ネット上、中傷が急増中......失したものは...
始まりは1本の書き込みだった。「この会社腐ってる」インタ−ネット上のある掲示板。都内のベンチャ−企業に対する中傷に、すぐに多くの回覧者が群がった。冷やかし、あおりも含んで書きこみも1日何本にも及んだ。
「情報希望」。そんな声に応えるように、同社の進行中の事業が明かされる。幹部が実名で批判される。「ここの部長は女性社員と不倫している」。虚実ない交ぜの書きこみ攻撃は、その標的を個人に向け始めた。
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小人数の職場で、犯人探しや部長への同情、好奇の視線が交錯。明るかった部長が他人と目を合わせなくなり、数ヶ月後、職場を去った。「うぬぼれるな」「目障り」。関東地方の20代の女性が自分の日記などを載せたホ−ムペ−ジ(HP)にある日突然、理由不明の大量書きこみが始まった。
嫌がらせを止めるよう書きこんだが、逆効果だった。日記が別の掲示板に転載され、そこでも嘲笑(ちょうしょう)、罵倒(ばとう)を浴びた。「誰が何の為に。」ネットから離れても不安は募った。2週間続いた攻撃で女性は体調を崩し、通院を余儀なくされた。2002年上半期に全国の警察に寄せられたネット被害相談のうち、名誉毀損,ひぼう中傷は約千二百件で前年同期より約百五十件増えた。
これに対して検挙は1%どまり。「実名など個人を特定する物が無い限り,名誉毀損での立件は難しい」(警視庁対策センタ−)のが実情。「ネット対策室」では「処罰されない分、逆に被害感情は深まる」と指摘する。
危うい........
無秩序
一方で、攻撃する側に罪の意識は薄い。ソフトウエアの権利保護団体「コンピユ−タソフトウエア著作権協会」のHPが作春、短時間に通常の十倍のアクセスを受け、11時間にわたり停止した。掲示板で「ここを攻撃しよう」との書きこみに多数が応じたのが原因だった。
協会が捜査当局に報告すると共にHP上で「法的処置を取る」と警告すると、19人が「自分もやった」と名乗り出た。発端の書き込みをして男性19は「軽い遊びだった。自分も逮捕されたのか」と泣いて誤ったと言う。
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他人のHPに無意味な書き込みをしたり、閉鎖に追い込む「荒らし」と呼ばれる行為。その技術をもった。"請負人"もネット上には多数存在し、刻々と依頼の書きこみが積みあがる。
「このペ−ジむかつくのでつぶして」「こいつ偉そうなんでやっちゃてください」ある荒らし依頼専門の掲示板には、閉鎖したHPのアドレスが、"朝食"にされた痕跡として残る。
この掲示板の開設者は「荒らされる痛みが分からないのか」と言う書き込みもある。そんな過激反応で、更に盛り上がる。今の「いじめ」と同じと言う。仮想空間が、現実社会の暗部
を鏡のように映していく。「ネットライナ−」は「ネットには匿名で好き勝手に書きこめる特定の場があり、一部の利用者はそのル−ルを全体の模範とおもいこんでいる。
それが摩擦を生む」と指摘。1人1人にとっては軽い気持ちがネット上で増幅され、"悪意の矢"となって人を傷つける。そこに利便性と裏腹の、無秩序なネットの危うさが垣間見える。17:26 03/01/22