよ?」「さっ今日もバックハンド教えなさいよ」
「あ、あぁ。じゃあ俺ボールあげるから」
「違う。今からじゃないわ。練習後。」
「え〜」
「何よ?香織先輩には放課後付き合ったくせに!私には付き合えないっていうの?」
「わかったよ。じゃあ先輩達が帰った後な」
「当然よっそれくらい。じゃあね」
有希は小走りで去っていった。

部活が始まった。
うちの部は基本的に男女別れて練習する。でもたまに混合で練習する日があった。
今日はその日だった。
部活が始まった。
うちの部は基本的に男女別れて練習する。
でもたまに男女混合で練習する日があった。
今日は偶然その日だった。

香織先輩は来てない。今日は来ないのかもしれない。俺は有希を避けるように練習した。

練習も終わりに近づいた頃香織先輩来た。
今日は居心地が悪い。昨日あんな事があったし、しかもよりによって男女混合の日だ。有希の事も香織先輩の事も気になってしょうがない。
散らばったボールを集めていると香織先輩の方から近寄ってきた。
「おっす!悩める少年、元気かい?」
「ええ、まぁ」
「昨日は付き合ってくれてありがとっ」
先輩はいつも気さくだ。誰とでもこうなのかな?
先輩との話は盛り上がった。なんか堰がきれたように俺は話した。
先輩は何気ない言葉でも笑ってくれる。
「今日も蜜柑屋行く?」
先輩からのお誘いだ。
「いやっでも今日は用事が」
「そっか…あっ有希とでしょう?」
「そんな事ないですよ」
「あ〜っ真っ赤になってる〜図星だ〜。
じゃっ今度ね」


部活が終わった。
部活が終わったあと俺は一旦コートの外に出た。4月半ばとはいえ運動後は暑い。
顔を洗って再びコートに戻ると有希が待っていた。
「遅いわよ。日が暮れるのは早いんだから」
開口一番。今日も口はへらない。
「ねぇ私テニスうまくなったでしょ?」
「まあまあかな」
「私ね運動神経いいんだっ」
「運動神経だけだろ?」
「ばかっ」
「何もラケットで殴る事ないだろ。でも確かに筋がいいのは認めるよ」
「でしょっ。一ヵ月後にはあんたに勝つかもね」
「はいはい」
有希がまたラケットで殴ろうとしたので反射的に身構えた。
「早くやろっ」


その後30分程練習した。
やはり今日は暑い。
「そろそろ暗くなってきたし終わりにしようか」
「うん。それにしても暑いねぇ」
「ボール集めようか?」
二人の間にはボールら散らばっている。
俺は足元にあるボールを拾う。有希もボールを拾う。
徐々に二人の間のボールは少なくなり、そして距離も自然と縮まる。
有希は今日は3つボタンのポロシャツだ。
次のボールを拾おうとした瞬間、同じタイミングで有希もかがんだ。
ポロシャツのボタンを外していたもんだから女性特有の白い下着が見えてしまった。
「今日一緒に帰ろう?」
「う、うん。」
かなりの不意打ちだ。
「なんなの?いやなの?」
「そんな事ないよ。」
「じゃあ終わったら校門でね。」
「あと顔真っ赤よ。熱あるんじゃない?」
そう言って有希は手を俺の額にあててきた。
もう一度見える白い下着。喉がゴクリ鳴る。
こんなに近くで有希を近くで見るのは初めてだ。
うちの学校は基本的に化粧は禁止である。でも有希の顔は化粧をせずとも綺麗だ。頬が少しピンクだ。ドキドキする。
化粧は禁止といえどもグロスは塗っているらしい。光る唇。
「熱はなさそうね。まぁ今日は暑いしね。ゆっくりしとけば大丈夫よ。」
そう言って有希は俺の額から手を放した。
「じゃあ後でね」
有希はそそくさと去っていった。
先に校門に着いたのは俺だった。少し遅れて有希は来た。
お互い自然に歩きだした。
「もうすぐ新人戦ね。あ〜私出れるかなぁ」
そういえばもうすぐ新人戦だった。試合には慣れていたので意識していなかったのだ。
「有希なら出れるよ。俺が保障する。」
「ほんと?」
「うん。最近うまくなってきたし。俺の教え方も良いしね」
「私がうまいの!まぁあんたには感謝してるけど」
「出れるといいな試合。」
それからはずっと試合の話だった。有希の家の近づくと有希は突然話をかえた。
「私がテニス部に入ったのはね…中学の時あんたを見て楽しそう…だったからなの…」
「え?う、嘘だろ?」
「本当よ。悪い?」
「そんな」
「だ〜か〜ら次の試合絶対勝ってよね。私のテニスの先生が負けたとか承知しないんだから」
「負けるかもなぁ」
「ちょっとそんな事いわないでよ」
「だって俺、自分の練習せずに有希の練習に付き合ってるもん」
意地悪と自分で思いながらも俺は続けた。
「キスさせてくれたら勝てるかもな」
パンチが飛んでくると思って俺は身構えていた。
しかし有希は黙っていた。
様子が変だ。白い肌がみるみる赤くなっていく。
会話が途切れた。俺は黙って歩くしかなかった。
俺らはその後も会話はなく、ただ歩き続けた。
段々家に近づいていく、それは同時に人気が無い場所に行くのとイコールだ。
電柱の明かりの下で不意に有希は立ち止まり、普段では考えられない程の小さな声で言った。
「…ス…て…みる?」
「えっ?」
「キスしてみる?って言ったの?恥ずかしいんだから何回も言わせないでよ」
「でも」
「私のせいで試合に負けたら嫌なの!」
俺は無言だった。
「何恥ずかしがってんの?男でしょ?勇気だしなさいよ」
そういって有希は目を閉じ、上を向いた
目を閉じ、上を向く有希。
俺はその姿を見て驚いた。そしてどうしていいかわからずにいた。
だが決心し唇を近付けた。それは一瞬の出来事だった。
有希は驚いた様子で
「なんでほっぺなの?」
と聞いてきた。
「なんかフェアじゃ無い気がして」
「格好付けちゃって。でも少しは見なおしたかも」


