夏休みの宿題2007【課外活動】〜〜ポケモンスタンプラリー



ポケモン人気四人(?)組
神田にて
ポケモン屈指の人気ある四人(?)組。左からナエトル・ポッチャマ・ピカチュウ・ヒコザル。



1.まえがき

 筆者親子における夏休み自由研究は既に記したとおりだが、これと並行して「ポケモンスタンプラリー2007」に挑戦した。どこで情報を入手したのか長男がやる気になっており、自由研究対象の電車写真撮影と同時に参加すれば負荷が軽いので一石二鳥、と考えたのである。ところが、思わぬ障害(笑)が発生した。娘が「わたしも行く〜!」と強烈に自己主張を始めたのである。当然ながら、優先すべきミッションは電車写真撮影だから、飽きやすく疲れやすく、すぐ空腹になってのどが渇くと主張する娘の存在は、実は足手まといでしかない。やむなく、渋る妻(暑いのが苦手)を引きずり出し、娘の監督に当たらせることにした。

 結果からいえば、渋っていたはずの妻が乗り乗りになったのだから、この種のイベントにはなんらか魔力があるといっていいだろう。夏休みで過剰気味の輸送力を活用する企画、という意味においても意義が大きい。筆者においても楽しくはあったが、その一方で多大な苦痛を感じた部分もあり、それはイベント設定に帰着すると考えられた。以下、この点に関して記してみたい。

ポッチャマ
ポッチャマ(秋葉原・シークレット設定)
娘そして筆者が大ファン。「おしゃべり縫いぐるみ」が是非欲しいほど(^^);。





2.戦果(笑)

 まずは、獲得したスタンプについて記しておこう。優先ミッションが存在したことから、筆者・長男の男グループ、妻・娘の女グループに分かれた時間帯が長く、戦果にばらつきが生じている。なお、●は筆者が事前に獲得したいと考えていたスタンプ。

【男女共通】
  ●ポッチャマ(秋葉原・シークレット設定)
   ニャルマー(鶯谷)
   リーシャン(日暮里)
   フカマル(西日暮里)
   ドーミラー(田端)
   ズガイドス(王子)
   ユキカブリ(尾久)
  ●ベロベルト(代々木)
   グレイシア(渋谷)
   リーフィア(神田)
   ムクホーク(御茶ノ水)
   エテボース(中野)
   ムクバード(高円寺)
   エイパム(阿佐ヶ谷)
   フワライド(荻窪)
   ミノムッチ(西荻窪)   ……以上16駅

ディアルガ
ディアルガ(北千住)
最新映画の主役級の一。映画主役級三大ポケモンを便利な駅に置いたのは、今次ポケモンラリーにおける数少ない良心的設定の一つ。

【男グループ&妻】
   ブーバーン(上中里)
   ビッパ(東十条)
  ●ダークライ(赤羽)
   ドンカラス(十条)
   エレキブル(板橋)
   ムウマージ(駒込)
   ユキメノコ(巣鴨)
   メガヤンマ(大塚)
   パチリス(目白・シークレット設定)
  ●ポッタイシ(高田馬場)
   モジャンボ(三河島)
   レントラー(南千住)
  ●ディアルガ(北千住)   ……以上13駅

ダークライ
ダークライ(赤羽)
最新映画の主役級の一。石坂浩二が声を担当したのには驚いた。だからこそ欲しかったのだが……。

【男グループ】
   トリトドン(西大井)
  ●ピカチュウ(田町)
   ハヤシガメ(浜松町)
   マスキッパ(御徒町)   ……以上 4駅・筆者&長男計33駅

【女グループ】
   ゴウカザル(水道橋)
   ミミロル(飯田橋)
   トゲキッス(市ヶ谷)
  ●ドダイトス(四谷)
   エルレイド(信濃町)
   ヒコザル(千駄ヶ谷・シークレット設定)
   ガブリアス(大久保)
   スコルビ(東中野)   ……以上 8駅・妻計37駅

