チェロと私
何故私がチェロをはじめるようになったのか、またチェロに関する雑感を徒然なるままに書き綴っています。
- ・チェロ以前
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15年前(より前)の私しか知らない人は、今私がチェロを弾いていることを知ったらとても驚くことでしょう。15年前くらいの私は確かに音楽はやっていました。が、クラシックとは程遠い、ヘビーメタルやロック、ポップスといった音楽でして、弾いていた楽器もギター、シンセサイザーでした。
そもそも私が音楽に目覚めたのは中学生の時で、Yellow Magic Orchestra(Y.M.O)でブレークしました。それまではまあ歌謡曲を適当に聴くかな、と言う程度でしたが、YMOにはまってからはYMO以外は音楽ではないという時代が2年くらい続きました。シンセサイザーはその当時の最新機種Roland JUNO-60を親にねだって手に入れました。きっとこの時私が住んでた田舎ではシンセサイザーなるものを持っていたのは私一人に違いありません(笑)。よくお店に売っていたなぁ。しかしそのすぐ後でYAMAHAからDX7なるデジタルシンセサイザーが出て涙したものですが、JUNO-60のアナログの音作りの容易さの虜になり、演奏技術がない分、音作りに没頭する毎日が続きました。
しかしただ音作りをしているだけでは面白くないので、ラジカセとカセットデッキを使い、YMOの曲や自作の曲の多重録音に励んでいました。リズムマシンを買うまでは、ドラムパートすら多重録音しないといけないため苦労もひとしおでしたが、その分色々なアイディアを使い、N/S比(もはやS/N比ではない^^;)を逆用したりとまあそれなりに楽しんでいました。
YMO以外の音楽も認めるようになったのは、中学2年生の時に出会った友人がエレキギターを持っていたことがきっかけでした。彼はRCサクセションをはじめとしてロックに傾倒しており、私のとってはそれまでただやかましいだけのロックが、彼が私の目の前でギターを弾いてくれたことで何だかとっても心地よいものへと変わっていったのでした。
そんなこんなで高校時代にはビートルズ、サイモン&ガーファンクルにも目覚め、また音楽の時間に聴くクラシック音楽ももしかしたらいいのかもしれないと思い始めたのもこの頃でした。しかし当時の私にはクラシックを深く理解出来るだけの忍耐力は備わっていませんでした。基本は今でもそうですが、私には1曲5分を超えるということは大問題でした^^;。それ以上の長さの曲を一度に聞いても頭に入ってこないという、今から考えるととても不幸な頭の構造をしていました(笑)。ですからクラシックでもいいなと思った曲といえば、お決まりのヴィヴァルディ「四季」、運命、田園の第一楽章等の曲でした。当時の音楽のノートを紐解いてみますとシベリウスの「フィンランディア」を聞いた感想が書いてあったのですが、大学オケに入って再度「フィンランディア」を聴いた時私は全くその曲を初めて聞いたと思ったのですから、当時の素養の程度が分かるでしょう^^;。
- ・オーケストラとの出会い
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さて一方私は高校3年間をテニス部で過ごし正にテニス三昧の青春時代を送ったのですが、そのせいもあり大学に入ってさてどんなクラブに入ろうかと悩んだものでした。つまりテニスか、音楽か、という悩みでした。それ以外は、保守的な私は考えませんでしたね。
で、テニスの方を考えた結果、高校の時の部活動は体育会系でありながら、厳しいのは一年生の時だけで、二、三年生の時はもう自由にテニスが出来たというすばらしい部だったので、今から果たしてまた球拾いが出来るだろうかと真剣に悩んだ挙げ句、きっと出来ないだろうと思い、止めました(笑)。
さて、となると何か音楽関係のクラブに、となった訳ですが、最初に見に行ったのはオーディオ研究会(だったかな?)で、これは何かの気の迷いだったと思います(覚えていない^^;)。次にバンド系のクラブをかなりの期待を持って見に行きましたが、「メンバーを揃えてきたらすぐ入れるよ」と言われ、「おいおい、メンバーがいないからこうして来てるんじゃないの」とがっかりしたのを覚えています。
