きものな映画

個人的に、気になった「きもの」な映画を取り上げています。
メジャーなとこでは『細雪』『外科室』『それから』などなどあると思いますが、ここでは、ちょっとスポットからは外れているかもしれないけれど、きものがおもしろいものを。
このほかにもおすすめあったら教えてくださいね。




『悪霊島』

 

1981年角川作品。横溝正史原作。篠田正浩監督。

舞台は瀬戸内の小さな島。金田一耕助ものではもはやお約束の閉鎖的な社会でおこる殺人事件の顛末。金田一には鹿賀丈史。映画自体は冗漫な印象が強く、お世辞にも出来がよいとは言えないが、巴御寮人を演じる岩下志麻のろうたけた佳人ぶりには目を見張るばかり。夏の話なので、薄物、浴衣など多い。その板についたきもの姿が素晴らしい。日傘も印象的。映画の時代設定が1960年代なので、きものもアンティークな印象はなく、現代に近いように思う。白地に紅い柄の浴衣がモダンでありながら扇情的で、その場面設定に似つかわしく感じた。

 


『浮草』

 

1959年の作品。小津安二郎。
これは斬新でモダンな柄の浴衣を着こなした役者がぞろぞろ出てくるという、なかなかきもの的には見ごたえのある映画。
白地にモノトーンの抽象柄の浴衣に臙脂などの赤系の帯とは意外なほどモダンだ。
特に、ラストの京マチ子。表情も美しく、すっきりした襟足と矢の字に結んだ細かい格子柄の半幅が全くもってよい。



おとうと』

 

1960年市川崑監督作品。カラー。岸恵子、川口浩、田中絹代。幸田文原作の自伝的作品の映画化。
わたしはこの作品を観る前に、テレビドラマの『おとうと』(斉藤由貴、木村拓哉)に出遭ってしまったのだ。当時はそれはそれでよく演じていると思ったものだけれど、やっぱりこれを観てしまうとドラマは貫禄負け、の一言に尽きる。

ゲンを演じる岸恵子の甲高い声がうら若さとある種の神経質さを感じさせる。銘仙に袴や、銘仙の羽織姿や、重たげな島田につつじ色の垂れ物姿などなど、
岸恵子の華奢な肩にきものはとてもよく似合うなあと再認識させられる。
銘仙のきもの姿は特に、華奢で潔癖な女学生らしい肩のだぶついた感じがよく見てとれる。
また、島田に襟をぬいた姿は折れそうに華奢な首筋を強調していて、場所柄不吉な予兆のように感じてしまう。

ストーリーは暗い部分も多く、説明不足なところもあり、前半は見ていて辛い部分も少なくなかったが、後半は展開も早く、気分的に救われる部分も多い。
見応えのある1本。



『お遊さま』

溝口監督の初期の作品、
田中絹代は堂々の存在感。乙羽信子のういういしさが素晴らしい。冒頭の見合いシーンのゴージャスなことと言ったら!
ストーリーは今なら乗り越えられそうな葛藤に3人の登場人物が翻弄される、という・・・ちょっと前の日本ってそうだったのね。
今の邦画にもこのストイックな雰囲気が味わえるものがあればいいのに。
着物が一般的な時代の設定なので、きもの好きには楽しめる〜
特に夏の海岸での田中絹代と乙羽信子のシーンがいい。薄物の質感、着こなし、どれをとっても素敵。モノクロなのが、ちと残念。



『くれないものがたり』

1992年作品、池田敏春監督、出演は竹井みどり、佐野史郎、寺田農

昔見た『くれないものがたり』 もう10年ぐらい前の映画になるのかなあ。妖しさの漂う耽美なエッセンスと邦画の猥雑さが入り混じった映画。

竹井みどりさん、お昼のドラマとかで拝見するお茶目な演技とは随分印象が違う。首細〜い。華奢な肩、きもの本当にお似合い。

でも、この映画、ちょうど「大正ロマン」がもてはやされた時期だったのかな、べたっとした色の友禅とか、暗い色の縮緬に刺繍半襟とか、一昔前のコムサのきもののような中途半端さがいまいちな・・・(実際こむさでもーどだった、衣装協力) 髪に挿した白い造花が安っぽくて、あれはないやろ、と。
京都が舞台で、旧家の女性、しかも香道家元夫人という役どころにしては、ありえないようなきもののチョイスだ、と違和感を感じたのを覚えている。
それに、よく覚えていないんだけど帯結びがお太鼓ではなかった。お太鼓に似ているんだけど、垂れの部分が見当たらなかったような。きものの着つけの本でも見た事がない。あれはなんだろう。気になる〜