【娘】
   マナフィ(立川)   ……以上 1駅・娘計25駅

【獲得を希望しながら果たせなかった駅】
   パルキア(大崎)
   プラスル(取手)
   コリンク(天王台)
   トリデプス(北柏)
   ニャース(柏)
   セレビィ(新小岩)
   デオキシス(市川)
   エンペルト(大井町)
   マイナン(千葉)
   ルカリオ(大宮)
   リオル(さいたま新都心)など

ルカリオ
ルカリオ(大宮)
格好良いルカリオ部長(笑)は欲しかった。しかし、大宮は遠く、如何ともしがたかった。空白がむなしい。





3.最大の問題−−95駅設定

 一通り終えてみると、「冗談ではない、95駅も設定するな!」と絶叫したい心地がする。実に95駅にスタンプが設定されていると知った瞬間、率直にいって頭痛がした。どんなに頑張ったところでも、95駅完全制覇には三日以上を要するはずだ。炎暑の時期でもあり、しかも階段配置によりホームの端から端まで歩かされる駅間もあり(筆者経験では王子→上中里や大塚→巣鴨など)、体力的に厳しいどころか、ほとんど拷問に近い設定と断じるしかない。

 郊外設定にもうんざりしてしまう。牛久のミュウと大船のミュウツー。取手のプラスルと千葉のマイナン。さらには、飛び地で熊谷のジラーチ。設定を見るだけでげんなりし、やる気が失せるのは、ひとり筆者のみではあるまい。95駅完全制覇など、児童では事実上達成不可能であり、大人でも気力体力と時間に恵まれなければ困難だ。

 たとえ都心でも、獲得しにくい駅がある。最も厳しそうなのは越中島のケイコウオで、停車する列車が少なく、必然的に運行間隔が長く時間ロスが大きい(同様の理由で天王台コリンクも高難度)。上野か赤羽から乗りこむしかない尾久のユキカブリもなかなか難度が高い。系統が二本に分かれ、通過列車もある西大井のトリトドンも実は案外厳しい。

 スタンプの設定は、都区内パス範囲の10〜20駅程度(主人公側のポケモン・映画で主役を張るポケモン・悪役側の(≒お笑い担当)ポケモン)でも充分ではないか。ある報道によれば、JR東日本では「子供の鉄道ファンを増やそうという意味合いでやっている」とコメントしているらしいが、よくぞ白々しいことを言うものだ。数をこなせば満足という嗜好がなければ、95駅完全制覇への道のりは苦痛でしかない。これを達成するのは至難であり、達成したところで満足感を得られるかどうか疑わしい。徒労感と苦痛のみが残るのではないか。

 とにかく、95駅なんぞという過大な設定はやめてほしいものだ。

ベロベルト
ベロベルト(代々木)
ポケモンには悪役らしい悪役が存在しない。どちらかというと「お笑い担当」の色彩が濃い。その意味でニャースは欲しかった。





4.親が頑張るしかないのに

 先の記述で【男グループ&妻】という部分に疑問を持たれた方は、かなり鋭い。実は、これは筆者が単独行動して、妻と長男のスタンプ帳にも併せて捺印した戦果なのである。このような行動を「スタンプラリーの本旨に悖る」と批判されても、仕方ないであろう。しかしながら、時間にも体力にも余裕がない日常を生きる身としては、この程度の工夫は凝らしたくもなる。

 既に記したとおり、95駅設定があまりに過酷すぎるのだ。家族一緒に一日行程を本旨とするならば、もっと設定を軽くすべきであろう。それをせずして「大人が複数のスタンプ帳を捺すのは困る」というコメントがJR側から出るのは、むしろ非人道的とさえいえる。児童に耐えがたい負荷を与えておいて、児童がこの負荷をこなさなければならないとするのは、児童虐待に近しい非道とはいえまいか。

 転売目的で多数のスタンプ帳を抱える輩に対する批判は当然としても、親(祖父母)が複数スタンプ帳に捺印する親心まで同列に扱われては、切ない心地がする。それともこれは、単なる親のエゴというものだろうか。