そんなこんなで2ヶ月くらいが無為に過ぎ、クラブに入らない学生生活は暇だなぁと真剣に思いはじめ、もう一度クラブ視察を開始しました。そこで目をつけたのがクラシックギタークラブで、山下和人氏のファンであった私にとってきっとここなら面白いに違いないと思ったのでした。その時は同じクラスで親しくなった友人と一緒に見に行こうという話で部室(立命館大学ではボックスと呼んでんでいますが)を覗きに行きました。で、本当にクラシックギタークラブを見に行ったかどうかは記憶にないのですが^^;、兎に角クラシックギタークラブは学生会館という建物の4階で、オーケストラは5階にボックスがあったので、オーケストラって何やってるのかついでに見てやろうということになりました。
で、友人がいるので割と心強く見に行くことが出来(元来小心者なので、そんな怪しそうなクラブ^^;は一人だったら多分行ってなかったでしょう)、じゃあ色々楽器を紹介しましょうということになりました。
話はちょっと戻りますが、高校時代の音楽の先生が授業でヴァイオリンを弾いてくれたことがありまして、それまで本物のヴァイオリンなど見たことも、生の演奏を聞いたこともなかった私はいたく感動したことがあったのですが、急にそこのとを思い出し、「何の楽器がやってみたいの?」と聞かれた時に私はすかさず「ヴァイオリンです」と答えていました。が、よく考えてみると私は当時オーケストラの楽器なんてヴァイオリン以外やフルート、クラリネット、トランペット位しか知らなかったので、きっと高校時代の感動がなくてもやっぱり「ヴァイオリンです」と答えていたに違いありません^^;。
- ・ヴァイオリンとの出会い^^;
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さてそうして待望の^^;「ヴァイオリン」と対面することになりました。高校時代に見た時は、見たといっても先生が前で弾いたのを見ただけで、先生はすぐに楽器を片づけてしまったので目の前で見た訳ではなかったのでした。「はい、これがヴァイオリンです」と間近で見せられ、物珍しさに私は「へぇ〜」とか言っていたと思います^^;。何で弓でこすると音が出るのかな?と一応理系の私はどうでもいいことを思ったりしていると、「じゃあ一回弾いてみる?」「えっ?いいんですか?」と突然の展開に驚きながらも興味津々で言われるがままに楽器や弓を持ち、構えてみました。うーん、肩甲骨が痛いと思いながらまあそこは我慢して、「じゃあ弓はこう」とか言われるままに弓を動かしてみますと、何と!音が出ました!(笑)私は真剣に驚きました。弦楽器なるものは音が出るまでに血の出るような努力をしないといけないものだとばっかり思っていた私には、鋸を引く音でない^^;、一応何だか楽器から出る音らしきものが出ていることにいたく驚いたのでした。で、2、3回弓を動かしているうちに冷静になってくると、ある事に気がつきました。「何ちゅう小さい楽器なんや!」。そうです、ギターをやっていた私にはヴァイオリンは余りにも小さく感じたのでした。また私は人から必ず言われるように手が大きく指が長いので余計にそう感じたのでしょう(今でもそう感じますが)。しばらくすると冷静になり、弦楽器だから原理はギターも一緒だろうから、高音を押さえる時ほど音程の間隔は物理的に狭くなっていく筈で、自分の手でこの小さな楽器を弾きこなすのは物理的に難しいだろうと思ったのでした。そう思うとあれほど期待していた「ヴァイオリン」も何だか急に魅力が薄れていく様に思えてきました。そこで「はい、とりあえず何となく感じは分かりました」と言うと、「じゃあ次の楽器に行きましょう」ということになりました。
- ・コントラバスとの出会い^^;
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書き忘れていましたが、「色々楽器を紹介しましょう」と言われた前提には、管楽器は初心者では難しいので入団するなら弦楽器にしてねと最初に言われていたので、見回る楽器も弦楽器ということで次に何とはなくコントラバスのところに連れて行かれました。そこではいかにも関西人といった人が説明をしてくれました。因みに私は関西出身ではなくこの入学当時はまだ関西になじんでいなかったため、ネイティヴ関西人の話術のうまさに感心するところがありました。そこでまず私に最初の危機(?)が訪れました。説明してくれた人が私を見るなり「自分体も手も大きいからベースはぴったりやで!」とのたまわったのでした。同じようなことを実はアメフト部の勧誘でも言われました(笑)。加えて雑談の中で私がギターをやっていたことを言うと、「ベースはギターと同じチューニングやし、ますます君はベースに向いてるで」と言われました。
