結論から申し上げますと、日本はもっと地学教育に力を入れるべきです。これは世界的に見ても明らかに遅れていることで、一番大きい原因は地学に対する強い偏見があります。例えば、日本の多くの高等学校では、地学は文系教科というイメージが強いです。理科と言えば物化生地という常識にもかかわらず、地学(=地)は文系希望者が選択する教科になっています。特に理系選択者は地学の授業をとる余地も与えてくれません。これは本当に正しいのでしょうか。
理科の中でも地学だけはある意味特別な位置に位置していると感じます。それはおそらく別の意味で当たっているでしょう。高校地学を勉強した人なら分かるかと思いますが、地学という教科はそれぞれ細かい分野に分かれています。例えば地学オリンピックでは、地学を地質、固体地球、気象、海洋、天文、(鑑定能力)と分類しています。地学を勉強するに当たって必要とされる教科は多いです。例えば古生物を勉強するためには、生物の知識が必要です。また、天文を勉強するのであれば光学や力学などの物理学が必要です。
これはあくまで目安であり、実はほぼすべての教科が関わってきます。
このような意味では、地学は理科の中でも非常に総合的な教科であり、幅広い知識が要求されます。数学や理科といった教科の根本は自然の真理を追及するものです。地学はその中でも地球や宇宙といったものを対象としているだけなのです。よって地学もまた極めて論理的な教科であり、決して暗記だけで乗り越えられる教科ではありません。特に天文や固体地球といった分野では物理学の数式や高校数学が普通に使われてきます。これを本当に文系選択者のみに科すものなのでしょうか。理系が地学を選択できないという現状に私たちは大きな危機感を覚えています。文系で地学を選択している人たちの中で、真の意味で地学が好きで勉強する人など少数でしょう。多くは生物と地学のどちらかを選べと言われて選んでいます。
ところが、地学は最も生活に近い位置にある理科教科なのです。地学の教科書の最後には、環境という項目があります。そうです。環境問題を考えるとき、地学は必須なのです。
今世界の動きは、すべての人々に環境問題を考えてほしいという傾向になっています。これは非常に良いことです。しかし日本においては、地学を学ぶことが一部の人(しかも最も学んでほしい人々)はできないのです。これでは環境問題を真の意味で根本から考えることは難しいですよね。
私たちが危機感を覚える理由はもう一つあります。これは日本特有の問題なのですが、日本は火山・地震大国であるということです。私たちはよくニュースで南海トラフ地震や首都直下型地震などの言葉を耳にします。ただ、それらがどのように引き起こされるのかを知らないまま、ニュースの読みあげるとおりに心配しています。それよりかは、地学を勉強したうえで地震に備える方がよっぽど合理的ではないでしょうか。
火山についてもそうです。今日本に火山を専門に研究している人はほんの数十人しかいません。日本人火山学者は非常に数が少ないのです。
地学を含め理系研究者は、今日本では研究するのに十分な設備があるとは感じていないと思います。肩身が狭いのです。そのなかでも地学は特に後れを取っています。地学を教えない高校もあるくらいです。日本は、今後特に地学教育を充実させるべく、より多くのお金を科学充実費にあて、地学の振興を進めるべきです。もちろん地学以外の教科も非常に重要です。しかし後れを取っている地学に関しては、まずほかの理科3教科(=物理、化学、生物)と同じ立場の扱いにまで持ってこなければなりません。これは日本そして世界中の人々のためでもあるのです。私たちが生活しているのは今のところ地球です。その地球や周りの空間(=宇宙)について研究することは、私たちの家を設計するようなものです。私たちがより快適に、持続可能に生活できるためには地学が必要なのです。そして地学を勉強するには他の理科3教科の基礎知識が必要です。しかしまず何よりも、多くの人に地学を好きになってもらわないと何も始まりません。オタクのやる教科に思われがちな地学ですが、その分厚い偏見を取り除くべく、地学に対する正しい知識を広めたいと私たちは考えています。