記念写真
東京駅にて
六駅分のスタンプを集め、ゴールで記念写真。しかし、真の難行苦行はここから始まるのだ。同伴する親(祖父母)が頑張らざるをえない場面も多い。





5.設定の不可思議

 羽田空港第二ビルにスタンプ設定するという点も理解しがたい。東京モノレールがJR東日本傘下に入ったから、という動機づけはわかるとしても、羽田空港は夏休み・お盆の最繁忙期ではないか。そこに敢えてスタンプラリーをぶつけるべきなのか。しかも人気者のレックウザを。常軌を逸した設定に思われてならない。

 そもそも論として、夏休みで通勤路線には輸送力に余裕があるからこその企画であろう。B747到着時にスタンプラリー参加者が混乗したら、お互い不愉快な事態にもなりかねない。航空利用者が快速系に集中することを前提に、せめて昭和島以北の駅に設定し、遠近分離を図るべきではないか。

ズガイドス
ズガイドス(王子)
あまり愛着がない(≒めんこくない)と思えるポケモンがどんどん累積していくシステムにもストレスを感じる。





6.システム上の欠陥

 尾久は行きにくい駅と先に記した。筆者においては、実家に帰省する際マイカーで立ち寄ることでクリアした。しかも筆者だけでなく、同じ時間帯に数家族が立ち寄っていたのには驚いた。要するに、同じことを考える参加者は決して少なくないわけだ。

 ポケモンスタンプラリーのシステム設計における致命的欠陥は、改札の外にスタンプを設置しているため、マイカーで挑戦した方が明らかに楽な点にある。エアコンが効いて、徒歩移動が少なくて済むから、まともな神経の持ち主ならばマイカーで試みるのがむしろ正当かもしれない。妻の知人にも、最初六駅を自転車で挑戦すると真顔で語っていた家族がいたそうだ(これは極端な例だが)。

 勿論、マイカー利用はドライバーが二人以上いなければ成立しない手法であるが、特に駅間が近い山手線近傍では有効と思われる。そのかわり、道路条件が厳しい中央線沿線では有効ではないかもしれない。

 いずれにしても、「鉄道を使わずに挑戦可能」で、しかも「鉄道を使わず挑戦した方がむしろ快適」な部分がある企画とは、かなり屈折・倒錯しているといわざるをえない。

ユキカブリ
ユキカブリ(尾久)
鉄道で行きにくい駅には、マイカーでアクセスするインセンティブが働く。





7.大人も楽しみたいのに

 鉄道を使わずに といえば、筆者は東十条から十条まで歩いてみた。 興味深い場所柄ではあった。まず商店街の雰囲気が良かった。東武西板線の事前踏査もしたかった。いつもならば、ゆっくり歩いてみた場面であろう。しかしながら、時間制約があったからさっと歩き通し、脇見もしなかった。こんなことでは、詰まらない。改札を出て、味も素っ気もない机上のスタンプを捺し、街にも出ずそれだけで改札に戻るという行動は、第三者から見ればかなり異様でもある。

 スタンプの数を競うなど、やっている最中は熱中できるものの、終わってみればコドモの楽しみでしかないと痛感する。時間に追われ数をこなす、というのはかなり辛い。味気なくもある。街を歩くというような、オトナ趣味の部分をも生かせる要素を絡ませないと、いずれ(あるいは早々に)廃れる可能性なしとはいえない。

 児童に鉄道に接してもらいたい意図があるならば、もっと歴史的事績を感じさせる場所を回った方が将来の礎になるだろう。たとえ毎年定型になろうとも、参加児童は代替わりしていくから、問題はないはずだ。例えば東京駅赤レンガ、旧新橋停車場、万世橋駅跡、鉄道博物館(現時点では未開業)、横浜汽車道、大江戸博物館(今夏鉄道企画展を開催)などにスタンプを設置すれば、一箇所クリアの負荷が重くなる一方、一箇所毎に相応以上の意義が出るというものだ。博物館を持っている他の私鉄(東武・東急など)と連携してもいいし、私鉄と連携するならば、例えば博物館動物園駅跡のような謎めいた場所を回るのも一興であろう。連携相手としては、古刹から遊園地までさまざまなバリエーションが想定されうる。ともあれ、改札外の貧相な机のみが相手、という素寒貧な現状からは脱却してほしいものだ。