しかし私は実はコントラバスは絶対にしないという確信がありました^^;。私はバンドの経験から遊びでベースを触ったりしたこともあり、コントラバスも同じチューニングということを聞いてきっと同じようなことをするんだと感じました。私はベースパートそのものは大好きですし、またどんな曲の中でも決して欠くことの出来ない重要なパートであると思いますし、自分で曲を作っていた時もベースパートをカッコよく作ることは楽しいことでもありました。が、自分でベースを弾くということは何故か(今でも)とても抵抗があり、多重録音をしていた時も決してエレキベースを友達に借りてそれを弾くことはなく、シンセサイザーで弾いていました。ですからコントラバスを見ている時も、折角一生懸命誘ってくれるこの人には申し訳ないけどワタシャベース(を弾くの)は嫌いなんだよ、と心の中で思っていました。勿論口には出しませんでしたけど^^;。
- ・チェロとの出会い
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そんな訳で一通り話が済むと、「まあとりあえず他の楽器も見たいので」と適当にお茶を濁して^^;その場を去ることにしました。次は何を見せてくれるのかな(因みにヴァイオリンとコントラバス以外の弦楽器は知らなかった私でした^^;)と思っていると、「ちょっと今ヴィオラの人がいないみたいだからチェロを見に行きましょうか」といわれました。チェロ?どんな楽器だっけ?と思いながらついていくと、そこにはチェロを弾いている人がいました。その時初めて私は「あぁ、コントラバスよりちょっと小さい、座って弾く」楽器がチェロであることを認識しました。因みに私はこの後オーケストラに入団してからもヴィオラなる楽器がどれかを暫く認識することが出来ませんでした(笑)。
紹介されたチェロの人は、先ほどのコントラバスの人とはうってかわって物静かな人で、且つ関西人でもありませんでした。ぼそぼそとした口調で「これがチェロです」みたいなことをおっしゃいました。私も特に初対面の人と会話が弾む方ではないので「はぁ」とか言っていたと思います^^;。そしてその人は何か弾いてくれたのですが(後から聞くとサンサーンスの白鳥を弾いていたそうですが)、私にとっては知らない曲だったので、よくわからなかった、というか何とも思わなかった^^;、というのが正直なところです。その後その人はやおらチェロについての技術的なことを話し始めました。そんな事を説明されても私には何のことやらさっぱり分からないよ、と思いながら聞いていましたが、「弦の中心を弾くと倍音が出て、それでチューニングをするんだけど」といわれた時、「あ、それってハーモニクスのことですか」「そうそう、あ、ギターでもあるんだ」と、初めて会話が成立しました(笑)。
それから一通り説明があり、その後ようやく「じゃあ、ちょっと弾いてみる?」と言われました。椅子に座り(そう、チェロはオーケストラの主な楽器の中で唯一座らないと演奏できない楽器なのです)、楽器を構えさせてもらいました。「何か窮屈だな」と思いながら弓を持たさせてもらって更に「え、こんな風に弓を持つの?何て不自然な!」とかなりの戸惑いを覚えました。日常生活では考えられないような格好で弓を持たなければなりませんから、まあ最初から弓をちゃんと持てる人はいないでしょうけれど。あ、同じ事をコントラバスの時にも(コントラバスはジャーマン式という持ち方の場合はその他の弦楽器より更に非日常的な格好で弓を持つのです)思ったのでした。