竹井さん、紬着てたシーンあったかなあ。
ただ、真っ赤な襦袢は印象に残っていて、薄色の襦袢を見なれていた当時のわたしの目にはインパクトだった。

そういえば、いいとこの奥様的役柄では必須とも言える、藍もしくは白大島にレンガ色の帯という着こなしは見られなかった。
この映画にそういういわゆる一般的なきもの姿が出現しないということは、衣装的にも前衛的な試みの多い映画だったのか。

男物では寺田農のやくざな着流しが無頼らしくいい感じだった。

今見返すと、また新しい発見がありそうな気がする。
きものもブームの今、きものに力を入れてリメイクしたら、かなりいい線いきそうに思うけどなあ。



秋刀魚の味

相変わらずの淡々とした日常ドラマ@小津安二郎。これが遺作だとか。岩下志麻の清潔感のある細いうなじにほれぼれ。
洋服姿も勿論よいですが、黒っぽい絣に臙脂の無地のお太鼓のよく似合うこと。
「結婚」のもつ社会的な意義が、今よりもっと重かった時代の話。
なにも起きていないようで、実はそれぞれの人生の大きな転機を扱った映画。
「日本はなんで負けたんすかねぇ」って台詞。
なんというか、そういう思いをあっさり、かつ淡々と表出させる小津って、いいなあ。
当時の日本人は映画館でふいにカタルシスにおそわれたことだろう。
が、ここで同意しない笠智衆演ずる主人公の台詞もまた日本人の気持の代弁なのだ、きっと。


『白い巨塔』

社会派の重厚な映画。医療ミス、裁判、と来ると昔はセンセイショナルだったのだろうけれど、今では日常茶飯事。(それも哀しいが)

モノクロなのが惜しいくらい、きもの姿が拝める映画だった。
大ぶりのお太鼓がいささか野暮ったい主人公の妻のきもの姿とは対照的な、愛人役の小川真由美のすっきりとした洋装。
藤村志保の初々しいきもの姿も印象的だった。
カラーじゃないから、何を着ているのか、帯はどんな素材なのかが判然としない。
非常に残念。



『丹下左膳 百万両の壷 』

2004年作品。
いつもは違和感を覚えるトヨエツの声の甲高さも、今回さほど気にならなかった。
お藤役の和久井映見は思いのほかきものが似合って、山吹色×京紫などの補色が多用された取り合わせも決まっていた。
多少冗漫ではあるが話も好きだ。
リメイクということだがオリジナルを観たことないわたしからすれば、
丹下×お藤の笑いを誘うかけあいも楽しめた。
殺陣も見ごたえあり。市川雷蔵に見まがう後姿。トヨエツの姿のよさにはほれぼれ。あれで声が低ければなあ・・・つくづく残念だ。

お藤の羽織の袖丈妙に長くないか?長着と合ってない気がする。
お藤のきもの、絵羽もの多いけど、この時代にしちゃ贅沢すぎんかね?
・・などなど、多少気になるところもあるが、明るい画面と人情味あふれる展開が楽しい映画。


『どら平太』

2000年作品。市川崑らしい建物の玄関正面から捉えたカットが多い映画。まるでミエきるみたいに。
挿し色が効果的な画面続出。計算された映像美。
なんにも考えずに見られる娯楽映画だ〜
でもなんだかテレビの時代劇見ているような気分になるのはなぜだろうか()映画というには重厚さに欠けている。
浅野ゆう子の役どころは不用では?
なんというか、男くさい話で終わってほしかったんだよね〜
「どら平太」のキャラに親近感をもたせるのに必要だったのかもしれないが、「女好き」という要素は単に匂わすだけでもよかったんでは?
本当に女性が出てくると、作りあげたイメージから離れてしまうというか。
きもの的には、楽しめる部分は少なかった。浅野ゆう子の着こなしにも感じるものはない。市川崑なのに・・・・。残念。




