風力発電への期待 〜日本における現状と諸問題を中心として〜
序
20世紀の人類の豊かな生活を支えるエネルギー供給は、石炭、石油、天然ガスといった化石燃料の大量消費に よってなされてきた。しかし、これら化石燃料は有限であって「資源の枯渇」という問題に直面しており、更に 1990年代以降は地球温暖化を中心とする深刻な「地球環境問題」が世界的な課題となっている事は周知の事実で ある。このような中で大変大きな期待を集めているのが、風力をはじめとする再生可能エネルギー(注1)である。 小論では、主に日本における風力発電の現状と将来、及び諸問題をテーマとする。
第1章 いま、なぜ風力発電なのか?
1.1 環境問題
世界の人口は年間9400万人の割合で増え続けており、特に人口増加の著しいのは開発途上国である。国連の 人口推計によると、地球上の人口は2025年には85億人、2050年には100億人に達すると 予測されている。このような人口の増加は、エネルギー消費を加速度的に増大させることになる。 前述のように化石燃料の埋蔵量は無限ではないから、いつかは枯渇する日がやってくる。 また化石燃料の大量消費によって、地球の温暖化や酸性雨、あるいは生態系の破壊などの環境問題が 目立つようになってきた。これまでの,大量のエネルギーを消費しなければ発展できないような 社会ではなく、適切なエネルギー消費で持続可能な発展を期待できるような社会を構築してゆかなければならない。
1.2 風力発電の貢献
従来の火力発電に比べて、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーによる発電システムの環境負荷、 特に二酸化炭素排出量が小さい事はよく知られている。一方、原子力発電は発電時の二酸化炭素こそ無いものの、 核燃料の製造と使用後の廃棄物については冷却を継続するための二酸化炭素の発生があり、放射性廃棄物の 排出は、二酸化炭素よりも桁違いに大きな環境負荷因子である。
第2章 日本における風力発電の現状及び問題点について
2.1 現状
日本での導入量はまだ小さく、技術開発や普及は遅れている。日本国内での風力発電(出力10kW以上)の 累計導入量は2004年度では924基、総設備容量は約93万kWである。1基あたりの出力を見ると、 2004年度では1MWクラスが中心であるものの、1.5〜2MW以上の出力も増加している。風力発電設備の大部分は 輸入品であり、2004年度では導入基数ベースで約8割を占めている。2001年6月に経済産業省の 調査会がとりまとめた「新エネルギー部会報告書」では、2010年度の導入設備容量目標を 300万kWと定めた。環境省においてもこれにならい、2002年3月発表の「地球温暖化推進大綱」において 2010年度までの目標を300万kWとした。
2.2 諸問題
問題点として、次のようなものが指摘されている、或いはされていた。
2.2.1 騒音
一見、騒音は、風力発電とは、切っても切れないものであるように思える。しかし、騒音が問題とされたのは 一時期の事であり、昨今では、ブレードの改良が進み、また回転速度を低く抑える事が出来るようになり、 騒音は問題にならない水準に達している。
2.2.2 景観への影響
風力発電の設置に当たっては、景観への影響が問題になる場合がある。風光明媚な観光地などでは、 風力発電機の設置によって景観が変わるために反対される場合もある。一方、愛媛県の 「せと風の丘パーク」(注2)のように、大型風車が林立する雄大な光景を新たな観光資源とする動きもある。 大変望ましいと言えよう。
2.2.3 生態系への影響
イヌワシ、クマタカ、オオタカなどの猛禽類の幼鳥が、風力発電のブレード(回転羽根)に衝突して死亡する ケースがある。しかし、最近の風車では回転速度が低下したため、鳥類に対する危険性は大幅に減少している。 とは言え、風力発電を設置する前に、周囲の鳥類の生息状況を詳しく調査しておく必要がある。
第3章 風力エネルギーの将来展望
ここでは、洋上風力発電について述べる。洋上風力発電は文字通り、陸ではなく海上に風車を建設するもので ある。これは欧州、特にイギリスやドイツで盛んに取り入れられている。我が国においては、陸上では 設置サイトの不足や土地価格などの問題から、風力発電の導入には一定の制限がある。このため、 今後は膨大な風力エネルギーが存在する、洋上への展開は不可欠といえる。洋上風力発電は、 陸上に比べて費用が高くなるが、海底地形、波高、風況など全てを考慮に入れて費用を低減する事が出来れば、 陸上風力よりもさらに効率的にエネルギー供給が出来ると考えられている。
参考文献
1)松宮 火軍『ここまできた風力発電 改訂版』工業調査会
2)牛山 泉 『風力エネルギーの基礎』オーム社
3)村主 進 『SCIENCE AND TECHNOLOGY 原子力発電のはなし』日刊工業新聞社
4)清水雪丸 『風の力で町おこし・村おこし 風力発電入門(地域エネルギー新時代)』パワー社
参考URL
1) http://ja.wikipedia.org/wiki/風力発電
(注1)
太陽光、太陽熱,風力など,一度使用しても再び同じ形で利用する事が出来るエネルギーを
再生可能エネルギーと呼ぶ。ほかに波力、海洋温度差、バイオマス、水素、地熱などがある。
石油、石炭など一度燃料として使用すると元に戻らないものは枯渇性エネルギーと呼ばれ、資源量には限界がある。
(注2)
「せと風の丘パーク」には、合宿で訪れるそうです!