先細りバックロードホーンTLS-1の製作(2004/5/5)


動機と目的

一応、バックロードホーン(BH)として設計した「孔雀」を改造して「名古屋駅」を作るときの予備調査としてホーンの出口を絞って低音の出方の変化を調べ てみまし た。耳で聞いただけですが、5cm平方くらいまで絞ってみても200Hz以下の量感はほとんど変わりませんでした。そこで、80cm長まで指数型ホーンと して一旦広がったホーンを途中から逆に絞って出口で7cm角にしたのが「名古屋駅」です。
組み立てた直後の「名古屋駅」は広がる指数型ホーンが縮む指数型ホーンに急につながる形になっていたためか、低音不足でした。継ぎ目の所を発泡スチロール で整形し改善できました。

この経験から、次のようなことがわかりました。
・ホーンの出口面積はかなり小さくてもよい
200Hz以下の出方はホーン開口面積で、耳で聞いてわかる範囲では、あまり変わらない。ホーンとして出口で音波が空間に100%放出されるには、音波の 波長のオーダーの開口部等価直径が必要と考えられますから、普通の(長岡鉄男氏風設計の)BHでは200Hz以下=波長1.7m以上の音波に対してはホー ンとしてではなく共鳴管としての働きが主体なのではないか、と思います。一方、数百Hz程度の中低音になりますとホーンとして有効になってきますので、 BHはバスレフでは1000Hz以下だら下がりになるようなユニットには有効なのでしょう。
・ホーン断面積変化の滑らかさは重要

ホーンを広げないようBHを試みに10cmユニット対象に設計してみると、かなり小さなキャビに収まることがわかります。もし、これで、普通のBHと同程 度の低音が確保できるなら、キャビネット設計の自由度がぐっと広がります。そこで、手持ちのFOSTEX FF125Kをつかって小型ブックシェルフ (BS)を作ってみることにしました。

設計

小型BSとして普通の本棚に収まることを目標に、高さ30cm、奥行き30cmを目処にします。幅は長岡鉄男氏設計のD-10などに合わせて内寸15cm とします。空気室容積、ホーン入り口面積もD-10を参考に、各々1.8L、15cmx3cm=45cm^2とします。
BHとは違うのでD-10と同じにするのが良いのかどうかわかりませんが、長岡式のFF125K-BHがあれば比較できるので、その意味では適当でしょ う。また、 1.8Lの空気室は密閉箱として計算してみると、focが172Hzまで上がってしまうもののQtcは0.64となってそう悪くない線 です。ただし、実際には空気室は2.0Lになっています。後で埋めて狭めて調整するつもりです。

奥行き30cmと決めてしまって、15cmx3cmのまま音道をキャビ内に引き回してみると、あまり長くとれません。BHと比較する意味でも200cm以 上の音道は確保したいので、先細のホーン(逆ホーン)を使うことにしました。

指数型ホーンのカットオフ周波数が20Hzは十分低いとして、これで計算してみると100cmでの拡大縮小率は2.1となります。200cmでは4.4分 の1になりますが、奥行き3cm/4.4=0.7cmは狭すぎて気流抵抗が過大の心配があります。どの程度の面積を確保すればよいのかわかりませんが、入 り口の半分=1.5cmを目処とします。縮小率を200cmで0.5、即ち100cmで0.71とすれば、おおむね良いのですが、これではそれほど小さく 出 来ません。

そこで、100cmで1.5cmまで絞ったあと、一定断面積で伸ばすことにしました。指数型ホーンではつなぎ目で断面積変化が不連続になりますので、 100cmまで(100cmのところで変化率0となる)二次関数で絞って、以降、一定断面積とします。微小な指数型ホーンの連続と見ると、入り口がもっと もカットオフ周波数が高く、27Hzになりました。それでも、十分低いとはいえると思います。もっとも、直管の連続なので、細かい計算しても仕方ないとこ ろではあります。

これで、内寸奥行き30cmちょうどで約240cm の音道が内蔵できました。音道を180cmで諦めると、外寸奥行き30cmとできるので、外寸をとるか音道長をとるか悩みましたが、多少深くても本棚に収 まると考えて音道長を優先しました。下に音道の様子を示します。外寸奥行き33.6cm、高さ29.5cm、板厚は1.2cmです。

フロントバッフルの強度が重要なことはわかっているので、2枚重ねとします。
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図1 音道の様子 ゲージの数字は音道の奥行き(mm)
垂直、水平、どちらの音道折り返しでも構成可能ですが、高さをコントロールするには垂直 の方が楽なので、こうししてしまいましたが、SPケーブルの取り回しを考えると水平の方が良かったと思います。