俺は頬だったけどキスできた事がすごく嬉しくて浮かれ気分だった。
なんか有希も最初は納得いかないって感じだったが、最後には俺の事見なおしたっていっていた

俺等2人はこみあげてくる嬉しさを押さえながら家に帰った


でも2日続けてキスするなんて、しかも大人のキスするなんて思いもよらなかったんだ
次の日。俺は昨日の興奮から冷めず、何度も何度も有希にキスをするシーンばかりを想像していた。
そんなわけでその日の授業はまるで頭に入らず、ただ呆然とすぎていった。
最後の授業を終え、俺は委員会室にむかった。何か委員になってる奴は月に一回放課後話し合いがある決まりである。
普段通りに委員会は終わった。そのまま部活に行ってもいいが、俺はふと3年の教室に寄りたくなった。
香織先輩いるかな。
どの教室にも人はいず淋しく窓の影が伸びていた。
そんな中香織先輩の教室を覗くと人影があった。香織先輩だった。
俺が後ろから近づく。先輩は気付かない。
驚かせようと先輩の肩を叩くと先輩は「ビクッ」として振り返った。
先輩は目を赤くし泣いていた。
「なんだ君か」
先輩は肩の力を抜きニッコリ笑いながら言った。
「フラレちゃった。」
何も返事をせずにいると
「今ね、ずっと好きだった人にフラレたの」
「そんな!こんな可愛い先輩をふるなんて!」
「あのね、私ね、ずっとね、好きだったの、でもね」
「先輩は悪くないですよ」
「でもね、でもね、」
先輩はとうとう堪えてきた感情を爆発させ、泣きだした。
そんな香織先輩を見るのは初めてだった。いつもは部活中明るく活発で誰とも笑いながら話していた。そんな先輩からは想像できなかった。
「先輩。」
俺は無意識のうちに先輩の頭を撫でていた。すると鼻を啜りながら先輩は身を委ねてきた。
身を委ねてきた先輩は更に俺の腰に腕を回した。
俺は撫でる手に力をこめ、ぐっと引き寄せた。
先輩はそれに安心したのか体から力を抜きさっき以上に俺に身を委ねてきた。
体を通して先輩のしゃくりが伝わる。本当に悲しそうだ。何も言わずに、先輩の悲しみを拭い去るように頭を撫で続ける。

突然先輩は俺の胸から頭をはなした。

涙で潤んだ瞳で見つめられる。
先輩の顔は泣いたせいか少し上気していた。
その黒い瞳は俺の胸を揺さ振る。先輩は何もいわない。ただ見つめられる。

そして吸い込まれるように俺はキスした。

唇を離そうとする。
それを感じ取ったのか香織先輩は更に唇を押しつけてくる。一心不乱に。
まるで熱に侵されてるかのように唇は吸い付いてくる。何度も何度も。
俺はされるがままでいた。でもキスの味に酔ってもいた。
しばらくすると唇は離れていった。
「ごめんね。私。」
さっきより落ち着いたみたいだ。
「いや、俺こそすいませんキスしちゃって」
「ううん優しいキスだった。もしかして慣れてるのかな?」
先輩は笑おうとした。でも笑えずまた泣きだした。
「ごめんね。ごめんね。」

