あの曲、この曲言いたい放題!



私の好きな曲、演奏したことのある曲、嫌いな曲など、とにかく適当に好き勝手なことを書いていきます。決して曲目解説などという大それたものではありません。悪しからずご了承ください。

・ベートーベン 交響曲第5番ハ短調作品67

記念すべき第1曲目は、多分誰もが知っていると思われるこの曲にしてみました。実はつい最近演奏したばかりなので自分の記憶や思い入れもまだ残っているんです(^^)。

私自身クラシック音楽を聴くようになる以前からこの曲を知っていたので、少なくとも第1楽章の冒頭、即ち第1主題は老若男女を問わず誰もが一度は耳にしたことがある、極めて有名な曲であることは、改めて私が保証するまでもなく紛れもない事実でしょう。19世紀のヨーロッパで作られたこの曲が、21世紀も間近な現在、この極東の地においてもこれほど知れ渡っていることを知ったら流石のベートーベンも驚くに違いありません。

「名物にうまいものなし」という言葉がありますが、私は音楽に関してはこれは当てはまらないと思っています。この曲も決して単に冒頭が印象的なだけの曲ではないと思います。勿論冒頭が独創的で聞く人に痛烈な印象を与えることは間違いなく、それが今日でも多くの人に愛される第一の理由であることも間違いないと思います。

さてこの曲を私が好きか嫌いかと言いますと、「好き」です。且つ「素晴らしい」とも思います。でも最高に好きというところまではいきませんが、それは単にもっと好きな曲があるからに過ぎません。

この曲の最も素晴らしいと思うところは、とにかくどこをとっても無駄がなく、曲の構成、展開が素人の私でも素晴らしいことは分かりますし、何といっても全体を通して常に説得力があるところだと思います。第1楽章の冒頭、第1主題の所謂「運命の動機」が、何の前触れもなくいきなり強奏で提示されるところからして聴き手に訴えかけてきます。しかもご丁寧にもう一度「運命の動機」を強奏で繰り返した後も、第1楽章を通じてこの「運命の動機」は殆どいつも現れます。後でも触れますが、この「運命の動機」は第1楽章はおろか、全曲を通じてことごとく現れてきます。人によっては「もうええって」と思われ、この曲が好きでない方もいらっしゃるかも知れません。

演奏する時、実はこの冒頭が特に難しいのです。楽譜を何も知らずに聴いていると単に「じゃじゃじゃじゃーーーーん」と聞こえると思うのですが、譜面上は「んじゃじゃじゃじゃーーーーん」なので、この最初の「ん」の休みのタイミングをみんなで取るのが結構難しいのです。勿論指揮者がいるのですが、指揮者によってもこの「ん」を出すタイミングが違ったり、出てくる場所によって微妙に違ったりとか、とにかくこの曲の最大の鬼門の一つです。楽譜だけ見て、或いは一人で弾いていると何てことはないこの音形なのですが、何十人も一遍に弾くと訳が違ってくるのです。プロの演奏を聴くたびに「何てみんな揃っているんだろう!」と感心してしまいます。

冒頭に限らず1楽章にことごとく現れるこの「運命の動機」は違う楽器で掛け合いで出てくる場合が多く、その時のアンサンブルも何故か合いにくいんですよね。極論を言えばこの楽章は単に八分音符が「たたたたたたたた」となっているだけなんですが、「たたたたーん」という音形の掛け合いでそれをつくりあげているので掛け合いが微妙にずれたりすると、「たたたた(一瞬の隙間)たたたた」ととても間が抜けた演奏になってしまいます。リズムが単純なだけに誤魔化しが聴かない典型的な曲です^^;。

さて第1楽章は「運命の動機」を持つ第1主題と、対照的に穏やかな第2主題からなりますが、基本的に「運命の動機」だらけで、なおかつ殆ど常にテンションが高いまま楽章が進行しつつ終わりも激しいため、この楽章を演奏するだけでもかなり疲れます。時間的には提示部を繰り返したとしても大したことはありません。寧ろ無駄がないぶん短い方です。しかしそこに費やさなければならない(勝手に費やしているだけとも言いますが^^;)エネルギーは膨大なものがあります。またチェロもこの楽章はポイントを押さえて結構活躍します。