材料

大きさと材料費を押さえたいこと、小型なので強度は十分であろうということで、1.2cm厚みの合板(コンパネ)で作ります。今回、ホームセンターでラワ ン合板ではなく、針葉樹をつかったタイガプライというのを見つけました。音質的にどうかはわかりませんが、木目がきれいなので見た目は良さそうです。 182cmx91cmの定尺板一枚で二本できます。
自宅の近くでは適当なターミナル金具が買えません。今回の構造ではくみ上げる前にターミナルをつけておく必要があるし、買いに行く時間はないし、で、蝶ね じと圧着端子を使うことにしました。「名古屋駅」やその前身でも使っていますが、SPケーブル側にも圧着端子やYラグをつけておけば、ターミナルを使うよ り接触は確実のような気がします。ステンボルトに音楽信号を流すのは嫌なので、ケーブルのまま外に引き出し、SP側の圧着端子とSPケーブルの端子を蝶ね じで共締めしてしまいます。


組み立て

組み立ては、構造がそれなりに複雑なこと、連休中で家族のレジャーの合間をぬってやったこともあって、3日をかけました。
隙間なく、また角がきっちり合うように慎重にやったつもりですが、やっぱり完全には行きません。慎重にするだけではなく、冶工具を準備しなければいけない ということでしょう。今後の課題です。
組み立てに、ホームセンターで見つけた、「duflix MAGAPowerストロング」という水性接着材を試してみました。「強力接着剤 優れた初期保 持力 仮止め不要 重量物でもズレ落ちない 凸凹面もOK!」と書いてあります。でも、SPの組み立てに木口を接着するときに釘が要らないほどではないで したし、5分くらいでずらせなくなってしまって、結局、あまり便利ではありませんでした。ただ、硬化しても容積がほとんど減らないので、シール兼用に使う には良さそうです。そこで、上の図1の状態から最後に側板をふたするときに使いました。
組みあがり、塗装前の様子を下に示します。事情を知らなければ、バスレフあるいはダブルバスレフに見えてしまう、だましSPでもあります。

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図2 組み立て後、塗装前の様子

インピーダンス測定とちょっと試聴

塗装に入りましたが、仕上がるまではまだまだかかるのでインピーダンス測定と、ちょろっと試聴をしてみました。
200Hz以下のインピーダンスは下のようになりました。

図3 インピーダンス
二本の線はインピーダンス測定法の 違いです。
明らかに90Hzと150Hzに谷があります。共鳴管として考えると、90,150の下は30Hzのはずで、図3でははっきりしませんが、そのあたりにも 谷はありそうです。しかし、管の長さは240cm程度ですので、それからすると、35Hz、105Hz、175Hzとなるはずですが、少しずれています。
また、25-45Hzの広い幅で谷になっているのが特徴です。
バスレフとしてみたとき、管断面積をどこでとるかにもよりますが、35Hz-49Hzの範囲に共振周波数があるので、これと連成しているのかも知れませ ん。

聴いてみた範囲では
・低域レンジは30Hzくらいまでレスポンスがある。
・男声アナウンスを聞いたところ(BHでよくありがちな)洞窟音は感じられず、ごく自然に聞こえる。
・ユニットの性質もあるが、高域(数千Hz)はうるさい感じがする。しかし、まだ製作中なのでこの辺は判断保留。
・低域は不足しているように感じるが、短時間でも、聞いているうちに変わってきたので、これも、もう少し鳴らしてみないとなんともいえない。
といったところです。
完成後、空気室の容量調整や吸音材(ユニット背後に張ると背面からの反射音がへってやかましさが減る)など対策してみるつもりです。

周波数特性の測定(2004/5/15)

efuさんのWaveSpectraでf特を測ってみました。マイクはSH-8000付属のもの、居間の特性込み、軸上1m、入力ホワイトノイズの結果で す。(SP特性がフラットなら結果もフラットになります。)
測定誤差要因が色々ありますので確定的なことは言いにくいですが、結構フラットに低音まで出ています。上記 でやや低音不足に聞こえるのは中音域(500-3000Hz)がやや盛り上がっているせいかもしれません。
常識的な先広がりのBHのホーンの開口面積でも、200-500Hzには有効ですから、BHだと低音不足感は解消されるのかもしれません。空気室を狭める とQの上昇で200Hz付近を中心に盛り上がるはずなので、これも有効かも、です。

図4 TLS-1のf特 軸上1m ホワイトノイズ