ゲンジボタルの系統関係
○ホタルの暮らす環境
ホタルの生息環境といえば、主に里山である。ゲンジボタルなら小川に、 ヘイケボタルなら水田に生息している。照明がない・農薬や家庭排水が混入しない・ 風が強くない(木が風をさえぎる)・蛹になるために必要な土手がある、 などが必要である一方、水系が長期間安定している・飛翔空間がある(木が多すぎない)・ 水質がきれい過ぎない(カワニナの繁殖のため)、なども必要である。 つまり、適度に人の手が入った環境がホタルに適しているのである。
○ホタル生息地の環境破壊
・里山の放棄、宅地開発などにより、前述のようなホタルに適した環境が失われ、生息地が激減しているのが現状。
・アウトドアブームによる川原でのキャンプやバーベキューなどで水質が悪化しても、発生数は減少する。
・護岸工事が行なわれれば、産卵場所及び蛹化の場所が失われ、激減は必至。
・ホタルの乱舞で有名な場所の中には、見物客が大量に訪れるところもある。
見物客の中には、車のライトや懐中電灯で直接ホタルの方を照らしてしまう輩がいる。
また、ホタル祭りを開いていたところでは、沢山の提灯をつるした結果、
ホタルを絶滅させてしまったという例もある。その他にも、鑑賞者によるホタルへの
迷惑行為として、フラッシュ撮影する・採集する・ゴミを捨てる・至る所に立ち入る、などがある。
○保護のための飼育・放流
ホタルの少なくなった小川で再び乱舞を蘇らせる手段として、幼虫を
たくさん飼育して放流するということがよく行なわれている。しかし、それが本当に
保護といえるのか、養殖とどう違うのか?
@絶滅寸前のものを保護するために、飼育(養殖)を行なうことは、定着の
初期段階としては有効な手段である。
A養殖したホタルの幼虫を川に放ち、成虫の乱舞を楽しむだけでは、
ホタルを保護したことにはならない。最終的に飼育・放流を行なわなくても成虫が
観察される、つまりホタルがその場所に定着する状態を目指すべきである。
Bゲンジボタルの場合、日本各地で様々な遺伝子形態を持った種類が
確認されている(同封のgifファイル参照)。飼育・放流を行なう際は、安易に他地域から
ホタルを導入すると遺伝学的汚染・遺伝子撹乱につながる恐れがある(母性遺伝するらしい)。
元来青森県が生息北限のはずのゲンジボタルが、現在北海道でも確認されている。
また、カワニナはホタルよりも地域固有性が高いといわれている。
C少ない数の成虫から生まれた大量の幼虫を放流しても、遺伝子形質が偏ってしまい、
環境の変化や病気などに対応できないかもしれない。ある程度は他地域の遺伝子を
導入することも必要な場合がある。
D大雨による河川の氾濫で幼虫やカワニナが大量に流されてしまう場合がある。
そのような事態が予測される時は一時的に幼虫やカワニナを水槽などに避難させて、
天候安定期に元に戻すことも、場合によっては必要かもしれない。
○保護のための課題
@地権者の理解を得ること。ホタルの生息地のほとんどは私有地であり、
関係する地権者全ての同意がなければ保護活動は進まない。農家であれば、
農法を変更しなければならないかもしれない。ホタルが飛ぶと評判になって
人が多く訪れるのを迷惑に思うかもしれない。生活のために休耕田を
売らなければならないかもしれない。保全活動が進んでも、地権者の
得にならないどころか、面倒なことばかりである。利益に結びつけるならば、
生態系を考えた結果での保護とはいえない。地権者にとって結局は、
ホタルとその環境を守ろうというのは、勝手な話かもしれないのである。
Aホタルの生態と彼らを取り巻く生態系を理解し、まず環境の保護・
保全・再生に努めること。養殖ではなく、地域固有種の自然発生を目指す。
○近隣でのホタルの現状及び保護活動
現在行なわれている活動としては、
@現在もたくさんホタルが見られる場所での保全活動、
A少なくなってしまった場所での保護活動、
B絶滅してしまった場所での再生活動、
Cもともと生息していなかった場所への移植活動、
がある。
阪神間は火垂るの墓の舞台となった場所であり、古来よりホタルが
生息していた場所が多いと思われる。しかし現在ホタルの乱舞が
みられる所は皆無であり、一度は絶滅してしまった所がほとんどであろう。
つまり、Bのタイプが多いと考えられる。
・六甲川
都賀川上流
地元の小学生が育てた幼虫を放流している。
岩田さんの推測では天然ものらしいが、養殖ものが相当数混じっている可能性は高い。
・住吉川
広島県福山市の自然保護団体から取り寄せたカワニナとホタルの幼虫を放流している。
白鶴美術館より上流でぽつぽついる程度。
その団体はホタルを川に取り戻すために結成され、幼虫の飼育と放流、
河川環境の改善などで復活させた。ただし、どこにいた幼虫を放流したのかは不明。
ヨシノボリやサワガニのいる比較的きれいな川だが、雨が降ると濁流になるため定着が難しい模様。
・芦屋川
かつては新古今和歌集に詠まれたほどのホタルの名所。しかし1970年以降川が汚染され、
カワニナが激減、一時は姿を消した。
20年ほど前から放流されているが、思うようには増えず、ほとんどいない。支流の高座川にはもう少しいる模様。
昨夏ホタルの幼虫を7000匹放流したということなので、6/3に見に行ってみたところ、数匹だけ確認できた。
・夙川
4〜5年前からホタルの目撃情報が増え始めた。おそらく阪急沿線では一番数が多い。
天然ものであるとの情報も。
新聞に夙川のホタルの記事が掲載されたため、毎日多めの見物客が訪れている。
近くに、火垂るの墓の兄妹が暮らしていたため池がある。