二人しかいない教室に先輩の「ごめんね」のことばが悲しく響きわたる。

教室に夕日が差し込む。
その明かりが香織先輩にあたり輪郭を浮かび上がらせた。
「先輩ならまたいい恋できますよ。先輩は美人だし」
「でも。」
先輩は泣き止まない。
俺は肩を抱き寄せた。


どのくらい時間がたっただろう。先輩はやっと泣きやんで俺から離れた。
「好きになった人が君だったらよかったのにね」
「大歓迎ですよ」
「ふふっ」
先輩はそういってやっと笑った。
「少し元気になったよ。ありがと。私帰るね」
「僕も一緒に帰ります!」
「ダメ。もうすぐ試合でしょ」
「先輩は部活でないんですか」
「うん。泣いて目が赤いからね。みんなに笑われちゃう」
「そうですか」
「じゃあ部活頑張れよ少年!」
先輩は走って教室をでて行った
俺は部室に向かった。
練習着に着替えるため上着を脱ぐと甘い香りがした。先輩の匂いが移ったらしい。


コートに行くと練習は終わりに近づいていた。
「遅かったじゃない。」
後ろから声を掛けられビクッとなる。
「う、うん委員会だったんだよ」
「ふ〜ん。同じ委員会の谷川君は随分早くにきたのにね。それに教室にいったらいなかった」
「あ、先生に呼び出されて」
「ふ〜ん」
「それより何か用だった?」
「なんで私があんたに用があるのよ」
「でもさっき教室にきたって」
「ちょっと!勘違いしないでよ。誰もあんたに用があって教室にいったんじゃないから」
「本当に可愛くないなぁ」
バチンッ

思い切り叩かれた。
「しらないっ」
有希はふてくされて走りさっていった。
またやっちゃった。素直になろうって決めたのに
有希はコートの裏で一人ため息を吐いた。
ポケットの中のキーホルダーを握り締める。
ラケットの形をしたキーホルダー。昨日学校帰りに見つけた。アイツにぴったりだと思った。
今度の試合のメンバーにアイツは入っていた。
コレをあげるには絶好の機会だと思ったのに

昨日アイツにキスされた。ほっぺにだけど。どきどきした。胸がきゅんってなった。
帰り道。普段と同じはずの風景が輝いてみえた。母親には、あんた変って言われたし。

どうやってキーホルダー渡そう。なんか言葉あったほうが良いかな。
さり気なく渡せるかな

アイツはなかなかこない。
部活の途中忘れ物したって嘘ついて抜け出した。
アイツの教室にいったけどいなかった。
やっと部活にアイツがきた。

でもなんでだろう。渡せなかった。それどころか、また強がっちゃった。
こんな私大嫌い。素直になりたい。
遅れていったので部活はすぐに終わった。
ボールを集め、終わる準備をしているとキャプテンに引き止められた。
「今度の試合、シングルで出てもらうから。遅れてくるから言いそびれてた。頑張れよ」
やった試合のメンバーだ!!今度の試合でそれなりの結果を出せば総体のスタメンも夢じゃない。俄然やる気が出てきた。


次の日、俺は由希の教室に向かった。試合に出れることを自慢してやろう。
それに由希が試合に出れるか気になる。
教室の扉から中の様子をのぞくと由希は楽しそうにおしゃべりしていた。
でもそのおしゃべりの相手は男だった。同じ部活の谷川だ。
気にするなって言われてもやはり気になる。
由希はこっちにぜんぜん気づかずおしゃべりに夢中になっている。そしてかばんから何か取り出した。
かわいらしくラッピングしてある。プレゼントらしい。
それを恥ずかしそうに谷川に渡した。
俺はそこまで見ると不意に悲しくなり由希の教室を後のした。
それからの授業は全然頭に入ってこなかった。
別に有希は彼女じゃない。
けど、けど。
なんか勝手に有希が俺に好意をもってるって考えてた自分が馬鹿みたいだ。
ウジウジしてる間に放課後になった。
イライラしながらコートに行く。

