(No.297)  学会参加記  大きな共感を呼んだEBM/N研究会からの発表

 去る3月2日,名古屋国際会議場で開催された第27回日本集中治療医学会総会(メインテーマ:「集中治療医学を問い直す−医学と医療の調和」)に参加して来ました.
 今回,看護部門の招請講演ではカナダのマクマスタ大学から来られたアルバ(Alba DiCenso)さん(雑誌Evidence-Based Nursingの編集長)が「Evidence-based nursing in critical care setting」と題して,EBNの意味,方法論などを簡潔に語られました.
 続く看護部門シンポジウム,「Evidence-based Nursing in Critical Care−より良い集中治療看護を求めて」では,EBM/N研究会代表の岩戸さんが発表されました.シンポジウムの構成は,
1 「科学的な臨床看護研究」(川村 孝  京都大学 保健管理センター教授)
2 「看護現場でEBMを実践していくために」(岩戸 千秋 大阪赤十字病院 看護部 眼科外来)
3 「Evidenceに基づくガイドライン作りに向けて」(田村 富美子 聖路加国際病院 救急医療センター)
4 「日本の看護研究の問題点−スクウィージングの文献調査から−」(寺田 八重子 名古屋大学医学部附属病院 集中治療部)
という陣容でした.以下,岩戸さんの抄録を再掲しますと;

「看護現場でEBMを実践していくために」

 私達は1998年3月よりEBM/N研究会を開催して,職場で感じた看護上の疑問について,エビデンスを調査してきた.それらの例を紹介し,課題と解決の方向を述べる.
例1)看護の教科書には慢性腎不全に対する蛋白制限を,0.4-0.6g/Kg/日と書かれていたが,疑問に思って欧米の教科書,論文を調査したところ,このような厳しい蛋白制限は意味がないことがわかった.
例2)在宅患者が吸引技術について批判しているある看護雑誌の記事を見て検討した.日本では250−300 mm Hgの陰圧で吸引している所が多いが,欧米では150 mm Hgを越えないとするものが多い.人間での厳密なデータはないが,1974年の動物実験などから100 mm Hg より弱い方が望ましいという結果だった.
例3)前立腺肥大の術後の生活指導で,コーヒーと入浴の制限は全く根拠がなかった.
 看護婦がEBNを実践する際の障壁は,繁忙で厳しい労働条件の中で疑問さえ持ちにくい,看護教育には文献検索の教育がない,日本の雑誌・教科書にはEBMに基づくものが少ない,外国文献は語学の壁がある,などであった.
 今後,看護現場での疑問を大切にし,信頼できる文献を捜し出す力をつけ,業務の改善,看護の質の向上に役立てようと考えている.
(再掲終り)

 500名規模の会場が,かなりの人で埋まっており,関心の高さがうかがえました.他の演者の発表が余りに高度で難解だったためか,質問は岩戸さんの発表に集中した感じでした.終了後,アルバさんにあいさつしに行くと,「あなた達の発表は大変良かった.私達と同じことをやってると思う.」という,短いが,たいへんうれしいコメントをもらいました.

 発表後,数名の看護婦さんと打ち上げの席で,「こんなまじめな議論ができるとは期待していなかった.すごいと思う.」「こんなに共感を呼ぶとは予想していなかった.私たちはすごいことをやっていたんだなと分かった.」などの感想が出ました.
 その他にも,
「カナダの看護婦の先生の話は良く分かった.現場の看護婦の話はとてもイメージがわく.」
「院内研究は奨励されていない.婦長から言われてやるが,面白くない.カナダでも似たような状況があるのに頑張っていることが分かって勇気づけられた.」
「大きい学会でEBMをやっているのを知り,自分達のやってきたことが,すごいことだと分かった.きっちりした看護をやって行きたいので,私自身EBNにはとても興味がある.EBNを続ける中で今後の方向性を見出したい.」
「大きい会場でびっくりした.内容は具体的で分かりやすかったと思う.特に岩戸さんは日常の疑問点を取り上げていたのが良かった.今後,自分としてはEBNを通じて,指導者のクセに左右されない看護を目指したいと思う.」
「今やってるムダなことをやめさせていく上で,EBNは大きな力になるのではと思う.看護は患者さんのために,という点をはっきりさせていきたい.」
などの声があがっていました.

 今回の学会参加を通じて,EBNは全国的にもまだ始まったばかりであることが分かりました.その中でも,日常的,具体的問題点を取り上げている私達の研究会は,その具体性ゆえに一歩先を歩んでいます.これからも,どんどん具体的な問題を取り上げていければと考えています.

(Y)

ホームページに戻る