エレキブル
エレキブル(十条)
ポケモンも良いが、駅近傍の雰囲気の方がよほど良い。だが、スタンプラリーに熱中していると気づきにくい。





8.まとめに代えて

 首都圏に在住する小学生は、全学年あわせおよそ 300万人程度であろうか。スタンプ帳の準備が30万セット限定というから、最大で一割程度が参加したと想定される。ポケモンのファンのなかで、スタンプラリーに敢えて参加する意欲を持つ層は限られるはずだから、かなり巨大なムーブメントといえるだろう。

 筆者ら家族が参加中、妻が知人らと情報交換したところ「某駅に大行列ができている」といった話が飛びこんできている。全体では、どれほど少なく見積もっても十万人単位の参加があったであろうから、魅力的なイベントであることは間違いない。

 しかしながら、問題となる要素があることは、既に記したとおりである。さらにいえば、最新映画では「映画館にてDSソフト用ダークライ配布」というイベントが打たれている。最新映画との比較でいえば、参加者が感じる魅力、ポケモン側の旨味、どちらをとってもスタンプラリーは大きく見劣りするように思われる。

チケットホルダー
チケットホルダー(裏面)
六駅達成時点で貰える、ピカチュウをかたどったチケットホルダー。紙製バイザーとあわせ、賞品として明らかに魅力に欠ける。
スタンプラリーにかけるポケモン側の意欲がそこはかとなく透けて見える。最新映画の宣伝としてスタンプラリーは適切なのか。

 スタンプラリーの現状はおそらく、ポケモンの裾野を広げる程度の意味あいしかないのだろう。といっても最新映画は「映画化十周年記念超大作」と銘打っているから、どちらかといえば「裾野を守る」防衛的投資なのかもしれない。受益しているのは、ひとりJRのみだろうか。否、JRにしても持ち出しは相応に多いはずだ。

 ポケモンそのものもかなり変質してきている。初期の人気者、アチャモ・キモリ・ミズゴロウなどは見かけなくなって既に久しい。ポッチャマはかわいいものの、いずれ入替の対象になる儚さを予感せざるをえない(現在の人気者四人組には「計算しつくした」魅力がある。人気は「つくる」ものであり、いつか新しい人気者が「つくられる」はずなのだ)。ディアルガ・パルキアが「ポケット」の概念に馴染むのかどうか、どうしても強い違和感が伴うところだ。

 永劫不変の人気はありえないとしても、ポケモンの人気は根強く続くであろう。先駆者のドラえもんを追いつつ、近い時期に世に出た名探偵コナンと対抗しつつ(どちらも小学館作品という点が興味深い)、同じくクレヨンしんちゃんと競争しつつ、ポケモンは走り続けていくのだろう。だが、キャラクターが他の存在に変身できないポケモンが、例えば魔法使いになるドラえもんや、時代劇などを演じるしんちゃんに勝る魅力をまとえるかといえば、実はかなり苦しい。バトルを基軸に据え、キャラクターの質と量で勝負するしかない、いわば単線構造の作品世界であるがゆえに、ポケモンには明確な限界が存在する。

 ポケモンは、子供たちに支持されていると同時に、市場原理の冷酷なロジックで動いている面がある(色はだいぶ違うがジブリ作品にも同じ傾向が認められる)。それはそれで世の慣いとしても、炎暑のなか子供たちを引率する親としては、スタンプラリーの負担を軽くするように願うばかりである。率直にいって、そうでなければ、つきあいきれない。ポケモン人気に凋落がありうるとすれば、負担の重さに疲れた親世代からの反発が契機になる、……かもしれない。





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 この記事では、著作権・肖像権が明らかに保護されている図書・映像を基にしたのではなく、十万人単位の方々に捺されたであろう(しかも事実上無償提供の)スタンプ印影と、広く一般に公開されている空間から撮影した写真を素材とし、さらに個人ホームページでの非営利使用であることから、上記権利を侵害しないと判断しております。「ポケモン」肖像が読者へのアイ・キャッチになりうるという点での紛れは存在するものの、スタンプラリー企画に対する論評を主たる目的とした記事であることから、各権利者の許容範囲内におさまっているものと想定します。

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