『人でなしの恋』

1995年作品。松浦雅子監督作品。羽田美智子、阿部寛、竹中直人。
賛否両論あろうが、わたしにとっては消化不良な一本。
原作を覚えていないので、こんな結末だったのかなあって。
羽田美智子のきもの姿は素敵だったけど。
なんだか、赤みの強い紫やマゼンダっぽいピンクの長着が多かった。
アンティークっぽさを感じさせようという意図なのか。
う〜ん、原作の乱歩の雰囲気が出ている、のかなあ。
もう全く別次元と考えて見た方が楽しめる気が。

なんとなく横溝正史原作の映画『蔵の中』思い出した。
蔵が出てくるからなのか?我ながら単純思考で笑える。
が、ストーリーとしてはこっちのほうが面白い。
配役にもう少し花がほしいとこだけど。




『雪国』

岸恵子、池部良、八千草薫というキャスト。
モノクロでもしっかりわかるきものの質感。芸者になった駒子の大胆な縞にゆるく肩にかかった羽織、きっちり銘仙の衿を合わせた素人の葉子の生真面目そうな姿。
さすがに岸恵子のきもの姿は所作も美しく、きものというものの服飾の美を実感させてくれる。雪国でのロケも圧巻。映像的な美しさが追求されてる、近年の映画にはない、絵から詩情の感じられる映画。でも、ストーリーはどろどろした印象が強く、それがこの映画を損なっているように思った。なんともやりきれなさの残る映画でもある。
冒頭が、汽車がトンネルを抜けて雪国の風景の中に入っていくシーンだったのには、あまりにベタすぎて笑いがこみ上げてしまった。
実は、森繁久彌や市原悦子も出てきてるんだけど、あまり印象に残らない。それぐらい、岸恵子の美しさに圧倒されていたということか。
なんといってもあの華奢な肩に羽織は似合う、ほんとうに。



陽暉楼

1983年作品。五社英雄監督
いろんなきもの姿を拝めるこの映画。芸者の引き着はもちろん、置屋のおかみのきもの、小料理屋のおかみまで。個人的には浅野温子のきものが秀逸。

ダンスホールにお客と踊りにきた娼婦の珠子(浅野温子)、陽暉楼の芸者衆が来ていることに苛立ち・・・・というシーン。
きものはアールデコな柄の柔らかもの。白地に赤と黄色と鳩羽色をくっきり染め分けて、何の柄かは判然としないが、牡丹のような花の輪郭なのか、それとも木の輪郭なのか。
模様のなかに使われている赤と長襦袢の赤が同じトーンでよく映ってる。帯は白っぽい(多分塩瀬)地に鼓と鬼面。お太鼓に墨色で鬼面がくっきり描いてあるもの。
太めのフューシャピンクの帯締めがまたあだな雰囲気。卵色の半襟も白半襟のウソっぽさがなくていい。
このきものと帯のとりあわせ、かわいらしさを面影に残しつつ、商売上のふてぶてしさを身につけた珠子をよく表していた。
堅気になってからの珠子のきものもまたいい感じ。地味な大島に真っ白い割烹着で、きゅっとひっつめた髪で小料理屋のおかみ。清潔感ただようきもの姿。

陽暉楼のおかみ役の倍賞美津子の日常着のきりっとした堅いものに縮緬らしき分厚そうな色半襟、仙道敦子の生真面目そうな舞妓姿、黒い振り袖、赤っぽい帯に水色のぼってり厚い絞りの帯揚げも印象に残ってます。

緒形拳さんのきもの姿は背筋がぐっと伸びていてかっこいい。確か半襟を見せずに紬を着ているシーンがあったと思うけど、あんなふうな着こなしははじめて見たな〜と思いつつも、あれには、玄人らしい洒脱さが出ていると感じたなあ。

なぜか主役の池上季実子のきもの姿が印象に薄いのは、芸者の引き着姿が多くてこちらがコスチュームって受け止め方をしているからだろう。

邦画できもの姿をふんだんに楽しめるものと言えば、どうしても色町が舞台になっているものが多い。そうなるときものにある生活感が感じられないものが多くて残念。
この映画も色町が舞台、だけどきものが日常に纏われていたころの空気が感じられるような気がする。
ただ、土佐弁はちょっとへん(^^;)




 

 

 

ほーむへ