N700系初乗り記
■筆者における新幹線利用
筆者は今までに「『のぞみ』シフトを検証する」という記事を書いており、これが当館における最多アクセスでもあることから、ひそかに新幹線研究家の一人であると自負している。ところが、その割には近頃新幹線を利用していない。思いつく限り遡ってみると、
平成17(2005)年初頭 東北新幹線八戸→上野
平成16(2004)年末 上越新幹線大宮→ガーラ湯沢→上野
平成16(2004)年秋 山陽新幹線新山口−広島
平成16(2004)年初 東海道新幹線東京→名古屋/北陸新幹線長野→大宮
平成15(2003)年秋 東海道新幹線東京−豊橋
平成15(2003)年秋 東海道・山陽新幹線東京−新神戸
特に昨年度はまったく利用していない情けなさ、東海道・山陽新幹線とは三年近くもの御無沙汰だ。ちなみに、九州新幹線に至っては未乗である(さすがに遠いので)。そんな筆者であるが、最近ようやく「スポットユーザー」に復帰できそうな状態となった。早速、といっても遅れ馳せではあるが、N700系列車に乗車してみた次第である。
■のぞみ50号(新大阪20時56分→東京23時29分)
最初に選んでみたのは「のぞみ50号」である。時刻表によれば、この11月 1日に 500系からN700系に置換されたばかりの列車のようだ。N700系が充てられている列車はまだまだ少数派で、主に早朝深夜の列車に乗るしかない。

新大阪にて(平成19(2007)年撮影)
乗車してみて驚いたのは、車内が明るいこと。外が真っ暗という影響を差し引くとしても、特に椅子の青色(普通車)が目に痛いほどだ。これは好みが分かれるところだろう。なお、筆者が感じたところでは、驚きはあっても決して不快ではなかった。
もう一つのポイントは、全席禁煙車となったこと。これは愛煙家にとって苦痛であるとしても、現状では非喫煙者の方が多く、嫌煙家も少なくないことを考えれば、当然の措置といえよう。しかも現在は移行期にあたっており、かつての喫煙車を禁煙車に置き換えた車両には、なんとも不快かつ異様な臭いが残っているのが実態だ。このような不快を解消した、という意味においてもN700系の意義は大きい。
さて、時間帯からして眺望にはまったく恵まれず、乗り心地を堪能するよりほかがないのだが、あまり揺れないというのが第一印象である。セミアクティブ制振制御方式が相当効いているとみえて、すれ違い時の横揺れと時折起こる小刻みな上下振動が気になる程度、実に快適である。 700系以前の車両や航空機と比べれば、揺れなどないに等しいといえる。時を経てもこの乗り心地を維持できれば、たいしたものだろう。
車内の造作もおおいに変わっている。気になったのは車端部の水回り設備で、いわゆるモジュール化が図られている様子がうかがえる。JR九州 815系(日立A-Train) に端を発する構造簡素化(=コストダウン)の潮流は、とうとう新幹線にまで波及したようだ。だからといって決して貧相なつくりでなく、むしろ高級感を醸すように仕上がっている。そのあたりの細工もなかなか巧妙なものである。
率直にいって、ここまで感心できる新車に出会うのも珍しい。まさしく新幹線としての究極であろう。願わくば、なるべく速やかに普及してもらいたいものだ。なにしろ到着が深夜にかかり、まともに乗り継いでいけば終電を逃がしかねないわけで、一般的な時間帯の列車にもN700系が多数充当される時期がくるのを楽しみにしている。
さて、せっかく乗車した以上は、利用状況についても簡単に触れておこう。博多からの直通列車という性格からか、新大阪では大幅な入れ替わりを伴いつつも、新大阪発車時点では満席に届かぬ程度の混み具合。京都と名古屋では降車の方が多く、名古屋発車時点では五割を超えるかどうかの乗りに落ち着いた。到着時刻があまり遅い時間帯にかかると、さすがに敬遠される様子がうかがえる。
■こだま 626号(新大阪 8時23分→東京12時23分)
N700系と比較するという意味を籠めて、とはいえ酔狂にも「こだま」にて東海道全線を乗車してみた。車両は 300系で、初代「のぞみ」として華々しくデビューしたのも今は昔、現在では東海道で最も旧い車両になってしまった。

東京にて(平成17(2005)年撮影)
結果から先にいえば、揺れがひどいと評するしかない。特にトンネル内でのすれ違いでは横揺れがきつく、このままで大丈夫かと不安を感じたほど。また、レールの摩耗を丁寧になぞっている感じで、共振でもするのだろうか、頻繁に不快な上下振動が起こっていた。同じ新幹線の車両とは、とても思えない。
念のためいえば、JR東海では 300系の乗り心地改善を図る必要から、セミアクティブ制振制御改造を施している(全61編成中43編成)。車番未確認のため断定できないものの、おそらくは未改造編成に当たったのであろう(即ちN700系投入に伴い早期に駆逐されるであろう編成)。改造編成の乗り心地がどの程度か、こちらも体験したいものではある。
先に続いて、せっかく「こだま」に乗車した以上、利用状況についても触れておこう。全般に駅毎の入れ替わりが多かった。新大阪では六割程度の乗り。需要の谷は米原−岐阜羽島間で、半数乗っているかどうか。名古屋で大量乗車があったが、意外にも三河安城での降車が多く、豊橋で一旦は潮が引く印象。まだ入れ替わりが伴いつつ、浜松からは乗車が単調増加していく。静岡で八割程度の乗り。三島でほぼ満席になり、熱海・小田原からは立客が出た様子。なお、グリーン車だけはガラガラに空いていた。
■さて 500系は?
そうなると気になるのは、初代 300km/h走行車の 500系である。もともと東京−博多間「のぞみ」にほぼ限定されて充当されていたから、なかなか乗車できないマイノリティーである。今後はN700系への置換が進んでいく以上、さらに乗車しにくくなる。
そして、 500系は寸詰めされたうえで「こだま」への転用が決まっている。これを意外とする向きは少なくないが、長距離高速運用で酷使され続けてきたため、筆者はいきなり廃車もありうると考えていた。 500系が名車であることに疑いの余地はなく、早々に廃車ではさびしい末路と思われただけに、現役続行は慶賀すべきであろう。もっとも、現状の 100系と同じく、短編成の滑稽さと哀れさはどうしても伴ってしまうが……。

新大阪にて(平成19(2007)年撮影)
おそらくJRにとって、 500系は使いこなしにくい車両であったと思われる。利用者にとっても、狭く窮屈な車内は決して好感の対象にはならないのかもしれない。
しかしながら、長らく世界最高峰に君臨し続けた名車であること以上に、最高度の速達性を発揮する利便性の高い列車であることが 500系の本質であり特質であろう。利用者は 500系を速く便利な列車として使っており、上の写真を見ればわかるように「のぞみ49号」には長い行列ができている。利用者のこの選択傾向は事実として残る。
今回は乗車できなかったが、東海道を走っているうちにもう一度乗っておこうと考えている。
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