第2楽章は第1楽章とはうってかわって穏やかな楽章です。この楽章ではチェロは第1楽章にも増して大活躍をします。但し活躍のし過ぎで美しいメロディなのにも関わらず演奏が困難なところもあって善し悪しです^^;。曲の構成としては変奏曲で、後の交響曲第9番の第3楽章に近いものがあります。テーマが変奏を経るにつれて音符が細かくなっていくところなんかおんなじです。この楽章は演奏困難な箇所さえクリアすれば穏やかに、適当に盛り上がりながら演奏できます。この楽章にも「運命の動機」がちょっと形を変えて現れますが、第1楽章ほど意識されることはないでしょう。言われなければ分からないくらいでしょう。

第3楽章はベートーベンお得意のスケルツォ。少々(素人が弾くと音程が^^;)怪しげな低弦の分散和音で静かに始まった後、ホルンで高々と「運命の動機」が奏でられます。「またか!」と言うべきか、「おお、この楽章にまで!」と言うべきか...。この楽章での聴きどころであり弾きどころは何と言っても中間部です。低弦で始まる素晴らしくかっこいい、堂々としたフーガは「運命の動機」なんて忘れてしまうほどです。ここぞとばかりにバキバキ弾いてしまうところですが、他のパートが入ってきたらちょっと控えめになることを忘れなくなれば、冷静になった分面白さが減るかもしれませんが、全体としての演奏の出来はよくなるでしょう。更に面白いのは中間部が終わり、通常のスケルツォなら主部が殆どそのまま繰り返されるのですが、この曲は違います。まず弦楽器はピッチカートが主体になり、なおかつ楽章の最後まで全楽器は殆どpかppで演奏されるのです。音量における盛り上がりは殆ど全くありません。粛々として楽章の終わりまで進んでいきます。これは他の曲でも見られるベートーベンの特徴です。ところが素人が演奏すると、ともすれば我慢できずにだんだん音量が上がっていってしまい緊張感に欠けやすいところです。

粛々として第3楽章が終わりに近づくと、切れ目なく4楽章に突入します。それまでの粛々さから結構唐突に盛り上がりを見せたかと思うと4楽章の華々しいテーマが強奏で示されます。よく言われるのが「運命の動機」から開放された勝利のテーマ、即ち「苦悩を乗り越え歓喜に至る」ということを象徴している部分がここです。4楽章が始まると、始まったばかりだと言うのに今持っているエネルギーを全部使って弾きなさいと、書いてある訳でもないのに弾いている自分がいます。提示部の繰り返しがあったらこれからまだ後2回同じことをして、なおかつ曲の最後でも盛り上がって弾かなければいけないのに、そんなことはどうでもいいと思わせるだけのものがそこにはあります。考えてみたら4楽章も殆ど落ち着くところってないんですよね。強いて言えばこの曲の特徴でもある、再現部で再び勝利のテーマが出てくる際にご丁寧にもまた3楽章の途中(本当の途中ではないですが)からやり直すのですが、唯一そこが一瞬心を落ち着けられるところです。もうそれが過ぎたら最後まで弾きっぱなし、最後も20章節以上もハ長調の和音を連打すると言う極めてくどい終わり方で幕を閉じるまでテンションが上がりっぱなし、と言う感じです。この曲のコーダはとにかくくどいです。終わりかけたと思ったらまた始まってしまうんですから。それでもチャイコフスキーの交響曲第1番の4楽章よりはマシですけれど^^;。終わってみたら「運命の動機」なんてどこかに行ってしまっている、そんな曲です。

最初にも書きましたがこの曲はとにかく無駄がなく、密度が濃い曲です。主題や動機の扱われ方もそつがないというか、よく考えられてあるというか(当たり前ですね^^;)、やはりとりたてて後世に残るだけのものはあるなぁという感じです。この曲を演奏したときのプログラムは、この曲が前半で、後半がシベリウスの交響曲第2番という大それたプログラムで、この曲を終わった時点で「もう帰ってもいい?」と言いたくなるように充実感があったのですが、シベリウスにもそれに勝るとも劣らない充実感が味わえるものを持っているので、この演奏会が終わったらもうクタクタでした。この調子で行くと次の曲はシベリウスかな?

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Created by A.Kukutsu (Last updated in Feb. 28, 2001)

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