で、とりあえず弾いてみますと、さっきバイオリンでもとりあえず音が出たようにチェロでもとりあえず音が出ました^^;。出てきた音はヴァイオリンやベースとは違い何だか落ち着いた音のように感じました(きっと音域のせい)。しばらくボーボーボーとG線やD線(この2本の弦が一番音が出やすいと言われたので)を弾いてみた後、無謀にも左手で音階を押さえてみようとしました。すると「普通に指を開いて一本が半音の間隔になるように押さえるんだよ」と教えられ、「おお、それはギターと同じではないか」と大いに親しみを覚えました。実際ぎこちなく押さえてみると、音の間隔も(と言っても当然決して正しい音階を弾けた訳ではありませんが)私が普通に指を開いた間隔と大体一致していて(且つ勿論第1ポジションですが)、ヴァイオリン(小さすぎ、間隔狭すぎ)やコントラバス(やや、いやかなり大きい)に比べて何だかしっくりきたのでした。
- ・決心
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さてこうやって一通り楽器を見せてもらった後、「どう?どれかこれやっちゅうのあった?」と聞かれ、優柔不断な私はとても困りました^^;。そりゃ今日見た中ではチェロが一番マシ^^;だけど、そもそも私がオーケストラに入るかどうかということが大問題でした。ついさっきまでオーケストラなんて私にとってどこか遠い世界のものであった訳ですから。また正直チェロから強烈なインパクトを受けた訳ではなく、他の楽器よりはとっつきやすいかな、程度でしたし。
申し訳ないのですが、ここから先私の心の中でどの様な変化があって「オーケストラに入ってチェロを弾く」ことにしたのかははっきり覚えていませんが、気がついたらチェロパートの人とお茶を飲んでいました。想像するに、一緒に言った友人(結局彼はコントラバスを選んだのですが)も入るから、というのが一番大きな理由だったのではないかと思います。いずれにせよ強烈にオーケストラに入ろう、チェロをやろう、ということではなく、ま、とりあえずやってみようかという極めて消極的な理由であったことは間違いありません^^;。
- ・チェロを始めてみて
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さて、そんなこんなでチェロを始めて早12年。気がついたら今まで(それなりに)手をつけた楽器の中で最も長い時間触れ続けている楽器となっています。最近ギターを久しぶりに引っ張り出してきて弾いてみて驚いたのは、「うーん、弾けん^^;」。何でもそうだと思いますが、続けているということは偉大なことです。
今思い起こせばあの時チェロに出会わなかったら、オーケストラに入っていなかったら、私の人生は今とは随分違ったものになっていたことと思います。たかが(、されど)趣味ですが、それでも人生は変わるんだということを実感しています。
あの時何となくチェロをやろうと思ったのですが、やはり人間「直感」というものがあるのでしょうか、それは今の私にとって非常に良い選択だったと思っています。チェロは私にとって、今までとっついてみた楽器の中で比べても、何というか、「想いが形に出来る」楽器なのです。それは技術的にとか、表現力がどうこういう訳ではなく、うーん、言葉で言い表わすのは難しいのですが、とにかくチェロを弾いているとそこには何かしら違う世界が広がり、上手い、下手を超越した充足感が得られるのです。そりゃ新しい曲を練習している時等は「何で弾けないんだ」とか自分の技術に苛々したりすることもありますが、上手く弾けないからもう止めようとか、決してネガティブにならない、そんな気がします。私は本質的にネガティブな人間なのにも関わらず^^;。
今はなかなか思ったようにチェロを弾く時間がないのが残念なところで、宝くじでも当たればサイレントチェロ(あるんですよ)でも買おうかなと思っていたりもします。あ、唯一チェロに不満なことがあります。それは「でかい」ことです。そりゃコントラバスに比べれば小さいですよ。かわいいものです。でもバイオリン属や木管楽器に比べたらそりゃかさばるの何のって。私にとって愛すべきチェロですが、持ち運ぶ時と楽器をケースから出し入れする時にはちょっとだけ気分がブルーになります^^;。
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Created by A.Kukutsu (Last updated in Jan. 18, 1999)
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