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コルチゾールとは?

起床時コルチゾール反応(awakening cortisol response)

   (起床時コルチゾール反応の測定に当たっての留意事項)(別ページ)

デヒドロエピアンドロステロン(dehydroepiandrosterone: DHEA)

唾液採取の方法(別ページ)  唾液検体の扱い(別ページ)

 

コルチゾールとは?

 ストレスが生体に負荷されると2つの系が活性化されます。一つは青班核を起点とした交感神経系であり、神経末端からはノルアドレナリンが、副腎髄質からはアドレナリンが分泌されます。もう一 つは視床下部―下垂体―副腎系(hypothalamus–pituitary–adrenal axis: HPA系)であり、視床下部(室傍核)から分泌されたコルチコトロピン放出ホルモン(corticotropine releasing hormone: CRH)が下垂体に、下垂体前葉から分泌された副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone: ACTH)が副腎皮質に作用し、最終的に副腎皮質から糖質コルチコイド(コルチゾール)が分泌されます。コルチゾールは心理的・身体的ストレスの一つの指標として考えられており、唾液からも測定が可能です。

Stress System 

 

 コルチゾールは免疫系(炎症抑制)、血管系、代謝系(糖新生)などの様々な生体の機能に影響を与えます。また視床下部、海馬、下垂体にはコルチゾールの受容体があり、コルチゾールの分泌量が増えるとCRHやACTHの合成量が減り、結果としてコルチゾール分泌が抑制されます(ネガティブフィードバック)。そのような過程の中でコルチゾールは中枢系(認知、記憶、情動)にも影響を与えるといわれています。

 

起床時コルチゾール反応(awakening cortisol response)

 コルチゾールは一般的に朝は高く、午後になると低い値を示します。ところが近年の研究では朝起きてから1時間の間にコルチゾールが50〜160パーセントの範囲で急激に上昇することが報告されています(Clow et al., 2004; Pruessner et al., 1997)。これが起床時コルチゾール反応というものです。この反応はHPA系の活動を表す指標として注目されています。コルチゾールを1回測定しただけでは水準値しかわかりませんが、起床時に複数回測定することにより、HPA系の反応性をみようとするものです。

 下図のように起床直後から30分にかけての差値が求められたり(緑色部分)、反応総量が求められたり(赤色の台形の部分)します。

Awakening Response

 起床時コルチゾール反応は心理社会的な要因との関連が多く報告されています。例えば、慢性ストレスの高い人、労働時間の長い人、職場での仕事量が多い人は高い反応性を示します(Kunz-Ebrecht et al., 2004; Lundberg, 2002; Schulz et al., 1998)。一方で心的外傷後ストレス障害(PTSD)の人では反応性がなくなることが報告されています(例えば、Rohleder et al., 2004)。反応を高める機序、低める機序についてはまだ明らかになっていませんが、起床時コルチゾール反応はHPA系の活動を表す指標として多くの研究で使われ始めています。

 

★ 起床時コルチゾール反応の測定に当たっての留意事項 ★

 

デヒドロエピアンドロステロン(dehydroepiandrosterone: DHEA)

 コルチゾールとともにもう一つ注目している物質がDHEAです。DHEAはコルチゾールと同じく副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンです(下図)。ところがその作用はコルチゾールとは反対であることが報告されています。例えば、コルチゾールはTh1免疫活動(NK細胞、キラーT細胞)を抑制し、Th2免疫活動(B細胞)を促進しますが、DHEAは逆にTh1免疫活動を促進します。またうつ病の患者ではコルチゾールが高く、DHEAが低く、その割合(コルチゾール/DHEA比)が重要なのではないかといわれています(例えば、Young et al., 2002)。DHEAはコルチゾールの作用をうまく調節するホルモンなのかもしれません。

副腎

 

 またそれとあわせてDHEA-sulfate(硫酸基結合型DHEA:DHEAS)も重要になってきます。DHEAは、コルチゾールのようなネガティブフィードバックはなく、分泌されると比較的短時間の間にDHEASに変換されて蓄積されます。DHEAS自体にはホルモンとしての活性はありません。標的となる器官でDHEASはDHEAに変換され、標的となる器官に作用します。DHEASはDHEAの安定的な状態を表した指標ともいえます。

 DHEAやDHEASはストレスとの関連もみられ、また唾液から測定が可能です。このことからコルチゾールと同時に測定することによって何か新しい知見が得られるかもしれません。

  

引用文献

Clow A, Thorn L, Evans P, Hucklebridge F. (2004). The awakening cortisol response: methodological issues and significance. Stress, 7, 29-37.

Kunz-Ebrecht SR, Kirschbaum C, Steptoe A. (2004). Work stress, socioeconomic status and neuroendocrine activation over the working day. Soc Sci Med. 58, 1523-1530.

Lundberg U, Hellstrom B. (2002). Workload and morning salivary cortisol in women. Work Stress. 16, 356-363.

Pruessner JC, Wolf OT, Hellhammer DH, Buske-Kirschbaum A, von Auer K, Jobst S, Kaspers F, Kirschbaum C. (1997). Free cortisol levels after awakening: a reliable biological marker for the assessment of adrenocortical activity. Life Sci. 61, 2539-2549.

Rohleder N, Joksimovic L, Wolf JM, Kirschbaum C. (2004). Hypocortisolism and increased glucocorticoid sensitivity of pro-Inflammatory cytokine production in Bosnian war refugees with posttraumatic stress disorder. Biol Psychiatry. 55, 745-751.

Schulz P, Kirschbaum C, Prussner J, Hellhammer D. (1998). Increased free cortisol secretion after awakening in chronically stressed individuals due to work overload. Stress Med. 14, 91-97.

Young AH, Gallagher P, Porter RJ. (2002). Elevation of the cortisol-dehydroepi- androsterone ratio in drug-free depressed patients. Am J Psychiatry.159, 1237-1239.