科研基盤研究A  本文へジャンプ
研究概要


イメージ
東アジア型福祉社会モデルのイメージ

 東アジアの福祉国家の形成・再編と福祉社会開発の戦略は、それぞれの国の経済適正規模(環境との調和)に見合った経済成長を果たしながら、それぞれの国に即した社会的政府ティーネット(社会保障・社会福祉制度)の構築を同時に進めることである。この戦略のひとつには、東アジアの地域社会レベルそれぞれの経済発展段階、文化特性、地域特性、社会問題の表れ方等の分析から見た東アジア型福祉社会モデルの具体像をイメージすることである。その戦略は、東アジアの国や地域が有する家族・地域社会の多様性から発し、公共政策(広義の社会的セーフティーネット)を多元的なセクターで協働経営・運営し、最終的には政府の責任を第一義とする社会保障・社会福祉(狭義の社会的セーフティーネット)の共通性を導き出すことである。もうひとつは、現在進行中の日本・韓国を中心とした社会保障・社会福祉制度の比較研究を通じて、国際協力の具体的内容を明示することである。例えば、制度設計のレベルでは、日本の国民健康保険制度や介護保険制度、地域福祉計画などは、農村や中山間地域などへの制度普及が大きな課題である中国や韓国、台湾にとって一定の示唆を与えることになろう。また制度運用や実施レベルでは、社会福祉サービスの多元的提供システム、在宅福祉サービスや介護保険制度の運用・データ管理システムの整備への協力などが可能である。技術的ないし臨床レベルでは、ソーシャルワークの実践や援助技術、介護サービスなどの分野の技術的助言、社会福祉人材育成の経験なども応用可能である。福祉国家再編の戦略は、普遍性に基づく社会保障・社会福祉制度から出発し、これら制度の下部構造である家族・地域社会が抱える諸問題を個別的に対応するコミュニティ・ソーシャルワークの実践と技術を開発することに向けられる。


高齢化する東アジアー介護システムの開発

 東アジアの高齢化の特徴は、ともに高齢化の進行が急速であることである。社団法人エイジング総合研究センターの報告書(2003)によると、人口高齢化65歳以上人口割合は、日本(2000年17.2%−2025年28.9%)、韓国(2000年7.1%−2025年16.9%)、中国(2000年6.9%−2025年13.2%)という数値を示している。また、この数値を人口高齢化のスピードの数値に置き換えると、日本は2000年の高齢人口割合と2025年の高齢人口割合の比を計算した数値が1.68、韓国が2.38、中国が1.91である。今世紀の第1四半世紀間に人口高齢化が急速に進行することがわかる。また、少子化の傾向がこれに拍車をかける。このように東アジアの少子高齢化が急速に進み、このことが社会保障や福祉国家、福祉社会というテーマを大きく浮上させることになる。韓国・日本の老人療養保険制度と介護保険制度の比較研究の意味は、「東アジア福祉国家モデル」研究に連動していると考える。すなわち、皆保険及び社会保障にかかわる普遍的な法・制度が整備され、人口高齢化や社会福祉費支出がOECD基準比で算定できるかどうか。日本と韓国はこの点で類似性が見られる。また、福祉国家のサブシステムである家族や共同体の構造、ジェンダー、宗教、風土的多様性からの比較によって、特に家族・共同体扶養システムと社会保障・社会福祉制度の融合の視点をもってこそ、東アジアの福祉社会の特徴が浮き彫りになり、今後の方向も見出されるものと考える。今後は、一国レベルを超えた地域社会レベルでの地域福祉計画や介護システムの枠組みが重要な意味をもってくることになるだろう。