もういいや、関係ない。そう思う事にした。そして必死に黄色いボールを追う。
飛ばしすぎて疲れた。コートをでて休んでいると有希が近づいてきた。
「ねえ試合に出るんだって?不様な姿晒さないよう頑張りなさいよ。」
俺は無視した。
「ちょっと!聞いてるの?返事くらいしなさいよ」
「試合に集中したいんだ。話かけないでくれないか?」
「そんな言い方ないでしょ?せっかく良いものもってきたのに」
「良いものってなんだよ。くだらない。俺は試合に集中したいんだ。邪魔しないでくれ」
「それにプレゼントなら谷川にあげればいいだろ!」
俺は自分でもびっくりするくらい声を荒げて言い放った。
有希の顔がみるみる曇っていく。
「私、谷川君に何もあげてない」
有希は少し涙目で、訴えるように言った。
自分で自分が止めれない。俺はさらに続けた。
「隠したいなら隠せよ。それに有希は別に俺の彼女でもないだろ?」
言った後に後悔したが、もう遅かった。
有希は何も言わず俯いている。
「俺練習に戻るよ」
コートの方を向くと背中に何かあたった。有希が何かを投げたらしい。
振り向くと有希は目を赤くして
「馬鹿」
それだけ言って走り去った。
俺は追い掛けなかった。
「はぁ」
ため息をついて下を向くと小さな袋が落ちている。
それはまぎれもなく有希が谷川にあげていたものだった。
俺はそれを拾うか迷ったけど結局拾った。
少し重量感があり、女の子らしく可愛くラッピングされている。
それにしても何故この袋がここにあるんだろう。
俺は確かに有希がこの袋を谷川にあげているのを見た。
よし、部活が終わったら有希にこれを返そう。
ポケットに袋をしまい部活にもどった。


部活は男子の方が早く終わった。いつもなら練習が終わった後もコートで時間をつぶすのだが、今日は違った。
そそくさと部室に戻り着替える。そして帰る準備をし、部室で女子が終わるのを待っていた。
女子の部室は男子の隣の隣にある。だから必ず有希は男子の部室前を通るはずだ。
その時に偶然を装い有希に袋を渡す。それが俺の計画だった。


女子の声が聞こえてくる。
一年生は片付けをしてから帰ってくるはずだから、この声が通り過ぎた後に部室を出ればいい感じだ。
計算通り俺は声が通り過ぎるのを待って外にでる。
有希は友達と話ながらこっちにくる。迷ったけどかまわず声をかける。
「有希ちょっといいかな」
有希は友達に
「さきに行ってて」
と言った。
友達は何か察したのか「じゃ」とだけ言って去った。
「なによ。友達がまってるんだから早くしてっ」
「これ。」
袋をポケットから取出し
「しらない。あんたが拾ったんだからあんたのでしょ」
「じゃ、もう行くわね」
「あ、ちょっと待てよ」
「何?早くしてよ」
「さっきはごめん。言いすぎた」
「気にしてないわ。あんたの言う通り、私はあんたの彼女じゃないから。じゃあ」
怒ったように言い放つと有希は去った。

家に帰ると一直線に自分の部屋に入り鍵をかけた。
どうせ返すと言っても受け取らないだろう。
そう自分勝手に納得して袋をあけた。
中にはキーホルダーが入っていた。そしてピンクの紙が入っている。
手紙と思われる小さな紙にはこう書かれていた。


試合のメンバーに選ばれておめでとう。
 いつも丁寧にバックハンド教えてくれてありがとう。
たぶんあなたの前では照れてしまうので手紙を書きます。

中学の時からずっと見てたよ。もっと近づきたくてテニス部に入りました。
う〜ん書いてて恥ずかしいけど私の気持ちちゃんと伝えるね。


好き


試合勝ってね。応援してるよ。 有希より


俺は手紙を読んでやっと有希の気持ちを理解した。
急いで中学のアルバムを探し有希の家の電話番号を調べる。
後のことなんか考えずに俺は夢中で有希の家の番号をプッシュする。
「もしもし?」
電話に出たのは本人だった。
「あ、俺だけど。今から会えないかな?」
「いまから?いいけど。どこに行けばいい?」
「像の滑り台がある公園」
「わかった。じゃあ15分後ね」
俺は急いで自転車に乗ると一目散に公園に向かった。
公園には先についた。
とりあえずベンチで待つことにした。待ってる間に有希になんていうか考える。
有希のこと好きかどうかなんて考えたこともなかった。
どうしよう。 考えがまとまらないでいると有希が来た。

「ごめん。待った。用って何?」
「手紙読んだよ。何で谷川に上げた袋の中に俺への手紙はいってるの?」
「あのね、それ勘違いなの。」
「ん?どういうこと?」
「本当は谷川君からあんたに渡してもらおうと思ったんだけど、やっぱり自分で渡そうと思って返してもらったの。」
「そうだったんだ。手紙ありがと。嬉しかったよ」
「そう」
「でも俺も自分で自分の気持ちがわからないんだ。」
有希は黙って聞いている。
「香織先輩がフラれたとき俺「やった」って思った。でも香織先輩のこと考えてもどきどきしない」
「それ以上に有希のこと考えるとどきどきするんだよ。どうしていいか、わかんないんだよ。教えてくれよ、この気持ち。なんなんだよ」
本当はわかってる。俺は勇気がないんだ。
俺、無言。有希も無言。

呼び出した公園の水銀灯がともる。
突然風が駆け抜けてゆく。桜が葉桜にかわる季節、まるで雪のように花びらが舞い散る。